2020年11月11日

新たな時代に旗を掲げ、共に進もう!
「ニューノーマル時代のデジタル共創戦略――社会をリブートする『共創』のこれから――」
初開催したC4BASEウェビナーレポート

他企業の新規事業やイノベーションを担当する会員が集うコミュニティー、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)「C4BASE」 。「会社や家庭、個人のコミュニティーを超えた"4thプレイス"」をうたい、新たなビジネス創出を目指して定期的にセミナーやイベントを開催し、交流を深めてきました。しかしコロナ禍により、2月に予定されていたセミナーは中止を余儀なくされ、今までのようなリアルイベント開催が困難となっていました。

その後5カ月を経て、7月15日、ウェビナーという形態で、ようやくイベント開催にこぎつけました。再開に時間は掛かりましたが、あたかもリアルで開催しているセミナーを配信しているかのような映像のクオリティーにこだわり、視聴者との双方向性コミュニケーションが可能となるよう準備を進めました。また、テレビ制作さながらのグリーンバックを利用したリアルタイム背景合成をしており、一般のウェビナーとは一線を画しています。

セミナーのテーマは、「ニューノーマル時代のデジタル共創戦略――社会をリブートする『共創』のこれから――」。誰も予想だにしなかった大きな変化が世界を覆い、社会的、経済的仕組みを根底から揺るがす事態の中で、これからの時代をどういった方向性をもって進んでいくべきか、示唆に富んだ内容となりました。この記事ではその内容をレポートします。

オープニング

オープニングには、C4BASE Ownerであるビジネスソリューション本部 事業推進部 西川 英孝部長があいさつ。C4BASEを通じ、ニューノーマルに向けて革新的な新規事業を生み出していきたいと抱負を述べました。

また会員数が1000人を超え、今回半数以上が初めて参加いただく方ということで、C4BASE Managing Directorの戸松 正剛部長がC4BASEのコンセプトや活動内容をあらためて紹介し、セミナーのテーマ「デジタル×共創」の重要性について語りました。

西川部長のイメージ

西川部長

戸松部長のイメージ

戸松部長

講演①
早稲田大学大学院/早稲田大学ビジネススクール教授 入山 章栄氏
不確実な状況下で答えを出すための「知の探索」

入山 章栄氏のイメージ

基調講演には、早稲田大学大学院/早稲田大学ビジネススクール教授 入山 章栄氏が登壇。経営学的観点からイノベーションの重要性を説きました。より不確実性が高まっていくこれからの時代、正解が無い中で意思決定をしなければならない状況の下、今企業が何を最も優先すべきなのか。入山氏は「自ら変化を起こしてイノベーションを実現させていくこと」と言います。

イノベーションの理論のイメージ

「イノベーションの源泉は『知と知の組み合わせ』であり、そのために必要なのは『知の探索(Exploration)』なんです」と入山氏。これは、一見無駄に思えることにも手を伸ばし、失敗しながらも試みを続けていくこと。対して「知の深化Exploitation」というのは、無駄を省き、失敗を減らし、確実なものをより深掘りしていくこと。これは今後ますます加速するDXに伴ってAIに任せていける作業でもあります。「この両方をバランスよく進めるのが『両利きの経営(Ambidexterity)』であり、これからより重要性を増しているのは、人間にしかできない『知の探索』の方向性なのです」と入山氏は力説しました。

さらに、これまでの日本社会、多くの企業・組織で一部の変革を試みてもなかなかうまくいかなかったのは、新卒一括採用や終身雇用、失敗の許容性が低い評価制度、均質的な人材・働き方の重用などが全体のシステムとして噛み合っている「経路依存性」が理由であると説明しました。コロナ禍の現在、「この仕組みを一気に変える奇跡的なビッグチャンスが訪れている」と断言し、次の強いメッセージで講演を締めくくりました。

「今まで日本社会や多くの組織が信奉していた『正確な分析に基づいた将来予想』はもう通用しません。この不確実な未来を前に、自分たちはどういった価値を生み、何のために働くのか。新しく変わっていく世の中、人々生活に対して、どんな貢献をしていけるのか。これから必要なのはセンスメイキング、いわば“腹落ち”という納得性であり、それが『知の探索』を可能にし、イノベーションを実現させていくのです。新しい価値を生み出せない企業は消えます。これからの数年間は本当に大事な時期です」

<Q&A>

講演の後、参加者からライブで届いた質問に入山氏が答えました。

戸松部長と入山氏が並んでるイメージ

参加者の質問を投げ掛ける戸松部長(左)と快活に答える入山氏

Q:リモートワークになり、知っている人とのやり取りばかりで、ここ数カ月、新しい人と全く出会えていません。リモート時代で知の探索を行うにはどうしたらいいですか。

入山氏:僕の周りでは、ZoomとかTeamsを使うようになって、むしろ人脈が広がっているという人はたくさんいます。これは、完全に意識と使い方の問題。オンラインだと距離も関係ないし、ミーティング自体の時間も短く済むし、効率的に大勢の人と会える。営業活動なども、本人のやる気と気合とコミュニケーション能力の問題。うまく使えば、知の探索になりますよ。

Q:知の探索と知の深化、どちらで儲けるのでしょうか。

入山氏:当然、深化の方です。でも、そのためには探索が必要です。ある経営者は「これからの経営者の仕事は赤字を掘ること」だと言っています。彼は儲けの出ているところは人に回して、新たな組織で知の探索の一つ、“赤字を掘り”に行くんです。知の深化の仕事はある程度できる人も多いですが、探索ができるのは、オーナーシップを持った経営者ですから。

講演②
株式会社サブスクリプション総合研究所代表取締役社長 宮崎 琢磨氏
サブスクリプションは“古くて新しい”概念

宮崎 琢磨氏のイメージ

続いて、株式会社サブスクリプション総合研究所代表取締役社長 宮崎 琢磨氏の講演が行われました。宮崎氏はサブスクリプション(サブスク)の本質について分かりやすく解説した上で、「DX×共創」におけるサブスクの可能性について言及しました。

サブスクは今流行っている形態ではありますが、電話や新聞、保険など、昔からあるビジネスモデルです、と宮崎氏は言います。では、サブスクとは何なのか。その本質を正確に捉えるために「サザエさんに登場する“サブちゃん”」を例に説明しました。磯野家やご近所の各家庭に出入りし、家族ぐるみの付き合いもある三河屋の御用聞きサブちゃんは、「必要なモノを販売する」というポジション以上の存在であり、そこで売られる商品自体は必ずしも特別なものではありません。現代的に言えば、継続的な関係を結んだ上で、既存商品による従量課金を行っているサブスクビジネスの窓口、ということになります。

つまりサブスクにおいて本来通底すべきものとは「顧客との継続的な関係が担保されていること」であり、「顧客接点(タッチポイント)がどこか」「顧客との結びつき(エンゲージメント)は強いか」がポイントです。定額料金や売るモノはあくまで付帯的で、まずは本質を土台にして考えていくべきだと宮崎氏は説明しました。

次に、C向けとB向けにおけるサブスクの志向、考え方や建て付けの違いについて、「前者は、大量の顧客に向けてサービスを主に直販で提供して事業を成立させます。その性質上、分かりやすい課金体制が必要になるし、契約初期からの儲けは見込みにくい上に、顧客ごとの不均衡さが生じます。しかし後者に必要なポイントは、まず既存の事業がサブスクに向いているかどうかを考えることです」と説きました。

そしてBtoBサブスク共創の代表的な成功例として、オフィスなどで見かけるコピー機の付いた「複合機」を紹介。もともと強力なサブスクモデルでしたが、コニカミノルタジャパン株式会社が、この複合機のコンピューティングリソースを外部のソフトウェアベンダーに開放し、色々なソフトをインストールできるようにしたことで、顧客、ソフトウェアベンダー、販路・販売員・販売店、メーカーが喜ぶ「四方良し」ビジネスとなったといいます。

宮崎氏は「顧客との継続的な関係性がしっかりあって、事業の土台がある企業であれば、BtoBサブスクは簡単に始められるし、スモールスタート、トライ&エラーもしやすいです。サブスクという可能性を通して、日本企業がより強くなるようなきっかけを作っていければいいですね」と述べて講演を終えました。

パネルディスカッション

最後のパネルディスカッションでは、①グローバルからモザイク化する世界、②モノ企業のサバイバル戦略、③「世界観」重視の消費、④リモートワールド時代の個人/組織の信用残高と企業間共創、という4つのテーマでセッションが行われました。

パネルディスカッションで話された4つのセッションテーマを表すイメージ

①グローバルからモザイク化する世界

入山氏:ローカルとグローバルで二極化するでしょう。グローバル化で、気を付けた方が良いのはサービス業。今、ZoomやTeamsでコミュニケーションを取っていますが、数年以内にはおそらく自動翻訳が付き、世界中の人間と直接やり取りができるようになります。今まで日本語というバリアによって守られていた小さな世界が開かれる時、グローバルで勝負できる企業が多く出てくる一方で、やられてしまうところもたくさん出てくるでしょう。

宮崎氏:確かに、メーカーを中心とした日本の産業は、物理的近さと日本語の中にあって、クリエイティビティが狭いところで完結している良さがあったと思います。①で述べた身体性の話でいうと、首から上で見たり聞いたりするようなモノの要らない情報産業に関しては、グローバライズの波に当然入っていくだろうし、場所も関係ない。一方首から下は身体性を伴うので、モノとは切っても切れない関係です。ここは、グローバルにせよローカルにせよ、日本企業の強みは当然発揮しうると思います。

②モノ企業のサバイバル戦略

入山氏:第一次ネット戦争では、日本企業はGAFAに惨敗しましたが、昔も同じことが起きていて、日本は過去、石油で負けています。でも、石油を使った自動車で勝ちました。これからはIoTの時代なので、モノが重要です。日本はモノづくりの強さを持っているので、IoT時代は、サバイバルというよりもビッグチャンスだと思っています。

宮崎氏:デジタル化が加速することで効率化は進みますが、モノ企業がなくなることはありません。人間が身体的存在である以上、生活するのに必ず物理的なモノは必要です。それにモノを作る企業は、物理的なデリバリーチャネルに加えてマンマシンインターフェースたるデバイスを通してコンテンツなどを届けるチャネルも持っています。競合企業間であってもユーザーニーズに立ち、マザーボードなどの共通化を進める反面、販路の強さやハードウェアの強さ、サービスの良さなどで差別化はできるはずです。

③「世界観」重視の消費

入山氏:今は確かにニッチでストーリー性のあるものが若い人に共感されますが、僕は「鍵は物流にある」と考えています。今はメディアも自分たちで持てる時代。あとは物流問題だけ。Amazonが強いのはそこであって、この問題が解消できれば日本の大手企業もBtoCで戦えると思います。

宮崎氏:既存の販路と既存の商品が無い上に、自由な設計ができて巻き戻ししやすいという良さはありますが、一方で新規事業側に傾倒しがちなので、本質的に質の勝負にはなり得ず、ブランディング勝負になると思います。
サブスクの例で言えば、利益の話より自分たちのリソースをどう生かすかに向いていると思います。ですから入山先生がおっしゃる通り、物流を持っているところは強い。そういうところがBtoCを進めたり、あるいはブランディングだけ先行して、物流を持っているところと共創していく流れは面白いと思いますね。

④リモートワールド時代の個人/組織の信用残高と企業間共創

入山 章栄氏のイメージ

入山氏:信用(クレディビリティ)と近い言葉で重要なものは共感性(エンパシー)です。リモートワークで会社に行かず、誰にも会わずにパソコンに向かって仕事をしていると、自分はどうしてこの会社で働いていたのか、となります。そのため、今後はより会社のビジョンや方向性、在り方といったものに、クレディビリティなりエンパシーが無いと、人が逃げていく時代になると思います。ビジョンをきちんと言語化でき、伝えることができるリーダーが居る組織はやはり強くなっていくし、それができない企業には人が居なくなってしまうでしょう。

宮崎氏:サブスクでいえば、2つのポイント、タッチポイントとエンゲージメント、これは両方プラスに働くのではないかと考えます。タッチポイントは強制的にデジタル化されていくし、DXは当然進みます。デジタルでは“流す”対応ができない分、エンゲージメントは否が応にも強まると考えます。この二つを上手く扱うことができれば、ビジネスはさらに伸びるのではないでしょうか。

クロージングには戸松部長から、「今回得られた多くのヒントを自分たちのビジネスに置き換えるため、壁打ち会や座談会を予定しているのでぜひご参加を」と告知があり、さらに「C4BASEはまさに『知の探索』のために存在しています。今後も皆さんと一緒に、新しい社会をリブートするサービス、ビジネスを実現していければ」という熱い言葉で締めくくられました。

戸松部長、入山 章栄氏、宮崎 琢磨氏、西川部長が並んでいるイメージ

本セミナーはオンデマンドでもご覧いただけます。入山氏、宮崎氏の熱のこもった臨場感あふれる講演、ディスカッションは映像で見るのが一番ですので、ぜひご覧ください(ご視聴にはC4BASEの会員登録が必要です)。

また、株式会社アマナが運営するメディア「VISUAL SHIFT」に、C4BASEについての記事「リモートで共創は生まれるか? 企業のDXを支援するNTTコミュニケーションズの挑戦」が掲載されています。今まで、今、そしてこれからのC4BASEが語られていますので、併せてお読みください。

社員メッセンジャー

NTTコミュニケーションズビジネスソリューション本部 事業推進部

穐利 理沙

2021年10月に立ち上げたOPEN HUB運営を担当しています。お客さまと新しい意味あるものを生み出すため、オウンドメディアによる情報発信、Webinarや会員コミュニティーによる共創プロジェクトの推進を行っています。ご興味ある方は、ぜひコンタクトをしてください!

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