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IT用語集

プロンプトエンジニアリングとは生成AIを使いこなすための質問のコツや活用例も解説

プロンプトエンジニアリング」とは、生成AIから的確な答えを引き出すための「質問設計スキル」のことです。ChatGPTなどの生成AIを使っていて、「期待したような答えが返ってこない」と感じたことはありませんか?実は、「ちょっとした聞き方の工夫」で、得られる結果は大きく変わるのです。今回は、プロンプトエンジニアリングの基本的な考え方から、すぐに使える質問のコツ、業務での活用例まで、やさしく解説します。

プロンプトエンジニアリングとは?生成AI活用のカギを握る「質問設計力」

プロンプトエンジニアリング(Prompt Engineering)は、「Prompt(促す、きっかけを作る)」と「Engineering(技術)」を組み合わせた言葉で、生成AIから期待通りの回答を得るために、質問(=プロンプト)を最適化する技術を指します。「質問設計スキル」と言い換えると、より分かりやすいかもしれません。

プロンプトエンジニアリングが注目されている背景には、ChatGPTをはじめとする生成AIの精度が飛躍的に向上し、業務への活用が急速に広がっていることがあります。

PwCコンサルティング合同会社が2024年4月に行った調査によれば、自社で生成AIを活用している企業はすでに43%にのぼっており、またその効果についても「期待を大きく上回っている」との回答が9%、「期待通りの効果があった」との回答が48%と、過半数が業務効率化や人手不足の解消などの成果を実感していることが読み取れます。 (参考)PwCコンサルティング合同会社「生成AIに関する実態調査2024 春

そこで重要になるのが、「生成AIにどのように適切な質問を投げかけるか」、すなわち「質問力」の醸成です。「質問設計スキル」は、ICT関連の技術に詳しい人だけでなく、今後生成AIを活用して日々の業務の質を高めたいと考える多くの人にとって、必須の技能と言えるでしょう。

プロンプトの書き方で何が変わる?出力の質を左右する要素やコツとは

プロンプトには、翻訳や要約など生成AIに行ってほしい内容を示す「命令」、背景情報を伝える「文脈」、箇条書きや表形式など、出力のスタイルを指定する「出力形式」などが含まれます。まずは、これらをできる限り正確かつ具体的に記述することが、プロンプトエンジニアリングの基本です。

例えば部署異動を知らせるメールを生成する場合、「部署異動のメール」という命令のみをプロンプトとして与えても文面は生成されますが、「取引先に送信する」や「同僚に送信するカジュアルな」などの出力形式をプロンプトの最初に付加することで、より期待に近い結果が得られるでしょう。

さらに、「組織変更により」「新プロジェクト発足に際して」などの文脈を加えることで、より定型文的でない、状況に即した文章が生成されます。まずは「命令」「文脈」「出力形式」がそれぞれ明確に記述されているかをチェックしましょう。

「部署異動のメール」と命令のみを与えた場合の生成AIの回答
画像:「部署異動のメール」と命令のみを与えた場合の生成AIの回答
「命令」に「文脈」と「出力形式」とを加えた場合の生成AIの回答
画像:「命令」に「文脈」と「出力形式」とを加えた場合の生成AIの回答

基本は「一文一意(1つの文には1つの内容)」の原則を守り、短い文を積み重ねたり、箇条書きを活用したりしてプロンプトを構成するのが効果的です。また、文法的に正しい記述であることも重要です。

図:プロンプトの構成

プロンプトエンジニアリングにはさまざまな手法がありますが、ここでは代表的な3つを紹介します。

Zero-shot:質問をそのままプロンプトにする手法

「Zero-shot」は、情報を足さずに質問だけをそのまま入力する方法です。プロンプトが短く済み、素早く結果を得られる反面、文脈が不足し、正確性に欠ける結果が出る可能性があります。

画像:Zero-shot:質問をそのままプロンプトにする手法

Few-shot:回答例をプロンプトに含める手法

「Few-shot」は、質問に加えていくつかの例を提示し、それを手がかりにAIを目的の回答へと誘導する方法です。たとえば、「日本/東京 イギリス/ロンドン ドイツ/」と入力すると、「ベルリン」という正しい回答が返ってきます。プロンプトはやや長くなりますが、その分、AIが文脈を理解しやすくなり、より正確な結果が得られます。

画像:Few-shot:回答例をプロンプトに含める手法

Chain-of-Thought:段階的に回答させる手法

「Chain-of-Thought」は、生成AIに思考のプロセスを段階的に示させる方法です。例えば数学の問題を解かせる場合、「AならばBになる、BならばCになる、よって答えはD」のようにAIの思考過程に沿って段階的に回答させることができます。「Chain-of-Thought」は、Few-shotで解法例を提示したり、Zero-shotの末尾に「ステップバイステップで答えて」と加えたりすることで実現できます。

画像:Chain-of-Thought:段階的に回答させる手法

プロンプトエンジニアリングのビジネス活用例【職種別】

では、ビジネスにおけるプロンプトエンジニアリングの活用例を職業別に見ていきましょう。

営業職:トークスクリプトの作成

営業職では、トークスクリプトの作成に生成AIを活用できます。まず、「あなたは〇〇社のトップセールスマンです」といった形でAIの役割を明確にし、対象となるペルソナや商品・サービスの情報を具体的に伝えます。必要に応じて文字数の指定を加えると、より意図に沿った出力が得られるでしょう。

画像:営業職:トークスクリプトの作成

マーケティング職:キャッチコピーのアイデアだし

キャッチコピーのアイデア出しに生成AIを活用できます。即時に複数案を得られるAIの特長を活かし、テーマやペルソナを指定しながら「~のキャッチコピーを10個作って」などの出力形式を明示するとよいでしょう。「〇〇という語句を入れて」「ワクワクする感じで」などの表現トーンの指定も効果的です。

画像:マーケティング職:キャッチコピーのアイデアだし

カスタマーサポート職:自動応答の改善

チャットボットに「あなたは有能なカスタマーサービススタッフです」と役割を与え、対応内容を具体的に伝えます。出力形式として「専門用語を使わない」「わかりやすく」、さらに「表形式で」「フローチャートで」「箇条書きで」などの形式指定も有効です。チャット応答だけでなく、メールの自動返信への応用も可能です。

画像:カスタマーサポート職:自動応答の改善

人事・教育職:社内資料の作成支援

社内研修資料の作成支援にも生成AIは有効です。たとえば、各スタッフの学習履歴を文脈として入力すれば、個別最適化された資料の作成が可能です。また、「ビジネスマナー」「企業理念」などの見出しを指定することで、系統的なカリキュラムを組むこともできます。

画像:人事・教育職:社内資料の作成支援

どの職種にも共通するポイントは、「最初から完璧を目指さず、小さく始めて調整していく」ことです。最初は短いプロンプトからスタートし、徐々に必要な情報を加えていくことで、理想に近い出力が得られやすくなります。

また、プロンプトエンジニアリングには「習うより慣れろ」の側面もあります。特別な学習をしなくても、日々業務で使っていく中で自然と「質問設計スキル」は磨かれていくでしょう。まずは実際に使ってみることが、最良の第一歩です。

プロンプトエンジニアリングは、今後必須となるビジネススキル

かつては生成AIそのものの精度や性能が課題とされていましたが、現在では技術が飛躍的に向上し、誰もが手軽に活用できるようになりました。これに伴い、今は「AIに何をどう聞くか」が新たな課題となっています。

プロンプトエンジニアリングは、単に正確な回答を引き出すための技術ではありません。AIとの対話を通じて、よりよい協働を実現するための「対話力」として、今後ますます重要になるスキルです。

生成AIの活用範囲が急速に広がり続けている今、プロンプトエンジニアリングはビジネスパーソンにとって欠かせないスキルになることは間違いありません。

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