Arcstar Universal One
導入事例
富士アイティ株式会社
富士アイティ株式会社
設置柔軟性の高いロッカー利用状況管理システムを運用するM2Mサービスプラットフォームとは
機器同士が人を介することなくネットワークを通じて相互に情報交換し、最適な制御を行う「M2M(Machine to Machine)」がいま注目されている。富士アイティ株式会社は、その一つの形態として、東京駅八重洲口の商業施設「東京駅一番街」にロッカー利用状況管理システムを提供しているが、同社はどのような手法でそのシステムの開発・運用を実現したのだろうか。
(2012年5月14日掲載)
課題
ロッカー利用状況管理システムを提供するために、クラウド環境、VPN、ワイヤレスアクセスを統合したサービス基盤を構築したい
改善にあたっての条件
- 駅構内にサーバーを設置する必要がないこと
- ロッカーの移設の際に大がかりな工事が不要なこと
- セキュリティが確保されるVPNですべてのネットワークを構築すること
- 短期間かつ低コストでの導入が可能なこと
対策
クラウド型サーバーホスティングとVPN、ワイヤレスアクセスを統合したサービス基盤により、設置柔軟性の高いロッカー管理システムを実現
効果
- システムの導入により、駅利用者の利便性が大きく向上
- 駅構内におけるサーバー設置やロッカー移設に伴う大がかりな工事が不要
- ワイヤレス部分を含め、高いセキュリティを確保できるネットワークを構築
- 短期間での導入を実現
- トラブルのない順調なシステム稼動を継続
結果
クラウドとVPN、ワイヤレス接続の3つを連携したサービス基盤により、可用性の高いプラットフォームを構築。今後M2M分野において、さらなるサービス拡充の可能性が広がる。
導入ソリューション
導入の背景
現場の情報を収集・蓄積する独自技術を生かしロッカーの利用状況を管理するサービス基盤を構築
大きな荷物を持って空いているロッカーを探して駅構内をさまよった経験をお持ちの方は多いかもしれないが、そのような駅利用者の不便さを緩和するべく、この春「東京駅一番街」にロッカーの空き状況を利用者に情報提供するシステムが導入された。
そのシステムを開発・運用しているのが、富士電機グループの富士アイティ株式会社様(以下、富士アイティ)である。同社は、重電分野をメインに事業展開するグループの中にあってIT系の事業に特化。情報技術や制御技術、さらにはエンベデッドと呼ばれる機器の中に組み込まれたソフトウェアおよびコンピューターの技術により、幅広いサービスを提供している。
特にさまざまな「現場」から得られる情報にこだわりを持ち、「現場コンシェルジュ」というコンセプトのもと、フィールドから得られるデータを収集・蓄積する現場設置型Linuxコンピューター「FiTSA Σ(フィットエスエーシグマ)」と、その情報を活用するクラウド環境を融合させたサービスの推進に力を注いでいる。
同社では、その一つとして、遠隔地のロッカー空き状況を集約し管理できるシステムの開発に着手。プロトタイプによる実証実験を重ねていた折、まさにそのシステムを導入したいと考えていた「東京駅一番街」を運営する東京ステーション開発株式会社様(以下、東京ステーション開発)と出会うことになる。
東京ステーション開発 事業部 業務課の笠井俊亮氏は「東京駅はロッカーの利用率が非常に高く、改札口に近い場所ではすぐ空きがなくなってしまう所もあります。駅構内のロッカー設置場所は複数点在しているため、空きがあるロッカーの場所をスムーズにご案内できるシステムをぜひとも導入したいと考えていました」と、その背景を説明。富士アイティ 営業技術本部 営業技術部 主査の増倉孝好氏は「駅構内にはサーバーを設置できるようなスペースがなかなか確保できませんので、クラウドを活用する我々のコンセプトが生かされる場所であるといえます。またレイアウト変更に伴うロッカー移設も多く、ロケーションが異なるそれぞれのロッカーを有線で接続すると移設のたびに大がかりな工事が発生してしまいます。ですからサービスの提供条件としては、ロッカーの集合体ごとに設置するフィールド機器をリモートでつなぐ形態が不可欠だったのです。このクラウドとワイヤレス接続を核にしたシステムのプロトタイプをご提案したところ、非常に気に入っていただけました」と採用に至った経緯を語る。
選択の決め手
パートナーとして最も信頼できる企業と評価。すべてのサービスを一元化して提供できる点も評価できた
こうして「東京駅一番街」におけるロッカー管理システムの構築が正式にスタート。富士アイティでは商用化にあたり、クラウド型サーバーホスティングやネットワークの提供を受けるパートナーの選定に入った。最終的に海外のベンダーも含め4社に絞り込んで検討を行った結果、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)に決定。仮想化技術によりサーバーリソースを柔軟かつ安価に提供する『Bizホスティング ベーシック』とクラウド対応型VPNサービス『Arcstar Universal One』、そしてポイントとなるリモート通信にはNTTドコモのXi®/FOMA®網を介して基盤VPNにアクセスする『Arcstar Universal Oneモバイル』の3つを連携したサービスが採用された。そのサービス構成はシステムアプリケーションおよびデータベースを運用するクラウド基盤に直結したVPNを経由し、インターネットを介さずにセキュアかつシームレスなリモートアクセスを実現することから、要件に非常にマッチしたものであった。
ソリューション事業部長の竹村悦郎氏は「サービスの機能面でも価格面でも我々の要望を充分に満たすものでしたが、NTT Comを選定した一番の理由は、将来も見据えた上でパートナーとして最も信頼できる企業であると判断できた点です。採用決定までの打ち合わせも内容に応じて専門の技術スタッフが同席し適切にサポートいただくなど、その対応にとても信頼感を持てました」と採用決定のポイントを挙げる。同時に、クラウドからネットワークまでをワンストップで一元的に委託できる点も高く評価できたという。「今回『東京駅一番街』のリニューアルに合わせて、このシステムを導入することになったのですが、NTT Comへの正式発注から稼動開始まで、実質的には約2カ月しかありませんでした。もちろんクラウドサービスという特性もあると思いますが、短期間で構築を完了できた背景にはワンストップ提供であることのメリットも大きいと考えます。サービスのパートごとに窓口が異なると、それぞれに話をしなければならず、それだけで時間を費やしてしまいますからね」と増倉氏は続けた。
サービス構成イメージ
「Bizホスティング ベーシック」は2015年8月31日をもって新規契約の受付を終了いたしました。
評価と展望
システム導入により駅利用客の利便性が大きく向上。今後もM2M提供モデルのサービス拡大を図りたい
ロッカー管理システムは、当初の予定から遅れることなく2012年3月中旬に稼動を開始した。ICカード対応の630個のロッカーを対象に、特に稼動率の高い4か所に利用状況を表示するタッチパネル式のディスプレイを設置。構内だけでなく、全国コインロッカー検索ポータル「コインロッカーなび」との連携を図り、「東京駅一番街」のWebサイトからもロッカーの空き状況確認が可能となった。
東京ステーション開発の笠井氏は「短期間でシステムの構築を完了してくれた富士アイティとNTT Comには大いに感謝をしています。このサービスへのお客さまの認知度も徐々に上がっており、ディスプレイを確認して空いているロッカーの方へ向かわれるお客さまの姿を見ると、導入して本当によかったと実感できます。職員が空いているロッカーのことを尋ねられた場合も確実なご案内ができますし、お客さまが移動中でもスマートフォンなどでWebサイトをご確認いただければ、さらに利便性も高まると期待しています。また我々運営サイドとしても、このシステムから得られるデータを分析することで、ロッカーの配置や数量をより最適なものに改善していくことができます」と導入効果を評価する。システムそのものも、トラブルなく順調に稼動しているとのことである。
竹村氏は「このシステムが完成形ではありませんので、さらに使いやすいものに進化させていきたいですね。同時に他のお客さまに水平展開して運用規模を拡大していくことにより、ランニングコストの面でメリットを還元できるものと思っています。また、端末アダプターのハード面での改良にも取り組んでいますが、『FiTSA Σ』は、さまざまな機器と接続するインターフェースを標準的に備えており、今後はルーターの内蔵化も予定していますので、いま注目が集まっているM2M分野での可用性がさらに高まると期待しています。同時に我々は、中小企業でも、たとえば1セットからでも提供できるようなソリューションを推進したいと考えています。その実現には、ワイヤレスを含めてセキュリティを確保できるVPN環境や柔軟性の高いクラウド基盤が不可欠だと考えますので、これからもNTT Comの協力を得ながら市場を開拓していきたいですね」と期待を込める。
複数の企業が協業することにより単独ではできなかったことを実現し、お互いに新たな可能性を見いだす。今回のロッカー管理システムは、その好適な事例だったのではないだろうか。
本事例の導入サービスの詳細はこちらから
Arcstar Universal One
クラウドに必要な高品質・高信頼なネットワークを、安心・安全・おトクに導入できる“これまでのVPNを超える”クラウドのためのVPNサービス。
Arcstar Universal One モバイル
インターネットを経由せず、NTTドコモのXi®/FOMA®網によりVPNサービス『Arcstar Universal One』にアクセスするセキュアなモバイルネットワーク
サービス担当に聞く
ネットワークサービス部 / 販売推進部門
山本 陽一
LTE対応によりさらなる通信速度向上と遅延時間の短縮を実現し、快適なモバイル環境をご提供
この4月より、従来のFOMA®と合わせてNTTドコモのLTEであるXi®(クロッシィ)に対応しています。Xi®エリアであれば、受信時最大75Mbps、送信時最大25Mbpsの高速通信も可能で、FOMA®と比較すると遅延時間が約1/4と大幅に短縮されます。たとえば、仮想デスクトップやストレージなどのクラウドサービスを利用する場合、画面転送時の遅延が発生すると操作上違和感を覚えることもありましたが、遅延が改善されることで使い勝手もよくなり、クラウドサービスとの連携性がますます向上するでしょ う。
Xi®の提供エリアも現在かなりのスピードで拡大しており、2014年度末には約98%の人口カバー率を達成する見込みであるといわれています。弊社でもLTE対応WiFiルーターのご提供を開始しており、タブレットやスマートフォンからも、高速通信が可能になります。
M2Mの中でセキュアなモバイル環境を必要とされているお客さまにもおすすめ
人の手を介さずに機器同士がネットワークにより相互に情報を交換し合う「M2M(Machine to Machine)」に今また注目が集まっています。本サービスは、これまで社外からのリモートアクセスなどのご利用用途として多くのお客さまにご採用いただいてきましたが、最近ではM2Mサービスのインフラとしてのご利用も増えてきていると感じております。
自動販売機や決済端末、車載機器など多種多様な情報通信に対応でき、セキュリティレベルを確保したネットワーク活用という条件面においても、インターネットを経由しない高速かつセキュアなモバイル通信は、まさに最適なネットワークだといえるでしょう。すでにさまざまな用途でお使いいただいていますが、東日本大震災以降、電力監視のシステムに採用されたのは時流を反映した特徴的な事例でしょうか。
料金面でも、M2M向けにご利用いただくデータ量に応じたお得な従量制のプランをご用意していますので、ぜひご検討ください。
会社概要
富士アイティ株式会社
- 本社所在地
- 東京都立川市曙町2-4-3
- 創業
- 2000(平成12)年10月
- 設立
- 1927(昭和2)年8月
- 資本金
- 3億円
- 従業員数
- 345名(2012年4月1日現在)
- 事業内容
- 情報技術、制御技術、エンベデッド(組込みソフトウェア)技術による、情報制御システム事業およびコンポーネント事業
VPNご利用シーン
Arcstar Universal OneモバイルはモバイルとVPNをダイレクトにつなぐのでセキュアな環境で高速・低遅延にモバイル通信がご利用いただけます。M2Mでのご利用以外でもさまざまなシーンでご活用いただけます。