【「外」に目を向けて壁を越える】
これまでの連載で、自分の市場価値を知ること=自分のキャリアを「資産化」することについて説明してきましたが、実際に職務履歴書を書いて転職活動をしてみろと言われても、自分にはハードルが高くて……と腰が引けてしまう人も少なくないかと思います。
そこで今回は、自分の「内」ばかりに目を向けるのではなく、「外」にも目を向けながら、自分磨きをしてみようというお話をいたします。まずは、自分自身の“壁”を越えること。キーワードは「コミュニティ・ラーニング」、そして「今日の自分」です。
「ラーニング・コミュニティ」に参加する
今回は「いまからでもできる自分磨き」についてお話しましょう。それは、自分の「外」に目を向けることです。
まず、仕事以外の人とのつながりは、絶対に持ったほうがいい。会社の外のネットワークは、とても大事です。なぜなら会社の外の人とつながることによって、会社で得られない情報や気づきが得られる。そして、社外で得た見識が自分の仕事に役立つことがあるものです。
人材育成の場では、数年ほど前から「コミュニティ・ラーニング」という概念が注目されています。多くは社員のリスキリングの手段として、学び合い、成長し続ける組織を作るための課題解決のひとつの方法として、取り入れる企業が増えています。
グループワークや事例共有会、課題解決型のプログラムやキャリアイベントなど、やり方も形式もいろいろですが、平たく言えば、仲間たちとともに学び意見を交換することによって、ラーニング(学び)のクオリティを上げていくものです。そして、このように他者とともに学び合う多様な共同体が「ラーニング・コミュニティ」と呼ばれています。
ラーニング・コミュニティといってもいろいろとありますが、私が実際に参加してよかったなと感じたのは、明確なテーマを持ち、専門的に深掘りして学んでいくコミュニティです。
たとえば、人事の課題を考えるコミュニティとか、同じ本をみんなで読んで、感想や気づきを交換し合う読書コミュニティとか――。独学でやるよりも深い学びが得られたと思いますし、仕事と違うコミュニティにいることによって、自分に対する意外なフィードバックを得られることがあります。新たな自分と出会えた感覚もあって、なかなか楽しいものでした。
特に、会費や開催期間などがしっかりとある、つまり、ある程度のおカネと時間をかけて同じテーマをともに学ぶコミュニティは、非常によかった。自分が主催したものも、参加したものもありますが、参加者の目的意識が明確なので、学びや気づきが深かったですね。
【コミュニティの例】
- 社内コミュニティ
- 同業異業他社コミュニティ(合同研修、合同プロジェクトなど)
- 元同僚コミュニティ(アルムナイ)
- 趣味コミュニティ
- ファンコミュニティ
- 地域(ビジネス)コミュニティ
コミュニティで「いい住人」であるには
資格やスキルを目的としたコミュニティ参加も大切ですが、何よりもまず、会社の文化や階層、規律に縛られていない多様な人たちのコミュニティに身を置くことが重要です。そこでは、「住人」のみなさんとの良好なコミュニケーションが求められます。
私は学習効果と同等かそれ以上に、これが大事だと思っていて、多様性あふれるコミュニティでちゃんとやれる人は、自己理解と自己開示、そして他者理解と他者受容もきっちり備わっていると考えています。
自分がどういう人間かを熟知し、それを他者にうまく開示し、他者に興味を持ち、受容する――これらができる人間であれば、どんなコミュニティに属しても居心地よく過ごせる適応能力があるといえます。
逆に自己理解、自己開示、他者理解、他者受容ができてないままコミュニティにいる人は、本当に「めんどくさい人」になっていることが多い。こういうタイプは企業組織のなかにもけっこう生息してますが、率直に言って転職向きではないといえます。
私自身、いまの会社を起業後にさまざまなコミュニティに属する機会が増えてきて、「コミュニティ・ラーニング」の効果をリアルに実感しています。
ご自身の居場所が会社と自宅だけという「コミュニティ素人」には、まずは社内のサークルとか、勉強会とか、身近なコミュニティ参加から試してみることをおすすめします。
自分に合うコミュニティを見つけるためには、自分の興味があるところから入っていけばいいわけです。形式やテーマにこだわらず、自分がかかわっていきやすいところから入る。地域でもいいし、趣味でもいい。SNSの趣味のコミュニティなどもあります。
いずれにしても、漫然と参加するのではなく、「自己理解」「自己開示」「他者理解」「他者受容」を意識しながら“いい住人”であろうとすること、そして自分がコミュニティに属している「意味」「意義」を考えながら接することが、自身の成長につながります。
多様なかかわりのなかで「この場所で自分が得るものは何だろう」と意識的にいられるか、いられないか。そうした意識ひとつで、自分の対人コミュニケーションやチームマネジメントの力も違ってくるのです。
企業の人事担当部署が「コミュニティ・ラーニング」に注目する背景には、成長戦略のひとつとして自社が「学び合える組織」である必要がある、ということがあります。社内研修や勉強会の有無もさることながら、社員一人ひとりが「この場から学ぼう」と思える素地があることも、成長戦略の重要な要素なのです。
何事も「ギブ・アンド・テイク」
ただ、コミュニティを探すうえで気をつけたいのは、「自分さえ磨ければいい」という姿勢は絶対にNGだということです。まずは出会いを大事にする、という謙虚さが重要です。
起業セミナーなどでよくある話ですが、独立したての人が、我先にと主張したり、露骨に「仕事くれ」アピールをすることがあります。そういうタイプの人が成功したケースを、見たことがありません。
もっとも身近なコミュニティは「家族」だといえますが、コミュニティでは、家族であれ、組織であれ、何事も「ギブ・アンド・テイク」です。ビジネスでも、いきなり「テイク」ばかりではなく、自分への見返りはひとまず後回しにして、しっかりとした人脈づくりをするほうが、後々うまくいくものです。
私は独立したてのころ、依頼を受けた仕事はとにかく断らないことにしていました。売り上げよりも、まずは自分の仕事を認知してもらうことに注力し、クライアントから「また安田さんにお願いしてみよう」と思っていただけることを重視しました。
「この人にまた会いたいな」「この人とまた仕事をしたいな」と思ってもらえる人であれば、見返りは何らかのかたちで必ずついてくるものです。実際、そうだったと思います。
ビジネスでもプライベートでも、いかにして「求められる人」になるか。これもまた、人生100年時代のビジネスパーソンにとって欠かせない生存戦略だと思います。
私は最近、ダイエットをしつつ、筋トレを続けています。少し太ってきたし、何より筋力の衰えを感じ始める年ごろになったもので……。腹筋を毎朝50回、夜50回、計100回を日課に続けていますが、これがなかなかしんどい。つい妥協しそうになりますが、ここで負けてはいかんと思い、「自分に勝つ!」と声を出しながら、何とか50回を達成しています。
だれしも加齢による衰えは日々、感じるわけですが、私は常に「今日がいちばん若い」と考えています。この年齢になると、「今日の自分がベスト」と言い換えることもできます。
つまり筋肉づくりも、自分にあった転職も、突然、「その日」は来ないわけです。朝起きたら突然、自分の腹筋が割れていることがないのと同じで、理想の未来を「待つ」だけでは、絶対に「その日」は訪れません。
50歳の自分のポジションは数年でなくなるかもしれない。5年後、どういう自分でありたいのか。いまの収入を維持したいのならば、逆算してどうイメージするのか。成功イメージと失敗イメージの両方を持って、いまできることをやっていくしかありません。
転職活動に「魔法」なんて存在しません。現実を直視して、自分の中の、そして外のいろいろな扉をたたいて開けてみることは大事なことです。どんどん扉を開けて、自分が思い描く「その日」に足りないモノを見つけ、加えていく。その先にやっと光明が見えてくるものです。
そして、それを始めるべきは「今日の自分」なのです。
この記事はNTTドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております 。
取材・文:浜田奈美
編集:鈴木毅(POWER NEWS)
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)








