レジリエンスとは? 意味と定義 企業の生存と成長のための視点

社会情勢の急激な変化や災害などのリスクに対応するべく、レジリエンス経営に注目する企業が増えています。この記事ではレジリエンスの定義や似た言葉との違い、レジリエンス経営の必要性について解説します。レジリエンスを高めるメリットや方法を押さえましょう。

レジリエンスとは? 言葉の意味と定義

レジリエンスとは? 言葉の意味と定義

レジリエンス(resilience)の意味は、「回復力」や「復元力」「弾力性」などです。元々は物理学で物体の弾性を示す用語でしたが、心理学において精神面の強さを示す用語としても使われるようになり、現在ではさまざまな分野で用いられるようになりました。ストレスを跳ね返し、困難から回復する力として、特にビジネスシーンでの重要性が高まっています。
レジリエンスの意味は多岐にわたりますが、本記事で述べるのはビジネスにおける使われ方であり、メインは「レジリエンス経営」です。まずは、以下で解説する政府事業や個人、企業におけるレジリエンスの意味を押さえましょう。

1. 政府事業のレジリエンス

近年、温暖化などの気候変動に伴い災害が激甚化しています。気候変動の緩和や災害対応のために政府が注力しているのが、脱炭素化やレジリエンス強化です。
経済産業省が2022年に公表した「『レジリエンス社会の実現』に関する検討の経緯及び今後の方向性」では、レジリエンスの定義について「状況の変化に対し、適応・転換しながら回復する能力」と述べています。

政府はレジリエンス社会の実現を目指しており、レジリエンス強化型ZEBの実証事業をはじめとするさまざまな事業を展開しています。レジリエンス強化型ZEBとは、災害時に活動拠点となる、公共性が高く停電時にもエネルギー供給が可能なZEB(Net Zero Energy Building:年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロ、またはマイナスの先進的脱炭素建築物)です。
このような建築物を増やすことで、環境に優しく災害に強い街や社会の形成につながります。

事業の詳細は、以下の関連記事をご覧ください。

「環境省| 建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業」
(URL:https://www.env.go.jp/press/press_01629.html

経済産業省 「レジリエンス社会」の実現に関する検討の経緯及び今後の方向性
(参照URL:https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/resilience_society/pdf/001_02_00.pdf)p.11

2. 個人のレジリエンス(レジリエント)

ビジネスにおいてレジリエンスが高い(レジリエントな)人とは、周囲や企業にさまざまなプラスの影響を与える人であり、後述するレジリエンス経営の構成要素でもあります。一般的には以下に示す特徴を持つ人を指します。

  • 柔軟かつ多様な思考ができる
  • 自分の長所を理解している
  • 自分にも他者にも優しい
  • 協調性が高い
  • 挑戦を続けられる
  • ストレスに強い

レジリエンスが高い人はストレスに耐性があり前向きで、逆境に強いため厳しい状況でも挫けずに物事に挑戦できます。自分や他者を正しく評価するため、協調性が高く他者と信頼関係もスムーズに築けます。
一方、レジリエンスが低い人の特徴は柔軟性に乏しく、ストレスに弱いことです。周囲と協力体制を築けずに一人で問題を抱え込みがちであり、挑戦もためらうため逆境を乗り越えられません。

3. 企業のレジリエンス

ビジネスにおいて社会の変化や災害に対応するには、個人に加えて企業がレジリエンスを高める必要があります。レジリエンスが高い企業は、以下の特徴を持ちます。

  • 失敗や変化を恐れずに挑戦し続ける
  • 予期せぬ事態に対応し、事業継続できる
  • BCP対策をとっている
  • デジタル免疫システムを導入している

レジリエンス経営を実践している企業は、問題が生じた場合に誰かに責任を求めず、企業として解決しようとします。またBCP対策を徹底しているため、トラブルや災害が生じても事業継続が可能です。デジタル免疫システムを構築している企業は、システム障害やトラブルから速やかに回復できます。BCP対策やデジタル免疫システムの詳細については後述します。

レジリエンスと似た言葉と意味の違いについて

ストレス耐性やハーディネス、メンタルヘルスといった言葉は、レジリエンスと混同されがちです。各用語の違いを理解し、正しく使いましょう。

① ストレス耐性

ストレスからの回復力を意味するレジリエンスに対して、ストレス耐性(stress tolerance)はストレスに対して個人が耐えられる程度を表したものです。
レジリエンスは回復力であるのに対して、ストレス耐性は耐久力という違いがあります。

② ハーディネス

ストレス耐性と同じく、頑健性や堅牢性を表すハーディネス(hardiness)もレジリエンスの構成要素です。ハーディネスは、ストレスに直面した際に跳ね返す力や精神的な強さを意味します。レジリエンスが傷ついても回復できる力であるのに対し、ハーディネスは傷つきにくい力という違いがあります。

③ メンタルヘルス

メンタルヘルス(mental health)とは、心の健康状態や、ストレス・疲労を軽減することです。レジリエンスは個人の回復力を表すのに対し、メンタルヘルスは回復のために他者が行うサポートという違いがあります。従業員のメンタルヘルスは、業務へのモチベーションに大きく影響します。従業員のメンタルヘルスを高く保つことで業務に前向きに取り組めるようになるため、欠勤や休職を減らすことが可能です。
そのため、レジリエンス経営ではメンタルヘルスが重視されています。

レジリエンス経営の必要性|VUCA時代を生き残るための経営手法

企業の内外には常にさまざまなリスクが存在します。特に近年は、自然災害に加えて新型コロナウイルス感染症の蔓延やウクライナ侵攻など予測できない事態が多発しており、こうしたリスクを確実に回避することは困難です。

このような状況を示す言葉として、現代はVUCA(予測困難な不確実性)時代と呼ばれます。VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとったものです。
VUCA時代において、企業は予測できない状況下でも迅速に意思決定を行い、危機から速やかに回復することが求められます。そのため、リスクに柔軟に対応して事業継続できるレジリエンス経営のニーズが高まりました。

レジリエンス概念の導入で得られる3つのメリット

1. 柔軟な対応力を得られる

レジリエンス経営を実践する最大のメリットは、市場や世界情勢の急激な変化、自然災害などが発生するVUCA時代への対応力を得られることです。レジリエンス経営によって予期せぬ事態に迅速かつ適切に対処できるため、企業の存続や成長につながります。

2. イノベーション創出につながる

レジリエンスが高い企業は、従業員間のコミュニケーションが活発です。部門や立場に関係なく意見交換が行われるため、社内の目的共有もしやすくなります。また、失敗しても責められない企業風土が醸成されるため、従業員はリスクを恐れずに挑戦するようになります。失敗や成功のプロセスを従業員間で共有すれば、イノベーション創出につなげられます。

3. 目標の達成力が向上する

柔軟な対応力を持ちイノベーションを創出できる企業は、目標を達成する力も高くなります。挑戦し続けられる環境において、従業員は意欲的に業務をこなすはずです。個人だけでなく、チームとしても高い能力を発揮することが期待できます。企業の目標達成力が高くなれば、業績向上につながります。

レジリエンスを高める四つの方法|企業の生存と成長のための視点

レジリエンスの向上は、従業員レベルの取り組みと、企業としての仕組みづくりによって実現可能です。それぞれの取り組みについて2つずつ解説します。

1. 企業が目指すべき方向性を共有する

従業員レベルで行うべき取り組みの1つめが、企業が目指す方向性の共有です。企業理念や目標は、掲げるだけでは根付きません。企業が目指す姿や提供したい価値、経営陣の考え方を明確にし、従業員へ積極的に伝えましょう。

一方的な情報発信にならないような工夫も必要です。従業員の理解度を定期的に確認し、効果が薄いようならアプローチを変えましょう。従業員が自社のビジョンを理解し、共有すれば、行動にも反映されて企業文化として定着します。

2. 傾聴する企業文化を作る

従業員レベルの取り組みとしての2つめが、心理的安全性が高い環境づくりです。部門や立場を超え、個人の意見を聴き理解しようとする組織に対して、従業員は安心感や帰属意識を持ちます。
個人が尊重される職場では従業員間の気軽なコミュニケーションをとりやすく、信頼関係の構築もスムーズです。心理的安全性が高い環境ではモチベーションも向上し、チームを組んだプロジェクトなども進めやすくなります。

さらに、レジリエンスが高い企業では失敗やミスを共有するため、次のミス発生や被害拡大の防止が可能です。失敗しても責められないという安心感を持った従業員は積極的に挑戦するようになり、イノベーションや画期的なアイディアを生み出しやすくなります。
このように、従業員の意見を傾聴する企業文化の形成により、さまざまなプラスの影響がもたらされます。

3. BCPを導入する

企業として取り入れるべき仕組みの1つめはBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の策定です。緊急事態において、施設が損壊し人員の補充が難しくなれば、事業を継続できません。長期間業務が停止すれば商品やサービスを提供できなくなり、顧客からの信頼は失われます。

企業が被害を最小限に抑え事業を継続するためには、BCPの策定が不可欠です。
BCPは、災害などの緊急事態において事業継続や早期復旧を図るための計画です。従来は災害やリスクごとに個別の対策を立てていましたが、BCPでは包括的な対策や仕組みづくりを行います。
たとえば施設・設備の保全、人員の確保、安全な情報伝達やデータ保護など、複数の視点から計画を策定します。平常時から具体的な計画を練ることで、緊急事態における迅速な対応が可能になります。

「Wasabiオブジェクトストレージ」は、こうしたBCPの一環としてデータをセキュアに保管できる大容量ストレージサービスです。
災害時にも物理的な場所に依存することなく安全にデータにアクセスでき、データのバックアップとリストアを高速に行います。また、冗長化によって重要なデータを保護し、データの増減に合わせてデータ容量を柔軟に変えられます。Wasabiは世界中に散らばっているあらゆるデータの保護を、安全に速く、安価で利用してもらうことを目指しており、費用を抑えながら万全なBCP策定を行いたい企業にとって、今までにない低価格で利用できるコストパフォーマンスに優れたサービスです。

4. デジタル免疫システムの概念を取り入れる

企業が取り入れるべき仕組みの2つめがデジタル免疫システムです。サイバー攻撃やウイルス感染、システム障害により業務に支障が生じれば、企業が受ける損害は計り知れません。
被害拡大を防ぐため、デジタル免疫システムという概念が注目されるようになりました。デジタル免疫システムは生物の免疫システムをデジタル技術に転用したものであり、障害への耐久性を向上させます。

システムの対象となるのは、コンピューターウイルスだけではありません。バグやシステム障害、サイバー攻撃やハードウェアの故障など、さまざまなリスクが対象に含まれます。
デジタル免疫システムにより、多様な脅威に対して適切な処置がされ、トラブルからの迅速な復旧やシステム・情報の保護が可能です。障害へのレジリエントを大幅に高められるため、カスタマーエクスペリエンス(CX)やユーザーエクスペリエンス(UX)の向上につながります。

レジリエンス向上を支援する「SDPF クラウド/サーバー」

レジリエンス向上のためには上述の取り組みが有効ですが、BCP対策の策定やデジタル免疫システムの構築を進めるのは容易ではありません。
まずはデータやシステムを一元管理し、業務の効率化やDXを推進するための基盤を整えることが必要です。

「SDPF クラウド/サーバー」は、企業向けの高品質・高信頼サーバーです。SDPF(Smart Data Platform)はNTTコミュニケーションズが提供するプラットフォームであり、DX推進に必要なデータの蓄積や利活用が可能です。
災害や障害への対策も充実しており、クラウド拠点間を高速なネットワークで無料接続できるため、災害などが発生した際のシステムやデータの移行がスムーズに行えます。データの収集から分析、管理に至るまで豊富なメニューが用意されているため企業のニーズに合った機能を選べます。
オンプレミス環境からクラウド環境への移行もスムーズであり、複数のクラウドサービスと組み合わせて利用することも可能です。

サービスの詳細は、こちらをご覧ください。

レジリエンスを高めることで、さまざまな事態に対応可能な経営が実現します。企業として方向性を明確に定め、イノベーション創出につなげましょう。

まとめ

VUCA時代に突入した現在、急変する世界情勢や自然災害などにも耐えうる力が求められます。そのためには不測の事態でも柔軟に対応し、企業として挑戦し続けるレジリエンス経営が必要です。企業が目指すべき方向性の共有や企業文化の醸成、BCP対策やデジタル免疫システム概念の導入などの取り組みを通して、レジリエンス向上を図りましょう。
これらの取り組みに加えて、サービスを活用することでもレジリエンスを高められます。「SDPF クラウド/サーバー」を導入し、DXや情報の一元管理を効率的に進めましょう。

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