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東北大学・宮城県仙台市
都市と山間部、2つの地域特性で自動運転の未来を切り開く
安全・安心な通信基盤が実現する、誰もが平等に移動できる社会
課題
- 運転手不足による公共交通バスの減便、観光二次交通の不足が深刻化
- 山間部(秋保)は通信不感エリアが多く、複数キャリア回線の切替制御に課題
- 都市部(東部北)は災害時の通信輻輳対策と、防災情報の車両制御への反映が必要
- 安全な自動運転の実現に向け、高速・大容量通信に耐えうるモバイル回線網、高いセキュリティを担保したネットワーク設計が必要
対策
- 秋保ルート:複数キャリア回線+ローカル5G+Starlink(衛星通信)による通信安定化、ネットワーク自動切替制御の検証
- 東部北ルート:SA(5G専用)基地局+スライシング+都市OS連携による防災情報の車両への伝達
- docomo MEC®によるエッジ処理でセキュリティを担保しつつ超高速・低遅延なネットワークを実現
効果
東北大学
理事・副学長(プロボスト)
青木孝文氏
東北大学
共創戦略センター 特任教授
山田健一氏
仙台市
まちづくり政策局政策企画部 プロジェクト推進課
主幹
工藤圭氏
仙台市
まちづくり政策局政策企画部 プロジェクト推進課
主任
天方健二氏
仙台市
まちづくり政策局政策企画部 プロジェクト推進課
主事
日下部友樹氏
NTTドコモビジネス株式会社
ソリューション&マーケティング本部
ソリューションコンサルティング部 地域協創推進部門
課長
長谷川将貴
NTTドコモビジネス株式会社
ソリューション&マーケティング本部
ソリューションコンサルティング部 地域協創推進部門
田中啓太
NTTドコモビジネス株式会社
ソリューション&マーケティング本部
ソリューションコンサルティング部 コンサルティング部門
伊藤悟史
NTTドコモビジネス株式会社
ソリューション&マーケティング本部
ソリューションコンサルティング部 東北支社
主査
平林誠
課題
運転士不足で住民の足が失われ、観光振興にも影響
山間部の通信不感エリア、都市部の災害対応に挑む
宮城県仙台市は、人口約110万人を擁する東北最大かつ東北唯一の政令指定都市だ。都市部と郊外・山間部を含む広域な地域特性を持ち、海から山まで多様な環境が共存している。仙台市と東北大学が2022年に設立した「スマートフロンティア協議会」には約90社が参画し、産学官連携のプラットフォームとして、これまで先端サービス実証や事業者・市民がチャレンジしやすい土壌の創造を進めてきた。
そうした中、仙台市が基礎自治体(市町村のこと)として抱える課題が顕在化していた。近年のバス運転士不足は、地域交通や物流に多大な影響を与えており、地域住民の交通インフラの確保は喫緊の課題となっている。仙台市プロジェクト推進課の工藤圭氏はこう語る。
「運転士不足による公共交通バスの減便で、地域の方々の移動手段が脅かされています。加えて、観光客を呼び込む二次交通として利用したい思いはあるものの、なかなか一歩を踏み出せないという課題がありました」
仙台市では、先述の協議会活動をきっかけに、令和5年度より青葉山で自動運転の取り組みがスタートしていた。実装に向けて取り組みの強化を模索していた矢先、NTTドコモビジネスから総務省の「地域社会DX推進パッケージ事業(自動運転レベル4検証タイプ)」を活用した実証の提案を受ける。
「渡りに船のタイミングだったと思います。早速、タッグを組んで実証を推し進めていくことになりました」と仙台市プロジェクト推進課の天方健二氏は語る。
仙台市では、異なる地域特性を持つ2つのルートで同時に検証を進めることになる。山間部に位置する「秋保ルート」(往復約29km)、そして沿岸部を含む「東部北ルート」(往復約10km)だ。
秋保は一大温泉観光地であり、観光客は多いが住民は少ない過疎地という二面性を持つ。中山間地のため通信事情が厳しく、キャリアの電波が届かない不感エリアが存在する。
「秋保は観光と地域の足という両面があり、雪も降ります。通信上、かなりトライしていく要素が多い地域です」と仙台市プロジェクト推進課の日下部友樹氏はルート選定の狙いを説明する。
一方、東部北エリアは東日本大震災で津波被害を受けた地域だ。ここでは災害時の避難ルート確保や防災情報のリアルタイム伝達が、自動運転実装の前提条件となる。「地震が起きた際の避難などにも自動運転を実装したい思いがあり、あえて東部北エリアを選定しました」(天方氏)
対策
山間部はキャリア回線連携で不感エリアを補完、都市部はSA局で防災連携
フィジカルAI時代に通信事業者が担う「ベストエフォート脱却」の覚悟
今回の実証には、単なる自動運転の技術検証を越えた大きな意味があった。それはフィジカルAI時代における通信インフラのあり方を問う挑戦だ。
「自動運転やヒューマノイドロボットなどのフィジカルAIが物理世界に出てくるようになると、いちばん重要になるインフラは安全安心な通信基盤です。それを先行して実現できれば、将来的な日本の価値になるのは間違いありません。通信キャリアの責任は非常に大きいといえるでしょう」と東北大学副学長の青木孝文氏は語る。
バーチャルな世界では、インターネットなどの帯域が保証されない「ベストエフォート」で許容されてきた。しかし、物理世界でAIが動く時代、通信が途絶えれば大きな事故につながりかねない。NTTドコモビジネスにとって、この実証は通信キャリアが担うべき新たな責任を示す機会でもあった。大きな期待を背負うNTTドコモビジネス側も、この2つのルート選定には明確な技術的狙いがあった。
「秋保は山間部で不感エリアが多く、人口も少ないため通信インフラの整備が難しい地域です。今回はローカル5Gと複数のキャリア回線を組み合わせ、いずれかの回線がつながっていれば通信を維持できる仕組みを構築しました」とNTTドコモビジネスソリューション&マーケティング本部ソリューションコンサルティング部地域協創推進部門の長谷川将貴は説明する。
秋保ルートの通信ソリューションは、山間部特有の課題に対する複合的なアプローチとなった。複数キャリア回線を同時に接続し、最も電波状況の良い回線へ自動的に切り替える仕組みを構築。さらに衛星通信(Starlink)を併用し、従来は通信インフラの構築が困難な山間部でも自動運転に必要な安定した通信環境を確保した。
一方、東部北ルートでは災害時を想定した通信ソリューションが展開された。「東部北には5GSA(スタンドアローン)基地局を設置しており、高速・大容量の通信が可能です。ここで防災情報を自動運転車両にリアルタイム配信し、災害時に安全なルートへ誘導できるかを実証しました」と説明するのは、NTTドコモビジネスソリューション&マーケティング本部ソリューションコンサルティング部地域協創推進部門の田中啓太だ。具体的には5GSA基地局を活用し、ネットワークスライシング技術により自動運転専用の通信帯域を確保。これにより、災害時の通信輻輳が発生しても通信が途絶えないことを検証した。さらに仙台市が構築を進める都市OSと連携し、道路工事情報や災害時の通行規制情報をリアルタイムで自動運転車両に伝達する仕組みも実証された。
両ルート共通で導入されたのが、docomo MEC®(マルチアクセスエッジコンピューティング)によるエッジ処理だ。車両から送信される大容量のセンサーデータをクラウドではなくエッジ側で処理することで、高速・低遅延化とセキュリティ向上を実現した。
NTTドコモビジネスソリューション&マーケティング本部ソリューションコンサルティング部の長谷川将貴、田中啓太氏、伊藤悟史、東北支社の平林誠氏らがチームを組み、技術設計から実証運営までを担った。
効果
市民の7割超が「また乗りたい」と好評
東北の先頭に立ち「移動できなかった人が移動できる」未来へ
2025年1月から2月にかけて実施された実証は、大きなトラブルなく完了した。通信面では、秋保ルートでの複数回線切替制御、東部北ルートでの都市OS連携がいずれも想定通りに機能し、技術的な検証目標を達成した。工藤氏は試乗した市民の反響をこう振り返る。「乗車希望の予約枠はすぐに埋まりました。アンケートでは7割以上の方から『また乗りたい』という回答をいただき、社会受容性という観点でも大きな成果を得られたと思います」(工藤氏)
この実証の成果を踏まえ、仙台市は全国13カ所の国の「先行的事業化地域」に採択された。2027年度までにレベル4自動運転の事業化を目指す目標が明確化され、自治体・大学・通信事業者が一体となった取り組みが加速していく。
「市長も『市域を超えたかたちで東北に貢献していく』と意気込みを語っています。仙台市だけでなく、交通の需要に応えきれていない他の自治体にも貢献していける技術実証・事業化モデルを確立したいですね」(工藤氏)
今後の展望として、自動運転で収集したデータの二次利用が構想されている。秋保ルートで取得した道路状況データを除雪業務に転用すれば、除雪業者との費用分担が可能になり、社会実装のコストハードルが下がる。災害時の道路被害状況把握にも応用でき、防災インフラとしての価値も高まる。
「これまでインターネットの世界では、ベストエフォートという考え方がある程度許容されてきました。しかし、フィジカルAIの時代ではそれでは通用しません。AIが実世界のインフラや産業、社会に影響を与えるようになる中で、重要性の高いデータをどこで処理し、どのように守るのかといったデータ主権や、セキュリティを担保した基盤やネットワークが重要になります。日本が世界で負けないため、そして確実に競争力を発揮していくために、通信キャリアがその中心的な役割を担い、先頭に立っていくことが重要だと考えています」 (長谷川氏)
さらに仙台市では将来的なフィジカルAIの展開も見据えている。共創戦略センターの山田健一氏はこう説明する。
「4足歩行ロボット、ヒューマノイドロボットなど、自動運転で培った通信インフラがそのまま使える領域が広がっています。現在も市役所本庁舎の建て替え現場で見回りロボットの実証を進めており、本実証のお披露目の際には市長が現場でヘルメットをかぶって視察するなど、積極的に取り組んでいます」。自動運転バスは、フィジカルAI時代の通信インフラ構築における最初のピースになるのかもしれない。
青木氏の言葉が印象的だ。「首都圏で自動運転が実現しても『サービスのオプションが増えた』という意味に過ぎません。しかし、仙台のような地域では、できなかったことができるようになる。移動できなかった方が移動できるようになる。リープ感、ジャンプの大きさがまったく違うのです。私はあえて『課題先進地域』という言葉を使いたくありません。そうではなく、市民の皆さんに未来を見せる、未来を感じられる場をつくる。それがスマートフロンティア協議会の使命だと考えています」(青木氏)
課題先進地域ではなく、未来を見せる地域へ。仙台市×東北大学×NTTドコモビジネスの取り組みは、が東北全体の未来を切り開く挑戦として、確実に歩みを進めている。
導入サービス
通信安定化ソリューションとは、NTTドコモビジネス株式会社が、2025年10月8日付で提供を開始した、自動運転レベル4車両の遠隔監視等を想定した通信基盤パッケージです。無線品質の予測(Cradio)と、マルチキャリア/衛星回線を含む複数回線によるマルチパス通信制御、さらにはリアルタイムデータ連携機能を組み合わせ、走行中の通信品質低下や遅延・途切れを抑えることをめざしています。
docomo MECとは、データ処理をクラウドではなく通信網の近くで行うことで、通信遅延を低減しセキュリティも高められるドコモのエッジ型プラットフォームです。
東北大学
組織概要
1907(明治40)年、東北帝国大学として創立。「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」を大学理念として掲げている。文部科学省が実施しているスーパーグローバル大学事業のトップ型指定校および指定国立大学法人に指定され、2024年、日本初の国際卓越研究大学に認定。
URL
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/
宮城県仙台市
組織概要
宮城県中部に位置する県庁所在地、人口は約110万人で東北最大かつ東北唯一の政令指定都市。都心部周囲には広瀬川や青葉山などの自然があり、都心部にも街路樹などの緑が多いことから、「杜の都」と言われている。
URL
https://www.city.sendai.jp/
「東北大学・宮城県仙台市」導入事例印刷用ファイルのダウンロード
(PDF形式/1.26 MB)
(PDF形式/1.26 MB)
(掲載内容は2026年6月現在のものです)
関連リンク
