■第1回目からご覧になりたい方はこちら
「週休2日・有給90%」を実現、建設会社がDXで働き方改革(Vol.1)
なぜ女性がいないのか、疑問を抱いていた
巴山建設では、建設現場を女性にとって「働きやすい」「働きたい」と思える場所にするための施策を『ともやま小町』と称して取り組んでいます。
名付け親で三代目の社長である巴山一済さんは、「この業界に入ったときから、どうして女性がいないのかな、と思っていた」と語ります。今から25年前、巴山さんが家業の巴山建設に入社した当時、女性はひとりもいませんでした。しかし新卒で入社した大成建設では、事務職の女性はもちろん、数は少ないものの女性の施工管理者が働く姿も見ており、巴山さんには、建設業であっても女性が活躍できるはずだという思いがあったのです。
女性の要望をきめ細かく叶えた
「ともやま小町」プロジェクト
その後、巴山建設では2020年に初めて事務職の女性を採用し、巴山さんが社長に就任した2021年には、ICT施工の本格化のためにCADオペレーターの女性を2名採用しました。
そして2023年には、施工管理職として現場で働く女性を2名採用しました。巴山さんはそのタイミングで「ともやま小町」を始動しました。
背景には、「少しずつ女性が増えていくなかで、男性と女性、内勤の女性と現場の女性、といった立場の違いによる分断を起こしたくない。『オール巴山』としてひとつのチームでやっていきたい」という考えがありました。女性を優遇するということではなく、少数派である女性が働きやすいよう、みんなでサポートし、ひとつのチームになっていこうという狙いで始めたことだったのです。
「ともやま小町」の取り組みとして、まずは最低限必要な設備として女性専用の休憩室と、国土交通省が定めた「快適トイレ」(※)の基準を満たすトイレを用意しました。その上で、入社した2人には「他に欲しいものがあれば、遠慮なく言ってください」と伝えました。
要望を聞く窓口となったのは、総務部で採用や広報も担当する渡口美紗子さんです。
「遠慮なく」と言っても、最初はやはり気を使うもの。現場を訪れる機会がある度「足りないものはない?」「いつでも連絡くださいね」と伝え、「休憩室に全身が映る姿見が欲しい」「現場が寒くて冷えるので毛布が欲しい」といった具体的な要望を聞き出しました。
巴山さんは「これまでも休憩室に鏡はあったが、男は顔が映れば十分。姿見が必要だなんて全く気づかなかった」と笑い、これまで要望があったものは全て支給してきたと言います。また、女性であっても現場で働いてみなければ気づかないことがあります。
渡口「ずっと外にいるので日焼け止めがほしいという声があり、最初はクリームを塗るタイプを支給したんです。しばらくして、『外で仕事をしながら塗り直すのが難しいのでスプレータイプがいいです』と電話で連絡がありました。そういう細かい希望も社長にすぐに伝え、スピーディに対応しています」
(※快適トイレ……建設現場を男女ともに働きやすい環境にするために国土交通省が導入を推進しているトイレの標準仕様。具体的には、洋式便座、水洗機能、臭い逆流防止機能、容易に開かない施錠機能などのほか、照明設備、衣類掛け、荷物置き場、男女別の明確な表示、入口の目隠し、サニタリーボックス、鏡と手洗器、衛生用品なども備えられている)
女性の入社で男性にもメリット
「ともやま小町」の取り組みについて渡口さんは、「入社する女性にとっては、ここまでやってくれるんだ、という驚きや安心感につながっているのでは」と評します。
また、「例えば『快適トイレ』の導入などは、女性の入社がきっかけではありますが、男性にとっても快適性が高まっているはずです。『女性ばかり優遇している』というような声はあがっておらず、特に若手は、現場が快適になることを歓迎していると思います」とのことで、男性も前向きに受け止めているようです。
パンダマークの休憩室などは、社外の人にも趣旨が伝わりやすく、それがきっかけで他社との情報交換や交流も生まれています。女性が現場を視察して危険箇所などを指摘する「女性パトロール」は、他社の取り組み事例を参考に始まりました。
渡口「以前から定期的な現場パトロールは行っていました。ですが、常に現場にいて慣れている男性の目線では気づかないこともあるようです。せっかく女性が入ったのだから、それまでとは異なる視点でパトロールができるんじゃないかということで現場所長から提案があったんです」
2023年に女性の施工管理者による「女性パトロール」を開始し、翌年からは事務職の女性も加わり、さらに多角的に視察をするようになりました。「専門的なことは分からなくて構わない。一般の人の目線で危ないと感じることや、気になることをどんどん指摘してください」と伝え、忌憚のない意見を出せる雰囲気をつくりました。
その結果、「ここに資材が置いてあると歩きづらく、危ない」「女性専用のトイレでも、男性トイレの入口が隣接しているので使いづらい」「喫煙所が一般道から見える場所にあるのは印象が良くない」などさまざまな意見が出ました。それを受け、例えばトイレに関しては入口を見えないようにする、喫煙所は外から見えづらい場所にする、といった配慮がなされるようになっています。
性別ではなく個人の能力や体力に応じて役割分担
これまで男性しかいなかった現場に女性が入り、現場では当初「どう対応すれば?」という戸惑いもあったようです。しかし、排除するようなことはもちろん、過度に気を使いすぎたりすることはなかったと渡口さん。もともと未経験者を受け入れることが多く、最初は簡単なことから教え、徐々に役割を増やしていくという形で、性別よりも個々人の能力や体力に応じて役割分担をしています。
2020年まではゼロだった女性社員は、2025年10月現在で10名(全社員の16%)となり、そのうち3名が工事現場で働いています。地道な取り組みが評価され、「令和6年度東京都女性活躍推進大賞」の「特別賞」も受賞しました。
今後も女性の採用を増やしていくべく、多様な人材が働きやすく、能力を発揮しやすい職場づくりを進めていこうとしています。
この記事はNTTドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております。
取材・文:やつづかえり
編集:岩辺みどり
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)








