生成AIの基礎知識を身につける
今回のニュース
ChatGPTのバージョンアップで「キャラ」が変わった!?
米OpenAI社が開発した対話型の生成AI「ChatGPT」の最新バージョン「ChatGPT-5」が、8月7日にリリースされました。こうしたバージョンアップのたびに発生するのが、ユーザーからOpenAIに対する、仕様変更への不満や抗議です。
ChatGPTは過去にもたびたびバージョンアップが実施されてきましたが、これによってAIの言葉遣いや反応の仕方が変化してしまうケースがあるとか。毎日、ChatGPTと雑談をしたり、仕事を助けてもらったり、家族や友人のような存在と勘違いするほど親しくしていたりするヘビーユーザーのなかには、ChatGPTの“人格・キャラ”が変わってしまうことによって家族や友人を失うのと近い感覚を覚える人もいるようです。
ChatGPTの前回のバージョンアップでは、「もとに戻して!」という運動がSNS上などで巻き起こり、OpenAIもこれに応じて、バージョンを一時的にもとに戻すという措置をおこないました。今回も同様に「前のバージョンに戻してほしい」という抗議の声が殺到し、使えなくなっていた旧バージョンを使えるようにするなどの措置が取られました。
また、今回はバージョンアップでキャラクターが変わったと嘆くユーザーへの対策として、“3つのスイッチ”を新設。ChatGPTのキャラクターを好みのタイプに調整することが可能になりました。
このように対話型AIを使っている人たちの間で、AIに対して、まるでリアルな親しい人間とやりとりをしているかのような感覚に陥る現象が起きています。自分をいつも褒めてくれて、いつも寄り添ってくれるAIに友情を感じたり、恋心を抱いたり……。さらにエスカレートして、こんな事件も報じられるようになりました。
8月28日、米国の56歳の男性がChatGPTと対話をするうちに被害妄想を膨らませ、母親を殺して自殺した、という衝撃的なニュースが世界をめぐったのです。対話のなかでChatGPTが、アルコール依存症で精神的に不安定だった男性が抱いていた「母親らが自分に幻覚剤を投与しようとしている」という被害妄想に同調。男性を殺人へと駆り立てたという見方がされています。
その2日前には、米国の16歳の高校生が、やはりChatGPTとの対話を通じて妄想を深めて自殺をしたとして、両親がOpenAIを提訴したというニュースもありました。
ユーザーとのやりとりを通じて、ユーザーのことを知り尽くした対話型AIが、24時間365日、いつでもユーザーに対して肯定的に接してくれる空間は、1対1のエコーチェンバー現象(SNSなどで似た意見を持つ人々とのやりとりが繰り返されるうち、その意見が世の中の常識であるかのように錯覚してしまう現象)に例えられることも。
世界を変える革新技術として、いまや世界中でビッグプレーヤーによる開発競争、そして投資合戦が起きている生成AI。人々の日常を簡単に変えてしまうインパクトがあるだけに、健全に利用していくためには、これまで以上のリテラシーを持つことが重要です。
続々と誕生する生成AIの資格・検定
対話型の生成AI「ChatGPT」が一般に提供開始されたのは、2022年11月のことでした。これをきっかけに生成AIブームが本格化し、いまも毎日のように生成AIをめぐる世界の動きがニュースを賑わせています。
それに対応して、生成AIをテーマとした資格・検定も近年、続々と誕生しています。なかでも代表的な生成AI関連資格のひとつ「生成AIパスポート」が始まったのは2023年。「パスポート」の名の通り、生成AIの基礎知識や近年の動向、活用スキル、AIリテラシーなど、AI初心者が最低限おさえておきたい内容が出題される試験です。
生成AI関連の検定はほかにも、「生成AI プロンプトエンジニア検定」という、生成AIに適切な指示(プロンプト)を出すノウハウに特化した検定や、「生成AI能力検定」という実技試験(課題提出)が課される検定など、さまざまなものがあります。後者は堀江貴文氏がプロデュースする「ホリエモンAI学校」が運営しているものです。
生成AIに特化するわけではなく、AI全般について幅広く取り扱う検定ということでいえば、さらに以前からありました。たとえば、過去にこの連載でもご紹介した「G検定(ジェネラリスト検定)」は2017年にスタートしており、いまやAI領域の定番資格という立ち位置にあるといえます。日本ディープラーニング協会の主催による検定ですが、同協会からは「Generative AI Test」という生成AIに特化した試験も2023年にリリースされています。
「生成AIに興味を持った人が学ぶ最初の入り口」
このように生成AIをテーマとした資格・検定はいくつもあり、群雄割拠の様相を呈しています。「これぞ」という絶対的な立ち位置を確立している資格はまだないという印象ですが、「生成AIに興味を持った人が学ぶ最初の入り口」としておすすめ資格を選ぶとすれば、冒頭で挙げた「生成AIパスポート」ということになるでしょうか。
公式サイトにはサンプル問題がいくつか掲載されているのでご紹介しましょう。(正解は記事末尾)
【問題1】機械学習における「入力したデータに対して正解データのペアを与えず、データ自体のパターンや構造をモデルが自己で発見することでトレーニングする手法」に該当する選択肢を1つ選びなさい。
- 教師あり学習
- 教師なし学習
- 強化学習
- 過学習
【問題2】テキスト生成AIにできることとして不適切な選択肢を1つ選びなさい。
- 短時間での文章の生成
- 正確な情報の抽出
- プログラミングコードの修正
- カスタマーサービスの自動化
【問題3】ディープフェイク技術に関して不適切な記述をしている文章を1つ選びなさい。
- ディープフェイク技術は特定の人物の顔を映像に合成したり、自分の声を他人の声に変換したり、目的に応じて高度にカスタマイズすることができる。
- ディープフェイク技術は主にGANやVAEを活用している。
- 高度に進化したディープフェイク技術は、AI技術をもってしても情報の真偽を見分けることができないことがある。
- ディープフェイク技術が悪用されると詐欺やなりすましリスクが高まるので厳格に法律で規制されている。
教材としては公式のテキストや問題集が発刊されているほか、手軽に利用できるAIクイズアプリも提供されているので、生成AIの基礎知識の学習ツールとしてぜひ活用してみてください。
情報セキュリティもGoogle検索も…
AIが社会を変える兆し
近年、AIはわれわれの生活に密接にかかわるものになってきているだけに、「今回のニュース」で取り上げたようなトピックに限らず、AIに関する話題は本当に事欠かない状況です。
たとえば9月初旬には、ChatGPTを生み出した米国のOpenAI社が半導体大手Broadcomと提携するという大きなニュースがありました。
これまでChatGPTの開発や運用に必要な半導体の供給を大手NVIDIAに依存していた同社が、Broadcomとともに自社で半導体を生産することを意味します。自前の開発によって半導体不足を解消することで、より自由度をもってChatGPTの新サービスの開発や提供を進めていくと見られています。
またOpenAI社は、AIを活用して制作される長編アニメ映画「Critterz」を支援することも発表。このアニメ映画は、通常3年かかる制作工程を、AIを使うことで9カ月に短縮する試みで、映像処理など制作の多くをAIが担うそうです。制作費は3000万ドル以下に抑える見込みで、映画づくりに大々的にAIを取り入れる試みとして注目を集めているほか、映画産業の転機になるとの声も聞こえています。
情報セキュリティの領域でも、AIを使用した新たな動きが話題になっています。AIを悪用してセキュリティの弱点を見つける新たな脅威が誕生しているとのことで、AIを使った「攻撃」と「防御」の泥仕合がすでに始まっているようです。
さらに一般ユーザーにとって身近な話題もありました。Googleは米国で始まっていた「AIモード」というAIを使った検索機能を、日本語を含む5言語に拡大、9月9日から無料で利用できるようになっています。これまでの単語を並べる検索から、文章による複雑な問いかけによる検索が可能になりました。また従来の単語による検索の結果にも、AIが調べた結果が影響を与えるなど、Google検索が大きく進化しています。
このほか毎日のように目にするのが、生成AIを使ったドラマ、テレビ番組、書籍などのニュース。また経費削減などのため、地方自治体や企業が生成AIを使った取り組みも日々、ニュースになっていて、AIが社会そのものを変えていく兆しが見えてきました。
ボストンコンサルティングが7月に発表した世界11カ国・地域、1万人以上の人を対象にした“職場におけるAI利用”に関する調査では、約70%の人が「日常的にAIを使用している」と回答したと報じられています。インドが92%、中東諸国が87%と、ほとんどの人が日常的にAIを使用しているという国もある一方で、日本は51%と意外に少なく、平均以下の利用率でした。
生成AIの動向についてはネガティブな話題も少なくないこともあってか、日本人は生成AIの利用に関して慎重な姿勢をとっている人も多いようです。それでも生成AIが今後、ますますわれわれの生活に密接にかかわってくることは、良くも悪くも避けられないといえるでしょう。
「よくわからないから」と距離をおくのではなく、まずは少しでも知ることから始めてみては。AI関連の資格・検定も活用してAIのリスクや注意点もしっかり理解したうえで、うまく活用・共存していくノウハウを身につけていくことが大切です。
【サンプル問題の答え】
【問題1】2
【問題2】2
【問題3】4
鈴木秀明(すずき・ひであき)
1981年生まれ。総合情報サイト「All About」資格ガイド。東京大学理学部卒。東京大学公共政策大学院修了。年間80個ペースで資格試験を受験し、米国公認会計士、気象予報士、中小企業診断士など1000を超える資格を取得。雑誌・テレビ・ラジオなどのメディア出演実績は500件以上。著書に『効率よく短期集中で覚えられる 7日間勉強法』(ダイヤモンド社)など。
この記事はNTTドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております 。
取材・文:福光恵
編集:鈴木毅(POWER NEWS)
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)
タイトルバナー:gettyimages








