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「未経験採用×長期育成」で育った
現場リーダー、強い組織(Vol.3)

「未経験採用×長期育成」で育った現場リーダー、強い組織(Vol.3)

全従業員62名のうち3割が20代、8割近くが40代以下の会社と聞くと、IT系のスタートアップの話?と思われるかもしれません。でも、今回取り上げるのは創業75年の建設会社です。東京都調布市の巴山建設では継続的に新卒採用を行っており、昨年度は6人、今年度は7人が入社しました。高齢化でスキルの継承や事業の継続が危ぶまれる建設業界において、同社はなぜ若い働き手を獲得できているのか、その秘密に迫ります。(第3回/全3回)。

この記事はNewsPicksとドコモビジネスが共同で運営するメディア「NewsPicks+d」編集部によるオリジナル記事です。ビジネスやキャリアに役立つコンテンツが無料でご覧いただけます。 NewsPicks+d 詳しくはこちらをクリック
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目次

20年前の未経験採用者が今、
現場を引っ張るリーダーに

建設業は全産業の中でも特に高齢化が進んでおり、55歳以上の就業者が36.6%を占めます。一方で20代以下は11.6%と、全産業の16.7%と比較しても少ない状況です。「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが強いことや、特に中小企業においては給与や休暇日数などの労働条件が良くないといったことが、若者を遠ざける理由になっていると思われます。

(出典:国土交通省「令和6年版 国土交通白書」)
(出典:国土交通省「令和6年版 国土交通白書」)

巴山建設では4~5年前から、ICT施工の導入を本格化することで週休2日、残業なしの働き方を確立したり、女性にとって働きやすい職場環境の整備を進めたりといった施策を推進するほか、ベースアップや資格手当の拡充なども実現しました。それが若手の採用・定着に寄与しているのは間違いないでしょう。

しかし、20代だけでなく40代の社員も全体の3割を占め、彼らが現場の所長クラスを務めているという現状は、短期的な取り組みだけでは成し得ません。20年以上前から未経験の若手を採用し、育成する方針をとってきたことの結果です。

若手もベテランも話し合える現場の雰囲気
若手もベテランも話し合える現場の雰囲気

現社長の巴山一済さんが巴山建設に入社した2001年当時、同社は自治体などから受注した工事の施工管理を自社で行い、重機を操るような工事作業は外部の会社に発注していました。しかし、それでは品質や利益率が安定しないため、巴山さんは工事作業をするメンバーも正社員として採用し、自社で育てていく方針に舵を切りました。

巴山建設 三代目社長 巴山 一済 氏

当時の建設業界は不景気で、社内では新たな人材を抱えることに反対の声が挙がりました。しかし巴山さんは、自社の発展のために必要なことだと周囲を説得し、人材採用を進めます。その頃に入社したメンバーが、今では現場を引っ張るリーダーとして活躍しているというわけです。

「重機に乗りたい」という学生と
早期接点づくりの効果

中高年の男性が職場を仕切り、上下関係が厳しいというイメージが根強い建設業界において、巴山建設は平均年齢が低く、若手や女性の意見も受け入れられる風通しの良い雰囲気があります。これは、若手の採用・定着において有利です。

しかし、現在の人材市場は圧倒的な売り手市場ですから、さまざまな選択肢の中からあえて建設業に目を向けてもらうには、さらなる工夫が必要です。

人材採用を担当する総務部の渡口美紗子さんによると、同社は現時点で就職・転職先を探している若者だけでなく、中学生や高校生へのアプローチにも積極的に取り組んでいます。

渡口「毎年、調布市の中学校の職場体験を受け入れており、今年もすでに3校の生徒さんが来ました。ドローンやICT建機などに触れてICT施工のことを知ってもらったり、クレーンに乗ってもらったりするなどなど、現場の仕事をたくさん体験してもらえるようなプログラムを実施しています。

他に高校生のインターンシップも受け入れていますし、工業高校の先生に『バス代も出しますから、ぜひ来てください』と提案し、校外学習の場としてクラス単位で見学に来てもらうこともあります。その際も、ドローンなど最先端の技術を見てもらうほか、女性も働ける業界であることを知ってもらえるよう、女性の施工管理者から仕事や働き方の説明をしています」

調布市の中学生の職場体験の様子
調布市の中学生の職場体験の様子

たくさんの若者と接する渡口さんは、女子を含めて「重機に乗りたい」「建設業に興味がある」という学生は意外といると指摘します。実際、インターンや見学がきっかけとなり、巴山建設のグループ会社である巴山興業の重機オペレーターとして働いている高卒の社員もいるそうです。

絶対数でみると少ないかもしれませんが、興味を持ってくれる若者との接点をつくり、かつ「ここなら働きやすそう、続けられそう」「新しいことに取り組んでいる会社だ」などと体感させることで、就職先の候補として捉えてもらうことに成功しているのです。

学歴不問、個々の成長に合わせた育成で
未経験者が戦力に

学歴よりも個人の可能性を重視した採用方針
学歴よりも個人の可能性を重視した採用方針

巴山建設では高卒、専門学校卒、大卒など幅広い学歴の若者に門戸を開いています。大学で土木系の知識を身に着けてくる入社者もいますが、誰もが未経験からのスタートです。学歴よりも個人の資質や成長のスピードに合わせて育成するのが、巴山建設のやり方です。

また、未経験者の採用は新卒に限らず、子育て中の女性なども歓迎しています。2023年に同社初の女性の施工管理者として入社した2人のうちの1人は、子どもの生活時間に合わせて時差出勤が認められたり、現場への出勤用に社用車を利用できるといった柔軟な対応があって、入社を決めたとのことです。それぞれの能力や事情を鑑みて働き方を調整できるのは、小回りのきく中小企業ならではのメリットです。

他社と比較して未経験の若者が多いということは、それだけ育成の手間がかかるということでもあります。それでも、その手間を乗り越えて得られるメリットはとても大きいはずです。

渡口「『これから新人が2~3人行くよ』と言うと、現場からは『そんなに?』という反応もあります。でも、しばらくして見に行ってみると、新人もちゃんと働いているんです。新しい人たちを育てることで負担が軽減されることを、現場でも大いに実感していると思います」

託児所、専門学校、地域の運動場、
業界全体を見据えた次の一手

20代が多い同社では、これから家庭をもつなどライフステージの変化のある社員が増えることも予想されます。せっかく入った社員が働き続けられるよう、今後は社内に託児所の設置も考えています。

また、巴山さんは自社だけでなく地域や建設業界全体に対する貢献にも意欲的です。

現在、町田市と八王子市にまたがるグループ所有の敷地に屋外運動施設「パンダフィールド」を建設中です。

完成は2029年4月を予定しており、近隣のサッカークラブの子どもたちの練習場などとして提供されるほか、そこでお祭りなども開催して地域コミュニティの活性化を後押ししたいとのこと。うまくいけば、社員のエンゲージメント向上にもつながりそうです。

トレードマークのパンダは、現会長がパンダ好きであることに由来する
トレードマークのパンダは、現会長がパンダ好きであることに由来する

さらには、建設業に特化した専門学校「TOMOYAMAアカデミー」の開設という中長期の構想もあります。自社の工事現場など実地で施工の技術を伝授し、即戦力かつ将来の建設業を引っ張っていく人材を輩出しようという狙いです。

建設業で働く人たちが充実感をもって幸せに働ける状態をつくっていくことは、私たちが安心して暮らしていくためにも非常に重要なことです。そのためにも、巴山建設での取り組みやノウハウが業界全体へと広がっていくことが期待されます。

この記事はNTTドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております。

取材・文:やつづかえり
編集:岩辺みどり
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)

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