2021年02月08日

共に考え、共に動き、共につくろう!
トランスフォームで生き抜く未来へのマーケティング
~C4BASEウェビナーVol.03 レポート~

C4BASEは、「会社や家庭、個人のコミュニティーを超えた"4thプレイス"」をうたい、他企業の新規事業やイノベーションを担当する会員が、新たなビジネス創出を目指して活動をしています。

今年度は、コロナ禍で止まった状況から再生し、新しいあり方をつくり上げ、発信していく、という連続性を意識し、「ニューノーマル時代のデジタル共創戦略」という大テーマの下、“リブート”→“リ・ビジョン”→“リビルド”→“リ・アクション”という4回シリーズでウェビナーを企画しました。本記事では、12月1日にライブ配信されたVol.03「ニューノーマル時代のデジタル共創戦略~リアル世界をリビルド(Rebuild)する『マーケティングと共創』~」の模様をレポートします。

ゲストは、長きにわたって多種多様なビジネスに携わり、数々の名だたる企業でリーダーを務めてきたハロルド・ジョージ・メイ氏。その経歴から培ってきた豊かな知見を、ダイナミックな話術で披露されました。さらに、誰もが知る「飴」を軸に100年以上の歴史を築いたカンロ株式会社より、執行役員の内山妙子氏も登壇。老舗企業のリブランディングやECチャレンジなどについて語られました。パネルディスカッションでは、寄せられたアンケートの回答や質問をもとにさらに議論が深まり、今回も多くの会員の皆さんと有意義な時間をシェアしました。

また今回は新しい試みとして、会員同士のコミュニケーションを図るべく行われた、ウェビナーのフォローアップイベントの模様もお伝えします。

オープニング

オープニングでは、C4BASE Ownerであるビジネスソリューション本部 事業推進部 西川 英孝部長から、今回のテーマとゲストの紹介がありました。コロナ禍でさまざまな影響を受けた1年を振り返り、「NTT Comとしても、先の読めないこの時代において、皆さまと共に手を携えて、新たな世界をつくっていきたい」と熱く述べ、ご覧いただいた皆さまが元気になれるような会にできたら、とあいさつしました。

次にManaging Directorの戸松 正剛部長が、720社2200人を超えたC4BASEの会員数について触れ、100人程度で始まった小さな共創コミュニティーから、現在はウェビナーなどを通じて多くの方に情報発信ができるようになった一方で、メンバー同士の交流や直接的な議論の場を今後どうつくっていくか、という課題もあると述べました。そして、テクノロジーと意味あるモノの関わり方の成功例を挙げ、今回のテーマであるマーケティングやビジネスにおける意味変換について紹介。今回の登壇者はまさに意味変換を成し遂げた方たちであると、続く講演に期待を込めました。

「ニューノーマル時代の究極の仕事術」
元タカラトミー社長・元新日本プロレス社長
ハロルド・ジョージ・メイ 氏

基調講演では、新日本プロレスの名物社長としてファンも多かったメイ氏が、チャンピオンベルトならぬ社長ベルトを掲げて華々しく“入場”。「さすらいのプロ経営者」を自称されるメイ氏は、講演で何度も“熱意”が大事だと訴え、それを体現するかのごとく終始熱い口調で、多岐にわたるご経験と知見を語りました。

キャリアの半分を外資系企業、残り半分を日本企業で積み、両方の良い点・悪い点を知り尽くしているメイ氏。コロナの影響で対面からデジタル形式に変わりゆく時代において、重要性を増すのはコミュニケーションであると述べ、社員同士、対お客さま、対世間とのコミュニケーションについて深く説明しました。そして今こそ企業のUSP(Unique Selling Proposition)を大きく打ち出すべきとした上で、「日本企業は、特に対外的なアピールで損をしている。『謙虚』というのは日本の美学でもあるが、海外では通用しない」と一刀両断。これからのニューノーマル時代では、企業ブランディングが非常に大事になってくることを強調しました。

さらに、会社をトランスフォームするためには「過去の否定はしない」「できるだけ数字を活用する」「一人ではやらない」ことだと言及。「戦略・方針、商品、組織、イメージ」の4つの観点で、自身の成功例を交えて力説しました。例えば、人気は低迷しつつも、驚異的な知名度の高さを誇っていた商品の“リカちゃん”そのものにSNSを始めさせることで、新たな価値を生み出し、人気を復活させたこと。日本一、そして世界でも第2位のプロレス団体である新日本プロレスの世界進出を推し進めるべく、聖地と言われるマディソン・スクエア・ガーデンでの興行成功という大きな一歩を踏み出したことなど、数々のユニークな“実績”を語ってくださいました。

これらを実現した背景には、やはり大変な努力があったと言います。そうした際に取るべきリーダーの姿勢についてこう述べられました。

社長ベルトを手に登場した“さすらいのプロ経営者”メイ氏

「トランスフォームが必要だと言っても、人間は変化を恐れるもの。当然抵抗もある。だからリーダーが新しい方向性を示すとき、4つのことを絶対に伝えないといけません。“どこへ行くのか”“なぜそうするのか”“どうやってやるのか”、そして“その結果はどうなるのか”。この4つ目が、一番大事です。皆が知りたいのは結果です。雇用がどうなるのか、この会社は安定するのか、株価は上がるのか、という予測を出す必要がある。そしてそれを、すべてのステークホルダー、社員、株主、アナリスト、お客さまにも伝える必要があります。新日本プロレスにおいて最高の売上・利益を達成できたのも、もともとある資産を生かして会社をトランスフォームしたからだと僕は思います」

Q&A

戸松部長:新しいことを始めるにあたって、社員を巻き込むことが難しいという悩みを持たれている方も多いようです。

メイ氏:社長だけでなく、部下を持つリーダーの方たちは「時間の投資」が必要です。時間を掛けて“熱意”を伝え、意見を聞いて回ることです。

戸松部長:マディソン・スクエア・ガーデンの話で泣いてしまったという声も届いていますが、勝算はあったのでしょうか。

メイ氏:非常に大きな目標を掲げることで、社員は発想が変わってきます。例えば、売り上げを2%上げてくださいと言うと当たり前の発想しか出てこないけど、300%上げろと言われたら、次元が違う考え方を持ち始める。本当に300にいかなくてもいいんです、50でも。マディソン・スクエア・ガーデンでのあそこまでの成功は計算外ではありましたが、皆が長年それを誇りに思えるような成功例がないとプライドも持てないと思ったので、大きく出たんです。

パネルディスカッション

次に、カンロ株式会社 執行役員 コーポレートコミュニケーション本部長の内山 妙子氏が登壇。

創業は大正元年、2020年で108年を迎えたカンロ社。コモディティー化した菓子市場において、飴とグミを主軸として戦う同社が、いかに新たな価値創造に挑み続けてきたのか、また、老舗企業としてブランド再生にどう取り組んでいるのか、具体的な2つの事例を通じて話されました。

一つは「ヒトからヒトへつながるヒトツブ」をコンセプトに、100周年記念事業として東京駅・グランスタ内にオープンした直営店。もう一つは、2017年に40年ぶり刷新したCI(コーポレート・アイデンティティー)について。どちらもカンロ全体のブランドをどうやって構築していくか、という流れの上での取り組みであったといいます。

CI刷新の背景にあったのは、少子高齢化と糖質制限ブーム。特に「糖」に対する一般的なマイナスイメージです。非常に大きな危機感の中で、自社のコンピタンス、大事にしているものは何なのか、価値は何なのかということを、とことん考え抜いて出した答えは「糖と歩む企業」。糖というのはいろいろな種類があって、脳の主要なエネルギーはブドウ糖であるなど、体に良いものもある。そうして、ロゴマークもカンロの原点であるキャンディーに変え、改めて「糖から未来をつくる。」と宣言したのです。

内山氏は、「コロナをきっかけにECをスタートしたが、お客さまとエンゲージメントをどうつくるかというのはデジタルになっても変わらない」と述べて話を締めくくり、メイ氏、内山氏、戸松部長によるパネルディスカッションが始まりました。

マーケティング的 アイデア発想法

戸松部長:大きなヒットを生むためには、自覚さえまだされていないような潜在的ニーズのようなものを満たす必要があると言えます。そこのアイデアはどうやって出したらいいのでしょうか。

メイ氏:やっぱり“観察力”だと思う。食品や飲料の場合だと、コンビニやスーパーマーケットに立って、消費者行動やそのパターンを観察する。もう一つは“やってみること”。世の中で知られる大きなヒットというのは、実は偶然が多い。だからやってみる精神、というのが非常に大事だと思います。地域や期間を限定してやってみる。実践は、消費者調査より何倍も学べますから。

内山氏:“乗り移ること”かな。例えば、ターゲットをこういう人と設定したら、その人になりきって、その人が欲しいものを開発する。あとは、情報のインプットがないとアウトプットはできないので、いろいろな情報を取り込むことは大事だと思います。

戸松部長:内山さんは、ECを始められて、何か気付いたことはありますか。

内山氏:ECを通してお客さまと会話ができる、データが取れるということはすごいなと思います。今までは仮説としてあったお客さまの行動などが、全部データで数値化される。しかもレスポンスがすごく早い。アジャイル型ってよく言いますが、ぶつけてみて違ったらまた変えていく、というようなスピード感がデジタルではやっぱり大事だな、というところと、データのバックがあるというところがすごく面白い。それから、キャンディーのように棚の前に立って5秒で買われる商品だと、商品の良さとかストーリーは伝わりにくいけど、ECだとそれが伝えられる。そうすると、ECでは今までにない商品が売れると思うんですよね。今後はECで売れた商品を一般の流通でも売る、という流れもできるかもしれません。

戸松部長:新しい価値、新しい意味をつくってきたお二人ですが、そういうアイデアはどこから降りてくるのでしょうか?

メイ氏:観察が半分くらい。降りてきたっていうのは、5%くらいですよ。某企業でよく言われていたのは、堂々とまねをしろ、ということです。そこから学んで、もっと良くしろと。ちょっと工夫したらもっと売れるのに、ということはあるでしょう。

内山氏:私はメイさんとは逆で、直感が80%以上かなと思っています。それをどうやって理論的にアウトプットするか。あとは対話ですかね。アイデアを自分の中で磨いて、出して、また戻して、もう一回出して、というような作業です。

ブランディング2.0

戸松部長:昨今、老舗ブランドが苦境に立たされていたり、ネット上で世界観やブランディングを直接発信していく人たちが増えています。企業や商品のブランドについてどう思われますか。

メイ氏:ブランドは、消費者との約束です。それは品質だったり、味であったり、価格であったりいろいろあるでしょうが、その約束だけは絶対守るんだ、というのが第一だと思います。それから、ブランドは進化していかなければいけない。大事なものは財産として守りますが、いつまでも同じお客さまを追いかけ続けたらその商品のブランドは死んでしまう。コアターゲットを一旦リセットすることですね。これは勇気が要りますが。

戸松部長:内山さんのお話の中であった社員の方のアンケート内容が、NTT Comと似ているなと思いまして。品質や職人としての意識は高いし、通信を担っているのは私たちの社会インフラだという自負もある。一方で、企業のセンスには自信がなかったりする。社員の方が潜在的に持っているものは、ブランドに反映する気がしていて。インナーブランディングも必要ですよね。

内山氏:カンロでは広報部ができて2年です。最初にやったのがインナーコミュニケーションの強化で、社内報のウェブ化です。双方向のコミュニケーションができるような設定にしているので、そこでつながって少しずつ解きほぐしている感じです。

戸松部長:メイさんは経営者としてのご経験も豊富ですが、企業が厳しい状態だと社内も自信がなくなっているのでは?

メイ氏:社長でも部長でも、リーダーとなる場合には誰にも負けないくらい“熱意”を持って、その会社、その商品、そのサービスを愛している、という心が必要。またそれをずっと言い張ることも大事なんです。“この会社は本当に素晴らしい”とか“これだけのポテンシャルがある、世界に羽ばたけるぞ”と。1回ではう~んという感じでも、10回言われると信じ始める。自信を失わせないように言い張る勇気です。

雑(雑談・雑音・雑種)のマネジメント

戸松部長:ダイバーシティについて定義はいろいろあると思いますが、重要だと思う考え方はありますか?

メイ氏:僕は、考えのダイバーシティというのが一番大事だと思うんです。日本では、新入社員がその会社の色に染まるというのがあるけれど、それでは新しいものが出ない。以前いた外資系の企業では、新卒採用を一切せずに、中途採用のみというところもありました。別のところでは、海外の大学を出た日本人を積極的に雇っていた。価値観のダイバーシティで、中から徐々に変えていく。それが僕の考えです。

意味のイノベーション

戸松部長:新しい意味を創り出していくために、これはぜひ実践してみたらというアドバイスはありますか。

メイ氏:一言でいうと「失敗してもいいんだ」という精神ですね。失敗は成功のもと、と昔から言いますが、本当にそうなんです。失敗するから、もう一回頑張ろうという気になるし、パッションも高くなる。経営者、リーダーが失敗していいんだ、という雰囲気をつくるべきだと思います。

内山氏:これは“パッション”しかないかもしれないですよね。やりたい、ということと、やったらどうなる、というビジョンをちゃんと作る。こうなりたい、だから今はこれが必要だというバックキャストの考え方が必要かもしれないですね。

最後に戸松部長から、時間内には語り切れなかった部分については追加インタビューを行い記事化することを案内。また、C4BASEの今後の取り組みへの参加の呼び掛けがありました。さらに今年度最後となる次回、2月開催予定のVol.04ウェビナーの告知として、躍進を続ける株式会社ワークマンの専務取締役 土屋 哲雄氏のゲスト登壇がアナウンスされ、閉会となりました。

フォローアップイベント

C4BASE交流会@NeWork™の模様

今回新たにチャレンジしたのは、ウェビナーのフォローアップイベントです。1月15日と22日に「C4BASE交流会@NeWork™」を企画し、100人以上の方にお申し込みいただきました。

この交流会は、あらかじめ参加者にコーヒーのドリップパックを郵送しておき、当日NTTコミュニケーションズの新サービスNeWork™上で、アマナ コーヒークリエイターによるドリップパックのおいしい入れ方講義を行い、皆さまはお届けしたドリップパックを実際に入れ、そのコーヒーを片手に雑談、コミュニケーションを図るというイベントでした。

当日は、オンライン上での体験を通じて、会員の方々とそれぞれのビジネスや叶えたいことについて語り合いました。また、コーヒーによって徐々に空気がほぐれ、会の後半では普段の仕事についてや、興味のあるビジネスの話にも発展。カーメーカーや素材メーカー、広告代理店などさまざまな業界からメンバーが集い、コロナ禍でのコミュニケーションの課題や、今後新たな価値を創出できるであろうビジネスの話題で盛り上がりました。ウェビナーだけではない、C4BASEコミュニティーの魅力が参加者に伝わったのではないかと思います。

C4BASEではコロナ禍でもできるコミュニケ-ションを今後も企画していきます。記事をお読みいただき、少しでもご興味をお持ちいただきましたら、ぜひご参加ください!

社員メッセンジャー

NTTコミュニケーションズビジネスソリューション本部 事業推進部

穐利 理沙

2021年10月に立ち上げたOPEN HUB運営を担当しています。お客さまと新しい意味あるものを生み出すため、オウンドメディアによる情報発信、Webinarや会員コミュニティーによる共創プロジェクトの推進を行っています。ご興味ある方は、ぜひコンタクトをしてください!

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