【リーダーの成長に大きく寄与するコーチング】
そもそも、リーダーとして成長するとはどういうことでしょうか。何が変化し、何が高まることを「成長」と呼ぶのでしょうか。
日々の仕事のなかで、あなたはどんな取り組みを意識していますか。そして、それは実際にリーダーとしての成長につながっているでしょうか。まずは、自分自身に問いかけてみることから始める必要があります。
私たちは、コーチングを学ぶことはリーダーの成長に大きく寄与すると考えています。コーチングは、リーダーとしての能力強化だけでなく、セルフマネジメント力を高める点でも有効です。
では「セルフマネジメント」とは、いったい何を意味するのでしょうか。時間管理や感情のコントロールといった表層的なものだけでなく、自分自身の価値観や思考の傾向を理解し、それを適切にコントロールする力全般を指します。
近年の経済・社会環境は不確実性に満ちており、従来のリーダー像を大きく変えつつあります。上意下達的なマネジメントでは組織は動かず、リーダーの力が問われています。だからこそ、リーダーとして「自己理解」や「他者理解」、そして「未来への物語を描き出す力」が、これまで以上に重要になってきているのです。
「自分は何者で、どこに向かっているのか」
リーダーにとって大切なことは数多くありますが、ここでは特に重要だと考える3つを紹介します。
1つ目は、自己を理解することです。
自己を理解すること、つまり自分の価値観、強み、クセ、願望、そして行動の目的を明確にすることは、リーダーとして成長するための第一歩です。「自分は何者で、どこに向かっているのか」が明らかになればなるほど、自律的な行動の原動力が培われます。
コーチングの世界では「Who are you?」「Where are you going?」という問いかけが繰り返し重視されます。自分の存在と進む方向が明確になったとき、リーダーは自らの内側からエネルギーを生み出し続けることができます。
ある経営幹部とのコーチング・セッションで、私は「数年後に社長になったとしたら何をしたいですか? 何を実現したいのですか?」と尋ねたことがあります。その方は営業畑を歩み続け、専務にまで上り詰めた人物で、常に上司や会社の期待に120%以上で応えながらキャリアを築いてきました。しかし、その問いには答えられなかったのです。
周囲の期待に応えることで自分を形づくってきたため、いざ自分自身の意志で未来を描くとなると、言葉にならなかったのです。おそらく心の奥には「種」のような思いはあるのでしょうが、それを認識できていませんでした。
リーダーは、自らが何を実現したいのかを言葉にしなければ、ゴールに向かうエネルギーは湧いてきません。この気づきは、多くの日本企業のリーダーにも共通する課題といえます。
「他者理解」で新しい可能性を引き出す
2つ目は、他者を理解することです。
多様な価値観やバックグラウンドを持つ人々と協働する時代において、相手の考えや感情を汲み取る力はリーダーの信頼基盤を築きます。他者理解は単なる「傾聴」以上の意味を持ち、相手を尊重しながら対話を通じて新しい可能性を引き出す力そのものです。
これは単に相手の言葉を聞くのではなく、その価値観や見方、感情や背景を想像する力を意味します。
リーダーシップの本質は、さまざまな人と協働し、成果を共創することにあります。自分と相性のいい部下とだけ仕事をするのではなく、異なるスタイルや考えを持つ人たちとともに動く力が求められます。多様な他者を理解し、互いの違いを活かしながらコラボレーションを築くことが、これからのリーダーに欠かせない資質なのです。
VUCA(ブーカ=変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)時代のなかでは、予測できない問題が次々と生じます。そのときに必要となるのは、1人の天才的リーダーではなく、多様な視点を結集できるチームを導くリーダーです。
だからこそ「他者理解」は単なる対人スキルではなく、組織の生存戦略そのものだといえるのです。
未来のビジョンを構築する
3つ目として挙げたいのが、ナラティブ(物語)を統合して未来のビジョンを構築することです。
リーダーは自己・他者・組織という3つの文脈をつなぎ、バラバラだった体験や思考をひとつの物語にまとめ上げる役割を担います。その過程で、一人ひとりが自分の役割の意味を再認識し、組織との結びつきを強めます。ナラティブを共有し合うことで、社員のエンゲージメントは飛躍的に高まり、自らの意志で未来を描き、行動する自律型人材が増えていきます。
リーダーは「こういうことを実現したい」というビジョンを語るだけでは十分ではありません。そのビジョンを物語としてステークホルダーに伝え、共感と理解を得ることが欠かせないのです。経営環境が激しく変化する中で、未来を示す力は単なる戦略や数値計画を超え、組織全体を動かす「物語」として共有されなければならないのです。
日本企業においては、長らく「上意下達」型の文化が強く、トップの指示がそのまま現場に落とされる構造が一般的でした。しかし、AIの普及や働き方の多様化が進むいま、そのモデルでは人は動きません。リーダーには、自分自身を深く理解し、他者を理解し、そして未来の物語をともに描く力が必要とされています。
これからのリーダーシップは、単なる役職や権限に基づくものではなく、自己と他者の物語をつなぎ合わせ、共感と意志を引き出す営みなのです。
コーチングで進む「自己理解」と「他者理解」
なぜコーチングによって自己理解、他者理解、そしてナラティブの統合が進むのでしょうか。その理由は、コーチングの本質が「問いを介した他者理解」にあるからです。
コーチングでは、どういう問いかけをすれば相手が考えやすいのか、どういう承認(アクノレッジメント)が相手に響くのか、どういうフィードバックをすれば相手が自身の現在地を理解できるのかといった点に徹底的にフォーカスします。コーチは答えを与えるのではなく、問いを投げかけ、相手が自ら考えを深めていくプロセスを支えます。
このプロセスにおいて重要なのは、他者の価値観や強み、目的をいかに「聞き取る」か、という姿勢です。しかし同時に、自己を理解したぶんだけしか他者を理解できない、という逆説も存在します。自分で「自分の強みは何か」を探究した経験を持つ人だけが、その実感をもとに相手の探索を支援できるのです。
探究とは単に「考える」ことではありません。他者から問いを受け、その問いを内在化させることで霧が晴れるように自分の輪郭を見いだすプロセスです。それはまるで、自分というジャングルに分け入り、希少な植物を探しにいくような営みに似ています。
問いを通じて、自分の強みに到達する瞬間を体験した人は、どんな問いが人をそこへ導くのかを体感として理解します。つまり、自己認識の深化と他者認識の向上は、同時に進むのです。
【自己理解のための問い】
- どんなときに、あなたのパフォーマンスはもっとも高くなりますか?
- 誰と一緒に仕事をすると、あなたの能力はより引き出されますか?
- 行き詰ったとき、そこからどのようにしてあなたは抜け出してきましたか?
- あなたは、いかにして新しいことを学んできましたか?
- あなたはどんな人を開発することに長けていますか?
- あなたの中のいまだ開発されていない能力は何でしょう?
- あなたは何を学びましたか?
この記事はNTTドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております 。
文:鈴木義幸
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)
編集:鈴木毅(POWER NEWS)








