カスタマーゼロ事例

NTTドコモビジネス株式会社 20年来の社内ネットワークを、
ゼロトラストを起点として
本社拠点から刷新を開始

NTTドコモビジネス担当者の集合写真

法人向けICTサービスを提供するNTTドコモビジネスは、出社回帰に伴う通信帯域の逼迫と、EDR(Endpoint Detection and Response)を導入できないLAN内機器の防御という課題を抱えていた。そこで、約20年運用してきた社内ネットワークを、セキュリティ統合型NaaS(Network as a Service)「docomo business RINK®」を活用した全面刷新を推し進めている。ブレイクアウトによりデータセンターへ集中していた通信を分散し、ネットワーク組み込み型のセキュリティ機能(WANセキュリティ)によってEDRを導入できない機器もサイバー攻撃やインシデントから保護した。自社をサービス実証の場とする「カスタマーゼロ」の取り組みとして、ゼロトラストを起点とした設計変更のプロセスと、通信品質および運用面に表れた成果を紹介する。

導入の背景・課題

3割出社を想定していた
通信設計が、
出社回帰で悲鳴を上げた

同社の社内ネットワークは、長らくインターネットと閉域網の2回線構成だった。約20年運用してきた「Arcstar Universal One」の閉域網に加え、インターネット接続用の回線を別に用意し、LAN側の機器で論理的に分離する構成だ。ただし、インターネットへの出口はデータセンターのインターネットゲートウェイ(インターネットGW)に集約し、セキュリティを一元管理する設計だった。そのため通信経路の1か所に負荷が集中する構造でもあった。

コロナ禍が明けて出社率が回復すると、集約されたインターネットGWがボトルネックとなり、遅延が頻発するようになった。「集約型のインターネットオフロード回線を整備したときは、3割出社という前提で設計していました。それが出社回帰の中でインターネットGWの帯域が足りなくなり、切実な問題になっていたのです」とデジタル改革推進部の和泉大輔(以下、和泉)は振り返る。

影響は利用者にもっとも近い無線環境に現れた。2024年度末のWi-Fi 6導入などで社内の無線品質は安定していた。「しかし、Wi-Fi環境が最新でも、その先のネットワークが詰まれば意味がありません。実際に利用者からの問い合わせや不満の声も増えていました。」とデジタル改革推進部の野田佳央(以下、野田)は語る。

セキュリティにも課題があった。LAN内のネットワーク機器はベンダー独自OSのアプライアンス製品で、全社標準のEDR(Endpoint Detection and Response/端末上の不審な挙動を検知し、対処する仕組み)を実装できない。複合機や無線機器を含むこれらの機器についても、ネットワーク側で脅威を検知できる仕組みの強化がデジタル改革推進部には求められていた。

  • NTTドコモビジネス 和泉 大輔の写真

    NTTドコモビジネス
    デジタル改革推進部

    和泉 大輔

  • NTTドコモビジネス 野田 佳央の写真

    NTTドコモビジネス
    デジタル改革推進部

    野田 佳央

施策概要(目的・対応策)

ゼロトラストを起点に、
20年分の設計を書き換える

ネットワーク刷新の起点は、特定サービスの導入ではなかった。「コロナ禍でハイブリッドワークが主流になり、それに合わせたゼロトラスト志向の端末整備も済んでいました。次は、その環境に合わせてネットワークを置き換えていく必要がありました」と和泉は説明する。

ゼロトラスト化に伴い整備したオフロード回線も出口はインターネットGWに集約されたままだった。このボトルネックを解消する手段として白羽の矢が立ったのが「docomo business RINK®」だ。野田は自ら社内利用を持ちかけ、話はすぐにまとまる。決定打となったのは、2025年9月に追加されたセキュリティオプション「WANセキュリティ」である。インターネット通信を常時監視し、不正な通信などを検知・通知し、必要に応じて通信を遮断できる。EDRを導入できない機器も、通信を監視することで脅威検知の対象となる。これまで対応が難しかった課題に、有効な解決策が見つかった。「ブレイクアウトとVPNを1回線で提供ができると聞いて面白いと思っていました。そこにWANセキュリティが加わり、確実に社内ネットワークに導入する価値があると考えました」と野田は明かす。

ここで同社は、docomo business RINK®による社内ネットワークの全面刷新を決断。通信の約9割をインターネット経路へ振り替え、閉域網に残すのは入退管理や複合機など1割にとどめる構成だ。自部門フロアや複数拠点での実証で、2026年3月には確かな手応えが得られたため、社員数が多く帯域ひっ迫が深刻だった大手町の本社から本格展開を始めた。「ここに手をつけなければ全社の帯域は下がらない。いちばん難しいところから始めようと考えました」とデジタル改革推進部の濱田尚則(以下、濱田)は語る。

  • NTTドコモビジネス 濱田 尚則の写真

    NTTドコモビジネス
    デジタル改革推進部

    濱田 尚則

利用サービス/ソリューション

1回線で2経路。
ブレイクアウトと閉域網の通信(入退システムや複合機)を両立

docomo business RINK®は、多様なセキュリティ機能とネットワーク機能を統合した NaaS(Network as a Service)である。エッジルーターをレンタル提供し、アクセス回線から先の制御を従量課金で担う。帯域変更やブレイクアウトの設定をWebポータルから行えるほか、WANセキュリティにより不正な通信の脅威を検知し、必要に応じて遮断できる。

先に課題として触れたインターネットと閉域網の2回線による構成は、ここで解消される。「従来はインターネットと閉域網の回線が別々で必要でしたが、それが1本にまとまり、ブレイクアウトで抜ける経路と閉域網へ抜ける経路をVPNで接続できます」と濱田は説明する。もう一つの要が、セキュリティの一括管理だ。拠点から直接インターネットへ抜ける構成は、本来なら拠点ごとの管理が必要になる。「WANセキュリティなら、ブレイクアウトをさせながら一括で管理できます」と和泉は語る。

導入効果

5Gbps上限への逼迫を解消し、
体感品質は最大16倍に

導入効果は明確に数値に表れた。従来は単一のインターネットGWの出口に通信が集中し、5Gbpsの帯域上限に達していた。ブレイクアウトで経路を分散させた結果、実効利用帯域は切り替え前比で最大45%も向上した。効果は切り替えた拠点にとどまらなかった。主要拠点の通信をブレイクアウトさせたことで、全社が共用するインターネットGWの負荷が下がり、切り替えの前の拠点にも改善が波及したのである。「本社などの主要拠点を切り替えただけで、まだ切り替え前の支社系ネットワークも安定しました」と野田は語る。体感品質を示すQoEの実測値も5.4Mbpsから23〜86Mbpsへ向上し、最大値では約16倍となった。「月曜の朝もストレスなく使えています」と和泉も実感を語る。結果、社内イベントが重なり出社人数が多かった日も安定運用を維持※できた。

  • 2026年4月、NTTドコモビジネス大手町プレイスにおけるdocomo business RINK®切り替え前後の実測値(同社調べ)
図:docomo business RINK®切替前後 インターネットトラヒック状況
図:docomo business RINK®切替前後 インターネットトラヒック状況

効果はネットワークの外側にも及んだ。同社は会議設備の刷新も並行して進めていたが、その性能は土台となる通信品質に左右される。「不安定な無線の上で動く会議設備では意味がありません。バックボーンとなる回線を安定させたうえで最新の設備を使うことで、コスト削減や業務効率化が実現できています」と濱田は説明する。実際、会議室の「空予約の自動リリース」により、全会議室予約の約20%に当たる月約1,500件の空予約を解放し、月約406時間分の会議室を再活用。年間約9,400万円相当の効果が見込まれている。

構成も軽量化した。社内ネットワークはインターネット向けと閉域網向けに2回線必要だったが1回線に統合され、座席ごとの有線LANはほぼ不要となりスイッチ数も減少。レンタルルーター活用で資産管理やEOL対応の負担も下がった。

運用面の負荷も下がった。「従来はなにがアウトでなにがセーフかを自分たちで考えるケースがかなりありました。WANセキュリティでは、その定義があらかじめ用意されており、怪しい動きがあれば通知してくれる。運用側としては、とても楽になりました」と和泉は語る。

今後の展望

全拠点への展開、そしてAI活用による運用の自動化へ

NTTドコモビジネスでは、2027年度までに全国拠点の完全移行を計画している(2026年8月時点の計画値)。ただし、規模の拡大は運用体制への負荷にも直結する。「もともと運用していた社内ネットワークは20数拠点でした。それが最大130拠点に増えたとき、いまと同じ人数でやり切るのは困難です。そこでAIOps(AIに運用を託し、人手を最小限にする考え方)などにアップデートして、少ない人数で効率的に働ける環境を考えていく必要があります」と野田は展望を明かす。

同時にWANセキュリティで自動検知できる機器や通信の対象が広がったことへの対策も進む。「日々、大量に届くアラート通知を人手で分析するのは難しいため、うまくAIを使って自動対応できる仕組みづくりも進めています」と和泉は語る。さらに社内ネットワーク刷新とは別の取り組みとしてオフィス環境のDX化も動き出している。無線アクセスポイントが取得する環境データを空調制御に生かすBMS連携はデータ活用によるオフィス再設計の一環だ。

「柔軟な働き方を支えるには、基盤となるネットワークやセキュリティが重要です。ICT基盤が安定することで、オフィス環境の改善だけでなく、新たな働き方や価値創出にもつなげられます。私たちは、自社で得た知見を価値ある情報として整理し、お客さまに還元していくことを大切にしています。」と濱田は語る。自社で先行検証し、実践から得た知見を顧客へ還元する姿勢こそが、「カスタマーゼロ」の本質である。

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  • NTTドコモビジネス株式会社

    NTTドコモビジネス株式会社

    法人向けICTサービスを提供し、自社を実証の場とする「カスタマーゼロ」を通じて、サービスの改善と顧客への知見還元に取り組む。

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