経済産業省の定義するDXとは?DXの考え方や失敗・成功事例も解説。

経済産業省の定義するDXとは?DXの考え方や失敗・成功事例も解説。

公開日:2022/11/24

経済産業省は、企業が日々激しく変化する市場環境に対応するためにDXを実施する必要があることから、DXに関する政策を打ち出しています。

しかし、日本企業のDXに対する意識は低く、「実施する予定がない」と考えている企業は約6割にのぼるのが現状です。そのため、どのようにDXに取り組めばよいのかわからないという企業も少なくありません。

本記事では、経済産業省の定義するDXや政策、失敗・成功事例にもふれていきます。施策を検討する際には参考にしてみましょう。

経済産業省の定義するDXとは

経済産業省はDXを次のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

引用:「デジタルガバナンス・コード2.0」(経済産業省)

つまり、DXはデジタル技術の活用によってビジネスモデルを変革し、激しい市場の変化に対応できる企業力を高める取り組みだといえます。業務効率化や生産性向上など業務体制の変化だけでなく、組織の在り方や文化も変革を行う点も知っておきましょう。

DXの定義や活用事例について、詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

DX・GX・SXの違い

DXと似たような言葉にGX・SXがあります。それぞれの意味をみていきましょう。

GXとは、グリーントランスフォーメーションの略称です。温室効果ガスの排出量削減と産業の競争力向上を目標とした、社会全体の取り組みをさします。GXの実施によって環境保護と経済成長を目指している企業としてアピールできるため、ブランド力の向上にもつながるでしょう。

SXとは、サステナビリティ・トランスフォーメーションの略称です。経済産業省によると、「不確実性が高まる環境下で企業が持続可能性を重視しつつ、稼ぐ力と社会のサステナブル(持続可能性)を両立し、中長期的な価値を創造するための戦略指針」と定義しています。

そして、経済産業省はGXとSXに関して、DXとの一体的な取り組みの実施を推進しています。

経済産業省のDX政策

新型コロナウイルス感染症の蔓延により、サプライチェーンの脆弱性や企業単位のビジネスにおける課題が明るみに出ました。ビジネス環境は日々変化しており、企業には柔軟な対応が求められています。激しく変化する市場環境に対応するためにもDXは必要不可欠だといえるでしょう。

DXを実施する企業を増やすためにも、経済産業省は国をあげた政策を行っています。例えば、地方版IoT推進ラボや地域のIT関連部活の支援、中小企業デジタル化応援隊事業など地域や業界内で協力できる体制の構築に重点を置いています。

経済産業省のデジタルガバナンス・コード2.0におけるDXの考え方

経済産業省は2020年11月9日にデジタルガバナンス・コードを公表しました。そして、2022年9月にはDX推進ガイドラインと統合され、デジタルガバナンス・コード2.0が策定されました。デジタルガバナンスコードは、企業の自主的なDX推進を促すために、経営戦略の策定や指針の考え方など経営者に求められる次の5つの項目をまとめたものです。

・経営戦略・指針の考え方
・人材・企業文化の考え方
・システムに対する考え方
・成果に対する評価と指標の作り方
・ガバナンスの在り方

ここでは、デジタルガバナンス・コード2.0の内容について詳しくみていきましょう。

経営戦略・指針の考え方

経営戦略・指針は、ビジネスとITシステムを一体的に捉え、デジタル技術による市場の変化が自社にもたらすリスクや影響を考慮した上で明確に設計します。加えて、価値創造のストーリーをステークホルダーに公表することが大切です。

デジタル技術により、企業内だけでなく、企業・業務提携を超えた生活者視点での価値提供をし、革新的な価値創造を目指すのが望ましい方向性といえます。

人材・企業文化の作り方

人材・企業文化の作り方では、デジタル技術の活用に必要な体制の構築が重要です。既存社員の人材育成や中途採用の人材確保だけでなく、外部組織との関係構築や協業も視野に入れるとよいでしょう。

例えば、人材育成ではリスキリングやリカレント教育などを用いたデジタルリテラシー向上の施策を行う方法があります。全社員が目指すデジタルリテラシーのレベルとDXに必要となるスキルを意識し、それぞれ向上できるようなアプローチを明確にしましょう。

また、人材・企業文化を整えるためには経営戦略と連動した取り組みを行う必要があるため、経営層の協力も不可欠といえます。

システムに対する考え方

DXはシステムの導入に留まりません。部署単位での複雑化やブラックボックス化を回避するために、システムやデジタル技術の活用に向けたプロジェクト、マネジメント方針、活用する技術・運用・投資計画などを明確に提示しましょう。

デジタル技術導入の担当者だけでなく、全社員がシステムを活用できる環境構築が重要です。また、ビジネス環境の変化に対応するために、既存の情報システムやデータを最新技術と連携できるように準備しなければなりません。

導入後に関しては、定期的にビジネス環境や利用状況を確認、情報資産の現状分析・評価を実施し、課題把握を行いましょう。浮き出た課題によって、レガシーシステム(技術的負債)が発生しないような対策や改善策を実施します。

成果に対する評価と指標の作り方

DXにおける成果の達成度を測る指標を定めましょう。戦略や施策の達成度はKPIで評価します。KPIは業務におけるパフォーマンスを測り、目標までの進捗を図るための指標です。

実施する全ての取り組みに対してKPIを設定し、KGI(最終財務成果指標)と連携させます。策定した施策に対して成果を上げられている状態が望ましい方向性です。

今後のデジタル戦略においては、ESGやSDGsに関する成果を上げることも視野に入れるとよいでしょう。

ESGとSDGsに関する記事はこちらからどうぞ。

ガバナンスの在り方

経営者は取り組みを実施する際に、ステークホルダーへの情報発信を行い、リーダーシップを発揮することが大切です。DXの専門部門などと協力し、デジタル技術の導入によるシステムの現状・課題を把握し、戦略の見直しを行うようにしましょう。

また、1つの部署に丸投げするのではなく、経営者自身がDXの取り組みに関わることが重要なポイントです。DXは企業全体のビジネスモデルの変革が目標であり、一部の社員の課題を解決する取り組みではないことから、経営者が経営や事業レベルの進捗や成果把握を行う必要があります。

また、DXを推進する場合、施策の変更や調整が生じるケースも想定されるため、そうなった場合の対策やルールも事前に策定しておくとよいでしょう。

DXの現状

大企業や一部の業界ではDXへの意識や取り組みが増加しているものの、理解が足りていないのが現状です。ここでは、総務省のデータに基づき、日本企業におけるDXの現状についてみていきましょう。

参考:「我が国におけるデジタル化の取組状況」(総務省)

大企業ではDXを意識している企業が多数

大企業では約4割の企業が既にDXを実施、約2割の企業が今後実施を検討していることから、大企業の6割以上がDXを意識しています。

対して、中小企業では7割の企業が「実施していない」または「今後実施する予定はない」と回答しており、大企業と比較した場合、DXに対する意識や理解に大きな差がある状況です。

IT・金融・保険業での取り組みが進んでいる

業種別に比較すると、IT業では6~7割の企業が実施しており、金融業・保険業の企業で取り組みを進めている割合は約4割です。

他方、医療福祉や運送・郵便業、宿泊業・飲食業において、取り組みが進んでいる企業は1~2割と少ない傾向にあります。とくに対面がメインとなる業種に関しては今後、導入が進んでいく可能性があるといえるでしょう。

DXに対する理解がまだまだ足りない

日本企業全体では、約6割がDXを実施していないと回答しています。そもそもどのような取り組みがDXになるのかわからないという企業も多いのが実状です。

経済産業省は、DXが進まない理由を次のようにあげています。

・経営層がデジタル化の重要性を理解していない
・経営者が積極的に取り組みに参加していない
・企業全体ではなく、IT部門のみが取り組んでいる

また、DXをデジタル技術の導入と考えているため、進まない・失敗してしまう企業も少なくありません。企業のビジネスモデルの変革という視点で検討し、取り組みを進める必要があるでしょう。他社の成功事例を参考にするだけではなく、自社の課題を洗い出し、経営戦略や指針に反映させることが大切です。

DXの失敗・成功事例

企業のDXに対する取り組みは成功事例のみではありません。ここでは、3つのDX失敗・成功事例についてみていきます。他社の事例を参考に、自社の課題を解決できる施策を検討してみましょう。

Spotify

Spotifyは音楽サブスクリプションサービスの大手企業で、ビジネスモデルはDXの成功事例といえます。従来のネット上で音楽データを配信するiTunesのようなサービスとは異なり、Spotifyは音楽の所有から共有へと変化しました。

iTunesをはじめとした音楽サービスは、レコードやCDなどに入れられた音楽データをiPhoneやiPadに入れて持ち運べるようにし、利便性の向上を実現しています。

Spotifyはサブスクリプションの仕組みを整え、ユーザーが月額料金を支払うことで、他人のプレイリストの共有なども可能としました。欲しい音楽を都度購入するビジネスモデルは崩壊し、CDを販売する音楽業界のビジネスモデルは大きな変革が求められています。

GE

アメリカの大手複合機メーカーであるGEは産業向けIoTの開発を進めたものの、大きな成果にはつながりませんでした。失敗に至った要因として、DXへの意識が強く短期的に成果をあげる施策に力をいれてしまったため、大きな改革につなげられなかったのがあげられます。

同社はDX推進の専門部門GE Digitalを作り、目標を「2015~2022年の間に世界トップ10のソフトウェア企業に成長する」に設定します。しかし、なかなか成果が出ずに株価が下がったため、短期的な収益化を目指すようにシフトしました。

GEの失敗例からもわかるように、DXはすぐに実現できるものではありません。成功に導くためにはビジネスモデルの変革を目標とし、中長期的な視点での強い推進力と持続力が必要になるでしょう。

メルカリ

国民的フリマアプリのメルカリはDXの成功事例といえます。従来、ヤフオクなどのネットオークションサービスは存在していたものの、パソコン主体のサービスが多い傾向にありました。

また、取引を行うためには実名が必要なケースが多く、個人間の取引において拒否感を持つユーザーも多い点が課題にあげられます。メルカリは匿名での取引を可能にし、気軽に個人間の取引を行えるように転換したのです。個人間取引に拒否感を持つユーザーの取り込みに成功しました。

まとめ

本記事では、経済産業省におけるDXの定義から政策、デジタルガバナンス・コード2.0における考え方について解説しました。日本企業の多くは、DXへの理解がまだまだ足りていないのが現状です。激しく変化する市場に迅速に対応するためには、DXによる競争力の向上が必要だといえるでしょう。

しかし、DXに取り組んだとしても、必ず成功するわけではありません。失敗事例から、DXは短期的ではなく中長期的に課題を解決していく視点が必要だと想定されます。

また、いきなり大きな目標の実現や複数の課題解決を試みた場合、DXは失敗してしまう可能性も想定されます。そのため、DXにゼロから取り組む場合は、ツールによる業務の自動化やシステムの導入といった最小の単位から、進めていくことが大切です。

NTTコミュニケーションズが提供するSmartGoStaple®では、交通費の経費精算業務を自動化・効率化できます。従来の経費精算にかかっていたコストや人件費を削減可能です。DX推進を行う場合、ツールの導入などの最小単位から取り組みましょう。

経費精算でお悩みの方へ

こんなお悩みございませんか?

  • 経費や交通費の立替が多く、経費精算に稼働がかかる
  • 立替の事務手続きが多い
  • 出社せずに経費精算を完結させたい
  • 定期代支給を廃止し、都度精算にしたい

そのお悩み、SmartGo® Stapleですべて解決できます!

あわせて読みたいおすすめの記事