IT導入補助金とは?
「IT導入補助金」は、中小企業・小規模事業者が業務効率化やDXなどに向けてITツールを導入する際に、補助金を交付して支援する制度です。経済産業省の下部組織であり、中小企業の育成と発展を任務とする中小企業庁が主体となり、IT導入補助金支援事務局を通じて補助金が交付されます。
中小企業・小規模事業者にとっては、ITツールを低リスクで導入できるというメリットがあります。また、申請が通らなかった場合には内容を変更して再度申請できる、複数の中小企業・小規模事業者が連携して申請することもできるなど、申請のハードルを下げる工夫もされています。
IT導入補助金の対象
対象となるのは中小企業・小規模事業者などで、「補助事業者」と呼ばれます。より具体的に言うと、「日本国内で法人登記され、日本国内で事業を営む法人または個人」で、法人の場合には国税庁のサイトに法人番号が掲載されていることが条件となります。
IT導入補助金の種類
2025年のIT導入補助金には「通常枠」「インボイス枠(インボイス対応類型)」「インボイス枠(電子取引類型)」「セキュリティ対策推進枠」「複数社連携IT導入枠」の5つの申請区分があり、導入するソリューションに合わせて選択する形となります。
具体的には在庫管理システムや決算ソフトなど事業のデジタル化を目的としたソフトウェアや、インボイス制度に対応するためのソフトウェアなどの導入に対して補助金が交付されます。
Webページにはあらかじめ独立行政法人中小企業基盤整備機構の審査を受けた「IT導入支援事業者」のソフトウェア、サービスなどが多数公開されており、目的に応じて選択することができます。例えば、通常枠の「顧客対応・販売促進」のカテゴリーには顧客データベース作成ソフトなど3,000件以上が登録されています。
本記事の最後には、補助金対象のおすすめITツールもご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
IT導入補助金のしくみ
補助金申請者(中小企業・小規模事業者等皆さま)は、複数社連携IT導入枠を除き、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで申請することが必要となります。

2025年版IT導入補助金の概要
(申請枠・スケジュールなど)
初めて申請する場合には、まずは「申請対象者チェッカー」に自社の組織形態、業種分類を選択して補助金の対象であることをチェックします。資本金や従業員数によっては対象とならない場合があるためです。
また、対象に当てはまる場合でも他の申請要件を満たしていない場合があるため、申請前には必ず交付規程・公募要領を確認しましょう。
IT導入補助金には5つの申請枠があり、それぞれ対象となるITツールや補助される金額が異なります。
通常枠
業務プロセスをデジタル化したい企業に対する支援です。在庫管理システムや決済ソフトなど、生産性の向上に資するソフトウェアやサービスの導入に対して補助金が交付されます。基本的に補助率は1/2以内、補助額は1プロセス以上の場合は5万円以上150万円未満、4プロセス以上の場合は150万円以上450万円以下です。
※参考:「通常枠」(サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト)
インボイス枠(インボイス対応類型)
インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、PC・ハードウェアなどを導入したい企業に対する支援です。
インボイス対応のソフトウェアのほか、POSレジ用のタブレットや券売機などのハードウェアも対象となりますが、ハードウェアのみの申請はできません。
ハードウェア以外についての補助率・補助額は中小企業と小規模事業者で異なりますが、例えば中小企業の場合には「会計」「受発注」「決済」のうち1機能を持つものの場合は補助率2/3以内、補助額50万円以下、2機能以上を持つものの場合は基本的に補助率は3/4以内、補助額は350万円以下です。
ハードウェアの場合はPC・タブレットなどは補助率1/2以内、補助額10万円以下、レジ・券売機などは補助率1/2以内、補助額20万円以下です。
※参考:「インボイス枠(インボイス対応類型)」(サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト)
インボイス枠(電子取引類型)
インボイス制度に対応した受発注システムを導入したい企業に対する支援です。
発注側が受発注を行うクラウド型のソフトウェアを導入し、受注側に無償で利用させることが条件となります。基本的に補助率は2/3以内、補助額は350万円以下です。
※参考:「インボイス枠(電子取引類型)」(サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト)
セキュリティ対策推進枠
サイバーセキュリティ対策を強化したい企業に対する支援です。
セキュリティ対策ソフトやネットワーク監視システムの導入に対して補助金が支払われます。基本的に補助率2/3以内、補助額5万円~150万円です。
※参考:「セキュリティ対策推進枠」(サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト)
複数社連携IT導入枠
複数の中小企業・小規模事業者などで連携し、地域でのDXの実現や、生産性の向上を図りたい企業や団体に対する支援です。
商店街振興組合や商工会議所などの商工団体、複数の中小企業・小規模事業者などによるコンソーシアム単位で申請します。会計・受発注・決済システムの基盤、地域における人流分析のデジタル化などに対して補助金が交付されます。
例えば中小企業の消費動向等分析経費のうち、ソフトウェアに対しては補助率3/4以内、補助額50万円以下×グループ構成員数です。
※参考:「複数社連携IT導入枠」(サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト)

通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型)、インボイス枠(電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠については、補助金シミュレーターで実際の補助金申請可能額をシミュレーションすることができますので、申請前の目安となるでしょう。
また、クラウド型ツールの導入、インボイス対応ツールの導入など、採択されやすくなる「加点対象」もあります。詳しくは、「加点に必要な手続き」をご確認ください。
申請の受け付けは数回に分かれており、スケジュールは随時更新されるため、定期的にIT補助金のポータルサイト※の事業スケジュールを閲覧しスケジュールを確認しましょう。早めの申請をおすすめします。
IT導入補助金申請の流れ

IT導入補助金の具体的な申請手順として、ポータルサイトではSTEP01~09が紹介されていますが、申請者の手続きが必要となるのはSTEP01~04、06、07、09となっています。それぞれのステップについて、以下に説明していきます。
STEP01:事業の理解
まずは自社が申請対象に含まれるか、支援の目的にかなっているかなど、申請要件を満たしているかを確認します。要件を満たしていない場合には不採択となります。資料ダウンロードページなども活用し、正しい理解に努めましょう。
また、不正受給とならないかにも注意が必要です。疑いのある場合には立ち入り調査が行われ、不正と認定されればIT導入支援事業者登録の取り消し、補助金の返還請求などが行われるため、続くステップでは正確な申請を心がけましょう。
※参考:「資料ダウンロード」(サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト)
STEP02:GビズIDの取得/ SECURITY ACTION宣言実施
申請にはGビズIDの取得、SECURITY ACTION宣言実施が必須となります。それぞれのWebページから手続きを行います。
2025年7月時点においてGビズIDの取得には最大約2週間、SECURITY ACTIONの宣言済みアカウントIDの発行には約1週間かかっています。次のステップに進むためにも、早めに手続きしておきましょう。
※参考:「GビズID」 (デジタル庁)
※参考:「SECURITY ACTION」(独立行政法人 情報処理推進機構(IPA))
STEP03:IT事業者の選定、ITツールの選定
続いて、導入するITツールを選定します。ITツール検索ページでは、地域、ITツール名、IT導入支援事業者名、要件/目的別に検索が可能です。加点項目による絞り込みも可能ですので、現在「インボイス制度に対応した受発注システムを導入したい」「システムを導入して、業務を効率化したい」「セキュリティを強化したい」など、すでに解決したい課題や導入したいシステムがある場合には、検索して自社に適したITツールを選択しましょう。
また、「ITツール活用事例」には、製造業、飲食サービス業、建設業、運輸業、小売業など、業界別にITツールの導入/活⽤事例が紹介されています。事例を参考に自社にあったソリューションを探してみるのも良いでしょう。
※参考:「ITツール・IT導入支援事業者検索(コンソーシアム含む)」(サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト)
STEP04:交付申請
ITツールを選定したら、いよいよ交付申請を行います。ITツールを提供するIT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待がありますので、そこにアクセスして基本情報を入力し、必要書類を添付します。
中小企業の場合、必要書類は基本履歴事項全部証明書、法人税納税証明書、代表者身分証、所得税納税証明書、確定申告書B控などになります。
入力した情報や添付書類に不備があったり、申請や応答が遅延したりした場合には不採択となる場合があるため注意しましょう。
STEP05:審査(事務局)
「STEP04」完了後、「STEP05」として事務局で審査が行われ、交付決定通知が送信されます。通知が届くまでお待ちください。
なお、複数社連携IT導入枠については申請方法や以下の手順が異なります。資料ダウンロードページの「IT導入補助金2025複数社連携IT導入枠 公募要領」で詳細を確認してください。
STEP06:ITツールの発注・契約・支払い
交付決定通知が届いたら、ITツールの発注を行い、契約・支払いを行います。支払いでは、補助対象の経費分も合わせて先払いが必要となります。
なお、交付決定前に発注・契約・支払いを行った場合には、補助金の交付を受けることができないため注意しましょう。
STEP07:事業実績報告
ITツールを導入し、利用・運用を開始した後に、導入した証拠を提出します。「申請マイページ」に必要な情報を入力し、必要書類を添付して「事業実績報告」を行います。その後、IT導入支援事業者が内容を確認し追加情報を入力するのを待ち、事務局に提出します。
なお、ツールを適切に導入していなかったり、期間中に報告しなかったりした場合、補助金の交付を受けることができないためご注意ください。
STEP08:承認、補助金額の決定(事務局)
「STEP07」完了後、「STEP08」として事務局による事業実績報告の承認、補助金額の決定が行われます。
STEP09:事業実施効果報告
最後に「申請マイページ」に必要な情報を入力し、ITツールの導入効果を報告する「事業実施効果報告」を作成します。その後、IT導入支援事業者が内容を確認し追加情報を入力するのを待ち、事務局に提出します。
なお、
IT導入補助金の申請は申請枠が多数あり、候補となるITツールが多いなど、申請が難しそう・・・と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、通常枠で最大150万円の補助金が交付されるなど額が大きいため、申し込む価値は十分にあると言えるでしょう。
補助金対象のおすすめITツール
申請手続きのうち、もっとも時間を要するのは「STEP03:IT事業者の選定、ITツールの選定」ではないでしょうか。
とにかく対象となるITツールの数が多いため、何を選べばいいかわからない、と感じる方も多いと思います。
そこで、NTTドコモビジネスからおすすめのITツールをいくつかご紹介します。
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「経理・会計業務おたすけパック」は、「請求書発行」「請求書受領」「経費精算」「会計処理」の4つの経理業務を効率化するソリューションです。インボイス制度に対応しており、請求書の受け渡しから経費精算・会計業務まで、経理業務をトータルで効率化できるプランを取り揃えています。
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「製造工程管理パック」は、計画・業務進捗の見える化やリアルタイムなコミュニケーションで業務効率化・生産性向上を実現するソリューションです。紙やホワイトボードなどアナログな工程管理により業務遅延が発生している、対面での作業指示や確認に手間がかかっている、といった課題を解決します。
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「品質管理パック」は、製造現場における点検票のペーパーレス化やリアルタイムなコミュニケーションで業務効率化・生産性向上を実現するソリューションです。紙点検票の確認や保管に時間がかかる、点検時の確認ミスや記録漏れが多い、点検業務に時間がかかる、といった課題を解決します。
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「運行管理パック」は、配車計画の自動化、スマートフォンを使った車両の動態管理や荷主とのリアルタイムなコミュニケーション、日報作成のデジタル化など、運輸業のDXを推進支援するソリューションです。属人化の問題や、紙やExcelを利用している、配車計画作成の課題などを解決します。
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「施工管理パック」は、建設業における施工管理の関連業務をまとめて効率化できるソリューションです。2024年問題による機会損失、煩雑な図面・工程データ管理、施工状況の把握や関係者とのコミュニケーションなど、建設業界ならではのさまざまな課題を解決します。
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「在庫管理パック」は、入出荷管理、ECでの在庫管理、従業員育成など、在庫管理の周辺業務をまとめて効率化できるソリューションです。システム連携により実店舗とECの在庫数をリアルタイムで一元管理が可能となるほか、作業クオリティを均一化するチェックリスト機能も搭載しています。
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