1.概要
1-1.本レシピで実現できること
本レシピでは、Mobile GNSSの高精度位置情報データをモバイル通信とゲートウェイを通じてクラウドストレージサービスに蓄積する方法を説明します。クラウドストレージサービスに蓄積されたデータは、後からさまざまなユースケースに活用できます。例えば、トラックや配送車の走行データを蓄積し、後からルートの最適化や業務改善に活用することが可能です。また、現場の作業車や重機の位置情報を蓄積しておくことで、作業の効率化や稼働状況の把握にも役立てることができます。
本レシピにあたり、Mobile GNSS、IoT Connect Gateway、およびWasabiオブジェクトストレージのサービスを使用します。Mobile GNSSで取得した位置情報データをWasabiオブジェクトストレージへ蓄積し、お客さまシステムやクラウドサービスとの連携(データ加工・分析など)を通じて、位置情報を活用したサービスのプロトタイプ開発から商用開発までをスムーズに展開できるようになります。

Mobile GNSS とは
Mobile GNSSは、通信回線、デバイス(小型GNSS受信機)、補正情報サービスを含んだパッケージです。複雑なキッティングや個別契約の必要なく、すぐに使い始めることができます。パッケージには、小型GNSS受信機と、多数の導入実績をもつ「IoT Connect Mobile® TypeS」「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」が含まれています。

Mobile GNSSの小型GNSS受信機は従来とは異なり、アンテナ・バッテリー・LTEモジュールをすべて内蔵したうえで、極限まで小型化・軽量化しており、従来の端末では実現が難しかったヒトによる携行が可能です。

Wasabiオブジェクトストレージとは
Wasabi オブジェクトストレージは、データ転送料無料のオブジェクトストレージです。Amazon Web Servicesによって提供されるオンラインストレージAmazon S3と互換性があるAPIを提供しているため、Amazon S3に対応した既存アプリケーションを活用可能です。デバイスから取得したIoTデータをWasabiオブジェクトストレージに保管し、必要な時に取り出したデータをお客さまシステムやクラウドサービスでデータ分析などに活用できます。

IoT Connect Gateway とは
IoT Connect Gatewayは、クラウドサービス(任意のお客さまサーバー含む)へのデータ転送に対応していないデバイスをさまざまなクラウドサービスに対応できるサービスです。IoT Connect Gatewayを活用することで、Mobile GNSSを、本レシピ記載のWasabiオブジェクトストレージだけではなく、お客さまシステムやさまざまなクラウドサービスに対応できます。Smart Data Platform (SDPF)が提供するIoTプラットフォームであるThings Cloud にも対応しており、位置情報データの収集・蓄積・可視化までをワンストップで実現することも可能です。

1-2.所要時間
製品IoT化パックお問い合わせフォームから所用時間についてお問い合わせください
1-3.所要費⽤
製品IoT化パックお問い合わせフォームから所用時間についてお問い合わせください
1-4.使用するサービス
Mobile GNSS サービスページ
docomo IoT 高精度GNSS位置情報サービスページ
IoT Connect Mobile® Type S サービスページ
IoT Connect Gateway サービスページ
Wasabi オブジェクトストレージサービスページ
1-5.準備するハードウェア・サービスなど
本レシピを行うためには以下のものをご用意ください。
- 金額はレシピ作成時となります。金額は税込・送料別です。
ハードウェア
品名 | 数量 | 価格 | 備考 |
---|---|---|---|
Mobile GNSS | 1 | ― | IoT向けモバイルデータ通信サービス IoT Connect Mobile® Type SのSIMが組み込まれた小型GNSS受信機です。 |
パソコン (設定用) | 1 | ― | Mobile GNSSの設定用に使用します。 |
USB Type AtoC ケーブルまたはUSB Type CtoCケーブル | 1 | 数百〜千円 | Mobile GNSSの設定用に使用します。 |

サービス
価格 | 備考 | |
---|---|---|
Mobile GNSS パッケージ (初期費用) | 製品IoT化パックお問い合わせフォームからMobile GNSSの費用についてお問い合わせください | 詳細は、Mobile GNSSサービス担当とご相談ください。 |
Mobile GNSSパッケージ (ランニングコスト) | 製品IoT化パックお問い合わせフォームからMobile GNSSの費用についてお問い合わせください | 詳細は、Mobile GNSSサービス担当とご相談ください。 |
IoT Connect Gateway | 製品IoT化パックお問い合わせフォームからMobile GNSSの費用についてお問い合わせください | 詳細は、Mobile GNSSサービス担当とご相談ください。 |
Wasabi オブジェクトストレージサービス | 約36円(税込)/日 | 1日の最低利用料金として、1,024GBの費用が発生します。詳細は、Wasabi オブジェクトストレージ プランと料金をご確認ください。 |
2.作業の流れ
2-1.Wasabiオブジェクトストレージの設定
Mobile GNSSから送信された位置情報データを蓄積するための、Wasabi オブジェクトストレージの設定を行います。Wasabi オブジェクトストレージサービスは、低コストかつ高速なクラウドオブジェクトストレージサービスです。S3互換APIに対応し、シンプルな操作でデータを安全に保存・管理可能です。データ転送量に必要な料金がなく、優れた耐久性とセキュリティを提供しています。
1) Wasabi アカウントを作成する
下記リンク先に掲載されている【Wasabi アカウント作成手順】を参考にして、Wasabi 用のアカウントを作成します。
2) Wasabi Consoleへログインする
下記リンク先に掲載されている【Wasabi Console 利用手順】を参考にして、Wasabi Console へログインします。
3) Wasabi Console 上でユーザー・アクセスキー・シークレットアクセスキーを作成する
この手順で作成したアクセスキー・シークレットアクセスキーは、IoT Connect Gatewayの認証設定で使用します。
画面左部メニューの【ユーザー】を選択し、画面遷移後に右上部の【ユーザーを作成】ボタンを選択します。

ユーザーの作成画面が表示されるので、以下を設定します。
設定入力後に【次へ】ボタンを選択します。
項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
ユーザー名 | 任意のユーザー名を指定 | ― |
アクセスの種類 | プログラマティック (APIキーの作成) を指定 | プログラマティックユーザーの場合、Wasabi Consoleへのログインは不可です。 今回はIoT Connect Gateway とのシステム間連携で使用するためプログラマティックを選択しています。 |
多要素認証(MFA) | チェック無し | Wasabi Console ユーザーの場合は、セキュリティ観点から、チェック有りを推奨します。 |

グループの設定画面に遷移しますが、特に何も入力せず【次へ】ボタンを選択します。
- 本レシピでは割愛しますが、グループを作成することでグループ毎の権限管理が可能なため、必要に応じて使用してください。

ポリシーの設定画面に遷移するので、以下のポリシーを設定します。
ポリシーを設定するには、ポリシー名の右部にある【+】ボタンを選択します。
- WasabiReadOnlyAccess
- WasabiWriteOnlyAccess
- IoT Connect Gatewayとの連携にあたり必要最小限のポリシーを付与していますが、組織ルールに応じたポリシーを適宜選択してください。

画面下部の【添付される方針】に【WasabiReadOnlyAccess】および【WasabiWriteOnlyAccess】が表示されていれば、問題なくポリシーを設定できています。
設定入力後に【次へ】ボタンを選択します。

ユーザー作成の確認画面に遷移するので、設定内容を確認し、問題がなければ画面下部の【ユーザーを作成】ボタンを選択します。

ユーザー作成中に【アクセスキーを作成する】画面が表示されます。
シークレットアクセスキーは、この作成画面以降では再表示できないため、【CSVのダウンロード】または【キーをクリックボードにコピー】のいずれかを選択し、安全な場所に保存してください。
アクセスキー・シークレットアクセスキーの保存後に、【×】ボタンを選択します。
- アクセスキーとシークレットアクセスキーは、IoT Connect Gatewayの認証設定で使用します。

ユーザーの作成完了後に、【閉じる】ボタンを選択します。
全ステップの状態が緑チェックマークであれば、問題なくユーザーを作成できています。

ユーザー一覧画面に作成した作成したユーザーが追加されていることを確認します。

4) Wasabi Console 上でバケットを作成する
この手順で作成したバケットは、IoT Connect Gatewayの転送設定で使用します。
作成したバケットに、Mobile GNSSから送信された位置情報データが保存されます。
画面左部メニューの【バケット】を選択し、画面遷移後に右上部の【バケットを作成】ボタンを選択します。

バケットの作成画面が表示されるので、以下を設定します。
設定入力後に【次へ】ボタンを選択します。
項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
バケット名 | 任意のバケット名を指定 | ― |
地域 | 【Tokyo ap-northeast-1】を指定 | |
クイック設定 (オプション) | 指定無し | 既存バケット設定を元に新たなバケットを作成できますが、本レシピでは割愛します。 |

プロパティの設定画面に遷移しますが、特に何も設定せず【次へ】ボタンを選択します。
- 本レシピでは割愛しますが、バケットのバージョン管理やオブジェクトロック機能を活用することで、バケットにアップロードしたデータをより安全に保護できます。

ログ保存の設定画面に遷移しますが、特に何も設定せず【次へ】ボタンを選択します。
- 本レシピでは割愛しますが、バケットのログを有効化することで、バケットに対する各種操作を記録できるため、意図しない不正な処理が行われていないかなどセキュリティ監査などに役立てることができます。

レプリケーションの設定画面に遷移しますが、特に何も設定せず【次へ】ボタンを選択します。
- 本レシピでは割愛しますが、レプリケーションを有効化することで、任意のバケットに格納されているデータを別のリージョンのバケット、例えば東京リージョンから大阪リージョンに非同期にコピーすることが可能です。これによりBCP(事業継続計画)やDR(ディザスタリカバリ)に役立てることができます。

バケットのタグ設定画面に遷移しますが、特に何も設定せず【次へ】ボタンを選択します。
- 本レシピでは割愛しますが、タグを設定することでバケットの検索などに役立てることができます。

バケット作成の確認画面に遷移するので、設定内容を確認し、問題がなければ画面下部の【バケットを作成】ボタンを選択します。

バケット一覧覧画面に作成したユーザーが追加されていることを確認します。

以上でWasabiオブジェクトストレージの設定は完了です。
2-2. IoT Connect Mobile® Type Sの設定
Mobile GNSSパッケージのMobile GNSSからWasabiオブジェクトストレージへ位置情報データを送信するためには、IoT Connect Mobile® Type S の設定でIoT Connect Gatewayを有効化する必要があります。
IoT Connect Gatewayの有効化は、Mobile GNSSサービス担当が実施します。
2-3. IoT Connect Gatewayの設定
Mobile GNSSから送信された位置情報データをWasabiオブジェクトストレージに転送するためには、IoT Connect Gatewayを使用する必要があります。
IoT Connect Gatewayの設定は、Mobile GNSSサービス担当が実施します。Mobile GNSS担当者の作業にあたり、以下の情報をお伝えください。
- 手順【2-1. Wasabi オブジェクトストレージの設定】のアクセスキー・シークレットアクセスキー
- 手順【2-1. Wasabi オブジェクトストレージの設定】のバケット名
2-4. Mobile GNSSの設定
Mobile GNSSをIoT Connect Gateway向けに設定します。
Mobile GNSSの設定にあたり、RTK端末設定ツールを使用します。
- RTK端末設定ツールの取得やマニュアルについては、Mobile GNSS担当者へお問い合わせください。
1) 設定用PCとMobile GNSSをUSBケーブルで接続する

2) RTK端末設定ツールを起動する
【端末接続OK】の文字列が表示されていれば、問題なくRTK端末設定ツールからMobile GNSSを認識できています。

3) 補正情報の設定を確認する
【NTRIP】タブに移動し、以下の設定項目を確認します。
項目 | 確認内容 | 備考 |
---|---|---|
マウントポイント名 | 【RRSGD】であること | ― |
NTRIP通信インターフェース | 【LTE】にチェックがされていること | ― |

4) 位置情報データの送信先を設定する
【Cloud】タブに移動し、以下を設定します。
【Cloud】タブでは、クラウドへ位置情報の送信設定を行います。
設定入力後に、画面下部の【端末へ書き込む】ボタンを選択します。
項目 | 設定内容 | 備考 |
---|---|---|
Cloud送信インターフェース | 【LTE】を設定 | 無線LAN環境がインターネットに接続されていれば、WiFi経由でも位置情報の取得が可能です。 |
サーバーアドレス | 【an1.icgw.ntt.com】を設定 | ― |
接続ポート | 【50000】を設定 | ― |
通信セキュリティ | チェックを外します | Mobile GNSSが使用するIoT Connect Mobile® Type SとIoT Connect Gateway間は閉域網であるため、既にセキュアな通信が確保されています。 |
送信フォーマット | 【Normal】に設定 | ― |

5) 位置情報データの測位レートを設定する
【F9F】タブに移動し、以下を設定します。
【F9F】タブでは、GNSSモジュールの測位レートや出力センテンスを変更できます。
設定入力後に、画面下部の【端末へ書き込む】ボタンを選択します。
項目 | 設定内容 | 備考 |
---|---|---|
測位レート[ms] | 【5000】を設定 | 測位レートをms(ミリ秒)単位で指定して端末に設定します。 |
出力センテンス他 | チェックは任意 | 送信フォーマットが【NMEA】の場合は、チェックを有効化することで、複数種類のNMEAデータを送信できます。 |

2-5.Wasabi オブジェクトストレージへのデータの送信と確認
Mobile GNSSからWasabiオブジェクトストレージへの位置情報データの送信と、Wasabiオブジェクトストレージに蓄積されたデータを確認します。GPS衛星との通信を確保するため、視界が開けた屋外でのご確認ください。
1) Mobile GNSSを再起動する
Mobile GNSSの側部にあるボタンを10〜20秒程度長押しします。

ボタンが緑色になり点滅が始まれば、Mobile GNSSを再起動できています。

ボタンが黄色になり短い間隔(1秒未満)で点滅が始まれば、位置情報データを送信できています。

2) Wasabi Console上で位置情報データがアップロードされていることを確認する
手順【2-1. Wasabi オブジェクトストレージの設定】を参考にバケット一覧のページへ移動し、
同手順で作成したバケット(本例では、mobilegnss-icgw)を選択します。

選択したバケットにMobile GNSSから送信された位置情報データがアップロードされていることを確認できます。

2-6.Wasabi オブジェクトストレージからデータをダウンロードする方法
Wasabi オブジェクトストレージに蓄積されたデータを設定用端末にダウンロードします。
ローカル端末にダウンロード後、データ分析や解析などの用途にご利用することができます。
1) Wasabi Explorer をダウンロードし、アカウントを設定する
Wasabi Explorer はWasabi オブジェクトストレージのデータをGUIから閲覧・操作可能なアプリケーションです。ローカル端末のOSに適した種類を選択し、アカウント設定を行ってください。
2) Wasabi Explorer を使用し、ローカル端末にファイルをダウンロードする
アカウント設定が正常に完了すれば、Wasabi オブジェクトストレージへアップロードされたファイルを閲覧・操作できます。ローカル端末にファイルをダウンロードするには、ファイルもしくはディレクトリを選択し、【Copy】を実行します。
画像例では、左ペインがローカル端末で右ペインがWasabiオブジェクトストレージを表しています。
右ペインのファイルもしくはディレクトリを選択後に右クリックを実行するか、F5キーを押下することで、ファイルをローカル端末にダウンロードできます。

左ペインのローカル端末に選択したファイルもしくはディレクトリが表示されていれば、問題なくローカル端末にファイルをダウンロードできています。

3.最後に
本レシピでは、docomo IoT高精度GNSS位置情報サービスとIoT Connect Mobile® Type Sがパッケージ化された Mobile GNSSとIoT Connect Gatewayを連携し、Wasabiオブジェクトストレージに位置情報データをアップロードする方法をご紹介いたしました。レシピ上では位置情報データのアップロードのみとなっていますが、今後アップロードされたデータの活用方法なども紹介予定です。
【参考】位置情報データ蓄積後の活用事例
位置情報データ蓄積後の活用法については以下をご参考にしてください。
蓄積後のデータを元に地図上へ可視化することで、高精度な移動履歴の図示などが可能です。