本書は伊庭正康氏が営業に必須の「気くばり」をまとめたものである。
伊庭氏は「営業の強い会社」として定評のあるリクルートグループで法人営業に従事し、プレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰を何度も受けたのち、研修会社を設立して年間200超のセッションを行ってきた。
知識と経験が足りなくても、著者が惜しみなく明かすノウハウを実践すれば、「勝手に売れてしまう」営業になれるだろう。
まず知っておきたい営業の「原理原則」
まず「営業基盤」をつくる
営業には3つの原理原則がある。
1つ目は、まず「営業基盤」をつくることだ。
営業でしんどいのは最初だけで、だんだん楽になっていく。お客様や見込客が増え、「営業基盤」が確立されて、自然と契約がとれるようになるからだ。
お客様から契約をいただける「営業基盤」をより強く、より早くつくるために必要なのが、本書で紹介される「トップ営業の気くばり」である。
お客様の言う通りにやってはいけない
2つ目の原理原則は、お客様の言う通りにやってはいけないということだ。
たとえば、お客様から「安いプランでいいよ」と言われたとき、もっとも安いプランだけを提案するのはNGである。ここでの正しい対応は、「安いプランでいいよ」と言われた背景を尋ねることだ。
たとえば、風邪を引いたあなたがドラッグストアに薬を買いに行ったとしよう。
店員さんに「風邪薬ください。安いのでいいです」と頼み、「かしこまりました。こちらはいかがですか。480円で最安値です」と言われても、特に不満はないだろう。
一方、店員さんから「かしこまりました。ところで、いかがされたのですか?」と尋ねられ、「咳と鼻水が止まらなくて、困っています」「咳き込んで、夜も寝られない状態が続いています」と伝えたとしよう。
それを聞いた店員さんから「では、お値段のことも考えつつ、しっかりと咳と鼻水を止めるということが大切ですね」と、効能と値段の異なる3種類の薬を案内されたら、単に最安値のものを勧められたときよりも満足するはずだ。
お客様の言うままに対応していては、相手を満足させることはできない。背景を伺い、きちんと解決できる方法を提示することが大事なのだ。
売上とは「信頼の総量」
3つ目の原理原則は、「売上=信頼の総量」であるということだ。
「自分の売上のために、お客様からお金をもらうのが申し訳ない」と思っている人もいるかもしれない。だが、売上の本質からすると、それは誤解だ。
お客様は、信頼できない商品を購入し続けることはない。お店に通い続けるのは、そのお店のことを気に入っているからだ。そうした信頼が集まって売上をつくっている。
お客様の信頼に応えるべく、もっともいい解決策を提案しよう。そう考えると、売ることへの罪悪感が消えるはずだ。
スマートなふるまいで「信頼される」
「些細な口約束」を守る
お客様との関係づくりに超オススメの行動は、「些細な口約束」を守ることだ。たったそれだけで、お客様のあなたを見る目が変わる。
たとえば、顧客から「アレってどこに売っているのかな……」と尋ねられたとしよう。あなたが「知人に聞いておきましょうか」と言うと、顧客は「いや、いいよ。君も忙しいだろうし」と返してくれたとする。
この場合、特に連絡はしないのが普通だ。一方、優れた営業は、たとえ情報が得られなくても「知り合いに確認し、ネットでも探したのですが、情報がありませんでした。申し訳ございません」と連絡する。
顧客は、「へー、ちゃんと覚えていてくれたんだ……」と感動し、営業のことを強く記憶するのだ。
アフターフォローに注力する
既存顧客から別の顧客を紹介してもらいたいなら、契約前だけ頑張るのではなく、契約後のアフターフォローに力を入れるとよい。
著者が求人メディアの営業をしていたときのこと。メディアに求人を掲載したお客様は、応募や選考のやり方について色々な不安を抱えているようだった。
そこで著者は、不安を解消するためのアドバイスをしたり、タイミングを見て状況伺いの連絡をしたりした。この行動により、お客様の満足度が上がり、次々に別の顧客を紹介していただくことができた。
リピート契約獲得にかかるコストは新規顧客開拓にかかるコストのわずか5分の1だと言われている。新規顧客開拓のために奔走するより、顧客のアフターフォローに注力したほうがよほど効率的なのだ。
【必読ポイント!】
行き届いた会話・提案で「売れる」
(1)ラポール:うちとけた場づくり
商談は次の4つのプロセスで構成される。
(1)ラポール(うちとけた場づくり)
(2)ヒアリング(本当の課題を確認)
(3)プレゼン(解決策を提案)
(4)クロージング(申込書をいただく)
それぞれのステップについて解説したい。
まずはラポールだ。うちとけた場づくりは、ヒアリングで本音を話してもらうために欠かせない。
ラポールの構築は3つのステップで進める。
ステップ1は、丁寧に感謝を示すことだ。「本日は、貴重なお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。お目にかかれて光栄です」と丁寧に感謝して相手の自己重要感を満たし、好意を抱いてもらう。
ステップ2は、関心を示すことだ。訪問先のお花や観葉植物、絵画、従業員の活発な雰囲気、交通の便などを褒める。これにより、相手は自分が褒められているような気持ちになる。
ステップ3は、感心することだ。「とても素敵ですね」「勉強になります」などと言えばいい。
(2)ヒアリング:本当の課題を確認
ステップ2はヒアリングだ。正しいヒアリングは4つのステップで構成される。
ステップ1では、「状況」を聞く。他社との取引、利用頻度、今後の予定を尋ねればよい。
ステップ2では、「問題」を聞く。ステップ1で「他社にお願いしているので、今は結構です」と言われたとしたら、次のように聞いてみよう。
「そうでしたか。せっかくの機会なので、伺ってよろしいでしょうか。もっとこうなったらいいのに……と思うことがあれば、ぜひお伺いしたいと思っておりました。○○様、もしあるとすれば、どのようなことがございますか?」
ここでのポイントは、意見を言ってもらいやすくなる「拡大質問(どんな、どうして、どのように)」を使うことだ。これにより、相手のニーズを引き出しやすくなる。
ステップ3では、「リスク」を聞く。
「あってはいけないことだと承知をしておりますが、万一、その問題が解消できなかった場合、どのようなことが想定されるものでしょうか?失礼な質問で本当に申し訳ございません」といった聞き方をして、問題を解消できない場合のリスクをリアルにイメージしてもらう。
ここでも拡大質問を使いつつ、丁寧に恐縮しながら聞くのがポイントである。
ステップ4では、提案のチャンスをいただく。お客様が解決すべき課題を設定した上で、あなたがその課題を解消できることを伝えよう。
「教えていただきありがとうございます。ということは、××を解決することが重要ということでしょうか。よろしければ解決の一助になると思いますので、お話しさせていただけませんか?」などと言えばよい。
なお、ヒアリングの前に仮説を準備しておくと、提案のチャンスが広がりやすくなる。
「実は、私のお客様がよくおっしゃるのですが、××といったことを課題にされているケースが増えてきているのですが、そのような課題感はございませんでしょうか?」といった具合だ。
これに対して「確かに……言われてみればそうかな……」と言われたら、ヒアリングで深掘りしていく。
コツは、自分の提案に結びつけやすく、7割程度のお客様が「言われてみればそうかな……」と答える仮説を準備することだ。今後に向けての投資や、収入の向上、費用削減に結びつくような切り口であれば、多くのお客様に当てはまるはずだ。
(3)プレゼン:解決策を提案
ステップ3はプレゼンだ。「何を言わないか」を意識し、受け手にとっての価値を短い言葉で伝えよう。
余計な説明を割愛するために有効なのが、Point(結論)、Reason(理由)、Example(事例)、Point(結論の再確認)の順に説明するPREP法だ。一例として、著者が求人広告の営業をしていたとき、お客様から「ウチは零細企業なので、採用するのは難しいんだよね」と言われたときのトークを紹介したい。
「実は2つのことをするだけで、採用の確率を高められます。というのも、2つの要素で、ほぼ決まるからです(P:結論)。1つは、採用しやすいターゲットを設定することです。もう1つが差別化です。他の企業様にはないオンリーワンの魅力をきちんと打ち出すことです(R:理由)。(ここで成功事例を紹介する)これらをすることで、私のお客様は採用できています(E:事例)。よろしければ、この方向で一緒に考えさせていただくのはいかがですか(P:結論の再確認)」
(4)クロージング:申込書をいただく
ステップ4はクロージングだ。
クロージングが怖いという営業がいるが、お客様の負担を減らすためには、クロージングが不可欠だ。クロージングをしないと、お客様は「では、お願いしていいですか?」と営業にお願いしないといけなくなる。
まずは契約の可能性を試す「テストクロージング」をしよう。
ひととおり説明した後、「疑問点はないですか?」「今のところ、大丈夫です」というやり取りを経て、「では、よろしければ、在庫を押さえておきましょうか?」と確認する。
テストクロージングに対して「お願いしようかな」と返ってきたら、「かしこまりました。では、差し支えなければ、先に『お申し込みの手続き』をさせていただいてもよろしいでしょうか?」と、契約をいただく「ダイレクトクロージング」をするという流れだ。
テストクロージングとダイレクトクロージングをセットにすることで、お客様の心理的負担を軽減できる。
あなたから買いたいと言われて「愛される」
お客様に「嬉しい」と思わせる
営業はお客様に「嬉しい」と思わせなければならない。
学生時代、求人広告のアルバイトを始めた著者は、ラウンジに飛び込み営業をしていた。だが、営業相手であるママさんは接客に忙しく、話を聞いてくれない。
そこで考えたのは、ママさんが「嬉しい」と思ってくれる“30秒の接点”をつくることだ。
当時はスマホのない時代。お客様から「ママ、終電は何時?」と聞かれるのではないか……と妄想して、「最終電車の早見表」を作成し、商品のパンフレットとともに渡すことを思いついた。
効果はてきめんで、新規契約件数が1か月に1件から1週間に6件へと急増した。
相手が「嬉しい」と思ってくれることは何か、考えてみよう。相手視点でのメリットを作り出せると、「ありがとう」と言われる営業になれる。
「**が気になりまして」と連絡する
忙しいお客様に連絡する際、「嫌がられるのでは……」と緊張するだろう。そんなときにオススメしたいのが、「**が気になりまして、連絡をさせていただきました」と気遣いの気持ちを見せることだ。
以前、著者のもとに、自動車を購入した時の営業さんから電話が入った。営業さんは「メーターの横にある警告灯、点灯していないかどうか気になりまして、連絡をさせていただきました」と言う。
著者が「え? 何か不具合があったのですか?」と聞くと、「いえ、ご安心ください。ただ、そろそろ4万キロになる頃だと思いまして……4万キロあたりで、警告灯が点くことがあるものですから、気になりまして……」と言い、「もし点いたらすぐに連絡ください。ところで、他に気になることはないですか?」と尋ねた後、「少し先ですが、今度の検査、予約だけでもされますか?」「また新しいモデルが入るのですが、ご興味あります?」と質問してきた。
著者は気が付けば営業さんに「わざわざありがとうございます」とお礼を言い、新車試乗の予約までしてしまっていたのだった。
この記事はNTTドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております。
提供:フライヤー
編集:斉藤和美
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)








