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昇進・異動・支店赴任…
成功する人と苦戦する人の違い

昇進・異動・支店赴任…成功する人と苦戦する人の違い

ますます混沌とするビジネス環境のなかで、チームの士気を高め、さまざまな課題に対して柔軟に対応できる組織をつくるにはどうしたらいいか──その手法のひとつとして、近年、注目されているのが「コーチング」です。「優れたリーダーはコーチングを通じて部下の成長を支援する」という視点で語られることが多いコーチングスキルですが、実は、そのリーダー本人の成長のためにこそ必要なコーチングがあります。日本におけるコーチングの草分けとして、さまざまな分野の企業に対して組織変革を支援する各種コーチングサービスを提供してきた、コーチ・エィの取締役会長でエグゼクティブコーチの鈴木義幸さんに、ビジネスリーダーたちに向けたコーチングのヒントを解説してもらいます。

この記事はNewsPicksとドコモビジネスが共同で運営するメディア「NewsPicks+d」編集部によるオリジナル記事です。ビジネスやキャリアに役立つコンテンツが無料でご覧いただけます。 NewsPicks+d 詳しくはこちらをクリック
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目次

(写真:Liubomyr Vorona / gettyimages)
(写真:Liubomyr Vorona / gettyimages)

【新しい環境で力を発揮するためには…】 新年度に入りしばらく経ちましたが、部長や役員への昇進、支店長や海外拠点長としての赴任、あるいは新しいチームへの配属など、新たな環境に身を置いている方も多いのではないでしょうか。 そんななか、早々に実力を発揮できている人がいる一方で、なかなか新しい役割で本来の力を出せずに悩んでいる人もいるでしょう。実は、多くのビジネスパーソンが、キャリアの節目の「トランジション」、つまり新たな役割への移行プロセスで苦労しています。 トランジションにいち早く成功する人と、苦戦する人との違いはいったい何なのでしょうか。また、いち早く新しい環境で力を発揮するためには、何をすればよいのでしょうか。

「トランジション」は難しい

ビジネスの現場では「チェンジ」という言葉が頻繁に使われますが、「チェンジ」と「トランジション」は違います。

チェンジは、外的・構造的な変化の「結果」を指します。たとえば、組織図の再編はチェンジです。もちろん、その再編の過程にはさまざまな議論がありますが、その議論の結果として組織図自体は「ある日を境に一気に」チェンジします。

一方でトランジションは、その変化に適応していく内面的なプロセスを意味します。
たとえば、デジタル化に伴うさまざまなシステム導入が1月1日に実施されたとしても、1月2日から人々の行動様式が即座に切り替わって「デジタル化」が完成するわけではありません。

新しいシステムに慣れ、そのシステムに適応するように人の意識が徐々に変わっていく「移行の時間」が必要なのです。

学生から社会人になるときも同様ですね。入社式を迎えた瞬間に完全な社会人になるわけではなく、自分の中の意識や行動が少しずつ変わっていって、学生から社会人に変化していきます。

(写真:takasuu / gettyimages)
(写真:takasuu / gettyimages)

トランジションは一般的に難しいものとされています。多くのビジネスパーソンがこのプロセスでつまずき、変化に適応できないまま役割を果たせなくなるケースは少なくありません。

少し意外に感じる人もいるかもしれませんが、会社のトップであるCEOとて同じなのです。

ある研究(※1)では「新たにCEOに就任した5人のうち2人が、就任後18カ月以内に失敗に終わっている」とされています。その原因は、能力や経験の不足ではなく、状況に適さなくなったリーダーシップスタイルをそのまま続けてしまったことにあると指摘されています。

また、別の研究(※2)では「リーダーが失敗する場合、必ずと言っていいほど、着任から数カ月のうちに生まれた悪循環に原因がある。また失敗しないまでも、潜在能力を十分に発揮できずに終わるリーダーは、その何倍もいる。新しい役割への移行期は、リーダーの職業生活において最も難しい時期である」とされています。

このように、トランジションは難しいものなのです。新たに就任したからといって、肩書が「社長」や「部長」になったその日から突然、「社長」や「部長」になるわけではなく、徐々にその役割へ変化していくというプロセスを踏みます。

しかし、この変化のプロセス、つまりトランジションがうまくいかないと、肩書は「社長」や「部長」でも役割を実質的に果たせていない状態に陥ってしまいます。

(写真:trumzz / gettyimages)
(写真:trumzz / gettyimages)

トランジションは誰にとっても避けられないプロセスですが、その難しさを理解し、適切に向き合うことが、次のステージでの成果を大きく左右します。

ここからは、トランジションの成功を阻む5つのポイントと成功へのカギを紹介していきます。

【皆さんへの問い】

  • これまでにどんなトランジションを経験しましたか?
  • もっとも困難だったトランジションはどんなものでしたか?
  • どのようにトランジションを成功させましたか? あるいは失敗しましたか?
  • トランジションで苦労している部下、同僚、上司を見たことがありますか?
  • 彼ら、彼女らは、なぜ苦労しているように見えましたか? どうすればうまくいくと第三者の視点から思いましたか?

※1 William A. (Bill) Gentry and Richard J. Walsh, Mentoring First-Time Managers – Proven Strategies HR Leaders Can Use, The Center for Creative Leadership, 2015

※2 Michael Watkins “The First 90 Days” Harvard Business School Press, 2003

トランジションを阻む要因①:
培った「役割」を手放せない

「社会的アイデンティティ理論」によると、私たちにとって「役割」は自己アイデンティティの大きな部分を形成しています。ですから、新しい役割に移行するとき、それまでのアイデンティティが揺らぎ、不安を感じやすくなるのです。

特に、ある役割において成功している場合は、その役割に依存した自尊感情が形成されているため、新たな役割に移行するとその土台が崩れるリスクを感じてしまいます。

ある企業で、M&Aを数多く成功させ自他ともに「切れ者」として認められていた方が社長に就任しました。

その方は、「切れ者」のM&A責任者から「共感力」のあるCEOになりたいとコーチングセッションの場で言っていました。

会社の代表として、社員の感情に寄り添い、彼らの気持ちに共感し、自分の言葉に対して社員から共感を得られるリーダーへと変わる必要がある、と認識していたのです。

しかし、「共感力のあるCEOになりたい」と頭では理解していたものの、長年築いてきた「切れ者」の自分を簡単には手放せませんでした。「共感力のあるCEO」へトランジションするには約1年半の時間が必要でした。

(写真:Liubomyr Vorona / gettyimages)
(写真:Liubomyr Vorona / gettyimages)

そのころになって、同社の人事担当者から「最近、社長の話し方が変わってきた」「社員からも変化を感じるという声が出ている」といったフィードバックが寄せられるようになったのです。

それほどまでに「新しい自分らしさ」を再構築するには時間がかかります。

もうひとつ、エピソードを紹介します。あるクライアントのお父さまは、企業の創業者です。

家に帰ってくると、子どもたちをちゃぶ台のまわりに集めて話し始める。それを子どもたちが一生懸命にメモを取っていたそうです。その様子は、まるで「家でも社長がミーティングを開いている」かのようだったと、クライアントは振り返ります。

これは、「自分」と「役割」が常に重なっている状態です。この方の場合は、会社でも家でも「社長」という役割から離れられない状態だったのでしょう。

このような状態になってしまうと、役割の変化に柔軟に対応できず、トランジションの場面で大きな困難に直面します。

本来、役割は、状況に応じて私たち自身が服のように着替えられるものです。

フェーズ・場所・場面・相対する人ごとに役割を着替えるのが上手な人は、あくまでも役割は自分がその時々でまとうものなのだ、という意識があります。ですから私たちも毎朝、「今日はこの役割を着るんだ」と意識することが大切です。

それは、「私が役割を選んでいる」という意識につながります。こうした意識を身につけることは、一朝一夕でできるものではなく、時間と対話が必要です。

たとえば、コーチングを通じて自身の思考を整理し、「自分」と「役割」を切り離して考えることで、少しずつその感覚を育むこともできます。

(写真:kazuma seki / gettyimages)
(写真:kazuma seki / gettyimages)

変化のなかで、新たな役割にしなやかに適応していくことは、特にこれからの時代においてますます重要になるのではないでしょうか。

【皆さんへの問い】

  • あなたは、これまで自分のことをどのような人だと思ってきましたか?
  • どんな言葉で自分を表現することができますか?
  • いまの役割にもっとも求められていることを踏まえると、どのような言葉で自分を表すのが最適ですか?

トランジションを阻む要因②:
スキルと知識が不十分

新しい役割に入っていくときに、そこで必要な知識やスキルが不足していることが往々にあります。当たり前に起きることですが、実際にはスキルと知識が不十分であることが、トランジションの難しさに大きくつながっています。

心理学には「コンピテンスの不一致理論」というものがあります。これは「人間は、自己効力感や能力を維持したいと考えるため、新しい役割で『未熟』と感じるとストレスを感じやすくなる」という考え方です。

慣れ親しんだ役割では十分な知識やスキルがあるために自己効力感が高まりますが、新しい役割ではそれが失われてしまいます。そうすると人は、無意識のうちにこれまでのやり方を使って、新しい役割に対応しようとしてしまうのです。

たとえば、コンサルタントからコーチにキャリアチェンジしようとする場合にもそれは現れます。コンサルタントは、自分が持っている専門知識を使い、クライアントの課題に対して仮説を立ててソリューションを提供するのが仕事です。

そのため、まだコーチとしての訓練が十分でないコンサルタント出身者がクライアントと接すると、「早くコーチとして活躍したい」という焦りも相まって、「この人はこういうことを考えているのではないか」「課題はこういうことなのではないか」と、ついいままでのスキルである仮説構築を使ってセッションを進めてしまいます。

これでは、コーチにとって本質的に必要な、相手への純粋な興味・関心を妨げてしまいます。

(写真:monkeybusinessimages / gettyimages)
(写真:monkeybusinessimages / gettyimages)

似たようなケースを、私の高校ラグビー部時代の同級生にも見たことがあります。彼はフォワードからバックスにポジションが変わったものの、フォワードのプレースタイルを引きずっていたため、結局、バックスとしてレギュラーになれませんでした。

これも、いままでのやり方で新しい役割に対応しようとして、トランジションに苦戦してしまう例です。

新しい役職で、異動先の部署で、出向先で、転職先で、「前のやり方」に固執してしまい、新しい組織に適応できない人は少なくありません。

新しい環境に身を置いたなら、その瞬間から過去の成功体験やスキルをいったん脇に置き、素直に新しい学びに身を委ねる姿勢が必要です。

これは言葉にするのは簡単なことですが、実際に行おうとすると難しいものです。だからこそ、こうした意識的な切り替えを支援する仕組み、気づきを与えてくれるような対話の場が求められるのです。

【皆さんへの問い】

  • いまの役割で求められている知識やスキルはどんなものですか?
  • それらを手にするためには、誰に協力を求めるのがよいでしょう?
  • それらを手にするために、アンラーニング(学習棄却)することは何でしょう?

いかがでしょうか。ここまでトランジションの成功を阻む5つのポイントのうち、2つを紹介してきました。次回は、残り3つのポイントを整理していきます。

写真:鈴木 義幸 株式会社コーチ・エィ取締役会長 エグゼクティブコーチ

この記事はドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております。

文:鈴木義幸
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)
編集:鈴木毅(POWER NEWS)

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