サブスクの基本:モノを「買う」から「利用する」へ
まずはサブスクリプションとは何かについて、基本を押さえておきましょう。
サブスクリプションとは
サブスクリプションとは、商品やサービスを購入して所有するのではなく、月額料金や年額料金を支払い、「利用する権利」を購入することを指します。料金を支払っている期間はサービスを自由に利用できますが、解約すると利用できなくなることが大きな特徴です。英単語の「subscription」は、以前は雑誌や新聞などの「予約購読」「定期購読」の意味に使用されていました。これが「金銭を支払うことで一定期間内にサービスを受ける」現在のソフトウェアなどにも使用されるようになったわけです。
従来は購入代金を支払い、「モノを所有する権利」を購入する「買い切り型」が主流でした。
この「高価だが自分のものになるので期限を定めず自由に利用することができる」従来の購入スタイルと、「安価なので手軽に利用を開始することができ、不要になったら解約できる」サブスクリプションのスタイルとは全く異なる考え方と言えるでしょう。
サブスクリプションは提供側から見れば、「利用する権利」を販売するビジネスモデルと言えます。例えばソフトウェアについて考えると、従来は開発後、不具合を取り除くなど十分な準備期間を経た後、CD-ROMやDVD-ROMなどの媒体に保存し、パッケージに入れて販売するという形式を採っていました。そのため、大規模なバージョンアップを行う際にはソースデータだけでなくパッケージまで変更しなければならず、迅速な対応は困難でした。
その点、サブスクリプションであればシンプルな機能を安価で提供することからスタートし、機能アップと共に柔軟に提供価格を上げていくといった柔軟な販売方法も可能となります。こうした特長から、サブスクリプションは刻々と変化する現代にふさわしいサービスと言えるでしょう。モノを「買う」時代から、サービスを「利用する」時代へと変化したわけです。

サブスクリプションと買い切り型式の比較
次表はサブスクリプションと買い切り型式との違いをまとめたものです。
比較項目 | サブスクリプション | 買い切り型式 |
---|---|---|
所有権 | なし(利用する権利のみ) | あり(自分のモノになる) |
初期費用 | 安い、または無料 | 高い |
継続費用 | 月額・年額で発生 | なし |
始めやすさ | 手軽に試して、いつでも解約可能 | 購入に慎重な判断が必要 |
利用範囲 | 契約内のサービスは使い放題 | 購入した製品・バージョンのみ |
アップデート | 常に最新版を利用できる | 別途料金が必要な場合が多い |
特に業務用のソフトウェアに関しては、初期費用を低く抑えられ、必要な期間だけ利用でき、常に最新版を使用できるという点で、サブスクリプションの利点が活きる形となります。また、「想定していたものと違った」などの場合も、すぐに利用を停止することで損失を最低限に抑えることができます。
サブスクリプションの具体的なサービス例
サブスクリプションは、私たちの身の回りのさまざまな分野で利用されています。その中から、一部のサービスを紹介します。

動画、音楽からビジネスソフトまで。サブスクは多様な分野で活用されています。
①動画・音楽配信サービス
月額1,000円前後で、映画やドラマ、音楽が好きなだけ楽しめるサービスです。PCやスマートフォンに加え、近年では家庭用TVに一機能として搭載されることも多くなりました。また、Amazonの「Fire TV Stick」など、既存のTVに機能を追加できる端末も販売されています。
動画サービスでは映画やドラマを多く放送する「Netflix」、「Hulu」、「U-NEXT」に加え、アニメに特化した「dアニメ」やスポーツに特化した「DAZN」などが人気です。
また、音楽配信サービスでは1億曲以上の配信楽曲数を誇る「Apple Music」、「Amazon Music」、「Spotify」などが人気です。また、動画配信も兼ねた「Lemino」などもあります。楽曲ダウンロード機能やプレイリスト作成機能、シャッフル再生機能などで各社差別化を図っています。
②電子書籍・雑誌サービス
500円~1,000円程度の月額料金で、多くの雑誌や書籍が読み放題になるサービスです。雑誌の総タイトル数の多い「dマガジン」や、ビジネス書に強い「Kindle Unlimited」などが人気です。
最近では、「コミックシーモア」など漫画に特化したサービスも多数登場しています。
③ソフトウェア・クラウドサービス
今やビジネスで使用するソフトウェアもサブスクリプションが主流です。クラウドサービス(インターネット経由で利用するサービス)の多くがこの形式を採っており、SaaS(サース:Software as a Service)とも呼ばれます。ビジネス環境においては、新バージョンへの買い替えやアップデートが不要で、常に最新機能を使えることが魅力です。
例としてオフィスソフト・グループウェアを兼ねた「Microsoft 365」や「Google Workspace」、そして動画編集や写真レタッチなどの制作環境を提供する「Adobe Creative Cloud」などがあります。また、情報共有による業務効率化に特化したビジネスツールである「Slack」なども多くの企業で利用されています。
④その他のユニークなサービス
上記以外にも多種多様なサブスクリプションが登場しています。
具体例を挙げると、一定の料金を支払えば期間内に何度でも洋服やバッグをレンタルすることができるファッションサービス、期間内であればラーメンが何杯でも食べ放題となるフードサービス、トレーニング施設を好きな時に好きなだけ利用できるフィットネスサービス、維持費なしで好きな時に営業車をレンタルできるカーシェアサービスなどがあります。
その他、語学分野や占い分野など、ありとあらゆる分野でサブスクリプションの提供が始まっています。
特におすすめのサービス
メリットとデメリットを知って賢く使おう
手軽で便利なサブスクリプションですが、利用する前にメリットとデメリットの両方を把握しておくことが大切です。
メリット
メリットとしては以下の4点が挙げられます。
初期費用を抑えられる
購入をためらうような高価なソフトや製品でも、比較的安価な利用料金の支払いのみで気軽に利用を開始できます。
いつでも解約できる
「合わないな」と感じたら、すぐに解約し使用を停止できるという手軽さがあります。また、特に一定期間のみ利用したい業務用ソフトなどでは、不要となったらすぐに解約し経費を削減することができます。
いろいろなものを試せる
特に動画配信サービス、音楽配信サービス、電子書籍・雑誌サービスなどでは、サービスごとに収録作品が異なります。短期間でサービスを切り換え、さまざまなサービスを利用することで、幅広いコンテンツに触れる機会を増やすことができます。
常に最新の状態
業務用ソフトウェアに関しては、追加料金なしで常に最新バージョンが利用できることが大きなメリットとなります。これまで工数がかかっていた業務をワンストップで処理できるような新機能が追加されれば、業務の効率化に大いに寄与します。また、進化の著しい生成AIの分野においても、音声認識の高精度化によるテキスト変換の正確度向上、学習データの充実やアルゴリズムの改良による可用性の高い文書生成などの恩恵をタイムラグなしに享受することができます。
デメリット
一方、サブスクリプションの利用には次のようなデメリットもあります。
利用しなくても料金がかかる
サブスクリプションは使用頻度・総使用時間の多寡に関わらず一定の金額を支払う必要があります。そのため、例えばサービスをあまり使わなかった月でも同額の支払いが発生します。特に時期や季節によって利用状況が大きく変動する場合などには、サブスクリプションの形式にそぐわない場合もあります。
総支払額が高くなる可能性
利用料金が安価なことはサブスクリプションのメリットですが、反面、利用が長期間にわたる場合には、買い切り型よりも割高になる場合があります。長期間にわたる利用が見込まれ、さらにアップデートがさほど重要視されない場合においては、買い切り型も考慮したほうが良いでしょう。
自分のモノにはならない
サブスクリプションは「利用する権利」を購入するサービスですから、当然解約すれば利用できなくなり、手元には何も残りません。動画配信サービスや音楽配信サービスの配信データ、コンテンツが楽しめなくなることはもちろん、場合によっては自身がサービス内で作成したデータなども消失してしまいます。
利用にあたっては、「自分は利用する権利を買っているだけで、コンテンツなどの所有権は提供側にある」という事実を理解しておく必要があります。
まとめ
今回は、各種サービスを定額料金で使用する「サブスクリプション」について解説しました。
今やサブスクリプションは動画配信、音楽配信、ソフトウェア・クラウドサービスなど、私たちの生活において必要不可欠なものとなっています。
サブスクリプションは、「所有」から「利用」へと変わる現代のライフスタイルに合った、非常に便利なサービスです。今回紹介したサブスクリプションのメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身の使い方に合ったサービスを見極めることで、仕事もプライベートも、より豊かに、より効率的にすることができるでしょう。