鹿児島県奄美市役所
RPAを起点に働き方改革、市民サービスの充実を達成
一連のDXプロジェクトが全国の自治体のモデルケースに
商工観光情報部 デジタル戦略課長兼働き方改革推進監
押川裕也氏
「一人ひとりの職員にデジタルを駆使して付加価値を生み出す『稼ぐ力』を持ってもらい、将来的には自らの手で業務を効率化、より質の高い市民サービスを生み出していく存在になって欲しいですね」
税務課 固定資産税係 主事
積佑一氏
「目視や手入力の作業ではどうしてもミスが生じます。行政の税金を取り扱う業務なので間違いは許されません。正確に動作するRPAの導入が効率として絶対にいいと思います」
税務課 固定資産税係 主事
押川禄介氏
「自動化で生まれたゆとりで他の業務に注力できるようになりました。これからの固定資産税係の業務をより良くするために、いろいろな取り組みを続けていきたいと考えています」
課題
法改正に伴い通知書が殺到し、その他の業務に支障が発生
プロジェクトキーマンのもとに舞い込んだ悩ましい課題
鹿児島県奄美市はRPAの導入による作業の自動化で、これまでさまざまな業務の効率化を達成。このRPA導入を起点として大々的なDXプロジェクトを推し進めてきた。2019年、RPAとAI-OCRを連携させ、職員の健康管理に関する業務、ふるさと納税対応業務、軽自動車税に関する業務の自動化を皮切りに、2020年4月末の「特別定額給付金」給付の業務では、申請の受付から給付までを円滑化。6月初旬には大半の給付を終えたことが全国的なニュースになった。これら一連の成果を陰の立役者として支えたRPAの導入は、「どんなものか触ってみたかった」という1人の市職員の好奇心がきっかけだった。
「早速、RPAの研修を受けに東京に向かいました。3日間の研修でしたが、とくに難しい印象はなく、これは業務効率化に使えると思いました。すぐに総務省のRPA導入補助事業に応募し、採択されたため、手厚いサポートが期待できるNTTドコモビジネスをパートナーに選定し、粛々と導入を進めていきました」と語るのはデジタル戦略課長兼働き方改革推進監の押川裕也氏(以下、押川課長)である。
奄美市が導入した「WinActor®」はNTTグループの技術とノウハウが詰まった国内シェアNo.1※のRPAツールだ。Windows上で操作可能なアプリケーション、個別の業務システムを利用した業務をシナリオ(ワークフロー)として学習、ユーザーのPC業務を面倒なプログラミングなしで自動化できる特長を持っている。押川課長はWinActor とAI-OCRを連携させることで、先に挙げた数々の成果を挙げてきた。すでに導入から5年目を迎え、奄美市のDXプロジェクトは次のフェーズを迎えている。
※富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2023年版」において国内のRPA市場占有率No.1
「毎年、現場で働く職員にシナリオのつくり方を学んでもらうためにRPAの基礎研修を開催してきました。開催後に成果を披露する機会を設けて周知するなどの取り組みが功を奏し、徐々にRPAに関心を持つ職員が増え、現場主導で業務を自動化していく流れができつつあります」(押川課長)
2023年11月ころ、押川課長のもとにある相談が舞い込んできた。「固定資産税係の業務がひっ迫し、必要とする業務に時間を割くことが困難であるため、新たに係員を2人増やしてほしいという要望があるものの、予算確保が難しいためなんとかならないかという相談でした。そこで私が固定資産税係にヒアリングすることになったのです」
固定資産税係の負担となっていたのは、紙ベース、手作業で行っていた煩雑な処理業務だった。「従来は紙で届く登記済み通知書を目視でチェックしてシステムに手入力し、それを別の職員が確認するダブルチェック体制で回していました。しかし、2024年4月から相続登記が義務化されることもあり、例年の4倍近くの通知書が届いている状況でした。すでに年度末に向けての処理が追いつかないことは明らかだったのです」と固定資産税係の当事者の1人、積佑一氏は当時を振り返る。
対策
わずか1カ月でWinActorを駆使した自動化を実現
稼働減により生まれたゆとりで本来の業務に注力する
固定資産税係のもう1人のメンバーである押川禄介氏は通常の業務の流れを、実際に押川課長に見てもらったという。「法務局から届く通知書のフォーマットが統一されており、しかもテキストが印字されているためAI-OCRとの相性がいい。しかも、システムへの入力も件数が多く、単純作業のためWinActorとの相性も良く、自動化を進めた方がいいということになりました」(押川氏)
こうして押川課長の主導のもとでWinActorによる業務自動化の取り組みがスタート。わずか1カ月程度で実装が完了する。「テスト環境で問題なくスムーズに動いたので、このまま本番環境に移行しようと判断し、実装に踏み切りました。年度末にかけて発生する膨大な作業を残業で乗り切る覚悟でしたが、このタイミングでスピーディに自動化を実装できてよかったと、心底、安心しています」(積氏)
固定資産税係に実装された自動化システムでは、これまで届いていた通知書の振り分けにかかっていた時間がAI-OCRで1時間半から10分程度に、システムへの入力もWinActorにより1日半がかりから3時間程度に短縮された。「WinActorが出した結果を確認するだけなのでダブルチェックも必要なく、1人で作業が回せるようになりました。定性的には毎月50時間、2人がかりで回していた作業が、ほぼ1日の業務時間内で終わる効率化が実現できています」(押川氏)
これまで、積氏と押川氏の2人にとって登記の異動に関する処理が1日の業務の大半を占めていた。しかし、本来、2人が注力すべき業務は別のところにあった。「WinActorで煩雑な処理が自動化できたことで、土地の評価に関する業務や現地調査に時間が割けるようになっているようです。単純な作業をロボットにまかせて、きちんと市の職員として本来の業務に注力できるようになって良かったと思っています」(押川課長)
今回、固定資産税係が達成した自動化は、同じ税務課の各係をはじめ、さまざまな職員から注目されることになった。現在、積氏と押川氏の2人は多忙な業務の傍ら、WinActorを活用した業務の自動化を税務課のさまざまな業務に応用する働き方改革の取り組みにも力を入れているという。
効果
一連の成果を惜しみなく公開、提供するスタンスで
全国の自治体を巻き込み質の高い行政サービス実現へ
奄美市のDXプロジェクトの起点となったWinActorを押川課長は非常に高く評価している。「とにかく使いやすい。豊富なライブラリからドラッグ&ドロップで簡単に設定できる点も評価しています。さらにVer.7で強化されたドキュメント生成を使えば、業務担当者への説明、業務引き継ぎの際にマニュアルとして使えるようになったことも大きいですね。NTTドコモビジネスのサポートにより年々、研修内容もアップデートしてきており、直近ではBPR観点から従来の仕事内容を見直し、WinActorに落とし込むために業務フローを細分化する取り組みを続けています。これが最大の収穫といえるかもしれません」(押川課長)
最初から複雑な業務をRPAで自動化するのは失敗のもと、業務フローを細分化して託せる部分のみをRPAにまかせるのが成功の秘訣だと押川課長は考える。「定型的な業務をロボットにまかせ、イレギュラーな業務は人がやればいい。いきなり10割を目指さずに、スモールスタートから始めて小さな成功体験を積み上げていき、最終的に8割が自動化できればいいのです。もう1つのポイントは、フットワークの軽い若い職員を巻き込むこと。ファーストペンギンとして自動化の成果を見せることができれば、まわりは後に続いていき、自然と現場の空気は変わってくると思っています」
現在、一連のDXプロジェクトが出した成果が全国に知れ渡り、奄美市へ視察に訪れる地方自治体が絶えない状況だ。そうした全国からのラブコールに対し、押川課長は協力を惜しまないスタンスだ。「いま我々が使っている基幹システムは、鹿児島県内26の市町村で共同利用しています。そこでWinActorのシナリオを共有し、誰もが自由に利用できるように計画しています。奄美市を訪れた自治体の方々にも必要であればシナリオを提供しますし、逆にいいシナリオがあれば共有させてもらい、互いに切磋琢磨しながら日本の行政サービスの質を高めていくプロジェクトに取り組んでいきたいですね」
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鹿児島県奄美市
事業概要
RPAを起点としたDX推進により働き方改革、市民サービスの充実を図る自治体として全国から注目を集める。「自然・ひと・文化を共につくるきょらの郷(しま)」をめざして、まちづくりに取り組んでいる。
URL
https://www.city.amami.lg.jp/
(PDF形式/314 KB)
(掲載内容は2024年3月現在のものです)
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