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生成AIで行政が変わる!
自治体の新たな生成AI活用事例を解説

生成AIで行政が変わる!自治体の新たな生成AI活用事例を解説

総務省の調査によると、生成AIの導入は自治体でも進んでおり、特に都道府県や指定都市では、導入率が9割と非常に高い数値となっています。ツールとしてはLoGoAIアシスタントやChatGPTなどが広く使われ、議事録やあいさつ文、企画書作成など文章業務を効率化することが可能です。たとえば議事録の作成やローコードの生成を通じた日々の業務効率化に加え、住民とのチャットボットにもAIを活用し、住民サービスの質向上にも繋げることができます。人手不足解消とサービスの質の向上が期待できる、自治体の生成AI利用状況を解説します。

目次

■生成AIの基本からご覧になりたい方はこちら
【2025年最新】生成AIとは?仕組みやメリットをやさしく解説

自治体で生成AIの利用が進みつつある

生成AIをビジネスシーンで利用している企業は多いかもしれません。総務省の「令和7年度版 情報通信白書」によれば、生成AIを「積極的に活用」「活用する領域を限定して利用」する指針を定めている企業の比率は49.7%で、ほぼ半数の企業が使っている結果となりました。

生成AIは企業だけでなく、自治体でも利用が進みつつあります。

総務省が2025年6月末に発表した「自治体における生成AI導入状況」という資料では、生成AIについて「導入済み」と回答した企業の割合は、都道府県が87%、指定都市(人口50万人を超える市)で90%、その他の市区町村で30%でした。このうち「実証中」「導入予定」と回答した自治体を含めると、都道府県と指定都市は100%、市区町村は51%まで増加します。

自治体が導入している生成AIのサービスで最も多かったのは「LoGoAIアシスタント」で、以降はChatGPT無料版、自治体AI zevo、Copilot、公務員専用ChatGPTマサルくんの順で続きます。

同資料では、自治体で実際に利用されている生成AIの活用事例ランキングについても発表しています。最も多かったのが「あいさつ文案の作成」で、875件の導入例が見られました。続いて「議事録の要約」(755件)、「企画書案の作成」(638件)、「メール文案の作成」(635件)、「議会の想定問答の文案の作成」(602件)と、文章作成に関する業務が上位に並びました。

文章以外の用途としては、マクロやVBAといった「ローコードの作成」(541件)、および「ポスター・チラシ等の画像生成」(121件)を生成AIに任せるケースも見られました。

自治体において導入されている生成AIの具体的な活用事例(実証実験も含む)
自治体において導入されている生成AIの具体的な活用事例(実証実験も含む)
総務省「自治体における生成AI導入状況」3ページより引用

議会の答弁案やエクセルのマクロコードも、
生成AIで作れる

こうした自治体の生成AI活用により、業務はどれほど改善されたのでしょうか? 総務省が2025年6月末に公開した「自治体DX推進参考事例集【第3.0版】【3.内部DX】」という資料では、実際の市区町村における生成AIの活用例が取り上げられています。

たとえば北海道の当別町では、議事録の作成や広報文章の校正業務において生成AIが利用されています。同町ではAIツールを使って会議の内容を文字起こしし、LoGoAIアシスタントでその内容を要約することで、これまで会議の4倍程度もかかっていた議事録の作成時間を、その1/4まで削減できたといいます。

静岡県の湖西市では、慢性的な人手不足や業務負担の増加を解消するため、2022年度より生成AIの試験導入をスタート、総合行政ネットワーク「LGWAN」を経由してChatGPTを利用できるようにしました。加えて、ユーザーがChatGPTをカスタマイズできる機能「MyGPTs」を活用し、議会の答弁案作成や庁内で利用するシステムの操作、随意契約についての問い合わせなど、用途ごとに関連するデータを参照して、特定の分野に特化した回答を出力させる仕組みも設けました。

同市では生成AIの導入により、推計で月間約100時間程度の業務時間が削減でき、議会の答弁案の作成業務については従来の1/3の作業時間に抑えられたとしています。

ローコードの作成についても、生成AIで実施している自治体が存在します。

愛知県日進市では、企画書案やあいさつ文、メール文といった文章作成だけでなく、Excelにおけるマクロのコード作成にも生成AIを活用。誰でも簡単にマクロのコードが作成できるようになり、Excelを用いた事務処理が効率化したといいます。同市の職員に対するヒアリング調査によると、マクロの作成以外の活用方法も合わせて、2024年度で約858時間の業務時間の削減効果があったとのことです。

日進市におけるExcelのマクロのコードの作成例
日進市におけるExcelのマクロのコードの作成例
総務省「自治体DX推進参考事例集【第3.0版】【3. 内部DX】」89ページより引用

生成AIなら24時間対応できるうえ、
利用者の心理的ハードルも下げられる

自治体における生成AIの活用は、業務効率化だけでなく、地域のコミュニケーションにも活用されています。

山形県山形市では、孤独・孤立など悩みを感じている住民が、専門的な資格を持つ相談員へLINEで相談できる同市のLINEチャットサービス「つながりよりそいチャット」に、2024年から生成AIを導入しました。

つながりよりそいチャットでは、もともとは社会福祉士などの資格を有する相談員が住民からのLINEによるチャットに応答していましたが、人材確保に課題があったため、生成AIと専門職との“ハイブリッド型”とすることで、24時間対応可能な体制を構築しました。

実際、漠然とした生きづらさを抱える方々は、まずは「話を聞いてほしい」「悩みを打ち明けたい」といった傾聴ニーズが高く、生成AIによる即時の「共感」を示す回答が、心理的不安を取り除く1つ目のステップとして有効です。

これにより、相談者は時間帯を気にせず気軽に相談ができるため、チャット利用の心理的ハードルが下がり、サービス開始から約8カ月で約9,000件の相談を受け付け、うち約7,500件を生成AIが対応したといいます。生成AIは、人間の相談員が対応するより約5倍の相談に対応できるようになり、同市では単純換算で2,000万円ほど人件費の削減効果があったとしています。

また、効果は人件費削減だけでなく、24時間対応可能を実現したからこそ、相談者が悩みを1人で抱えてしまう時間が減り、結果として相談者が前向きに変化していく好事例がいくつも生まれたとのことです。

千葉県でも、生成AIを活用したチャットによる相談サービスが始まっています。同県では2025年2月より、困りごとを抱えた方が相談支援機関に円滑に相談できるようサポートする「いつでも福祉相談サポット」をスタート。インターネット上で24時間いつでも相談できるため、電話や窓口で相談するよりも利便性が向上し、相談することの心理的負担や適切な相談支援機関につながるまでの労力・時間の軽減も期待できるとしています。

このように生成AIは、自治体における職員の業務や、自治体が住民に対して提供するサービスを改善する可能性を秘めています。生成AIの導入が企業だけでなく自治体でも進むことで、地域に住む人々の暮らしも、より便利に、より効率的に変わっていくことが期待されます。

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