経理の仕事内容とは?業務効率化の手順や必要な能力も解説
公開日:2022/10/19
経理業務は会計や収支管理など多岐にわたるうえ、属人化しやすい職種といえます。そのため「経理の仕事内容を把握しきれていない」「負担軽減のために業務効率化を図りたいが、どこから手をつけてよいかわからない」と悩んでいる人事担当も少なくないでしょう。
本記事では、経理の仕事内容と課題点、業務効率化の手順、経理に必要な能力などについて解説します。
目次
経理の仕事内容
経理業務の効率化・最適化を行うためには、仕事内容を詳細に把握する必要があります。経理の主な仕事内容や役割についてみていきましょう。
お金の流れを数値化
経理の主な仕事内容は、会社の中で動くお金の流れを正確に把握できるよう数値化することです。企業会計原則や社内ルールに従い、日々の売上高・仕入額・給与・加入保険料の処理、売掛金の管理、減価償却などさまざまな会計業務を担います。
また、会計処理の記録を元に、決算書の作成や申請手続きなども行います。細々としていながらも正確性が求められる業務が多いため、一人経理の場合は特に負担が大きくなるでしょう。
例えば、経費精算における交通費の細かい精算方法についてはこちらから。
経営判断の指針として使われる
経理により作成された決算書は、企業経営における赤字事業の対処・コスト削減・注力すべき事業など、経営判断の指針にします。
また、必ずしもすべての経営者が経理に詳しいとは限らないため、資金繰りに関して経理担当者に改善案を求める必要が出てくるケースもあります。単純なデータ入力スキル以外にも、コミュニケーション能力や責任感が問われる役職です。
企業単位で処理方法に差がある
経理業務のIT化を推進する企業が増加している一方で、アナログ手法にとどまっている企業も少なくありません。会計処理のみについても、会計ソフトやExcel、小口現金など企業によって多種多様です。
社員構成や会計処理方法は企業形態により異なるため、公正妥当な会計を行うための指標として「企業会計原則」が存在します。「財務諸表規則」「会社法」「税法」といった規定があり、経理はすべてを尊守したうえで職務にあたる必要があります。
経理の仕事内容に対する課題
経理にはルーティン化している業務も多く、負担軽減のために効率化を図る企業が増えているのが現状です。しかし、業務効率化を行うにあたってさまざまな課題点も浮上しています。
キャッシュレス決済が進まない
会計処理方法として古くから用いられてきた小口現金には、社員の立替金などを即精算できるといったメリットもあるため、完全にキャッシュレス化できていない企業は少なくありません。
しかし、小口現金の管理では精算ミスが発生した際、帳尻を合わせるために領収書を1枚ずつ見直す必要が出てくるなど、経理担当者にかかる負担が増大します。また、現金の物理的な管理も経理業務における負荷のひとつです。
あらゆるものを紙によって処理している
経理業務においてIT化が進んでいない場合、契約書や請求書、領収書など紙面上での処理が多くなります。頻繁に整理整頓をしていても、書類が多い状態では対象物を探し出すのに多くの時間がかかるため、非効率的です。
2022年1月以降は電子帳簿保存法の改正により、電子上で行われた取引について電子帳簿での保存が義務付けられています。そのため、遅くとも2023年12月までには電子帳簿保存についての対処が必要です。
承認スピードが遅い
正確性を重視する経理業務では、業務のスピードと精度の兼ね合いも課題です。経営判断の指針となるデータの承認が遅延すれば、自社経営だけでなくサプライチェーンに対しても甚大な悪影響を及ぼすリスクがあります。
正確性を怠りミスを見逃した場合、サプライチェーンからの信頼失墜だけでなく、法的な処罰を受ける可能性があるため、経理担当者への責任的負担が増大します。スピードと正確性を両立させるには、できる範囲の業務効率化が不可欠です。
社内の情報共有がスムーズではない
他部署から売上や仕入額などの情報を受理できなければ、経理業務は行えません。経理業務に必要な情報共有が遅れた場合、残された時間の中で決算書や給与計算の対応に追われ、経理担当者の負担につながります。
作業時間が少なくなれば精算ミスが発生する可能性も高まるため、社内における情報共有の効率化についても検討が必要です。
属人化を解消できない
公的資格の他にもさまざまなスキルが必要となる経理は、ほぼ独占業務であり属人化しやすい職務といえます。継続性も求められるため、1人の担当者のみが仕事を行う企業も少なくないでしょう。
特定の人材にばかり任せていては経理業務の属人化が深刻になり、その担当者が抜けただけで会社に損害が及ぶリスクがあります。しかし、企業によっては人材不足などにより属人化の解消が困難なため、経理業務における重大な課題のひとつです。
経理業務の仕事内容に対する効率化の手順
経理の仕事内容はある程度定型化しているため、一部の業務は新しいツールやシステムの導入により効率化できます。経理業務における最適な効率化の手順について解説します。
企業単位で行う業務内容の見える化
時系列順ですべての経理業務を大まかに洗い出し、かかる工数の可視化を行います。経理業務において非効率的な部分が見えやすくなり、課題点の明瞭化が可能です。
時系列順の業務リストを作成した後、それぞれの業務における具体的な行動についても書き出します。別の経理担当者や他部署の社員も業務リストを閲覧できる状態にすれば、属人化の防止にもつながります。
求められる結果と手順の見直し
経理の仕事には正確性が求められるものの、過度なプレッシャーが生まれれば新たなミスも発生しかねません。発生したミスについては軽度なものであれば許容しつつ、起こりうるミスの防止に着目した事前対策が必要です。
また、業務フローを見直す際はECRS(イクルス)の原則を参考に行いましょう。ECRSの原則とは、作業項目の見直しに関する4つの観点です。すでにある作業に対し、以下の原則に基づいた見直しを行うことで、改善点が見えやすくなります。
・省略(Eliminate)…作業をなくす
・合体(Combine)…作業を一本化する
・並べ替え(Rearrange)… 作業の順序を入れ替える
・簡素化(Simplify)…作業を簡単にする
最小単位から効率化を図る
経理業務をもれなく効率化するには、優先順位づけをする必要があります。しかし、いきなり全社的な部分から取り組むのは困難です。個人レベルで変更できる小規模な箇所を優先し、効率化を図るとよいでしょう。
企業ができる行動としては会計ソフトやダブルチェックを導入する、手間がかかる作業はアウトソーシングを利用する、振込処理を一括で行うようにするといった例が挙げられます。
徐々に適応する範囲を広げていく
全社的な取り組みが必要となる会計書類のフォーマット統一・キャッシュレス化・ペーパーレス化などについては、個人業務の効率化が完了した後に着手していきます。各部署から提出される経費精算書のミスを減らすだけでも、経理担当の負担を大幅に軽減できます。
キャッシュレス・ペーパーレスについては、それぞれのメリットだけでなくデメリットや考えうるリスク、対処法についても把握しておきましょう。
例えばペーパーレス化を推進する場合、システムの故障などが発生した際にデータが損失するおそれがあります。しかし、クラウドサーバー上にデータをコピー・保管しておけば、有事の際にも重要データの破損を回避できます。
より詳しいキャッシュレス化の進め方や導入手順はこちらからどうぞ。
評価・改善する
業務効率化のために改革を行った場合は、DCAPサイクルに基づき評価・改善を行いましょう。DCAPとは、次の4ステップを繰り返すサイクルです。
・Do:実行
・Check:評価
・Action:改善
・Plan:計画
「Check(評価)」のステップでは、第三者となる経理担当者以外の社員にも成果を確認させ、客観的な評価を受けるのが効果的です。特に、一人経理の体制をとっている場合は客観的視点を意識しましょう。
経理の仕事内容に必要な能力
経理は単純作業だけにとどまらず、社会人としての基本的な能力や考え方が必要となる業務も多数存在します。経理に求められる能力を3つみていきましょう。
情報処理スキル
経理は社内外問わず、毎日のように膨大な情報を取り扱う業種であり、さまざまな情報の収集・処理能力が重要となります。他部署からの情報収集だけでなく、経理業務に関係する法改正への対応など、時勢に対する情報感度が求められます。
情報を処理する際、データに記された事実と担当者自身の私見を区別する「論理的思考力」も大切です。単に会計処理をこなすだけでなく、よりよい経営に導けるような人材の選定・育成を心がけましょう。
責任感、使命感
企業のお金を管理する経理業務には、強い責任感や使命感が必要不可欠です。請求書や支払いにミスが発生すれば、自社のイメージを損なう可能性もあります。
法律が関わる決算と確定申告は、特に責任重大な業務です。裏方の仕事ではあるものの、日頃から企業の信頼に直結していると意識させる必要があります。
管理、マネジメントスキル
経理の管理職については、マネジメントスキルや実績が求められます。当然経理としての個人スキルは必要であり、さらに指導者として1つの部署を統率し、目標達成に導くリーダーシップも必要です。
経理管理職には目標値の設定から業務進捗管理、現状分析、社員に対するコーチングに至るまで多種多様な業務があります。管理職は専門性が高く人材不足が懸念されるものの、アウトソーシングの利用により解決できます。
経理の仕事内容に対するキャリアパス
一般企業などの経理は専門性があり、高精度かつスピーディーな業務が必要です。そのため、所属部署でより責任の重い実務経験を積み、経理管理職へ昇進するのが一般的なキャリアパスとなります。
マネジメント業務以外では大企業や外資系企業への転職、経理スペシャリストへの転進といった進路が存在します。どちらも中途採用になるため、将来的にはAIやRPAなどITツールの知識も重要視されるでしょう。
企業としては、経理のキャリアパスにおける主要スキル、過程などを明示する必要があります。社員のスキルアップに直結するだけでなく、業務に対する意欲の向上にもつながります。
まとめ
お金の取引が必ず発生する企業経営において、経理は必須の業務です。属人化を回避したい職務ではあるものの、簿記だけでなく法律や規定などの幅広い知識が求められるため、一般社員には簡単に一任できません。
経理業務の効率化では、基本的な業務効率化のフローが参考になります。業務と課題点の洗い出し、必要な対処の実行、評価・改善といったDCAPサイクルのもとで行うのが効果的です。
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