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NTTドコモビジネス
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上田 英史
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2025年6月、日本外科学会、株式会社メディカロイド(以下、メディカロイド)、NTTドコモビジネス(当時の社名はNTT Com)は、神戸とフランス・ストラスブール間という前例のない距離で、手術支援ロボット「hinotori™ サージカルロボットシステム(以下、hinotori™)」を用いた遠隔ロボット手術の実証実験に成功しました。本実証において、NTTドコモビジネスは、準備期間約2カ月という短期間で通信環境の構築・提供を完遂。この裏には、NTTグループのケイパビリティはもちろん、お客さまのニーズになんとか応えようという必死の思いがありました。
今回は、主管となった関西支社のメンバーに加え、hinotori™を開発したメディカロイド様のご担当者にもインタビューを行い、医療と通信がタッグを組んだ大プロジェクトの舞台裏をひも解いていきます。
■ニュースリリース:手術支援ロボット「hinotori™ サージカルロボットシステム」を用いた欧州と日本間で初となる遠隔手術の実証実験に成功(2025年6月17日)
実証実験の様子
まず、準備期間2カ月でどんなことが行われたのか、提案および構築を担当した関西支社 ソリューションサービス部門の水島徹さんと清水弘美さんに話を伺いました。
――プロジェクトはどのように始まったのでしょうか。
水島さん
水島:メディカロイド様の親会社である川崎重工業株式会社(以下、川崎重工)橋本社長と小島社長が、4月にソーシャルロボットを中心とした産業プラットフォームについて会談を行った際、本件の話題が出たことから「協力できないか」という話になりました。実験の日は6月12日でかなりの短期ですので、すぐに社内で緊急体制が立ち上がり、関西支社一丸となって調整を始めました。国内外の関係者が集まる定例会議を開いて問題点を洗い出し、リアルタイムで解決策を講じていったのですが、特に最大のポイントとなる、どのルートの回線を使用すべきか、どのような設計が最速かといったことで、毎日のように議論し、最善策を探していきました。
――医療プロジェクトならではのハードルもあれば聞かせてください。
水島:遠隔手術における通信要件は日本外科学会のガイドラインに定められています。具体的には、遠隔手術において追加される遅延量は、通信の往復遅延を含めて100ミリ秒以内であること。さらに「揺らぎ(通信の遅延時間のばらつき)」も抑えなければなりませんし、パケットロス(通信の欠損)も厳禁です。今回、回線候補を複数検討した上で、最終的に「国際専用線」が最も要件を満たすと判断。結果的に、非常に高品質な通信環境を構築できました。
――どのようなルートを取ったのでしょうか。
清水さん
清水:太平洋ルートを軸に、アメリカ、ロンドンを経由してフランス・ストラスブールへ至るメインルートと、バックアップの2回線体制を構築しました。本来であればロシアルートが最短だったのですが、地政学的リスクを考慮し、使用を見送ったのです。
また、国際専用線の提供は、「日本国内のアクセス回線」「国際間のコア回線」「フランス国内」の3つのセグメントに分かれています。それぞれ担当が異なり、調達や構築、進捗管理を分担して対応する必要があった上に、2回線分だったので大変ではありました。NTTドコモビジネスエンジニアリング(国内デリバリー)、NTTリミテッド・ジャパン(国際専用線サービス主管)、グローバルネットワーク(海外回線調達)の皆さんにもかなりご尽力いただきました。
――当日までトラブルなどはなかったのでしょうか?
清水:構築自体は順調に進んだのですが、テスト期間中、海外キャリアから「メンテナンス工事のために回線を一時停止する」といった通知が連日のように届きました。回線の変更があれば、遅延や揺らぎに影響を及ぼしますし、ロボット操作の精度にも関わります。
そこで急きょキャリア側と調整し、工事を延期してもらうよう交渉しました。本来、こうした工事スケジュールの変更は難しいのですが、事情を説明した結果、特例的に対応してもらえたのです。
――ロボット操作に影響が出る可能性もあったのですね。
水島:はい。hinotori™のような手術支援ロボットの操作は非常に繊細であり、通信状態が変動すると医師も敏感に反応します。わずかな差であっても、手術の操作感に違和感を覚える可能性があるため、当日の私たちは常に緊張状態でした。
清水:そうですね。日本から通信状態をモニタリングしながら、異常があれば即座に対応できる体制を整えていました。幸いにも本番では大きなトラブルは発生せず、無事に遠隔手術を成功させることができました。
後半のインタビューは、hinotori™が展示されているメディカロイド様のショールームへ場所を移して実施。実証実験の全体マネジメントを担当したメディカロイド システム開発部の大橋政尚さん、フランスで実証実験を見届けた関西支社 第一ビジネスソリューション営業部門 上田恭也さん(営業)、ソリューションサービス部門 秋本哲也さん(SE)、日本側で調整をした同部門 篭田淳さん(SE)に登場いただきます。
hinotori™を囲んで。左から、上田さん、篭田さん、秋本さん、メディカロイド 大橋さん
――改めて、今回のプロジェクトの経緯について聞かせてください。
大橋:hinotori™は、手術支援ロボットとして2025年11月現在国内外で1万4千件以上の手術実績があります。遠隔手術の実証実験では、日本国内ではもちろん、愛知―シンガポールでの実績がありますが、地球の約半分に相当する神戸―フランス間の接続は、これまでにない挑戦でした。加えて、遠隔の実証実験では通常半年ほどの準備期間を設けるところ、4月にプロジェクトが立ち上がった段階で、すでに実施が6月と決まっていて……。親会社の川崎重工が社会課題の解決に向けて一緒に取り組んできたNTTドコモビジネス様のお力をお借りすることになったのです。
――プロジェクトはどのように進めていったのでしょうか。
大橋さん
大橋:今回キックオフはおろか、一度も対面でお会いする時間もなく、全てオンラインでのやり取りでした。それでも、大きなトラブルなくプロジェクトを完遂できたのは、NTTドコモビジネスの皆さんのプロジェクトマネジメントと対応力が非常に高かったからだと思います。特に、準備から本番までの2週間という長期間にわたって、エンジニアの方の現地派遣をはじめフランスと神戸間をライブビューイングするためのソリューション構築など、当初はなかった要望に対しても柔軟に対応してくださったことは、本当に感謝しています。
上田:ありがとうございます。そういっていただけるのはうれしいですね。私はとにかく成功させるための体制を整えることが役目と、この人なら!というメンバーに声を掛けていきました。
――ライブビューイングのご要望に対しては、すんなり対応できたのでしょうか。
秋本さん
秋本:ライブビューイングは、通常のTeamsなどを使った通信ではどうしても映像と音声に遅延が生じてしまい、リアルタイム性が求められる医療現場には向かないため、オープンソースの通話ツールをベースに独自に構築しました。このフォローも必要なため、今回は現地で直接対応に当たることになりました。
――フランスでの準備はスムーズに進みましたか。
大橋:現地には本番2週間前に行ったのですが、到着して最初に直面したのが「部屋まで回線が来ていない」という問題でした。建物内のサーバールームまでは配線されていたものの、実証実験を実施する部屋までは未接続でした。図面上では想定していたのですが、やはり海外では現場での状況確認が重要だと痛感しました。
秋本:そうですね。ただ、現地のネットワーク管理者が非常に頼りになる方で、こちらの希望を伝えると、すぐに配線プランを提示してくれて、結果的には大きな遅延もなく準備を完了できました。
――当日の実証実験の雰囲気も聞かせてください。
上田さん
上田:実証実験はフランス時間の朝7時からスタートでしたが、施設には6時からしか入れないので、その1時間、必死で準備しましたね。
大橋:開始直前まではかなり緊張感がありましたが、本番は驚くほどスムーズでした。ロボットの動作も安定していて、「本当に2万キロ離れたフランスから操作しているのか?」と疑うほど自然なものでした。今回フランスで実証実験を指揮したドクターは、2001年に世界初の遠隔手術を成功させた方で、その方から「20年前よりはるかに進化している」とのコメントを頂けたのは、非常に感慨深かったですね。
秋本:私たちが一番気にしたのは音声です。提供したライブビューイングの音声とhinotori™にもともと搭載されている音声がハウリングしてしまい、その調整をギリギリまでやっていて……。ドキドキしましたが、本番は全くハウリングすることなくうまくいきました。
――今回のプロジェクトを通じて感じたことや、今後の展望があれば教えてください。
大橋:今回特に印象的だったのは、皆さんが単に「回線を提供する通信会社」という枠を越え、「その回線を利用してお客さまの要望を実現する」という目線できめ細やかな対応まで担ってくださったことです。このような目線・対応ができることがNTTドコモビジネス様のポテンシャルであり、「ソリューションパートナー」としての頼もしさを感じました。今回の成功を経て、これからメディカロイドが遠隔手術の社会実装フェーズに移行していく中でも、こうした主要技術を有するパートナーとの連携は不可欠だと確信しています。一緒に未来を切り開いていける存在として、大きな信頼を寄せています。
上田:今回のプロジェクトは、遠隔手術という社会的インパクトの大きい現場で、インフラが果たす役割の重要性を目の当たりにしました。今後も、川崎重工様とのソーシャルロボットを中心とした社会の実現をめざして、医療をはじめとする社会課題の解決に寄与できるようなプロジェクトに、より積極的に取り組んでいきたいと強く思っています。
秋本・篭田:医療という領域でネットワークがどれほどの影響を与えるのかを、今回あらためて実感しました。医師の方々が操作する姿を見て、「この環境が患者さんの命を支えている」と思うと、これまでとは全く違う責任感が生まれています。今後もこうした現場に関わり続けられるよう、エンジニアとしての技術と視野の両方を、さらに高めていきたいと思っています。


■参考リンク
川崎重工とNTTドコモビジネスが、ロボット・モビリティ・社会インフラ等のネットワーク連携による新しい社会の創造に向けた戦略的協業に関する覚書を締結
NTTドコモビジネス関西支社
上田 恭也
西日本エリアの製造業向けICTコンサルタントや法人営業担当、企画/事業計画担当などを経て、現在は関西支社にて製造業向け営業アカウントマネージャーを担当しています。「頭はクールに、心はホットに」をモットーに、ICT/DXを通じて関西の企業を支え、ビジネス発展に貢献することを使命に活動しています。
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上田 英史
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ソリューションコンサルティング部 地域協創推進部門
井上 理
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内村 健一