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一枚岩になれない、なぜ?
優れた個が集まっているのに…
経営チームが機能しない原因は

一枚岩になれない、なぜ?優れた個が集まっているのに…経営チームが機能しない原因は

ますます混沌とするビジネス環境のなかで、チームの士気を高め、さまざまな課題に対して柔軟に対応できる組織をつくるにはどうしたらいいか――その手法のひとつとして、近年、注目されているのが「コーチング」です。「優れたリーダーはコーチングを通じて部下の成長を支援する」という視点で語られることが多いコーチングスキルですが、実は、そのリーダー本人の成長のためにこそ必要なコーチングがあります。日本におけるコーチングの草分けとして、さまざまな分野の企業に対して組織変革を支援する各種コーチングサービスを提供してきた、コーチ・エィの取締役会長でエグゼクティブコーチの鈴木義幸さんに、ビジネスリーダーたちに向けたコーチングのヒントを解説してもらいます。

この記事はNewsPicksとドコモビジネスが共同で運営するメディア「NewsPicks+d」編集部によるオリジナル記事です。ビジネスやキャリアに役立つコンテンツが無料でご覧いただけます。 NewsPicks+d 詳しくはこちらをクリック
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目次

(写真:maroke / gettyimages)
(写真:maroke / gettyimages)

【実は「チーム」にするのが難しい “経営チーム”】

あっという間に今年度も半分を過ぎようとしています。経営者の皆さんの中には、すでに来年度の経営チームの構想を練っている方もいるかもしれませんし、経営チームがうまく機能していないと悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

「経営チーム」という言葉は一見、強い連携と信頼関係に基づいた集団を想起させます。しかし現実には、昇格の階段を駆け上がってきた人々の集まりであるがゆえに、もっとも「チームらしさ」が築きにくい組織体とも言えます。

優れた個が集まっているのに、なぜ一枚岩になれないのでしょうか——。今回は、経営チームが「個の集合」から「ともに未来を創るチーム」へと進化するためのヒントを整理します。

「パーパス」が組織に浸透しない理由

企業における「パーパス(存在意義)」が、組織内に浸透しない理由には、さまざまな要因があります。

そのなかでも最初に挙げられるのは、経営陣自体が「パーパスは本当に重要である」と心から理解していない、または信じ切れていないケースです。ただ形式的に「いまどきはパーパスが必要らしい」「他社もやっているからうちも作ろう」といった動機で策定されるパーパスでは、当然ながら組織に根づいていくことはありません。

あるいは、経営陣の意識が「なんとなく重要だとは思う」というレベルでとどまっており、その本質的な意味や意義を十分に咀嚼(そしゃく)できていないという場合も多く見受けられます。

その結果、社員に対して自分の言葉で語ることができず、抽象的な言葉のまま社内に掲げられるだけになってしまいます。これでは社員の共感や自発的な行動にはつながらず、むしろ「パーパス疲れ」を招く可能性すらあります。

また、パーパスの重要性自体を強く認識している経営者や経営チームであっても、「では、どうすればそれを組織全体に浸透させられるのか」という実践的な方法論を持っていないことも少なくありません。その結果、展開される施策が表層的になってしまったり、社内報やポスターなどの一方通行のコミュニケーションにとどまってしまったりするのです。これでは、社員一人ひとりの内面に働きかけることは難しく、パーパスが行動と結びつかなくなってしまいます。

(写真:bpawesome / gettyimages)
(写真:bpawesome / gettyimages)

さらに厄介なのは、経営チームがパーパスの意義も、浸透のための手段もきちんと理解しているにもかかわらず、日々の業務に忙殺され、パーパスに関する取り組みを後回しにしてしまうというケースです。

経営には常に「重要かつ緊急」な課題が山積しています。そのなかで、「重要だけれども緊急ではない」パーパスに関する活動は、優先順位の低いものとして扱われがちです。しかし、こうした姿勢が続けば、どれだけ良いパーパスを掲げても、それが組織文化として根づくことはありません。

会社が大きくなるにつれて
「経営チーム」 でなくなっていく

一方で、立ち上がったばかりの、いわゆるスタートアップ企業では、経営チームが「チーム」になっていることが多いものです。

会社を立ち上げていくということ自体が自分たちにとって大きなプロジェクトになっており、「社会にこういうことで貢献したい」というパーパスが明快で、そこに向かうためのエネルギー量も絶大です。当然、経営陣の間で専門分野の垣根などなく、事業の成功へ向けてお互いが遠慮なく意見をぶつけ合います。

(写真:kyonntra / gettyimages)
(写真:kyonntra / gettyimages)

ところが、会社が立ち上がって時間が経ち、企業規模がある程度、大きくなってくると、少しずつ変化が表れてきます。パーパスよりも、だんだんと「目標」に意識が向いてくるようになるのです。

Aさんの目標と管掌範囲はここ、Bさんの目標と管掌範囲はここ、など細かな役割分担と各人への目標設定が明確化されます。目標への志向性が強くなると、大義への意識が薄れていき、だんだんと各人のエゴが顕在化してきます。

「自分の目標が達成できなかったら、まわりからどう思われるだろう」「失敗したら、自分の報酬が減るかもしれない」というような、“会社”ではなく“自分”にベクトルが向いた意識が強くなるのです。

「個人として」のサバイバル戦略

人は太古から、仲間をつくって協力し合うことによって生き抜いてきました。仲間で協力し合って狩りをしてきましたし、農作業をしてきた歴史があります。「共創」はDNAに刷り込まれた人類にとってのサバイバル戦略であるにもかかわらず、なぜ会社という組織では共創を生み出すのが難しいのでしょうか。

ことを難しくしているのは、「組織の中で人は、個人としてのサバイバルも考えている」という点です。

「昇格して組織の上層で生き残らなければならない」「ヘマをせず、周囲から叩かれない程度の実績を出して生き残らなければならない」――こういったことは、多くの方が考えた経験があるでしょう。会社の目標も大切だけれども、組織の中で自分自身もサバイブしていかなければならないので、それは当然のことです。

(写真:jittawit.21 / gettyimages)
(写真:jittawit.21 / gettyimages)

しかし、自分だけがよければいいという振る舞いをするチームメンバーが増えてくると、そのチームはやがて崩壊してしまいます。チームを率いていくリーダー、たとえば経営チームであれば「社長」は、そういったメンバーがボードにいないか目を光らせ、そういった振る舞いを見つけたのであれば、早いうちに芽を摘んでおく必要があります。

もしも、この状況を放置してしまうと、「厄介な問題」がたくさん生まれ始めます。

経営チームをむしばむ「厄介な問題」

企業において「パーパス」の重要性が語られるようになって久しくなりました。経営者やリーダーの中には、「自社のパーパスをいかに社員に浸透させるか」を真剣に考え、さまざまな取り組みを行っている方も多いのではないでしょうか。しかし、あえて申し上げたいのは、「パーパスは浸透させるものではなく、探索するものだ」ということです。

ひと昔前の日本企業では、終身雇用が当たり前であり、多くの社員が「この会社で一生を過ごす」ことを前提に働いていました。企業理念や価値観が明文化されていなくても、ある程度、共有されていたように思います。こうした状況下では、経営層が理念やパーパスをトップダウンで伝えるだけでも、ある種の一体感が自然に生まれていたのかもしれません。

しかし、現在の社会では事情が異なります。働く人々のキャリア観は多様化し、転職や副業、リモートワークなどの選択肢も一般化しています。

「自分らしく働きたい」「社会とつながる実感がほしい」といった価値観も当たり前になり、企業の中には、年齢も背景も、働く目的も異なる人々が集まっています。こうした状況で、パーパスを一方的に「上から下に届ける」やり方では、社員の心に響かないのです。

(写真:VioletaStoimenova / gettyimages)
(写真:VioletaStoimenova / gettyimages)

もちろん、社員が心から信頼を寄せるような、圧倒的なカリスマ性を持つリーダーが存在する場合は例外です。そうしたリーダーの言葉には強い力があり、社員たちは自然と同じ方向に向かって進んでいくことがあるでしょう。

しかし、すべての企業にカリスマ経営者がいるわけではありません。むしろ、カリスマに頼らずとも、社員の内側から意思とエネルギーを引き出せる組織こそ、持続的に強いチームをつくっていけるのではないでしょうか。

……では、どうすればよいのでしょうか? そのために大切なのが、「探索の場をつくること」だと私は考えます。

探索の場とは、「自分で見つけた」という実感を持てるような場のことです。人は誰かから与えられた答えよりも、自分で探し、見つけた答えにこそ、強く納得し、深く根づくものです。パーパスもまた、頭で理解するだけではなく、腹落ちしてこそ本当の力を持ちます。

こうした探索のきっかけは、単なる情報提供やトップの説明だけでは生まれません。大切なのは、「問いを立てること」や「メタファー(比喩)を共有すること」です。問いは人の思考を深め、メタファーは感情や想像力に働きかけます。これらは、聞き手の内面を動かし、自らの中に答えを探す力を促すのです。

次回は、「共創」する経営チームをつくるための具体的なポイントをお伝えします。

鈴木 義幸 株式会社コーチ・エィ取締役会長 エグゼクティブコーチ

この記事はNTTドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております 。

文:鈴木義幸
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)
編集:鈴木毅(POWER NEWS)

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