防災向けデジタルツールの選択肢は増えている
「人も予算も限られているから、防災対策は後回し」と考える企業は少なくありません。しかし、人数が少ない組織ほど、「災害時に連絡が取れるか」「誰が動けるか」という初動対応の体制が、事業の継続性を大きく左右します。
幸いなことに、近年ではコストを抑えて導入でき、かつ直感的に使える防災向けのデジタルツールが充実しています。中堅・中小企業はもちろん、大規模な企業や団体でも柔軟に活用できるものが増えています。
こうした利便性の高いデジタルツールを導入し、非常時でもすぐに動ける体制を構築することで、環境の変化に強い企業を実現でき、顧客や社会から高い信頼を得られるでしょう。
災害時に求められる5つの対応と、
頼れるデジタルツール
実際に、災害時に求められる企業の対応とそれを効率的に行うための技術を、NTTドコモビジネスが提供するサービスを例に紹介します。
1.安否確認:素早く状況把握して初動対応を加速
災害が発生した直後に社員の安否状況が把握できなければ、支援の優先順位を判断できず、初動体制の整備にも遅れが生じてしまいます。そうした混乱を防ぐためにも、安否確認は「被害状況の把握」と「次の行動の決定」に向けた第一歩として極めて重要です。
NTTドコモビジネスの安否確認アプリ「Biz安否確認/一斉通報」は、災害の発生と同時に安否確認メッセージを自動で送信します。社員はスマートフォンやPCを使って、簡単に安否を回答できる仕組みとなっており、その回答はリアルタイムで集計されます。
管理者は回答状況を一覧で確認できるほか、レポートとして出力することも可能です。また、複数の通信経路を活用することで、通信障害時でも高い到達率を維持し、確実な情報収集を実現します。
これにより、「誰が無事なのか」「誰とまだ連絡が取れていないのか」といった状況を即座に把握でき、その後の対応判断を迅速かつ的確に進めることができます。
2.位置情報の把握:誰が被災地にいるかをすぐに調査
災害時に社員がどこにいるのかを即座に把握できなければ、迅速な支援や連絡体制の構築は難しくなります。特に拠点外に出ている営業職や出張中の社員が多い企業では、初動対応の遅れが深刻な影響を及ぼす可能性があります。
こうした事態に対応するために有効なのが位置情報を可視化できる仕組みです。「かんたん位置情報サービス」は専用の小型GPS端末を活用し、Web画面やAPI連携機能を通じて、GPS端末の現在地をリアルタイムで把握できる企業向けの位置情報管理サービスです。
災害時には、社員の居場所を即座に確認できることで、安全確保や支援の優先順位の判断がしやすくなります。また、平時においても、車両の位置把握による運用の効率化や、最適な運行ルートの検討に役立ちます。これにより、人件費や管理コストの削減、無駄な移動や対応の可視化といった業務改善効果も期待できます。
3.災害情報の共有:
正確な情報を「公式」に届ける拠点となる連絡ボード
災害時には情報が錯綜しやすく、不確かな噂や誤った情報が広がることで現場が混乱し、対応の遅れを招く恐れがあります。こうした事態を避けるためには、社員が「ここを見れば正しい情報がわかる」と信頼できる情報拠点を平時から用意しておくことが重要です。
その対策として有効なのが、社内向けの災害連絡ボードの整備です。Microsoft Teamsの掲示機能や社内ポータルサイトなどを活用し、災害時に公式な通達や行動指針、対応マニュアル、支援窓口の連絡先などを一元的に掲載することで、部署や拠点を問わず全社員が同じ情報にアクセスできる環境を整えられます。
チャットのように流れてしまう情報ではなく、固定掲示により「見逃さない」「繰り返し確認できる」形で周知することで、混乱を最小限に抑えることができます。誰もがアクセスしやすく、かつ情報の信頼性が担保された災害連絡ボードは、緊急時における社内コミュニケーションの要となる存在です。
4.重要ファイルにアクセス:
誰かが不在でも業務が止まらない仕組みを
災害時に担当者が出社できなかったり、連絡がつかなかったりすると、業務の停滞を招いてしまいます。このように、属人化されている業務があると有事の際に深刻な問題を生じます。特に中小企業では、業務が一部の担当者に集中していることも多く、「あの人がいないと進まない」といった状況が起こりがちです。
そうした課題を解決する手段として、業務手順や重要ファイルをクラウド上で共有・管理できるオンラインストレージの活用が有効です。「Box over VPN」は、災害時でもセキュアに社内ファイルへアクセスできる仕組みを備えており、社員が自宅や避難先からでも、必要な業務情報に安全にアクセスできます。
加えて、手順書や引継ぎ資料を平時からクラウドに保管しておくことで、万が一のときでも別のメンバーが業務を代行しやすくなり、事業の継続性を高めることが可能です。「誰がいても、仕事が止まらない」状態をつくるための基盤として、Box over VPNのようなストレージサービスはBCPにおける心強い選択肢となります。
5.通信インフラの備え:停電・断線時にも“つながる”工夫を
大規模災害が発生すると、地上の通信インフラは被災によって寸断されるおそれがあります。拠点間の連絡や外部との情報共有が不安定になると、正確な状況把握や指示の伝達が滞り、対応の遅れや混乱につながります。
こうした事態を避けるには、平時から非常時用の通信手段を準備しておくことが重要です。たとえば、低軌道衛星を活用した「Starlink Business」は、従来の衛星通信よりも高速・低遅延な通信を実現しており、地上ネットワークがダウンしてもインターネット接続を維持できます。安定した通信環境を保つことで、被災直後でも業務連絡や安否確認、復旧作業の指示が可能となります。
さらに、建物内や拠点周辺における通信確保には、自律分散型Wi-Fiネットワークを構築できる「PicoCELA」のようなソリューションも有効です。災害時に特定の回線に依存せず、通信の中断リスクを軽減することで、拠点全体の情報流通を守ることができます。
このように、衛星通信と広域Wi-Fiの組み合わせにより、「つながり続ける環境」を事前に整備しておくことが、BCPの土台として求められます。
防災は「できること」から始めよう
BCP対策は、必ずしも特別な装置や高額なシステムを導入する必要はありません。
重要なのは、初動対応の仕組みがあるか、社員が情報を共有できる環境があるか。そして、それが日頃から運用されているかです。
今回紹介したように、導入や運用しやすいツールも多く、BCPの第一歩として中小企業でもすぐに実践できる選択肢は広がっています。社員の命を守り、事業を止めないために、今できる備えから始めてみてはいかがでしょうか。








