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オムニチャネルとは?「オンライン/オフラインの垣根を超えたシームレスな顧客体験」の実現方法

オムニチャネルとは、「全ての」を意味する「オムニ」と「経路、接点」を意味する「チャネル」を融合させた造語です。もともとは小売業界を中心として広まった販売戦略でしたが、近年は業界や業種に関わらず「顧客体験を向上させる手段」として注目されています。オムニチャネルは、インターネットとモバイルデバイスとの親和性が高く、現代のビジネス環境において非常に有用な戦略です。ここでは、オムニチャネルの概要や背景、メリット、実際の事例などを解説していきます。

1. オムニチャネルとは

1. オムニチャネルとは

まず、オムニチャネルの概要と歴史について紹介します。

オムニチャネルの概要

オムニチャネルとは、実店舗やECサイト、アプリ、SNSなど複数のチャネル(顧客接点、販売経路)が存在する様子を指す言葉です。このオムニチャネルを活用し、チャネル間の連携強化によって顧客体験を高める手法を「オムニチャネル戦略」と呼びます。

オムニチャネル戦略の要諦は、「オンライン・オフラインを問わず、さまざまなチャネルを統合し、顧客に良質な体験を提供すること」です。オムニチャネルが正しく機能すると、顧客には「自らが望むときに、望む場所(チャネル)で商品を購入し、受け取ることができる」「どのチャネルからでも安定したサービスが受けられる」といったメリットが発生します。こうして高められた顧客体験が、顧客満足度の向上につながり、リピート率の向上や売り上げの増大へとつながっていきます。

オムニチャネルの歴史

オムニチャネルという言葉は、2009年に米国小売業界の業界紙の中で初めて紹介されました。その後、2010年に全米小売業協会の標準団体や米国の大手百貨店がオムニチャネルの概念を発表し、2011年ころからは学術的な定義が行われ、小売業を中心とした実業の世界に広まっていったと言われています。

2. オムニチャネルが注目される理由とメリット

現在では、さまざまな業界・業種でオムニチャネル戦略が採用されています。では、なぜここまでオムニチャネルが注目されるのでしょうか。その背景には次のような理由があると考えられます。

顧客の手の上で意思決定が進む時代

インターネットとモバイルデバイス、さらに高速無線通信網の充実によって、顧客は自らの掌の上で意思決定を進められるようになりました。ここで言う意思決定とは、「情報収集・比較検討・購入」といった、購買意思決定プロセスを指します。

顧客は購買意思決定プロセスのフェーズに応じて、店舗・ECサイト・アプリ・ダイレクトメールなどのチャネルを往復し、情報を集めていきます。複数のチャネルを頻繁に行き来する顧客の心をつかむためには、どのチャネルからでも適切なサービスを提供する必要があるでしょう。また、チャネル同士が相互に連携しながら情報を共有し、顧客行動を把握していかなくてはなりません。こうした事情から、チャネル統合が不可欠だと考えられます。

カスタマーサクセスの台頭

近年、日本でも「カスタマーサクセス」の概念が急速に広まりつつあります。カスタマーサクセスは、「製品・サービスが実現できることと、顧客ができることのギャップを埋め、顧客の成功をサポートする」という考え方です。 現在では、この考え方を発展させ「顧客の成功をゴールとしたアプローチ」として知られるようになりました。さらに「モノ消費からコト消費」という消費トレンドの変化が、カスタマーサクセスの重要性を一層高めています。

カスタマーサクセスでは「Time of Value(時間的価値)を最大化すること」が重要なミッションのひとつです。つまり、「顧客に対し、いかに早く価値を届けられるか」を意識する必要があります。オムニチャネル戦略では、店舗・ECサイト・SNS・アプリなどの中から「顧客が接しやすい場所」を選定し、そのチャネルを通じて価値を届けることが可能です。例えば、「アプリで購入した製品を顧客の自宅から最も近い店舗で受け取る」という仕組みは、オムニチャネルによるカスタマーサクセスの一例と言えるでしょう。

このように複数の顧客接点から価値を提供できるオムニチャネルは、カスタマーサクセスと相性が良い戦略だと考えられます。

コロナ禍によるオンラインシフト

コロナ禍は、「オンラインシフト」が拡大するきっかけとなりました。コロナ禍では、感染拡大防止策の柱として「3つの密(密閉・密集・密接)の回避」が謳われています。また、大都市圏を中心に緊急事態宣言が発令されたことで不要不急の外出を控え、日常生活の範囲内で最大限の感染防止策に努める必要に迫られました。こうした日常生活の変化が、オンライン上での活動を活発化させ、オンラインシフトを強力に後押ししています。

オンラインシフトが進んだ結果、インターネットショッピングを利用する人の割合が伸びていることも確認されています。総務省が公表している令和3年版 情報通信白書によれば、インターネットショッピングを利用する世帯の割合は、2020年3月頃から急速に伸び始め、2021年3月の時点では50%を超えるとの調査結果が示されました。

オムニチャネル戦略では、オンライン/オフラインのチャネル統合と同時にECサイトの機能強化にも注力するため、オンラインシフトが進むコロナ禍において重要な施策と位置付けることができるでしょう。

オムニチャネルで得られるメリット

オムニチャネル戦略を適切に推進することで、企業は次のようなメリットを享受できるでしょう。

・顧客体験の向上による「ファン層」「リピーター」の獲得
継続的に良質な顧客体験を提供することで、顧客のエンゲージメントが上昇し、ファン層やリピーター層の形成を促します。

・販売機会逸失を防ぐ
感染リスクの低いECサイトなどを中心として製品・サービスを販売することができるため、販売機会の逸失を防ぐことができます。

3. オムニチャネルによる顧客体験改善の方法

3. オムニチャネルによる顧客体験改善の方法

実際にオムニチャネル戦略によって顧客体験を向上・改善させた事例を紹介していきます。

在庫情報共有と物流の効率化で「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」を実現

近年、米国企業の一部で、「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」という購入方法がトレンドになっています。BOPISとは「オンラインで購入し、実店舗で受け取る」という購入方法です。BOPISを活用することで、顧客はオンラインで購入した商品をその日のうちに実店舗で受け取ることができ、企業側は配送費用の削減が可能になります。

また、BOPISの利便性をさらに強化した「Curbside Pick-up」という仕組みも注目されています。Curbside Pick-upとは、「顧客がオンラインで商品を購入し、実店舗に車で向かうと、駐車場まで商品を運んで引き渡してくれる」というサービスです。このサービスでは、「車から降りることなくスムーズに商品を受け取ることができる」という購入体験の提供が強みとなっています。また、人対人の接触機会を最小化することから、新型コロナウィルスの感染防止策としても有効なサービスです。

「BOPIS」や「Curbside Pick-up」は、オンラインとオフラインの在庫情報を基幹システムとコミュニケーションツールによって共有し、物流と連携させることで実現されています。

オンライン/オフライン上の顧客情報を統合し付加価値を創出

日本国内でもオムニチャネルでのポイント制をベースに顧客情報を統合し、付加価値を創出している例があります。例えば、大手小売チェーンでは、「共通ポイント」と呼ばれるメジャーなポイント制度に加盟することで、顧客に対して付加価値を提供しています。具体的にはオンライン/オフライン双方の購入額に応じて共通ポイントが付与され、さらに貯めたポイントを次の買い物に利用できるという仕組みです。オンライン/オフラインかを問わず、一貫してポイントが貯まることから、顧客は常にお得感を感じやすくなります。また、共通ポイントの加盟店であれば、どこでもポイントを消費できるため、特定のチェーンや店舗に依存しない割引が受けられることもメリットです。こうした自由度の高さが、顧客体験を向上させ、次の買い物でも共通ポイント加盟店を積極的に選ぶという好循環のきっかけになっているようです。

こうした仕組みは、顧客の基本情報、購入履歴、ポイントの付与・消費を管理するシステムなどを連携させることで実現することができます。

スマートフォンアプリから意思決定プロセスをサポート

海外のある金融業者では、AR(拡張現実)を使ったスマートフォンアプリによって、顧客の意思決定プロセスをサポートしています。具体的には、「不動産の購入をスマートフォンアプリからワンストップでサポートする」というものです。このスマートフォンアプリで売り出し中の不動産を撮影すると、不動産の販売価格がアプリの画面上に表示されます。さらに同じタイミングでローンシミュレーションの結果を確認したり、融資担当者への面会申込みを行ったりといった機能も利用できるとのこと。不動産をはじめとした高価格商品の購入では、高い確率で金融ニーズが発生します。しかし、時間の経過とともに購入意欲が低下し、金融ニーズが消失することも珍しくありません。この金融業者では、金融ニーズが発生したタイミングを上手くとらえて商機につなげつつ、スムーズな購入体験を提供しているわけです。

4. おわりに

この記事では、オムニチャネルの概要や歴史、注目される理由、実際の事例などを紹介してきました。コロナ禍をきっかけとして、オンライン/オフラインの垣根は日を追うごとに小さくなっています。オムニチャネル戦略によって、顧客が”オンライン/オフラインの継ぎ目”を感じないようになれば、顧客体験は徐々に向上していくでしょう。また、こうした状況を作り出すためには、顧客情報・在庫情報の共有を支える仕組みの構築が不可欠です。オムニチャネル戦略に取り組む際には、データ統合基盤の整備にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

この記事の目次

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