2020年12月22日

あらためて考える「働く」のこれから
未来を明るくする「チームと共創」とは
~C4BASEウェビナーレポート~

9月29日、通算5回目となるC4BASE主催のセミナーがオンライン開催されました。テーマは、「ニューノーマル時代のデジタル共創戦略~『働く』をリ・ビジョン(Re:Vision)する『チームと共創』のこれから~」。

ゲストに、マスメディアなどでも注目度の高いサイボウズ株式会社(以下、サイボウズ)代表取締役社長 青野 慶久氏をお招きし、ユニークな“働き方改革”で会社を成功に導いた経緯から、新たな組織・個人の在り方について貴重なお話を伺いました。さらにパネルディスカッションでは、画期的なサテライトオフィスサービス「CocoDesk」を手掛けた富士ゼロックス株式会社(以下、富士ゼロックス)谷口 智郎氏を交え、リアルタイムで届く意見や質問を反映した興味深いセッションが繰り広げられました。

ウェビナー第2回目となる今回は、ポップな色使いの画面構成や背景デザイン、アンケート回答時の操作性の高さなど配信時のユーザビリティーも格段にアップし、PCやタブレット・スマホでも快適な視聴を実現。これまで以上の盛会となりました。その模様を紹介いたします。

実際のウェビナー画像

オープニング

西川部長

開会のあいさつとして、C4BASE Ownerであるビジネスソリューション本部 事業推進部 西川 英孝部長から、今回のテーマとゲストの紹介がありました。以前サイボウズに青野氏を訪ねた際、その革新的な社内環境に驚いたことや、富士ゼロックスの谷口氏が手掛けたCocoDeskを体験したことなど、実体験のエピソードも語りました。


戸松部長

Managing Directorの戸松 正剛部長は、あらためて4thプレイスとしてのC4BASEのコンセプトと、共創パートナーの役割を担う「C4 DX LANDER」の活動を紹介。ホログラム技術を用いたエアリアルUIによる店頭商品案内(大日本印刷株式会社)や、ブロックチェーンを活用したサプライチェーンDX(三井物産流通ホールディングス株式会社)などを共創事業の実例として披露しました。


「わがまま歓迎、新しい組織の作り方」
サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久氏

基調講演では、サイボウズの青野氏が登壇しました。「100人いれば、100通りの人事制度があってよい」とうたう同社。柔軟で懐の深い組織の在り方はいかにして形成されたのか、競争の激しい業界において、いかにして連続増益を可能にしているのか、その内情や成長のプロセスについて、率直に語ってくださいました。

今でこそ働き方改革先進企業といわれているサイボウズですが、以前は会社に泊まったり、長時間労働も当たり前のITベンチャーだったと青野氏は言います。転機になったのは2005年。離職率が28%になったことで、経営効率の悪さに気付き、何とか人が辞めない会社にできないか、と考え始めました。

離職理由を一人ひとり聞いていくと、何か一つ対策を打てばいいという話ではありませんでした。そこで勤務時間や就業場所、育児休暇など、働き方の選択肢を増やしていくと、28%だった離職率が3年後には10%を切り、今は8年連続5%を下回っています。そして反比例するように、経営効率は上がりました。

青野氏は「社員のわがままを聞いていくのは面倒です。でも、皆が満足して働いてくれて、会社のことを大好きでいてくれたら、ピンチの時でもアイデアを出し、チャレンジしてくれます。サイボウズの面白いところは、社員も満足して働き、顧客満足度、パートナー満足度も高いところです」と笑顔で語ります。そして、自社を「ティール組織」そのものだと紹介し、次のように続けました。

「私たちの組織は、例えるなら石垣です。同じ形をそろえて均一に積み上げていくブロック塀のように、一律的にメンバーを扱っていくやり方もいいんです。でも、皆個性があって一人ひとり違うんだから、それを生かしてうまく組み合わせれば、もっと強いものが作れるんじゃないかと」

青野氏はさらに、公平は幸福とは違うこと、わがままは決して悪ではないこと、わがままにも、自分の価値からくる良いわがままと、自分の価値を押し付ける悪いわがままがあると説明。良いわがままを尊重しながら、さまざまなアイデアを集めてユニークなものにしていくためのルールは、共通のビジョンに向かって進めることだと説きます。

また、多様性を重視しつつ、議論を建設的に進めていくためのスキルとして「自立と議論」を挙げ、愚痴を言うのではなく、疑問に思ったら意見をする「質問責任・説明責任」の考え方を徹底すること、問題をフレームワークで語れるように「問題解決メソッド」で議論ができることが必要だと語りました。

そして「働く」とは何かについて次のように述べ、講演を終えました。

「私の解釈は『周囲に価値を創造すること』です。だから人はお金が無い時代から、働いていたんだと思います。ところがいつの間にか、会社に行って仕事することが『働く』に変わってしまった。でも、会社というのは『法人』で、法の下でしか存在しない人、バーチャルなんです。本当にそこにいるのは、人間です。人の顔を見て働きましょう。
これから社会はどんどん動いていきます。不安を抱える方もたくさんいらっしゃると思いますが、働き方をあらためる、非常に大きなチャンスが今来ていると思います。悪いことばかりじゃないと思って、ぜひこの新しいチャンスに取り組んでくださればと思います」

Q&A

戸松部長:社員が何万人もいるような大企業の方々にとって、どうやってビジョンを作ったらいいのか、どう浸透させていけばいいのかは難題です。

青野氏:まず前提にしておきたいのは、ビジョンというのは上から降ってくるものではない、ということ。お互い、思っていることを出し合って、意見を交わしたり、共感したり、重ね合わせたり、そういう作業をしていくことこそ、理念づくりと浸透の活動だろうと思います。そして常にアップデートしていきます。サイボウズの企業理念にはバージョン番号が振ってあって「チームワークあふれる社会を創る」というのが2020年度バージョンです。

戸松部長:すべての社員のわがままを聞いたとしても、とても全部は叶えられません。社長としての青野さんの判断軸とは。

青野氏:まずその判断に行く前に、議論のプロセスがあります。誰もが参加できるグループウエア上にスレッドを立てると、多くの意見やアイデアが集まってきます。それから、企業理念にもう一回照らし合わせるんです。

パネルディスカッション

まずパネラーの一人、富士ゼロックスの谷口氏が登壇。「CocoDesk」誕生までの道のりについて紹介がありました。

CocoDeskは駅構内やオフィスビルのエントランスなどに設置してあるプライベートオフィス・サービス。営業の合間の隙間時間に、セキュリティやプライバシーを気にすることなく仕事ができるスペースがあったら・・・という一人の営業マンの悩みからスタートし、実証実験を経て、ようやく実を結んだ新規事業です。現在都心の16駅とオフィスビル5カ所、計40台を設置しています(2020年8月現在)。

谷口氏は、数々のアイデアがある中、このCocoDeskが新規事業となり得た理由として「お客さまへの提供価値が分かりやすく明確だったこと」「少しだけ先の未来の『あったらいいな』を形にしたこと」「自社の哲学『Better Communication』に基づいた価値提供をおこなっていたこと」「良きパートナーと出会い、共に一歩を踏み出すことができたこと」の4つを挙げ、事業創出に必要なのは「圧倒的な当事者意識と情熱」と力強く語りました。

続いて青野氏、谷口氏、戸松部長が、用意された4つのテーマに沿ってパネルディスカッションを行いました。
※( )内の数字は事前アンケートにおける参加者の興味度のパーセンテージ

“雑”のマネジメント(28.5 %)

青野氏:全員在宅勤務になってすぐ気付いたのは、雑音がなくなったということ。声を掛けられたり顔を見たりすることで気付けることがたくさんあったはず。だから今は、チームメンバーでZoomをつなげたままにし、ほぼすべての社内会議をオープンに。取締役会も、誰でも聞けます。あとは徹底的にグループウエアを使うことで、雑音づくりをしています。

谷口氏:雑音がないほうが仕事がはかどる場合もありますよね。大事なのは静と動をどう使い分けるかということでしょうか。

戸松部長:ダイバーシティ(雑種)についてはどうでしょう。

グリーンバックがカメラを通すとポップな背景に

青野氏:ダイバーシティというのは実はすでにあるもの、というのが私の意見です。皆一人ひとり、名前も違えば生まれてきた背景も趣味も好きな球団も違うわけです。にもかかわらず、同じようなカテゴリーで扱ってしまい、押し付けてしまっている価値観みたいなものがあるから、エッジが立ってこない。制約を外すことで個性が見えてくる。石垣も、石が10個だったらそんなにバリエーションは出せないけれど、1万個の石があったらもう組み放題。どんな面白い壁だって作れます。1万人、実は皆バラバラで、ダイバーシティはありますよ。それを組み合わせたらめっちゃ面白いですよ、と大企業の方々にも気付いてほしいですね。

戸松部長:ステレオタイプ的に大企業はダイバーシティが低いのではと言われがちですが、そう考えると、もう少し違った化学変化が大企業でも起きる可能性を感じますね。

モザイク化する働き方(18.2 %)

谷口氏:CocoDeskも、最近は、自宅近く、郊外の公民館やスーパーなどに置いてくれないかという声が増えています。在宅勤務で、特にお子さんがいらっしゃるような環境で、オンライン会議やプレゼンテーションの際など、数時間程度利用したいというニーズが高まっています。

青野氏:サイボウズではバンライフを始めたメンバーがいます。今、日本中を旅行しながら働いていますよ。朝会で「今日どちらですか」と確認する感じ。あと地方移住も増えてきました。まさにモザイク化が進んでいるな、と感じています。

在宅勤務=“知的”家内制手工業の行く末(18.2 %)

青野氏:まず、評価基準をどうするのかというのは、特に大企業における課題ではないでしょうか。また、一歩会社から出てその肩書が使えないときに、自分は何ができて何がしたいのか、どんな仕事を求めているのか、発信能力が必要な時代になったなと思います。

戸松部長:在宅勤務が長くなっている中で、社員のメンタルケアなどの課題にはどう対応されていますか。

青野氏:今年は社会的不安の中、保育園や学校も閉まっていた時期には子どもも家に居て、なかなか在宅勤務で集中できずにストレスを抱える人も多かった。だから私も言いました。「皆さん、僕もちゃんと働けてません! だから諦めようぜ」と。仕事時間だから集中して取り組まなければならない、という風土自体を崩すところからやりました。

谷口氏:そういったときに利用できるCocoDeskについても、まだまだ数が足りていないし、これからもっと頑張って旗を振って、仲間を増やしていきたいです。


リモート時代の組織間共創のお作法(35.1 %)

戸松部長:組織の中で、外部とつながっている人をカタリストと呼んでいるのですが、社内では本流ではなかったりするので、不安や悩みも深いのかな、と思いますがどうお考えでしょうか。

青野氏:どっちが本流だとか、そこに壁は作ってほしくないですよね。サイボウズで最近面白かったのは、営業副本部長の話。彼は仕事のやり方などを変えてきたら自分の仕事量が減ってきたので、副業(複業)宣言をした。すると入社5年目の、副業で自分の会社をやっている社員が、「私の会社で働きませんか?」とグループウエア上で勧誘していました。そんなふうに、垣根をなくしたいんですよね。誰でも副業していいし、誰でもつながっていい。そういうオープンなカルチャーを作っておくと、変な壁ができなくていいですよ。

谷口氏:私は新規事業に携わって3年、事業の立ち上げまでは本当に大変で、ふと、でもこれ評価されているのかな、と。でも、自分がやりたいことをやっている、仲間と一緒に新しいものを作って、社会や会社の役に立っていると自分が納得していればいいかなと思うようになりました。

青野氏:会社を代表して発言するとなった瞬間に、相当言葉を選んだり、インパクトある言葉を使いにくくなったりします。でも、そこにいるのは一人ひとりなのだから、ぜひ胸を張って、私はこう思う、と言ってほしいです。会社よりも、まずは個人をしっかり持って。そうしていくと、より社外の人とつながりやすくなると思います。

最後に戸松部長から、座談会、働き方アセスメントサービス、NTT Communications Digital Forum 2020の告知がありました。そして「C4BASEはカタリストの集まりであると自負しています。自らのビジョン、組織ではなくて個々に立脚した課題意識、それを解決する仲間づくりに貢献していきたいと思います」という言葉で閉会となりました。

本セミナーはオンデマンドでもご覧いただけます。青野氏のしなやかな発想や楽しい語り、パネルディスカッションのやり取りなど、映像でぜひご覧ください(ご視聴にはC4BASEの会員登録が必要です)。

社員メッセンジャー

NTTコミュニケーションズビジネスソリューション本部 事業推進部

穐利 理沙

2021年10月に立ち上げたOPEN HUB運営を担当しています。お客さまと新しい意味あるものを生み出すため、オウンドメディアによる情報発信、Webinarや会員コミュニティーによる共創プロジェクトの推進を行っています。ご興味ある方は、ぜひコンタクトをしてください!

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