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量子コンピューターとは? 仕組みや実用化への見通しをやさしく解説

量子コンピューターの話題が取り上げられることが増えています。これは多くの業界へ影響を与え得るものであり、企業経営者の方にとっては無視できない課題です。本記事では、量子コンピューターについて、その概要から実用化への見通し、国家や企業の取り組みなどを解説しますので、ぜひ参考にしてください。

量子コンピューターとは

量子コンピューターとは

量子コンピューターは、量子力学の応用により誕生した、次世代のコンピューターです。

量子力学とは、目に見えるマクロな現象を扱う古典的力学と異なり、原子レベルのミクロな世界における事象の振る舞いを解明するための学問です。量子コンピューターを理解する上では、量子が持つ性質を理解することが欠かせません。
例えば「重ね合わせ」や「量子もつれ」といった性質です。
従来のコンピューターでは情報を0と1の2パターンのいずれかを用いて表現・処理しているのですが、量子コンピューターでは0と1の両方の状態を同時に表せます。複数の情報を維持できるということであり、この性質は重ね合わせと呼ばれます。

また、量子コンピューターにおける情報の最小単位は「量子ビット」ですが、2つの量子ビットがあるときには(0,0)、(0,1)、(1,0)、(1,1)の4つの状態を表現できます。この性質を量子もつれと呼びます。従来のコンピューターが保持できる情報よりもはるかに増え、結果として処理時間を大幅に短縮できるようになるのです。
なお、従来に比べて計算速度が伸びたといわれることもありますが、単純に計算速度が向上したというものではありません。速度が向上しただけなら単なる性能の高い従来式のコンピューターに過ぎません。量子コンピューターは量子力学にもとづいた計算原理を採用している点で全く異なるものであり、「計算速度の向上」というより「計算ステップの削減」というところがポイントになっています。

量子コンピューターとスーパーコンピューターの比較

スーパーコンピューターについても耳にすることがあるでしょう。
こちらも非常に性能が優れており、個人的に所有するような代物ではありません。ただ、多くの方が所有しているパーソナルコンピューターの延長に位置することに違いはありません。この点、量子コンピューターとの相違点といえます。

また、スーパーコンピューターの消費電力が莫大であるのに対して、量子コンピューターは小さな消費電力で済むという特性も重要な違いです。さらに、従来では正解にたどり着くのが現実的に困難という局面でも、量子コンピューターなら現実的な時間で正解にたどり着けるという性能の違いがあります。

ただ、理解しておかないといけないのは、量子コンピューターが従来式の完全な上位互換に位置するものではないということです。
両者にはそれぞれ得手不得手があり、場合によっては従来式で対応させた方が良いというケースも考えられます。特に技術的な課題が多い現代においては、まだまだスーパーコンピューターの方が実用的ですし、今後これらは併用していくことになると考えられています。

量子計算の仕組み

量子計算の仕組み

上述の通り、量子コンピューターは単純に従来式の処理を高速化させたものではありません。計算の仕組みそのものが違うのです。
従来が入力に対して逐次的計算を実行するのに対して、量子コンピューターにおける量子計算では並列的計算を実行します。1つ1つの計算時間が短いのではなく、計算回数が少ないことで、全体としての処理速度を高めます。
例えば4ビットだと0と1の組み合わせ×4の16パターンが想定されますが、従来式だと一度に表現できるのは1パターンだけです。しかし量子計算では全パターンを同時に扱えるため、一度に保持できる情報が多くなります。そのため少ないステップで多くのことが処理できるのです。

しかしながら、一度の出力のみで正解が得られるわけではありません。量子ビットを用いた計算では0と1の両方を保持できるものの、出力時には0か1のどちらかが確率的に取り出されます。そのため解も確率的に導かれます。何度か繰り返して解の傾向を把握し、最適解を類推しなければなりません。
例えばある一度の出力で「A」という解が得られたとします。続く試行で「A」「A」「B」「A」という結果が得られた場合、正解に近いのは「A」であると評価できます。この割合だと精度が低いですが、一度の「B」に対して数億回の「A」が得られたのであれば「A」が正解であることの確率は高いといえます。

いずれにしろ精度の高いアルゴリズムを開発し、計算の正確性を高めることが量子計算には欠かせません。

量子コンピューターの種類

量子コンピューターは、計算のアプローチ手法の違いによって種類を分けられます。
今のところ大きく2つの方式、「量子ゲート方式」と「量子アニーリング方式」が注目されています。
以下でそれぞれの概要をわかりやすく解説します。

量子ゲート方式

まずは量子ゲート方式についてです。
「ゲート」とは論理ゲートのことであり、従来式でいうと0と1を分ける電子回路上のスイッチが該当します。量子計算においてはここまででも説明したように、0と1が併存することになりますので、従来と同じ論理ゲートは使えません。そこで量子計算に特化した電子回路が必要です。これを「量子ゲート」と呼んでいます。

現状ではエラー耐性がなく、重ね合わせ状態が崩れるとされおり、実装ノウハウを持った人材の不足という問題も抱えています。
実用的な段階に至るには100万量子ビット以上が必要とされ、まだまだ時間がかかるということもあり、当面は少ないビット数によって特定アプリへの応用などが考えられています。

方式としては汎用性が高く、実現したらさまざまな領域で応用できるのではないかと期待されています。しかし、実用化までの道のりは険しく、実際にはまだまだ汎用性を発揮できないとみられています。
具体的に期待されている分野としては、素材開発や金融商品のリスク評価などが挙げられます。実用化ができれば社会にも大きなインパクトを与えられるため、アメリカや中国など各国の大手企業が量子ゲート方式の開発を進めています。

量子アニーリング方式

量子アニーリング方式は上の汎用型と異なり、特化型の処理方式です。
特化しているのは「組み合わせ最適化問題」です。組み合わせ最適化問題とは指定された条件における特定指標の最適化を目指し、変数の組み合わせを求めることです。
汎用型と比べると扱いやすく、実際最適な物流ルートや交通量の予測などへ応用する試みが進んでいます。この方式自体はすでに実証段階に入っており、既存の技術を用いた疑似的な量子コンピューターを開発し、用途拡大を進める企業も出てきています。

ただ、やはり解ける問題の範囲が限定的ですし、プログラミングの難度が高いこと、精度がまだそこまで高くないという問題も抱えています。

量子コンピューターは暗号技術の脅威になり得る

研究は発展途上ですが、特定の問題に関して、すでに圧倒的に速く解くことができるアルゴリズムも発見されています。その問題の1つが素因数分解です。
素因数分解とはある数をこれ以上割り切れない素数に分解することをいい、桁数が大きくなるとスーパーコンピューターでも解を得るには年単位の時間を要するとされていました。しかし量子コンピューターの処理性能をもってすれば、圧倒的なスピードによって何年も待つ必要はなくなります。

これは良いことのようにも思えますが、暗号技術の脅威になるという側面も持ちます。素因数分解はインターネット通信の暗号化によく用いられているのです。
例えば、「RSA暗号」(素因数分解を用いた一般的に利用されている公開鍵暗号)は量子コンピューターが実用化されるとその脅威にさらされます。200万量子ビットであればなんと8時間で解読できてしまいます。ほかにも、公開鍵暗号として採用されている「楕円曲線暗号」も耐量子性が低く、RSA暗号同様に対策が必要になります。

こうした問題は、特に金融市場で深刻化します。
金融分野においては、本人確認をするためのデータ転送にRSA暗号が利用されていますし、被害の規模がほかの市場に比べて大きくなることが予想されます。

AIの進化に貢献する可能性も

AIの進化に貢献する可能性も

暗号技術などセキュリティ面での不安がある一方で、近年急速に伸びてきているAIの分野への貢献度が大きいとみられています。

なぜならAIの発展はビッグデータやその分析を行うための処理能力などに支えられているのであり、性能向上に限界がやってくるとAIの進展も鈍化してしまいます。一方で量子コンピューターによる機械学習が可能となればAIも飛躍的に伸びると考えられます。より大量のデータを使って機械学習ができるようになるからです。
実際、量子コンピューターの応用可能な領域として「機械学習の高度化」も掲げられています。

当然、大量のデータを高速処理できることに加え、機械学習の精度も高くなければなりませんので、近々大きな進化を果たすということではありません。

量子コンピューターの活用が期待される分野と全体の市場規模

注目度の高いAIについて少し触れましたが、身近なところでも量子コンピューターの活躍が期待されている分野があります。また、すでにその考え方が活用されている例もあります。

「交通」や「物流」は、ほかと比べても早期にその成果が得られることが期待されます。
なぜなら最適な経路の検索などは量子アニーリング方式で対応しやすいからです。多くの経路の中から最適な解を探すという特化型が活躍し、比較的早い段階での業務効率化、時間的コストの削減が期待されます。
海外ではすでにこの交通システムの実証実験でバスの走行経路を算出するということが行われています。

工場内といった規模でも実証実験は行われています。大型の工場だと搬送車が渋滞することがあるのですが、最適ルートを導き出し、搬送車の稼働率が向上したという結果も得られています。

「材料開発」や「創薬」では、素材や薬を構成する原子・分子の配置などを計算して、開発プロセスの効率化が狙えるとされています。
「金融」だと、リアルタイム分析による金融商品の取引におけるリスク評価、商品価値の予測シミュレーションなどができるようになります。

また、「Web」の領域でも活躍が期待されています。広告配信の最適化といったWebマーケティングではすでに実践例もあります。
いつ誰に何を見せるのか、を決めるのに量子アニーリング方式が用いられます。同じ情報でも掲載順位などが効果を左右するため、さまざまな要素を考慮して最適な掲載を行うのは難易度が高く、従来のコンピューターではなかなか効率よくこの問題を解けないのです。

今後はさらに実証実験も進み部分的な実用化も進んでいくとみられ、2025年から2030年にかけては世界の市場規模も10倍に伸びると予想されています。

量子コンピューター実現への課題

実用化にはまだ時間がかかるということですが、どのような課題があるのでしょうか。

最も大きな課題は「エラー耐性」です。計算処理に悪影響を与えるノイズを計算結果から排除できなければなりません。
現状だと正しい答えを得るために何千回と計算を繰り返さなければなりません。エラー率が高いため大規模な演算をするのが難しいのです。
要因としては、熱などによるノイズ、量子ビット同士の干渉といったものが挙げられます。その結果、量子ビットが設定通りに動作せず、演算に誤りが生じてしまいます。また、回路作成が困難という問題も抱えています。複雑な回路だと、エラーが増幅されやすいのです。
今後は計算の過程でエラーを検知し、それを訂正して正しい計算を続けられるようにすることが課題とされています。

ほかにも、量子コンピューター実現に向けて任意の量子計算ができるようにすること(ユニバーサル演算の実現)や、予算の問題も残っています。
政府による投資額、特に2050年までを見越した長期的な開発資金が得られるのかどうかということも今後の開発速度に影響するでしょう。

日本の研究状況

アメリカでは2018年に「国家量子イニシアティブ法」や「量子情報科学の国家戦略概要」、中国では2016年に「科学技術イノベーション第13次5ヶ年計画」が策定されるなど、世界各国で国家プロジェクトが始められています。
すでに開発競争は始まっているということです。日本でもすでにさまざまな取り組みが始められています。以下ではその内容を紹介しましょう。

量子コンピューター開発で世界トップを目指している

日本政府は2016年から量子コンピューターの開発を推進しており、2020年には「量子技術イノベーション戦略」を策定しています。
同戦略では、基礎学理である量子力学のほか、応用領域のエレクトロニクス・フォトニクス・スピントロニクスなどの技術を駆使し、社会実装として「セキュリティ」「超高速計算」「超高感度センシング」「エネルギー・物質変換」などのエレクトロニクス革新を目指すとしています。
日本の強みを活かした重点的な研究開発、産業化を促進し、量子コンピューターのソフトウェア開発や量子暗号などで世界トップを目指すのです。

5つの戦略として、以下を提示しています。

  1. 技術開発戦略
  2. 国際戦略
  3. 産業・イノベーション戦略
  4. 知的財産・国際標準化戦略
  5. 人材戦略

具体的には「量子技術の利活用を議論する場となる量子技術イノベーション協議会の創設やその活動支援」、「ベンチャー創出に向けたスタートアップの支援拡大」、「将来的な産業展開を見越した知的財産マネジメントの推進」などが挙げられ、加えて、優れた若手研究者輩出に向けた「量子技術に関する教育プログラムの開発」や「理数系教育の充実」なども推進するとしています。

その過程では他国との協力も欠かせませんので、協力枠組みの整備・構築も重視しています。同時に国際戦略として安全保障貿易管理も実施していく流れです。外国為替および外国貿易法にもとづく安全保障貿易管理規程の整備や運用体制の強化といった、純粋な技術面以外にも配慮することが国策として重要です。

2021年 量子コンピューター研究センター発足

量子技術イノベーション戦略では、基礎研究から技術実証、人材育成に至るまでをまとめる拠点の整備を明記しています。
そこで2021年4月1日、「量子コンピューター研究センター」(RQC)が発足しています。

産学官連携の拠点ですので、研究機関、大学、大手民間企業なども含めた拠点として機能しています。以下の8分野での研究開発、そしてそれぞれの横断的な取り組み強化が図られます。

  • 量子ソフトウェア
  • 量子デバイス開発
  • 量子コンピューター利活用
  • 量子コンピューター開発
  • 量子センサー
  • 量子マテリアル
  • 量子バイオ
  • 量子セキュリティ

同センターの活動例としては、国際ワークショップの開催や国際共同研究などの「国際連携の推進」、知的財産の管理や国際標準化に関する「拠点間での戦略の共有」、企業技術者の受け入れによる共同研究など「産学官連携推進」、若手研究者の参入や機関・研究分野を超えた「人材育成の強化」、そして研究設備の相互利用や共用といった「研究開発支援の推進」が挙げられています。
今後は拠点長による量子技術イノベーション拠点推進会議のもと、各拠点横断的な事項についての具体的な協力を実施していく予定です。

量子コンピューターの現状

現状、エラー耐性のついた大規模な量子コンピューターが実現されるまでには30年ほどかかるとされています。
そこで、現在の技術トレンドとしては、すでに商用化している量子アニーリングマシンと、近い将来実現可能とされているNISQコンピューターがあります。
NISQとは「Noisy Intermediate-Scale Quantum」の略で、エラー訂正機能のない、ノイジーな中規模量子コンピューターのことです。
これらの実用から始まり、その技術によって将来エラー耐性のある量子コンピューター開発が進むとみられています。

量子コンピューターの展望

量子コンピューターの展望

日本は、2050年までにエラー耐性のある量子コンピューターを実現することを目標としています。

特に汎用型の量子ゲートについては、NISQの開発を進めるとともに量子ビット数の拡大、そして量子力学の高い知見がなくても開発可能なソフトウェア環境の整備も進むとされています。
そして量子アニーリング方式の方は、数年以内に部分的な有用化によりノウハウの蓄積・共有が進むとみられます。

ただ、実用化が進んだとしても量子コンピューターの作動には超低温の環境、複雑な配線が必要です。そのため研究が進歩しても、パーソナルコンピューターとしての普及はしないと考えられています。利用するとしてもクラウドを介しての利用です。

また、量子コンピューターには計算結果を保存するメモリがないことからも従来のコンピューターの活用が不可欠です。当面は、双方の協調を前提とし、アルゴリズム全体は従来のコンピューターで、数値演算の部分のみを量子コンピューターが担うという形で機能するのではないかといわれています。
こういった研究開発は進んでいるとはいえ、今すぐに実現できるわけはなく、政府が提唱しているように実現は数十年後となるでしょう。しかしながら、部分的な活用であってもその影響は決して小さくありません。徐々に関連技術の恩恵を受けながら、開発が進み、最終的に量子コンピューターの実用化が実現した際には、社会全体に大きなインパクトを与えることになるでしょう。

従来方式とは概念の異なる量子コンピューターですが、一部で商用での実用化がすでに始まっています。完成形とされる「エラー耐性のある量子コンピューター」の開発にも目処がついており、あとは実現を待つばかりです。完成までの間、徐々に関連技術が商用で利用される場面も増えてくるでしょう。このため、現行の企業にも無関係な事項ではありません。インターネットが普及したとき、技術に追随しなかった企業の多くは淘汰されました。今ではインターネット利用は常識となっています。量子コンピューターも同様のインパクトを生み出しうる技術であるため、企業経営者の方は関連情報の動向に目を向けておくことが重要です。

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