1. 業 績 の 概 況

(1) 当社を取り巻く環境
 今、我々の住む世界は急速な勢いで変わりつつあり、世の中の制度・機構、技術、市場、そして人々の価値観など全てが一新されつつあります。
 情報通信分野においては、インターネットの爆発的な普及が続き、また、固定電話から移動体電話へ、音声からデータ通信へと市場構造が大きく変化し、この市場を巡って、業種や国境を越えたグローバルな激しい競争が繰り広げられています。特にインターネットの普及は、誰もの予想を超えた新しいパラダイムの出現となり、産業はまさにIT(情報技術)革命の真只中にあります。それは単に生産性の飛躍的向上をもたらすだけでなく、新しいビジネスチャンスを創造し、企業活性化のエンジンとなっており、ニューエコノミーの出現ともいわれています。市民生活、教育、娯楽の風景も大きく変わり始めました。また、行政、公共サービスの面でも迅速化、透明化の方向に着実に進み出しています。
 日本、アジア諸国を含めた世界の経済状況も総じて回復の動きが見られますが、IT投資はこの景気回復の牽引力の一つともなっています。


(2) 当期の営業方針
 このような事業環境のもと、当社は、昨年7月1日の営業開始以降「世界の情報流通市場における挑戦者」として、「グローバルな規模であらゆるお客さまに最高水準のサービスを提供する」ことをミッションとして掲げ、次のような営業方針のもと、事業を運営してまいりました。

(ア)事業展開

  • (1)IP系サービス(インターネットあるいは企業のコンピューター間通信)の拡充、(2)ネットワーク構築・サービス提供のグローバル展開、(3)電話を中心とした既存サービスについての競争力強化の3つを最重要目標とする。
  • IP系サービスについては、内外の事業者とのパートナリングを積極的に進め、新たな情報流通プラットフォームの提供・構築を行う。
  • グローバル展開については、「アークスター」ブランドによる国内/国際シームレスなワンストップ・トータルソリューションを全国規模、地球規模で提供する。
  • 電話を中心とする既存サービスについては、料金値下げも含めた、品質、価格面での競争力強化に努めて、新たに国際電話サービスの提供を行うとともに、コールセンタの開設、販売代理店網の整備などを進め、お客さまとのコンタクトの場を拡充する。
  • こうしたIP系サービス重視の事業展開方針をさらに強化し、お客さまに新しいライフスタイル、新しいビジネスモデルを提案するため、2000年3月には、“.com”(ドットコム)宣言を発表し、今後のIPサービス提供の基本コンセプトを明示しました。

(イ)マネジメント変革

  • エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズのミッション、価値観(バリュー)、グローバルマーケットでの適切な行動指針を定めた、OBP(アワービジネスフィロソフィー)を作成し、全社的に実践していく。このOBPの中では、「お客さまにとってのバリュー、利益」を第一として、「創造的自己革新」、「社員一人一人がプロフェッショナル」など7つの価値観を社員全員が共有することを目指しています。また、これらの価値観に基づき、お客さま、パートナー、地域社会などに対する行動の規範も規定しています。
  • さらに、人事制度についても、実績主義評価、プロフェッショナルなスキルを持つ要員の中途採用など人事制度全般のグローバル化を進めていく。


(3) 当期の営業成果
 上記の営業方針のもと、これまで、OCNサービスの多様化・料金値下げ、IP系サービス・国際通信分野における他キャリア・IP事業者との提携・出資、アクセス番号「0033」による国際電話サービスの開始、アークスターサービスのカバレッジ拡大、専用サービスの値下げ、さらには、新しい企業カルチャー創造への取り組みなど、おおむね予定した事業運営を行うことができました。具体的な営業成果などは次のとおりです。

(ア)営業成果

  • OCNサービス
     今後のIP系サービス展開の基盤となるOCNサービスにつきましては、「OCNダイヤルアクセス」利用料の値下げと同時に、新料金プラン「ナチュラル」を追加しました。さらに、当社ハウジングルーム内にお客さまのサーバなどをお預かりして運用するハウジングサービスを利用した「ハウジング用接続サービス」の提供を開始しました。また、「OCNエコノミー」「スーパーOCN」「ビジネスOCN」の定額利用料の値下げおよびOCNダイヤルアクセスなどの初期費用の無料化を実施しました。また、お客さまがインターネットを低廉な料金で、より手軽に楽しみたいというニーズに応えて「OCN PCパック」の提供を開始し、インターネット利用人口の拡大に努めました。これらの結果、本年2月インターネット接続サービス「OCNダイヤルアクセス」が、100万回線を突破しました。
  • アークスター21
     「スーパーリレーFR」および「スーパーリレーCR」において、あらかじめ登録した通信相手とのグループ閉域型通信を可能とするIP-VPNサービス「アークスター21」の提供を開始するとともに、「アークスター21」におけるインターネット接続サービスの提供を開始いたしました。
  • アークスターダイレクト
     国内、国際専用アクセスサービスについては、お客さまをエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ網(県間網)に直接収容することで、低廉な通話料金を実現するISDNサービスとして「アークスターダイレクト」の提供を開始しました。
  • プレミアプラン
     昨年9月距離段階別・時間帯別サービス、期間契約割引サービス、大口割引サービスを組み合わせて提供する企業向け包括料金サービスとしてアークスターボイスネットワークシリーズ「プレミアプラン」の提供を開始しました。
  • シャベリッチ
     毎月200円の定額料をお支払いいただくことで、お客さまがあらかじめ指定した都道府県をまたぐ2つの電話番号への通話/通信料金を、曜日や時間帯にかかわらず、40%割り引く月極割引サービス「シャベリッチ」の提供を開始しました。
  • SLA(サービス品質保証制度)
     高速ディジタル伝送サービス(HSD)、ATMメガリンクサービス、スーパーリレーFR、およびスーパーOCNにおいて、回線品質、故障修理時間などサービスの品質を保証する新しい「サービス品質保証制度」(SLA) を導入しました。
  • 国際電話サービス
     昨年10月からアクセス番号「0033」による国際電話サービスを開始し、本年3月末時点でのサービス提供対地は、231(国・地域)となっております。
  • アークスターサービス拠点拡大
     1997年9月から「アークスター」のサービスブランドのもと、法人向けグローバル通信サービスの提供を開始しておりますが、グローバル企業ニーズへの対応に努め、本年3月末時点でのサービス提供対地は、47対地となっております。
  • 専用サービス
     近年の企業の情報通信システムの大容量化、高速化やインターネットの普及に伴う通信需要の増大により、専用サービスについての低廉化要望が高まっていることから、昨年10月は「高速ディジタル伝送サービス」と「ATMメガリンクサービス」の遠距離を中心とした料金値下げおよび本年3月には「ATMメガリンクサービス」の中・高速帯域を中心とした料金値下げを実施いたしました。また、本年2月「国際高速ディジタル専用サービス」の対地を16対地に拡大しました。
  • グローバル規模の出資・提携
     グローバルな規模におけるパートナリングにも注力し、実施してまいりました。香港における大手インターネットサービスプロバイダ-のひとつである香港ネット社、フィリピン第1の通信キャリアPLDT社、オーストラリアでIPベースの通信サービスを提供しているDavnetグループ、これら各社と出資および業務提携を含む戦略的提携を行い、そしてコンピューターアソシエイツ社、IBMコーポレーション、チボリシステムズと共同で企業の情報通信システムの設計、構築、保守、管理をワンストップのアウトソーシングで提供するための取り組みを開始しました。また、本年3月に衛星を有効活用し、新たな衛星通信事業の展開を図るため、株式会社日本サテライトシステムズ(本年4月1日にジェイサット株式会社へ社名変更)への出資および資産譲渡を実施しました。

(イ)マネジメント改革の成果
 当社のミッションなどを定めたOBP(アワービジネスフィロソフィー)の全社員への浸透を図るとともに、新しい人事・評価制度、プロフェッショナルなスキルを持つ要員の中途採用、新しい人材育成プログラムを実施し、グローバルな環境に対応できる新しい企業文化創造の基盤作りを行いました。

 以上の営業活動の結果、当期の営業収益は1兆753億円、経常利益は1,277億円、当期利益は728億円となりました。

 

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