Tier(ティア)とは、直訳すると段、列、階層を意味します。「Tier0/Tier0.5/Tier1/Tier2/Tier3」は、自動車業界や建設業界などで用いられるほか、カスタマーサポートの分野、インターネットの多層構造について説明されるときに用いられます。
たとえば自動車メーカーの場合、「Tier0」は特に完成車メーカーを指します。このケースでは、完成車のメーカーがビジネスプロセス全体の中心的な役割を担っており、それを起点に各層の位置づけがなされています。「Tier1」は、自動車メーカー(Tier0)と直接取引を行う企業であり、車両の主要なコンポーネントやシステムを提供します。一方、「Tier2」は、Tier1企業に半導体や特定の電子部品を供給するメーカーを指し、「Tier3」は、素材や基礎部品を供給する企業として、Tier2の企業に依存した関係性を持つことが一般的です。近年注目されているのが「Tier0.5」で、これらの階層に明確に属するのではなく、「Tier0とTier1の間」またはその両方に跨る形で存在します。このポジションの企業は、顧客視点を重視し、従来の「自社内で効率的に完結させる」というTier1のアプローチとは異なり、ソフトウェアやサービスなど他の要素を積極的に取り入れることで、付加価値を生み出しています。また、「Tier0.5」の企業は、Tier0との間に強い主従関係を持たないケースが多く、より独立性の高い立場で価値を提供している点も特徴です。
コンタクトセンター、ヘルプデスクといったカスタマーサポートの分野では、多くの場合、問い合わせの内容に応じて対応者の役割が階層化されています。たとえば、最初にユーザーからの問い合わせを受けるオペレーターが「Tier1」、オペレーターが回答できない問い合わせを担うスーパーバイザーが「Tier2」、スーパーバイザーが対応困難な問い合わせを担うエンジニアが「Tier3」というフローで説明されます。問い合わせの内容が複雑になるにつれて、より専門的な知識や技術を要するTierにシフトしていく仕組みです。
インターネットは、多層構造で運営されており、それぞれの層(Tier)が独自の役割を担っています。
「Tier0」は、インターネットの最上位に位置する層で、ルートサーバーやその管理機関を象徴的に指します。これらはインターネット全体のアドレス解決やルーティング情報の基盤を提供し、すべてのネットワークの土台を形成しています。Tier1からTier3は、ISP(インターネットサービスプロバイダ)の階層構造を表します。「Tier1」は、インターネット全体の経路に到達可能な事業者で、ごく一部の大手プロバイダーを指します。「Tier2」は、Tier 1プロバイダーに接続し、地域内での通信に強みを持つ事業者で、「Tier3」は、インターネット接続を個人や企業などのエンドユーザーに提供する事業者です。
これら各層の事業者が役割を分担し、連携することで、世界中のユーザーが快適にインターネットを利用できるようになっています。