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拠点が分散していても
被災時に業務を止めない
「1チーム」で動くための多拠点BCP設計法

拠点が分散していても被災時に業務を止めない 「1チーム」で動くための多拠点BCP設計法

2024年は能登半島地震や各地の水害をはじめ自然災害が相次ぎ、2025年も引き続きBCP(事業継続計画)への関心が一層高まっています。しかし拠点を多く持つ企業の一部では、特定拠点の被災時における全社的な対応体制が整っていないケースも少なくありません。地震や水害、感染症など、たとえ被害が局所的でも、サプライチェーンを構成する他拠点からの支援体制が不十分なままでは業務継続に影響がでるでしょう。そこで、本記事では「拠点横断のBCP連携モデル」の実践法について解説します。

目次

一部の被災が全社リスクにつながる前に、
横断型BCPを

企業のBCPへの関心は高まっており、内閣府が発表した「令和 5 年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によると、大企業では76.4%、中堅企業では45.5%が策定済みとなっています。

ただしその一方で、リスク対応を実施している企業の87%が「自社従業員への取組の浸透」を課題として挙げています。さらにBCPの対象災害について「災害を特定せず、災害から生じる結果(インフラの途絶等)への対応策を対象としている」については、大企業で 16.4%、その他企業で 19.6%と低い割合です。BCP策定済み企業でも、その計画が万全でないことが浮き彫りになっています。

実際に、特定地域の拠点被災により業務全体がストップするケースが少なくありません。その原因の1つが、重要機能が一箇所に集約されていることです。特に深刻な問題の一つが、被災中の顧客対応の停止です。数時間の対応停止が、長年の取引先との信頼関係を失うきっかけになることもあります。顧客は災害状況を理解してくれる場合もありますが、「動いている他社」と比較される現実もあるのです。

そこで重要になるのが、拠点間で連携して動ける「多拠点型BCPモデル」の構築です。本記事では、このモデルの作り方と、顧客接点を止めない体制づくりの具体的な方法を紹介します。

なぜ「1カ所の停止」が「全体停止」につながるのか

多くの企業では、本社機能・物流拠点・コールセンター・サーバー設備などが特定地域に集約されています。この集約化は平常時の効率性を高める一方、災害時にはリスクとなります。

例えば営業窓口が東京本社に集約されている場合、首都圏での災害により全国の顧客対応が不可能になります。また受発注システムが特定のデータセンターに依存していれば、被災時に全社の取引が滞ってしまいます。

さらに問題なのは、顧客が必ずしも災害状況を加味してくれない現実です。同業他社が通常営業している中、自社だけが「災害のため対応不可」では、顧客が他社を優先する可能性があります。

このような事態を防ぐには、業務機能と顧客接点の「分散と引継ぎ」体制の事前整備が不可欠です。1つの拠点停止時に他拠点が機能代替できる仕組みを構築することで、事業継続性を大幅に向上させることができます。

多拠点型BCPモデル設計の基本:
機能単位で業務をブロック化

多拠点型BCPモデル構築の基本は、営業・バックオフィス・受注・顧客対応などの業務を機能単位で整理し、「拠点Aが止まったら、拠点Bがどこまで代行するか」を明確にルール化することです。

代替手順は詳細にマニュアル化し、クラウド上で共有します。災害時に通常のネットワークが使用できない可能性もあるため、複数のアクセス手段を確保しておくと良いでしょう。代替体制の設計では、100%の機能代替ではなく、事業継続に最低限必要な機能を優先順位付けして整理することがポイントです。「何を最優先で継続するか」を明確にしておきます。

顧客対応の継続性確保には、受信窓口(電話・問い合わせフォーム・SNS)を他拠点またはクラウドPBXへ自動切替できる仕組みを構築します。FAQやWebサイトの更新権限、チャットボットや問い合わせ管理ツールの管理権限を複数拠点に分散し、顧客データベースへのアクセス権限も複数拠点で共有することで、有事の際も一貫性のあるサービス提供が可能になります。

拠点横断のBCP体制構築の3ステップ:
安否・通信・業務引継ぎの流れを整える

・ステップ1:安否確認を全社で統一・自動化する

拠点横断のBCP体制構築の第一歩は、社員の安否確認システムの整備です。どの拠点の社員がどのような状況にあるかを迅速に把握することが、支援体制構築の前提となります。なお、先に挙げた内閣府の調査において、被害を受けた際に有効であった取組についての問いに対して、全体では「社員とその家族の安全確保」(42.8%)、「安否確認や相互連絡のための電子システム(含む災害用アプリ等)導入」(37.9%)が上位を占めました。

Biz安否確認/一斉通報」のようなシステムを活用すれば、従業員は簡単な操作で安否の回答を送信でき、自動集計、結果共有まで数分で実現できます。リアルタイムで全社員の状況を把握し、「誰が対応可能か」をすぐに判断できる体制を整えることで、迅速な業務引継ぎが可能になります。

・ステップ2:災害時でもつながる通信手段をあらかじめ用意しておく

拠点が被災してネットワークが停止すると、業務と顧客対応がすべてストップします。これを防ぐため、予備回線をあらかじめ用意することが重要です。光回線とは別にモバイル通信(LTE)を備え、音声通話も固定電話に加えクラウドPBXで他拠点や在宅からも通話できる環境を整備します。

最近では、災害時のバックアップ回線として「Starlink Business」のような衛星インターネットサービスも注目されています。低軌道衛星を活用したこのサービスは、従来の静止衛星と比較し高速・低遅延通信を実現しており、地上の通信インフラが被災した場合でも安定した通信環境を確保できます。

また、社内ネットワークへの接続はVPNなどで外部から安全にアクセスできる仕組みを整えておくことで、場所を問わず業務継続が可能になります。

・ステップ3:業務・顧客対応の引継ぎをクラウドで可視化しておく

事業継続のために最も重要なのは、「この作業はどこまで誰ができるか」といった情報をあらかじめ整理して可視化しておくことです。業務手順書・問い合わせ対応手順・テンプレート類をクラウド上で共有し、権限設定をあらかじめ実施しておきます。この際、単に情報を共有するだけでなく、実際に他拠点のスタッフが業務を代行できるよう、定期的な研修や訓練も実施することが大切です。

事業継続の秘訣は、「横串の体制」を整えること

従業員の安全が確認できたら、次は顧客などの取引先に「問題なく対応できます」と、安心してもらえる状態を整えることがBCPの重要な目的です。その実現には、先述した安否確認・通信インフラ・業務継続・顧客対応といった各機能を横断的につなぐ体制づくりが欠かせません。

拠点が分かれていても、「1チーム」として連携できる仕組みは構築可能です。重要なのは、災害が起きてから対策を講じるのではなく、平時から計画的にBCP体制を整えておくことと言えるでしょう。

ITが欠かせない現在のビジネス環境では、BCPの設計と通信インフラ支援の両面に対応できるサービスと連携し、持続可能な防災体制を築くことが求められます。災害に強い組織づくりは、顧客との信頼関係や従業員とその家族の安全を守るだけでなく、社会全体の安定した経済活動の維持にもつながる取り組みなのです。

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