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AIエージェント元年。
経営者が今すぐ備えるべき環境づくり(後編)

AIエージェント元年。経営者が今すぐ備えるべき環境づくり(後編)

「人手が足りない」「作業効率を上げたい」──。多くの企業が抱えるこうした課題に、AIが本格的な解決策を提示し始めています。注目すべきは、これまで業務の効率化の観点でChatGPTなどのAI活用が進んできましたが、AIエージェントと呼ばれる、人を代替するような技術がこれから多くの業務を変革していく可能性が高くなってきました。その背景にあるのが「データの力」です。さまざまな専門性のあるデータを学習させることで、例えばソフトウェアエンジニアの業務を自律的に実行することなどができるようになっているのです。一方で、AIの活用はソフトウェアエンジニアリングだけにとどまりません。営業、人事、事務など、あらゆる業務でAIの導入が現実的になってきており、経営者にはその環境整備が喫緊の課題となっています。労働人口の減少が深刻な日本で、AIをどう生かすべきか。FastLabelの鈴木健史CEOに、ロボットの進化の現在地や、企業がAIを活用するためにできることなど、話を聞きました。

この記事はNewsPicksとドコモビジネスが共同で運営するメディア「NewsPicks+d」編集部によるオリジナル記事です。ビジネスやキャリアに役立つコンテンツが無料でご覧いただけます。 NewsPicks+d 詳しくはこちらをクリック
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目次

写真:鈴木 健史 FastLabel株式会社 代表取締役CEO

AIの活用で、日本が勝てる分野はまだある

世界でAI技術の開発競争が激しさを増すなか、日本の競争力をどう評価すべきかは非常に難しい問題です。

日本にはアメリカや中国ほど大規模なAI人材プールはありません。優秀なAI研究者やエンジニアが輩出していますが、全体数で見ると、論文投稿数や国際会議での受賞実績などでも米中に大きく差をつけられています。

最近は、人に代わって自動で業務を行ってくれるAIツール、「AIエージェント」が注目を集めています。国内外で優秀なスタートアップが、いち早くAIエージェントのサービスを世に広めようと競っています。

ただし、AIを使ったサービスを提供する「AIアプリケーション開発」と、AIの根幹をなす「AIモデル開発」では、求められるスキルセットや開発環境が大きく異なります。

AIアプリケーション開発においては、ソフトウェアエンジニアのスキルセットが重要であり、世界的に見てもまだ多くの市場が空いている状態なので日本にもチャンスは十分あると思います。

一方、AIモデル開発においては、OpenAI、Google、Anthropic、DeepSeekなどと比較すると明らかに後れをとってます。

しかし、「Facebook」を運営している大手テクノロジー企業MetaのLlama、中国のDeepSeekやQwenといったモデルを筆頭に、世界の主要なAI開発企業がオープンソースのモデルを公開しています。

うまく、オープンソースを拡張する形で日本語特化のモデルをつくることができればキャッチアップできるチャンスはまだあると思います。

また、ロボットは、日本がもともと強かった分野です。産業用ロボットはいまでも、世界で日本企業のシェアが高い。そこにAIをうまく組み合わせれば、まだまだ勝てる領域が出てくるのではないでしょうか。

データがロボット開発に革命を起こす

AIの進化を受けて、アメリカや中国では驚異的なスピードで汎用ロボット・人型ロボットなどの開発が進んでいます。

日本でもロボットにAIを組み込む取り組みを活発化しようと、2024年12月には一般社団法人AIロボット協会が設立されました。ロボットを動かすための汎用的なAIモデルをつくるべく、FastLabelも会員企業として参加しています。

ここ最近の研究で、LLM(大規模言語モデル)などで知られるコンピュータリソース、モデルサイズ、学習データサイズが多いほど性能が上がる「スケール則」と呼ばれる法則が、ロボット向けのAIモデルでも適用される可能性がでてきました。

注目すべき例として2024年10月、元Googleのロボット研究者たちが集まって創業したAI企業のPhysical Intelligenceが、「π0(パイゼロ)」という汎用ロボット向けAIモデル開発についてまとめたペーパーを公開しました。

「π0(パイゼロ)」:汎用ロボット向けに開発された最新AIモデルの名称。単一のロボットだけでなく、多様なロボット・作業への適用を目指したモデル。

さまざまなロボット、さまざまなタスクの大量のデータを集めて学習することで、これまで実現が難しかった洗濯物を畳むなどの高度な作業をロボットができるようになったのです。

つまり、LLMのように大量のデータを集めればロボット用のAIも賢くなることが証明されつつあります。

(画像:ChakisAtelier / gettyimages)
(画像:ChakisAtelier / gettyimages)

これまで導入が進んできた産業用ロボットは、例えば工場の製造工程の一部で、決まった動きをすることが中心で、ロボットの導入はやや限定的なものとなっていました。

しかし、今後は基盤モデルができ、生成AIのようにロボットがさまざまなタスクをこなせるようになると、多品種少量への活用や、材料や完成品を運ぶなど人がやっていた作業もできるようになるかもしれません。

特に日本では労働人口が急速に減少しており、さまざまな業界で人手不足が深刻な問題となっています。人材が豊富な国と比べると、あらゆる作業をこなす汎用ロボットの導入が早く進む可能性が高いと考えています。

FastLabelが目指す、世界への挑戦

FastLabelは、「AIインフラを創造し、日本を再び『世界レベル』へ」を使命に掲げています。国内のAIデータ市場でシェア1位を目指しており、それが達成できそうになってきました。

アメリカでは、私たちと同じビジネスの領域でScale AIという会社が急成長を遂げています。

同社の評価額は約140億ドルで、2025年の売上高は20億ドルに達すると見込まれているとの報道もあります。しかし文化や言語の違いがあるため、日本国内では私たちが優位な立場にいます。

今年は「AIエージェント元年」と言われていますし、AI×ロボットの分野もこれから開発が本格化する段階です。これらの領域で勝者が生まれるのはまだ先で、私たちが先行できる可能性があります。

FastLabelは日本のトップエンタープライズのお客様に自動運転や生成AIの分野でサービスを活用していただいています。そこで培った経験を生かして、グローバルへ向けてのサービスを提供していきたいと考えています。

経営者に求められる、AI活用の環境づくり

AIツールの浸透を背景に、海外では雇用への影響が生まれています。特にソフトウェアエンジニアリングの分野で、顕著な変化が起きています。

MicrosoftやSalesforceといった海外の大手企業で、ソフトウェアエンジニア需要を一部抑制するような動きがあります。

Salesforce は「2025年は新たなソフトウェアエンジニアを採用しない」と発言し、AI導入による30%の開発生産性向上を理由に挙げました。この流れは、将来的にすべての職種へ広がると考えています。

人事専用のAIエージェントや営業専用のAIエージェントといった、職種別のAIツールのニーズが高まってくるでしょう。日本国内でも、自社専用のAIツールをつくる動きが進んでいます。

こうした世界的な変化の波に後れを取らないよう、日本の経営者の方々には、いまから各社でAI活用の環境整備に取り組んでいただけたらと思っています。

すでにAIの導入に積極的な会社もありますが、大切なのは現場で自在にAIを使えるようにすることです。

その際、上司が「AIを使え」と頭ごなしに指示するより、自然にAIを使いたくなるような社内文化を醸成するのが効果的です。

セキュリティーを理由にAI活用へブレーキをかけるのではなく、むしろスピーディーに取り組む意識をもつことも重要でしょう。

主要なAIツールは、技術開発が進んだことで利用料がどんどん下がっており、いまや高価なものではありません。

月1万円程度の金額で十分役立つものも多いので、社員が気軽にAIを使える環境を整えることをおすすめします。

この記事はドコモビジネスとNewsPicksが共同で運営するメディアサービスNewsPicks +dより転載しております。

執筆:加藤智朗
撮影:大橋友樹
バナーイラスト:emma / gettyimages
図版制作:WATARIGRAPHIC
デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)
編集:奈良岡崇子

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