令和の時代のビジネスマナーを学ぶ
今回のニュース
若手社員がSNS投稿で情報漏洩
西日本シティ銀行の若手女性行員がスマホで行内の様子を撮影し、顧客の個人情報などが写り込んだ画像や動画をSNSアプリ「BeReal」に投稿していたことがわかったのは4月末のこと。
頭取が謝罪会見を開く大問題となりましたが、同様に、4月に入って新入社員によるSNSに絡んだ情報漏洩が、いくつかニュースになりました。
例えば、日本テレビ系情報番組「ZIP!」の制作協力会社の新入社員が、入館証や番組シフト表、社内資料などの写真をInstagramのストーリーズに投稿していた問題です。
親しい友人だけに、24時間で消えるストーリーズ機能を使って、「芸能人たくさん会えて楽しい」などと学生のノリで語っていましたが、スクリーンショットがXで拡散されて大炎上を招きました。日本テレビ側が社長会見で謝罪し、「本人は深く反省している」と報告されています。
三菱電機子会社の新入社員も、入社時に提出する機密保持誓約書をSNSに投稿。同時に社員番号・所属部署・氏名入り書類などをInstagramに投稿してしまい、わずか数時間で360万回以上閲覧されて大炎上しました。三菱グループでは防衛関連の重要機密も扱っているため、気軽に撮影して投稿してしまう学生気分が招く事態の重さが、専門家からも指摘されています。
業務をめぐるSNS利用は、情報漏洩の危険があるだけでなく、企業をターゲットにした詐欺にも注意が必要です。4月には岡山でこんな事件がありました。
「社長だけど、社内LINEグループを作成してほしい」――社長になりすましたそんなメールのメッセージにだまされ、経理担当の社員が指示通りグループを作成。LINEでやりとりを進めるうちに、最終的に3840万円という大金を会社の口座から指定口座に振り込んでしまったのです。若手社員に限った話ではありませんが、上司への「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」があれば、こうした新手の振り込み詐欺事件も防げる可能性があったはず。
いまの時代の“マナー違反”や“リテラシー欠如”が恐ろしいのは、会社を揺るがしかねない大きな実害が発生するリスクがある、ということです。とくにSNSへの書き込みでは、ストーリーズやBeRealなど、時間が経つと消える機能が気を緩ませるのかもしれません。公開されている何時間かで他人にコピーされ、本家が消えたあとも延々と公開される例が増えています。
また現代の職場では、SNSなどのリテラシーだけでなく、各種ハラスメントなど新しいマナーの落とし穴も次々と生まれています。新しい時代には新しいマナーを、新入社員だけでなく、誰もが身につけることが急務です。
ビジネスシーンの変化に合わせて知識を更新
今回、ご紹介する「令和のマナー検定」は、MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)という有名資格でも知られるオデッセイコミュニケーションズが運営する検定です。ビジネスマナーに関する検定はこれまでにも数多くありましたが、「令和の……」と名づけられているとおり、社会情勢の変化によって激変したここ7〜8年のビジネスシーンに即したビジネスマナーについて学べる点が特徴となっています。
例えばコロナ禍以降、一般的になったオンライン会議におけるビジネスマナーは、いまだ手探り状態の人も多いかもしれません。オンライン会議では、どんな部屋を選んで、どんな服装で出席するのが適切なのか、また参加中にマナー違反とされる振る舞いにはどんなものがあるか――こうした“作法”については、まだ世間一般的な共通認識が確立・共有されているとも言い難い状況です。とくに、外部の企業と初めてオンライン会議を行う際に、やり方の違いに戸惑ったという経験がある人も多いのではないでしょうか。
この検定で学ぶ「新しい時代のビジネスマナー」の代表的なテーマとしては、そうした「オンライン会議」や「リモートワーク」のほかにも、「SNS」の運用リテラシーや、「ハラスメント」にまつわる事項などがあります。こうした知識について改めて学ぶことで、世界中から価値観の違う人が集まって多様化が進む昨今の職場で起こりやすいトラブルやコミュニケーション不全の防止に役立てることができます。
とはいえ公式テキストを見ると、こうした新しい時代のビジネスマナーについて解説されているページの割合はざっと2〜3割程度でしょうか。従来からのビジネスマナーである、挨拶の仕方、身だしなみ、敬語などの事項や、スケジュール管理、クレーム対応など仕事の進め方についても解説されており、従来型のマナーも当然、引き続き時代を問わず重要であることがわかります。
令和のマナー検定が運用開始されたのは令和5年(2023年)3月ですが、その後の急速なAIの普及によって、ビジネスシーンはさらに変化が進んでいます。例えば、会社の承認を得ずに従業員が個人の判断で業務にAIを使う「シャドーAI」による情報漏洩やコンプラ違反のリスクが昨今、指摘されていますが、このように年々新しく出てくる概念やトピックについて、われわれは知識を確実にアップデートし続けていかなければなりません。
検定公式サイトでは「さらに役立つビジネス用語集」というコンテンツも用意されており、令和の時代に知らないでは済まされない新しいビジネス用語などのキーワードが多数解説されているので、こちらもぜひ活用したいところです。
対応を誤ると訴訟問題や企業イメージ失墜にも
試験はCBT形式で実施され、全国のテストセンターで随時、受験可能です。公式サイトにはサンプル問題が掲載されているので、そのなかからいくつかご紹介しましょう。まずは前述の内容にもあったリモートワークについての問題です。
Q1 リモートワークに関する記述です。不適当と思うものを1つ選びなさい。
- オンライン会議中に「音が聞こえない」「カメラが映らない」と慌てないために、事前にマイクとカメラの状態を確認しておく。
- ちゃんと聴いていると相手に伝えるために、マイクは常にオンにして返答をする。
- オンライン会議に参加するときは、周囲が騒がしくなく、安定したインターネット環境が整っている場所で行う。
- リモートワークをするときは、メールへのレスポンスを早く、こまめにコミュニケーションを取ることを心がける。
正解は2。音声上の問題が発生しやすいオンライン会議では、参加者それぞれが雑音を減らすことが重要で、他の誰かが発言しているときには、自分のマイクはミュートにするのがマナーだといえます。普段から実践している人もそうでない人も、あらためて確認しておきたいポイントです。
Q2 次の(ア)~(エ)は、職場におけるハラスメントに関する法律について説明しています。パワーハラスメントに該当すると思うものを1つ選びなさい。
- 上司・同僚からの妊娠・出産等に関する言動により妊娠・出産等をした当該女性労働者の就業環境が害されることがないよう防止措置を講じること。
- 職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により当該労働者の就業環境が害されたりすることがないよう防止措置を講じること。
- 上司・同僚からの育児・介護休業等に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることがないよう防止措置を講じること。
- 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されることがないよう防止措置を講じること。
Q3 営業部員の永井健二は、個人のスマートフォンを持っていますが、会社の業務では、会社から支給されたスマートフォンを利用しています。今日は取引先への営業活動の後、会社へ戻る途中で、うっかり転んで、会社のスマートフォンを水たまりに落としてしまい、スマートフォンが水に濡れて動かなくなってしまいました。永井健二がこのようなときに考えたこととして、適当と思うものを1つ選びなさい。
- 個人のスマートフォンもあるし、上司に言うのは恥ずかしいので、スマートフォンが壊れたことはしばらく黙っておこう。
- 全部自分のミスなので、弁償しなければならないだろう。
- スマートフォンが急に壊れたことにしておこう。
- 先ずは上司に連絡して状況を報告しよう。
Q2はハラスメント、Q3は社用スマホの取り扱いについての問題で、対応を誤ると最悪の場合、訴訟問題や企業イメージ失墜にもつながりかねないトピックです。マナーというよりもビジネスパーソンとしての最低限のリテラシーとして、あらためて意識しておくべき内容でしょう。(正解は記事末尾)
あっという間に全世界に広がる時代
ニュースの事例にもあるように、学生のノリというだけではすまされない若手社員たちの“やらかし”事案をよく目にするようになりました。もちろん、こういうことは以前の世代には皆無だったというわけではないのですが、令和の時代に恐ろしいのは、こうした失態がSNSであっという間に全世界に広がってしまうという点です。
ちょっとした気の緩みや問題意識の欠如が、会社の運営すらままならない事態にまで発展してしまうこともある時代だということ、そして、同様の事案が明日、自社で起こる可能性も十分ありうるということを、改めて気を引き締めて意識しておきたいものです。
とくに今年、新入社員として社会人の一歩を踏み出した人の多くは、コロナ禍という特別な時期に、高校・大学時代を過ごした世代です。リアルで人と交流する機会が少なかった人も多く、基本的にコミュニケーションが苦手という人も少なくありません。
新年度が始まって2カ月。すでに新入社員世代との意識の隔たりを感じている上司・先輩世代のビジネスパーソンも多いことでしょう。
そうした、ちょっとした意識のすれ違いが、会社の存続が難しくなるほどの大きな爆弾になることも。改めて令和の時代のマナーや価値観、コミュニケーションのあり方について、すべての世代の人が共通認識を持っておくことが必要になってきます。組織を継続的にうまく回していくために、この機会にぜひ考えてみてはいかがでしょうか。
【サンプル問題の答え】(解説は公式サイトより)
Q2正解は(エ)。
- (ア)は、妊娠・出産等ハラスメントについての法律(男女雇用機会均等法第11条の3関係)です。
- (イ)は、セクシュアルハラスメントについての法律(男女雇用機会均等法第11条関係)です。
- (ウ)は、妊娠・出産等ハラスメントについての法律(育児・介護休業法第25条関係)です。
- (エ)は、パワーハラスメントについての法律(労働施策総合推進法第30条の2関係)です。
Q3正解は4。
会社は、チームで仕事を行う場です。どのような仕事上のミスやアクシデントにも、共通して重要なことは、できるだけ速やかに上司や先輩に報告することです。報告や連絡を怠ると情報が共有できず、ミスやトラブルを招いたり、仕事が遅滞したりして、トラブルの被害が大きくなる恐れがあります。
鈴木秀明(すずき・ひであき)
1981年生まれ。総合情報サイト「All About」資格ガイド。東京大学理学部卒。東京大学公共政策大学院修了。年間80個ペースで資格試験を受験し、米国公認会計士、気象予報士、中小企業診断士など1000を超える資格を取得。雑誌・テレビ・ラジオなどのメディア出演実績は500件以上。著書に『効率よく短期集中で覚えられる 7日間勉強法』(ダイヤモンド社)など。
この記事はNTTドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております。
取材・文:福光恵
編集:鈴木毅(POWER NEWS)
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)
タイトルバナー:gettyimages








