クラウド環境の基礎知識
~メリットやセキュリティ、サービス分類を徹底解説

近年、ビジネスシーンにおいてクラウド環境の導入・移行に踏み切る企業が増えています。その背景には、BCP・DR 対策やランニングコスト削減効果、安価でスピーディーな環境構築など、クラウド環境特有のメリットがあると言えます。既にオンプレミスで十分な情報基盤を保持していても、クラウド環境への移行を検討すべき機会かもしれません。ここでは、クラウド環境の定義やメリット、デメリット、サービス分類などについて解説します。

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クラウド環境とは

クラウドは、離れた場所にあるシステムの「本体(物理的なサーバーなど)」から、インターネットなどのネットワークを介して、ユーザーにサービスを提供する形態を指します。クラウドは英語で「cloud=雲」を表す単語です。黎明期のIT 業界では、ネットワークを雲であらわすことが一般的であり、雲の中に隠れたリソース(サーバーなど)を利用する形態が、現在の呼び名につながったと言われています。

また、クラウドの原点とされる「クラウドコンピューティング」という概念は、2006 年ころに登場し、その後2000 年代終盤にかけて普及しました。ただし、「遠隔地にある物理的なリソースを不特定多数で共有する」という形態は、一部の大手企業やソリューションベンダーが独自サービスとして2000 年前後から提供しています。そのため、直接の起源がいつ・どこにあるのかは、見解が別れるところでもあります。

昨今急速に普及したクラウドは、「実装モデル」と「サービス形態」によってさまざまな名称が混在していることも特徴です。

実装モデル(クラウド環境をどのように構築しているか)

● プライベートクラウド ● パブリッククラウド
● ハイブリッドクラウド ● マルチクラウド

サービス形態(クラウドを使って何を提供しているか)

● IaaS ● PaaS ● SaaS

これらは、似たように使われることは有っても、指示している内容は全く異なります。一般的に、クラウド環境とは「実装モデル」のことを表すものだと理解しておきましょう。

クラウド環境のメリットとデメリット

では、クラウド環境のメリットとデメリットを具体的に紹介していきます。クラウドのメリットとして「コストの低さ」が挙げられることが多いものの、実際にはそれ以外にも複数のメリットがあります。近年は技術の進歩によってデメリットが徐々に小さくなり、多くの事業者にとってメリットのある仕組みになっていることが特徴です。

メリット

● イニシャルコストが低い

クラウド環境では、サーバーやネットワーク機器などを独自に手配する必要がありません。つまり、ITシステムへの物理的なリソースに対する初期投資を大幅に軽減できるのです。もちろん、全くの費用がかからないわけではなく、クラウドサービス提供ベンダーとの契約費用や月額費用は必要です。ただし、これらを考慮したとしても、オンプレミスに比べると圧倒的に少額です。

● スケールしやすい

事業規模や負荷の大きさ、アクセス数などに応じて柔軟にリソースを追加・削除できるのもクラウド環境の特長です。クラウド環境を構成するリソースは、提供ベンダーとのサブスクリプション契約によって決められます。もし、キャパシティ追加やリソース変更の必要性が生じたら、提供ベンダーとの契約変更などで対応します。オンプレミスのようにハードウェアの追加発注や再構成、各種調整にかかる手間が必要ありません。

● 運用コストが低い

ITシステムは、本番稼働後の運用費が常に必要です。これには、サーバー・ネットワーク機器の管理・交換費用や、各種メンテナンスを行う人件費、パッケージの更新費用などが含まれます。クラウド環境では、サービス提供ベンダーがこれらの費用を負担する(契約費用に含まれている)場合が多く、ランニングコストの大幅な削減が可能です。

● 分散、バックアップが容易

クラウド環境では物理的な制約が少ないため、複数の拠点へシステムを分散させることが容易です。特にマルチクラウド環境を構築すれば、システムの冗長化、バックアップ、リカバリ体制が強化されるでしょう。

デメリット

● カスタマイズに制限がある場合がある

クラウド環境を、ベンダーが提供するプランや契約内容に縛りをうけるため、カスタマイズに制限がかかります。ハードウェアベンダーや機種に対する細かい指定や、ネットワークのチューニングという意味では、オンプレミスに劣るかもしれません。

● ベンダー依存のリスク

クラウド環境を単一のクラウドベンダーに依存してしまうと、ベンダーロックイン状態※1に陥り、システムから柔軟性が失われます。また、ベンダーが大規模なシステム障害を起こした場合、その影響で全ての社内システムが停止してしまうリスクも生じます。直近でも、とある外資系大手ベンダーが提供するクラウドサービスで大規模なシステム障害が発生しています。具体的には、サーバー冷却システムの不具合でサーバーがオーバーヒートし、数時間にわたってサービスが停止しました。クラウドとはいえ、どこかに必ず物理的なリソースが存在するわけですから、故障や障害のリスクは常に伴うことを忘れないようにしましょう。

● セキュリティ強度がコントロールしにくい

クラウド環境のセキュリティ強度は、提供ベンダーに依存すると言って良いでしょう。ただし、昨今のクラウドサービスはセキュリティ強度が格段に高まっており、オンプレミス環境でゼロからセキュリティ体制を構築するよりも費用・手間は少ないことが多いです。

※1: 単一のベンダーへの依存により、他サービス・システムへの乗換えが困難になること

クラウド環境の種類

最後に、クラウド環境の種類について紹介します。前述したように、クラウド環境は「実装モデル」によっていくつかのタイプに分類できます。

プライベートクラウド

プライベートクラウドは、いわば「自社専用のクラウド環境」といえるでしょう。物理的なリソースを他者と共有せず、専有に近い状態で構築します。また、プライベートクラウドには、自社内から社内ユーザーにクラウドサービスを提供する「オンプレミス型プライベートクラウド(所有型)」と、社外環境(パブリッククラウド内)からサービスを提供する「ホスティング型プライベートクラウド(利用型)」が存在します。前者であれば、オンプレミス型と同等クラスのコストが必要になることも少なくありません。

パブリッククラウド

パブリッククラウドは、クラウドベンダーが提供する「リソース共有・シェア型のサービス」を指します。一般的なクラウドのイメージは、このパブリッククラウドに近いものだといえるでしょう。オープンなリソースを共有・シェアしているため、非常に安価で簡単に導入できます。

ハイブリッドクラウド

ハイブリッドクラウドは、プライベートクラウドとパブリッククラウドの混合です。ハイブリッドクラウドでは、機密性が高い顧客情報を扱うサーバーはプライベートクラウド、外部に公開するWebサーバーなどはパブリッククラウドなど、用途や情報の質によって環境を使い分けることができます。まさに「適材適所」です。しかし、複数のサービスを的確に使い分けるために、綿密なサービスの選定・システム設計を行う必要があります。

まとめ

この記事では、クラウドの基礎的な解説と環境の分類(実装モデル)について解説してきました。ビジネスシーンでのクラウド利用が当たり前になっている一方で、実装モデルやサービス形態が増えています。そのため、自社に最適な構成・サービスの選択に迷う機会も増えるでしょう。まずはクラウド環境への理解を深め、自社に適したソリューションが何かを明確にしてみてはいかがでしょうか。

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