2026年(令和8年分)の年末調整、紙のままだと重い3つの理由
年末調整を電子化する理由は毎年語られてきましたが、2026年に固有の事情が3つあります。それぞれ「何が変わるか」「ソフトや給与システムが対応すべきこと」「それとあわせて担当者がすべきこと」を押さえておきます。
①12月1日から基礎控除などが変わり、12月の年末調整で1年分を精算する
令和8年度税制改正で、所得税の基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正(58万円から62万円へ)が行われました。令和8・9年分の給与所得控除の最低保障額は、65万円から74万円に引き上げられます。これらは原則として2026年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。
実務上の要点は、11月までの毎月の源泉徴収事務は、この改正では変わらないことです。変わるのは12月に行う年末調整で、改正後の基礎控除額と改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で1年分の税額を計算し、改正前の税額表で徴収してきた額との差額を精算します。徴収しすぎていた分(過納額)は従業員に還付します。令和8・9年分は、居住者で合計所得金額が489万円以下の場合、基礎控除額は104万円になります。年税額を計算する前提が、前年と違う年です。
給与システムや年調ソフトが対応すべきなのは、改正後の基礎控除額と新しい「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」です。担当者がすることは、使う仕組みが令和8年分の改正に対応した版になっているかの確認と、書類の時期の整理です。改正の施行は12月1日ですが、申告書の回収を施行日まで待つ必要はありません。12月1日から提出を受けたのでは年末調整に間に合わない事態も想定されるため、改正を反映した申告書を施行日より前に提出してもらっても差し支えないことを、国税庁がQ&Aで示しています。そのため、改正を反映した年末調整関係の申告書は、例年どおり11月中に回収して問題ありません。なお、この改正で新たに扶養控除の対象になる親族がいる従業員は、扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと書いて提出することになります。
※出典:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」、同「令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし」(2026年4月・PDF)1〜2ページ、同「令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(2026年5月・PDF)Q1-1、Q1-2、Q2-1、Q3-1、同「年末調整がよくわかるページ(令和8年分)」
②23歳未満の扶養親族がいる人は、生命保険料控除の計算が変わる
令和8年分の年末調整では、年齢23歳未満の扶養親族がいる人について、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の計算方法が変わり、上限も4万円から6万円に引き上げられます(令和9年分まで適用)。この特例の対象は一般生命保険料控除だけで、生命保険料控除全体の上限12万円は変わりません。
つまり「23歳未満の子がいれば控除が増える」のではなく、「対象者で、かつ新契約の一般生命保険料を払っている場合に、その区分だけ計算方法と上限が変わる」という条件つきの計算です。手書きの申告書で従業員に判定してもらい、担当者が目視で検算する運用では、区分の取り違えが起きやすい項目です。対象となる扶養親族の有無を確認したうえで、この計算も、改正に対応したソフトに任せると負担を減らせます。
※出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」(2026年8月31日公表)、同「令和8年4月源泉所得税の改正のあらまし」(2026年4月・PDF)7ページ
③2027年1月から、源泉徴収票の出し方が変わり、電子提出が義務になる会社が広がる
年末調整が終わると、会社は従業員に源泉徴収票を交付し、市区町村に給与支払報告書を、税務署に源泉徴収票を提出します。この出口が2027年1月から2つの点で変わります。
一つは、税務署への源泉徴収票の提出に関わる「源泉徴収票のみなし提出の特例」です。2027年1月1日以後に提出すべき令和8年分以後の源泉徴収票について、市区町村に給与支払報告書を提出すれば、税務署に源泉徴収票を提出したものとみなされます。給与支払報告書の提出方法はeLTAX、光ディスク等、書面のいずれでもよく、どの方法でも特例は適用されます。税務署提出用の源泉徴収票を作る作業がなくなり、退職所得の源泉徴収票や報酬・料金等の支払調書など、同じ合計表で提出する他の5種類の法定調書を税務署に出さなければ、合計表の提出も不要です(従業員への交付は引き続き必要です)。
もう一つは、電子提出が義務になる基準枚数の引下げ(100枚以上から30枚以上へ)です。法定調書は、種類ごとに前々年に提出すべきだった枚数が30枚以上なら、e-Taxや光ディスク等での提出が義務になります。2026年12月31日以前の提出分は100枚以上が基準だったので、対象になる会社が広がります。2027年1月1日以後に提出する給与支払報告書についても、2025年に税務署へ提出すべきだった給与所得の源泉徴収票が30枚以上なら、eLTAXまたは光ディスク等による提出が必要です。判定に使うのは現在の従業員数でも給与支払報告書の総枚数でもなく、基準年に税務署へ提出すべきだった源泉徴収票の枚数(改正前の提出範囲で数えます。年末調整をした役員以外の従業員なら、その年の給与等の支払金額が500万円を超える人などが対象です)です。自社が該当するかは、2025年中に税務署へ提出すべきだった給与所得の源泉徴収票の枚数で確認します。
該当しない会社に電子提出の義務はありません。ただし、みなし提出の特例は提出方法を問わず適用されるため、給与支払報告書を市区町村に提出していれば、電子提出の義務がない会社でも、税務署提出用の源泉徴収票を作る必要はなくなります。みなし提出の開始を機に、複数の市区町村分をまとめて送信できるeLTAXの利用も検討できます。出口の手順を見直すこの機会に、入口の申告書の回収方法もあわせて見直せます。回収や確認の作業そのものを、外部に任せる方法もあります。
※出典:国税庁「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A」(2026年4月・PDF)問1、問3、問4、問7〜問9、同「源泉徴収票のみなし提出の特例 特設ページ」、同「No.7400 法定調書の提出義務者」、財務省「令和9年1月から源泉徴収票の提出方法が変わります」(広報誌「ファイナンス」2026年7月号)
年末調整の電子化で減る作業、残る作業
国税庁が定義する年末調整手続の電子化は、次の2つを行うことです。
- 従業員が、保険会社などから控除証明書等をデータで取得し、それを使って年末調整の申告書をデータで作成する
- 勤務先が、従業員からその申告書データと控除証明書等データの提供を受け、それを使って年税額を計算する
かつて電子化を阻んでいた手続きは、すでに整理されています。税務署への承認申請は、2021年4月1日以降に従業員からデータで申告書を受け取る場合は不要です。従業員から事前に同意を得る必要も、法令上はありません(源泉徴収票や給与明細をデータで交付する場合は別途承諾が必要です)。押印は紙でも不要になっており、データで受け取る場合は、申告書データへの電子署名やパスワードの設定、または会社が従業員ごとに通知したIDとパスワードでのログインなど、提出した本人を確認できる措置が、押印に代わる「氏名を明らかにする措置」になります。
必要なのは、提出の方法をあらかじめ決めておくことです。社内LANの従業員専用の領域に保存する、社内のIDでログインしてメールで送る、といった方法のほか、インターネット経由のメールやUSBメモリで受け取ることもできます。メールやUSBメモリの場合は、データに電子署名を付すかパスワードを設定する必要があります。誰でも入れる共有フォルダーでよい、という意味ではありません。パスワードの決め方や提出の手順は、会社が統一して案内します。
一つ注意したいのは、ExcelやPDFに入力してもらい、送ってもらう方法です。要件を満たせば法令上はデータによる提供に当たりますが、紙の様式を単にExcelやPDFに置き換えるだけでは、証明書データの取り込みや控除額の自動計算までできるとは限りません。転記や検算の負担が残ります。
電子化で何が減り、何が残るのかを分けておきます。
- 減るもの:控除証明書の内容の転記、控除額の計算と検算、証明書データから自動入力された部分のチェック、申告書の紙保管
- 残るもの:本人・配偶者・扶養親族の所得の見積額や、扶養の該当判定など、従業員の入力に依存する部分の確認と訂正依頼
控除証明書データには発行者の電子署名が付いているため、改ざんがあればシステムで検知でき、データから自動入力された部分は会社がチェックしなくてよいと国税庁は説明しています。逆に言えば、従業員が自分で入力する部分はこれまでどおり確認が必要で、電子化しても差し戻しがゼロになるわけではありません。また、初年度は設定、周知、問い合わせ対応の作業が一時的に増えます。メリットは「往復の回数と一回あたりの手間が減る」ことにあり、それが翌年以降に効いてきます。
※出典:国税庁「年末調整手続の電子化の概要・メリット」、同「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)」(2026年10月改訂版・PDF)問1-1、問1-13、問2-5、問2-9、問2-13〜問2-15、同「税務署窓口における押印の取扱いについて」
段階的に進める ― 自社の状況別「どこまで電子化するか」
電子化で減る作業と残る作業が分かれば、自社で決めることも絞れます。従業員にどの仕組みで申告書を作成してもらうか、会社はそれをどう受け取るか、給与計算にどうつなぐか。新しい仕組みを探す前に、いま手元にあるものから順に確かめていきます。
- いま使っている給与・人事システムに、年末調整のWeb入力機能があるか。あればそれを優先し、提供元に今年分の様式と税制改正への対応日をあわせて確認する
- なければ、国税庁が無料で提供する「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」で従業員に申告書を作成してもらい、出力されたデータ(XML形式をZIPに格納したもの)を給与システムに取り込めるかを提供元に確認する。会社側でそのデータを受け取り、開いて確認し、保存する手順も必要になる
- 取り込めなくても、年調ソフトで作成した申告書を印刷して提出してもらうだけで、控除額の自動計算と検算不要の効果は出る
提供元や社内で確認する項目は、製品の比較ではなく「申告書1件を、受け取りから確認・保存まで扱えるか」という観点で見ます。
- 令和8年分の改正と様式に対応した版の提供日
- 従業員が使う端末(会社PC、私用スマートフォン)で入力できるか
- 会社側で受け取ったデータをどう開いて確認するか
- 未提出者の把握と、訂正後の再提出をどう管理するか(どれを最新版とするか)
- 給与システムへの取り込みの可否と方法
- 申告書データの保存場所と、後から取り出す方法
- 導入から本受付までの日程
国税庁は、電子化の段階を「従来」と「パターンA〜D」の5つに分けて、部分的な対応でも効率化できると整理しています。この5段階を、紙が残る場所と担当者の作業に置き換えると次のようになります。
自社の状況別|どこまで電子化するか
| 段階 | 紙で扱うもの | 会社に残る手作業 | 従業員がやること | 令和8年分から 導入できるか2026年10月に 準備を始めた場合 |
|---|---|---|---|---|
| 従来紙のまま | 申告書、控除証明書 |
検算、証明書のチェック、給与システムへの手入力、紙保管 |
ハガキを見て手書き、控除額を手計算 |
― |
| パターンA申告書をソフトで作成し、印刷して提出(控除証明書は書面) | 申告書(印刷したもの)、控除証明書 |
証明書のチェック、給与システムへの手入力、紙保管 |
書面の証明書を見て年調ソフト等に入力し、印刷して提出 |
◎ |
| パターンB控除証明書をデータで取得し、申告書は印刷して提出 | 申告書(印刷したもの)、QRコード付控除証明書 |
証明書のチェック、給与システムへの手入力、紙保管 |
証明書データを取り込んで作成し、印刷して提出(QRコード付控除証明書の作成が必要) |
○証明書をデータで受け取った人から |
| パターンC申告書をデータで提出(控除証明書は書面を手入力し、書面を提出) | 控除証明書 |
証明書のチェック、証明書の紙保管(給与システムが取り込みに対応していなければ手入力も) |
書面の証明書を見て年調ソフト等に入力し、データで提出 |
◎ |
| パターンD控除証明書もデータで取得し、データで提出 | なし(電子交付に対応していない証明書は書面が残る) |
従業員が入力した部分の確認(給与システムが取り込みに対応していなければ手入力も) |
マイナポータル連携等で証明書データを取得し、自動入力して提出 |
○マイナポータル連携などを済ませた人から |
※国税庁「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)」(2026年10月改訂版・PDF)問1-3、問1-4をもとに編集部作成。国税庁の表では、パターンC・Dは給与システムへ自動入力する前提で整理されており、そのためには給与システムが年調ソフトのデータの取り込みに対応している必要があります。◎○は、令和8年分(2026年12月の年末調整)の申告書から、2026年10月に準備を始めて導入する場合の編集部の目安です。◎は会社側の準備で導入しやすい段階、○は準備が整った従業員から適用できる段階を示します。いずれの段階でも、従業員が入力した所得の見積額などの確認は残ります
既存の給与・人事システムに年末調整のWeb入力機能がない場合、令和8年分の最短ルートは、基本方針をパターンCとし、パターンDは希望者に、給与システムへの取り込みは提供元に確認してから、という組み合わせです。パターンCなら、従業員側にマイナンバーカードも民間送達サービスの設定も要りません。保険会社から届いた書面の控除証明書を見て年調ソフトに入力すれば控除額は自動計算され、会社は検算から解放されます。控除証明書の紙は残るので、証明書の提出先と、申告書データとの対応づけの方法(氏名と提出日で突き合わせる、など)は先に決めておきます。
給与システムが年調ソフトのデータの取り込みに対応していない場合も、受け取ったデータを開いて確認し、給与システムに手入力すれば、パターンC・Dで運用できます。データでの受け取りや保存の手順が整わない場合は、パターンAの「ソフトで作成して印刷提出」でも、手書きの申告書と比べて検算の手間は省けます。国税庁のFAQもその効果を認めています。
※出典:国税庁「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)」(2026年10月改訂版・PDF)問1-3、問1-4、問2-2、問5-11、問5-19
10月に動き出すための逆算スケジュール
※図は横にスクロールできます
※国税庁「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)」(2026年10月改訂版・PDF)、同「令和8年度税制改正(基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(2026年5月・PDF)、同「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A」(2026年4月・PDF)をもとに編集部作成。12月の給与で精算し、11月下旬に最終回収する会社を想定したモデルです
この日程は、いまある給与システムや年調ソフトを使い、今年の対象をパターンCまでに絞って、12月の給与で精算し、11月下旬に最終回収する会社を想定した編集部のモデルです。新しいシステムを一から導入する場合や、給与システムへの取り込みまで一気に進める場合は、この日程では収まらないことがあります。各社の給与日と計算日程に合わせて前倒ししてください。10月中旬以降に準備を始める場合は、ステップ1と2を並行して進め、今年はパターンAまたはCに絞ると進めやすくなります。なお、保険料控除申告書などの法令上の提出期限は「その年最後に給与等の支払を受ける日の前日まで」で、11月の締切は確認と訂正のための社内期限です。この期間は申告書の回収や確認が集中するため、人手が足りない場合は、業務の一部を外部に任せることも選択肢になります。
ステップ1(〜10月上旬):やり方を決める
決めるのは、提出の方法(社内LANの専用領域か、パスワード付きデータをメールで受け取るか)、パターンA〜Dのどこまで進めるか、紙で残る証明書の扱いと相談先です。
給与システムの提供元には、年調ソフトの出力データを取り込めるか、今年分の税制改正に対応した版がいつ出るかを聞いておきます。国税庁は申告書データの仕様を公開しています。利用中の製品の対応状況は、提供元に確認してください。
年調ソフトを使う場合は、パソコン版の「管理者メニュー」で会社名・法人番号・所在地を設定したファイルを作って従業員に配ると、各自の入力を省けます。
このステップの完了条件は、提出方法が決まっている、取込可否の回答をもらっている、紙で残る証明書の扱いと相談先が決まっている、そして会社側で受け取った申告書データを1件開き、画面での確認と印刷ができることです。最後の確認は、給与システムへの取り込みとは別に行います。
ステップ2(10月上旬):従業員に知らせる
国税庁のFAQは、電子化の初年度は年末調整の時期のおおむね2か月前に周知したほうがよいとしています。12月に年末調整をするなら、10月上旬に方針と準備事項を予告するのが編集部の目安です。
伝えるのは、使うソフト、提出先と期限、控除証明書は紙のままでもよいこと、相談先を1つに絞ったことです。国税庁が「従業員の方への周知資料」(PowerPoint形式)と「電子化の進め方」(勤務先編・従業員編)を公開しています。いずれも2025年9月に掲載されたものなので、自社の提出先と期限を添え、今年分の内容に合わせて直して使えます。
マイナポータル連携(申告書を作成中に、複数の控除証明書データをマイナポータルから一括で取得する仕組み)を使う人には、準備が要ります。マイナンバーカード(申請から交付通知書の発送まで概ね1か月)、マイナポータルの開設、民間送達サービス(控除証明書データを受け取る自分専用のポスト)との連携、保険会社側での設定です。年調ソフトでマイナポータル連携を使うには、マイナンバーカードを読み取れる機器(パソコン版ならICカードリーダライタか、カードを読み取れるスマートフォン)が必要です。スマートフォンのマイナンバーカード(スマートフォン用電子証明書)でも連携できます。マイナポータルには「年末調整の事前準備」ページがあり、案内に沿って進められます。国税庁はこの準備を原則として初回だけとしており、取得する控除証明書が増えなければ、翌年以降は改めて準備する必要はありません。発行主体によっては連携完了から取得可能になるまで数日かかるため、提出直前の設定は避けるよう伝えておきます。
カードを持っていない従業員は、契約している保険会社のWebサイトから控除証明書データを取得できる場合はそれを使い、難しければ書面の証明書を見て入力し、書面を提出します。
国民年金保険料の控除証明書は別ルートです。日本年金機構は、2026年1月1日から9月30日までに国民年金保険料を納付した人に、令和8年分の控除証明書を、電子データは10月中旬から下旬、書面は10月下旬から11月上旬にかけて順次送付します。電子で受け取るには、マイナポータルから「ねんきんネット」の利用登録をしたうえで、「ねんきんネット」で電子送付の希望を登録しておきます。間に合わなくても、書面で受け取った後に「ねんきんネット」から「通知書の再交付申請」をすれば電子データを受け取れます(申請から3〜5営業日)。中途入社者や、家族の分を払っている従業員に関係します。
年調ソフトの令和8年分の正式版と操作マニュアルは、2026年10月1日に公開されました。8月に公開されたプロトタイプは動作確認用なので、試行と本受付には正式版を使い、従業員にも正式版を入手するよう案内します。
控除証明書をデータで交付している保険会社は、国税庁が一覧を公表しています。契約先が対応していない従業員は、書面の証明書を見て入力し、書面を提出します。書面をスキャンした画像はデータの原本にはなりません。
※出典:国税庁「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)」(2026年10月改訂版・PDF)問2-3、問2-9、問3-6、問3-8、問3-11、問3-14、問4-4、問4-6、問4-7、問5-8、問5-18、問5-21、同「年末調整手続の電子化に関するパンフレット」、同「年末調整手続の電子化へ向けた準備」、同「マイナポータル連携特設ページ」、同「電子化対応保険会社等一覧」、同「年末調整手続の電子化に向けた取組について」、同「マイナポータルと連携した年末調整手続」、日本年金機構「令和8年分社会保険料(国民年金保険料)控除証明書の送付予定をお知らせします」(2026年9月24日)、同「確定申告・年末調整に必要な通知書をマイナポータルで受け取る」
ステップ3(10月中旬〜11月中旬):試行、取得・作成・提出
本受付の前に、正式版を使って少人数で試行します。作成から提出、会社側での受領と確認、訂正依頼と再提出、保存までを一度通し、給与システムへの取り込みを予定している場合はそれも試します。ここで詰まったら、今年電子化する範囲を絞ります。
本受付では、従業員は控除証明書データを取得し、年調ソフト等で申告書を作成して、会社が指定した方法で提出します。年調ソフトは申告書と取り込んだ証明書のXMLをZIPファイルにまとめて出力し、パスワード付きとなしの2種類が作られます。会社にはZIPのまま渡します。「証明書を取得しただけ」「保存しただけ」で終わらないよう、提出完了の確認まで案内に含めます。
年払いの保険で控除証明書がまだ発行されておらず「支払予定額のお知らせ」だけが届いている場合、これは電子化の対象外なので手入力になります。この場合、会社は後日発行される控除証明書を2027年1月末日までに提出または提示してもらうことを条件に、その控除を含めて年末調整を行えます。期限までに確認できなければ、年末調整の再計算が必要です。
会社側は、改正を反映した申告書を12月1日前から受け取って構いません。訂正後の再提出は、提出日時で最新版を判定するなど、あらかじめ決めたルールで扱います。
※出典:国税庁「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)」(2026年10月改訂版・PDF)問3-16、問5-14、問5-28、同「令和8年分 年末調整のしかた」22ページ、同「所得税基本通達196-1」
ステップ4(12月〜2027年2月1日):計算・還付・書類の交付と提出
12月の年末調整で改正後の控除額を使って年税額を計算し、過納額を還付します。2027年1月には源泉徴収票を従業員に交付し、給与支払報告書を2027年2月1日(月)までに市区町村へ提出します(法定の期限は1月31日で、2027年は日曜日のため翌日になります。社内の目標は1月中に置いて構いません)。eLTAXなら複数の市区町村へ同時に送信でき、印刷・封入の手間や、紙の控えを保管するスペースを減らせます。みなし提出の特例により、税務署への源泉徴収票の提出は不要です。基準に該当する会社は、eLTAXまたは光ディスク等での提出が義務です。
データで受け取った申告書は、書面と同じく、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存します。パターンCの場合、控除証明書の紙は残りますが、申告書の紙保管はなくなります。
※出典:国税庁「No.2503 給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間」、同「給与所得者の保険料控除の申告」、同「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A」(2026年4月・PDF)問4、同「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」(PDF)3ページ、地方税共同機構「給与支払報告書等の提出に係る特設ページ」
電子化が間に合わない書類は、今年は紙で受け付ける
給与システムへの取り込みが間に合わない場合は、会社側でデータを受領・閲覧・確認・保存できることを確かめたうえで、今年は取り込みを見送り、データを見ながら給与システムに入力します。受領から確認・保存までの手順も整わない場合は、パターンAの「ソフトで作成して印刷提出」を選びます。
紙の例外も先に決めておきます。控除証明書は紙のまま、住宅ローン控除の書類など電子化の準備が間に合わないものは今年は紙で受け付ける、操作が難しい従業員やデータ提出に抵抗のある従業員は初年度だけ紙でもよい。例外を先に決めておくことが「今年から始める」ための実務です。全員の準備が整うまで待つと、来年も同じ議論をすることになります。
人手が足りないときは、年末調整業務を任せる選択肢も
電子化の初年度は、設定や周知、問い合わせ対応の作業が一時的に増えます。担当者が少ない会社では、例年の年末調整と電子化の準備を同じ時期に進めること自体が負担になりがちです。社内で抱えきれない部分は、年末調整を含む人事・労務業務を外部の専門スタッフに任せ、担当者は電子化の判断や社内への周知に集中する、という分担も考えられます。
電子化を進めるときに出てくる用語
ここまでに出てきた言葉のうち、従業員への案内や提供元との会話で使うものを整理します。
年調ソフト
年末調整控除申告書作成用ソフトウェア
従業員が控除証明書データを取り込み、申告書のデータまたは印刷用の書面を作るソフト。App Store・Google Play・Microsoft Storeから無料で入手できます(令和8年分の正式版は2026年10月1日公開)。従業員向けのソフトで、会社側で年税額を計算する機能はありません。
マイナポータル連携
控除証明書データの一括取得
申告書を作成中に、複数の控除証明書データをマイナポータル経由で一括取得する仕組み。マイナンバーカードとそれを読み取れる機器(ICカードリーダライタやスマートフォン)、またはスマートフォンのマイナンバーカードが必要です。マイナンバーそのものは使いません。
民間送達サービス
みんかんそうたつサービス
保険会社などからの控除証明書データを受け取るインターネット上の私書箱。マイナポータルと連携して使います。対応する事業者と保険会社の組み合わせは国税庁の一覧で確認できます。
控除証明書等データ
電子的控除証明書
保険会社などが発行する控除証明書のデータ。発行者の電子署名が付いているため改ざんを検知でき、データから自動入力された部分は会社側のチェックが不要になります。従業員が手入力した部分の確認は残ります。書面をスキャンした画像は該当しません。
源泉徴収票のみなし提出の特例
令和8年分(2027年1月提出)から
令和8年分以後、市区町村に給与支払報告書を提出すれば、税務署に源泉徴収票を提出したものとみなす特例。提出方法は電子でも書面でも構いません。従業員への交付は引き続き必要です。
電子提出義務(30枚ルール)
e-Tax等による法定調書の提出義務
法定調書の種類ごとに、前々年に税務署へ提出すべきだった枚数が30枚以上ならe-Tax等での提出が義務になるルール(それ以前は100枚以上)。給与支払報告書も、前々年に税務署へ提出すべきだった源泉徴収票の枚数で判定します。
年末調整の電子化に関するよくある質問
最後に、電子化を検討するときに疑問になりやすい点を整理します。
年末調整の電子化は義務ですか?
従業員から申告書をデータで受け取ること自体は義務ではなく、これまでどおり書面で提出を受けても差し支えありません。一方、年末調整の出口にあたる書類は、2027年1月1日以後の提出分から、電子提出が義務になる基準が30枚以上に下がります。税務署に出す法定調書は種類ごとに前々年に提出すべきだった枚数で、市区町村に出す給与支払報告書は前々年に税務署へ提出すべきだった給与所得の源泉徴収票の枚数で判定します。入口の電子化は任意、出口の電子提出は一定の基準に該当する会社で義務、と分けて考えると整理しやすくなります。
電子化するのに、税務署への届出や従業員の同意は必要ですか?
どちらも不要です。税務署への承認申請は、2021年4月1日以降に従業員からデータで申告書を受け取る場合は要らなくなりました。従業員の事前同意も法令上は不要です。ただし、源泉徴収票や給与明細をデータで交付する場合は別途承諾が必要なので、混同しないようにしてください。
給与ソフトが年調ソフトのデータを取り込めない場合、電子化は無理ですか?
無理ではありません。年調ソフトで作成した申告書を印刷して提出してもらうだけでも、控除額は自動計算されているため、手書きの申告書より検算の手間を省けます。国税庁は申告書データの仕様を公開しているので、取り込めるかどうかは、利用中の給与システムの提供元に確認してください。
マイナンバーカードを持っていない従業員がいる場合はどうすればいいですか?
マイナポータル連携を使わなくても、契約している保険会社の「お客様ページ」などから控除証明書データをダウンロードできる場合があります。それも難しければ、書面の控除証明書を見て年調ソフトに入力し、書面を会社に提出します。いずれの場合も申告書はデータで作成できるので、控除額の自動計算の効果は変わりません。
※出典:国税庁「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)」(2026年10月改訂版・PDF)問1-8、問2-5、問2-13、問3-8、問5-19、問5-21、同「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A」(2026年4月・PDF)問9
まとめ:今年は「入口を電子にする理由」が出そろった年
12月の精算、生命保険料控除の分岐、そして1月からの出口の変更。2026年は、年末調整の申告書を紙で回収し続ける負担が、この3つの形で重なった年です。
電子化は、できるところから段階的に進めて構いません。パターンCまででも、申告書の用紙配布や紙の回収・保管、自動計算された控除額の検算を減らせます。一方、紙で受け取る控除証明書の確認・管理と、従業員が入力した内容の確認は残ります。初年度に済ませたマイナポータル連携の設定は翌年以降も使え、年調ソフトは前年の申告書データを引き継いで住所や扶養親族の入力を省けます。今年の手間は、来年の手間を減らすための投資です。
どの段階まで進めるかを決めたら、実際に動かすのはこの3つです。
最初に動かす3つ
- 今年どこまでやるかを決めるどこまで電子化するか
- 受領から確認・保存までを1件通して試すステップ1・ステップ3
- 従業員に方針と準備事項を知らせるステップ2
年調ソフトの正式版は、すでに公開されています。申告書の受付を始める前にこの3つが動き出していれば、今年の申告分から始める目処が立ちます。途中で給与システムの対応や従業員の準備が思うように進まなくても、パターンAまたはCで止める判断を先に決めてあれば、来年に持ち越さずに済みます。
※年末調整の申告書の保存期間と方法は、国税庁「No.2503 給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間」をご確認ください。
年末調整で見直した紙の受け渡しは、毎月の請求書処理や経費精算にも残っています。請求書や経費精算の書類をデータで保存するときの考え方は「適格な改正電子帳簿保存法の対応は社内DX化のチャンス」で、月末に集中する経理の作業を減らす方法は「なくならない月末の経理残業……。OCRとワークフロー改善で"締め日"を効率化する方法」で整理しています。
- 本記事は2026年10月5日時点の情報にもとづいて作成しています。
- 年調ソフトの更新や税制改正の最新の情報は、国税庁「年末調整がよくわかるページ(令和8年分)」などでご確認ください。








