2021年04月13日

【コラボ企画③】QUMZINE×ONLINE JOURNAL
音声で認知機能の健康状態を判定する、「人生100年」チームの取り組み紹介

新規事業創出支援のための施策「DigiCom(デジコン)」と「BI Challenge」を強力にサポートいただいているフィラメント社のオウンドメディア「QUMZINE(クムジン)」と、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)グループ社内報「ONLINE JOURNAL」のコラボ企画の第3弾記事です。

今回は高齢化という社会課題に対してAIを活用した解決策でビジネス化を検討している「人生100年」チームにご協力いただき、QUMZINEとONLINE JOURNALにて取り組みを紹介いただきました。


    目次

  1. QUMZINE記事の紹介 生駒市の小紫雅史市長との対談記事が実現
  2. 金融×ヘルスケアで新しい価値を生み出したい
  3. トライアルしながら高齢者に使いやすいインターフェースを
  4. 次は実務で「これが必要だ」と言わせる価値を

QUMZINE記事の紹介 生駒市の小紫雅史市長との対談記事が実現

フィラメントCEOの角勝さんのご紹介で、「人生100年」チームは奈良県生駒市主催の「ケアリンピック生駒~オンライン~」にて実証実験を行いました。これをきっかけに、生駒市の小紫(こむらさき)雅史市長と角さん、「人生100年」の田上(たのうえ)徹さんによる三者対談が実現しました。

QUMZINEの記事はこちらです。

小紫市長との対談に参加した田上さんに感想をお聞きしたところ、「生駒市のように公民連携や福祉介護の取り組みを先進している自治体のトップの方から、何を目指していて、どのような思いで政策を立てているのかを直接伺えたのは貴重な体験でした。QUMZINEの記事タイトルが『コロナ禍からの超回復』となっていますが、コロナ禍だからこそマイナスをプラスに転じようとする生駒市の取り組みと、私たちの認知機能の健康状態を判定するアイデアがマッチし、良い流れを生み出していると思う」と話してくれました。

また、この記事が出た翌日に、高齢化の課題を抱える別の自治体から「記事を見た。興味があるので詳しい話を聞きたい」とのアプローチがあったそうです。

ここからは、ONLINE JOURNAL向けに実施した「人生100年」チームのインタビュー内容を紹介します。

チームメンバーの紹介

武藤拓二/Takuji Mutou(キャプテン)
第一ビジネスソリューション部(以下、一BS)で金融機関のアカウントセールを担当。チームでは営業の立場でアイデアのソリューション化やターゲットユーザー企業へのアプローチ方法の検討を進めている。

田中淑満/Toshimitsu Tanaka(メンバー)
NTTコム ソリューションズ(以下、NTTコムソル) ICTイノベーション本部でAIを使ったビジネスを担当。業務では人と人とのコミュニケーションから知見を得ること、機械の自動応答による業務効率化に注力しており、チームの開発にもその経験が生かされている。

田上徹/Toru Tanoue(メンバー)
第二ビジネスソリューション部 ビジネスデザイン部門で公共のお客さまへの営業推進と新規事業創出をミッションとしている。チームでは自治体などの公共のお客さま対応・ビジネスモデル検討を担当。

浦野克也/Katsuya Urano(メンバー)
NTTコム マーケティング ビジネスカスタマ営業部に所属。困ったときにアドバイスをくれる「名誉顧問」的な立場でチームに参画。

「人生100年」チーム、メンバー4人のうち、今回のインタビューに登場するのはこちらの3人。
田中淑満さん(左上)、田上徹さん(左下)、武藤拓二さん(右下)
※右上はイノベーションセンターの斉藤久美子

OJに掲載された記事を紹介
金融×ヘルスケアで新しい価値を生み出したい

――皆さん今はバラバラの組織に所属されていますが、旧第三営業本部(以下、旧三営本)で一緒だった時期があるとお聞きしました。その4人がまた集まって、なぜDigiComに出場されたのでしょうか?

キャプテンの武藤さん

キャプテンの武藤さん

武藤:「人生100年」というチーム名になっていますが、自分の人生100年を振り返ったときに「これを成し遂げた!」という明確な社会的価値が欲しいなと入社当時から思っていました。また営業担当として医療に近い金融機関である生命保険会社がお客さまだったので、金融とヘルスケアを組み合わせたら新しい価値が生まれるのではないかと思っていました。根底にある仕事に対する思いと現在の業務内容が組み合わさってDigiComにチャレンジしようと決意しました。

田中:実はDigiComに出場する前に2つの流れがあって、1つは武藤さんが所属する一BS内で金融に対して新しいビジネスを生み出そうとする動き、もう一つは田上さんが認知症に関するアイデアをNTTコムソル内のビジネスコンテストに出した動きがあったんです。その2つが合流してDigiComに出場しています。

武藤:一BS内の新規ビジネス創出タスクフォースにエントリーしていましたが、一方、DigiComでは外部の方からのメンタリングやサポートを受けて、さらにアイデアをブラッシュアップできることに魅力を感じていました。やりたい内容は考えてはいましたが、個人の想像の域を出ないことが課題でしたので、お客さま企業とどのように会話したら良いのか、ユーザビリティはどのように考えていけば良いのかなど、具体的な進め方をフィラメントさんにメンタリングで相談しながら取り組みました。また検討の段階で、もし認知機能に低下の傾向ありという判定が出た場合に、何か対応策も合わせて提案する必要があると気付いたのですが、地域医療連携に向けた打ち手など、この辺りのアイデアは自分たちだけでは出てこなかったと思います。

――そもそも皆さんのアイデアはどんなきっかけで生まれたのでしょうか?

武藤:DigiComに出場する2年くらい前、旧三営本の時代にも金融で新しいソリューションを考えみようという営みがありました。そのときに流行っていた医療ビッグデータを活用できないだろうかと浦野さんとディスカッションする中で「そもそもNTT Comはビッグデータを取得する蛇口(接点)がない」という話になったんです。「だったら、まずはビッグデータを生み出す機会を作らないと始まらない」ということになり、認知機能を判定する仕組みを提供することでデータを取ることができるのではないかと思ったのがきっかけです。

トライアルしながら高齢者に使いやすいインターフェースを

―――生駒市さんの「ケアリンピック生駒~オンライン~」はどんな実証実験だったのでしょうか?

メンバーの田上さん

メンバーの田上さん

田上:生駒市さんは毎年、介護・医療・福祉に関するイベントとして「ケアリンピック生駒」を実施されていました。今まではオフラインで1日開催というスタイルでしたが、今年は新型コロナの影響で1カ月にわたってのオンライン開催でした。私たちの提案内容は電話番号さえ告知すれば、電話を使って生駒市の方なら誰でも参加できる仕組みだったので、オンラインのイベントに適していたんです。

「かんたん電話判定」実証実験の仕組み

電話をかける→個人情報に関するアナウンスに同意する→認知機能の判定(年齢と日付を西暦で曜日を含め回答)→アンケート

――認知機能の判定の後にあるアンケートとは、どういうものですか?

田上:これは生駒市さんのリクエストで追加した機能です。コロナ禍で高齢者の方と自治体との接点が減ってしまったので、電話で認知機能を確認するだけでなく、高齢者の方の生活上での不安やお困りごとなどの状況把握もしたいということでした。

――皆さんの提案と生駒市さんのアイデアも含まれて実証実験になっているのですね。

田上:実証実験の内容が決まるまで、市の担当の方と何度もディスカッションをする機会がありました。実証実験終了後も、結果の取りまとめのためのディスカッションが複数回予定されています。生駒市さんには、公民連携の提案窓口である「生駒市協創対話窓口」があり、民間企業との協創で新しいことに取り組む文化がありました。実証実験のフィールドとしては、非常に進めやすかったです。

――実証実験から、どのような成果や気づきがあったのでしょうか?

メンバーの田中さん

メンバーの田中さん

田中:まずは実証実験を行う環境構築が必要でしたが、NTTコムソルの開発部隊にめちゃくちゃ頑張ってもらって、ありえないくらいの短期間で準備してもらいました。彼らには本当に感謝しています。

やってみての気づきとしては、ユーザーエクスペリエンスの面で、ユーザーがわれわれの想像を超える動きをするということです。もちろん電話と高齢者の相性は良いだろう、このユーザーシナリオなら問題ないだろうと、ある程度の想定はしていました。実際には操作でつまずき、先に進めなくなってしまう方が想定よりも出てきてしまい、途中で市の方と議論しながらユーザーシナリオを改善していきました。

また、認知機能の判定後のアンケートも、答えてくれる人は少ないだろうと思っていたのですが、ほとんどの方が答えてくださってありがたかったです。

田上:実証実験のようにトライアルしながらユーザーエクスペリエンスを向上していくことは、新しいサービスをつくる上で有効な方法だと実感しました。

アンケート機能の部分では音声による回答をテキスト化しているのですが、テキスト化の精度も良かったので、市の方から他にも活用できそうだねと高評価を頂きました。

――今回の実証実験のために作った仕組みは、今後も活用できるのでしょうか?

田中:ユーザーインターフェースの部分は今後も活用できると思いますが、基盤については突貫工事で準備したので、残課題はつぶしていきたいと思います。

他社さんからも実証実験をやりたいと引き合いが来ているので、生駒市さんとの実証実験の成果を生かしていきたいと思っています。

次は実務で「これが必要だ」と言わせる価値を

――事業化に向けて、今はどのような状況なのでしょうか?

武藤:私の考える事業化の定義ですが、実証実験ではなく本番の業務オペレーションに組み込んでもらうこと、それを特別価格ではなく費用対効果を見いだした上で持続的に供給可能な価格帯で提供できることだと思います。さらに、ファーストユーザーができて、その事例をテンプレート化し、次のユーザーを2社目、3社目と増やして、持続可能な状態になれば事業化と言えるんじゃないかと。それを事業化とすると、今は3合目か4合目辺りで、田中さんやNTTコムソルの皆さんに全面協力いただいたプロトタイプを用いて、金融・公共のお客さま向けに、実際の業務オペレーションで使えるのかどうかを検証しているところです。

来年度は、実証実験で「これ、いいよね」という総論の評価ではなく、実際に業務で「これが必要だ」と価値を認めてもらうフェーズになっていくと思います。

田中:今までDigiComやBI Challengeの営みを見ている中で、営業組織の人が売って歩いてくれるものなのかということが重要なんじゃないかと思っていました。そういう意味では武藤さんが所属している一BSや、チームメンバー以外の人たちも、このアイデアを売りに歩いてくれていて、ヒアリングなんかも積極的にしてくれているんです。だから、5合目に近い4合目って言えるんじゃないかと。

それと、このアイデアで実績をつくって事業化することは、たぶん通過点なのかなと思っています。というのも、われわれが持っている仮説は全体の一つであって、料理に例えると調味料みたいなものです。それを使ってどのようなレシピにするかはお客さまからもどんどんアイデアが出てきているので、それが2つ目、3つ目の矢になって広がりそうな動きがある。一つの事業で終わらない雰囲気をちょっと感じています。

――一つの事業で終わらない雰囲気、それはワクワクしますね。
最後に、皆さんは新規事業にチャレンジしてみてどうだったか、感想を教えてください。

武藤:チャレンジしてみて本当に良かったと実感しています。アイデアをいろいろ考えて、これを成し遂げたいと思うことは誰でもあると思うんですけど、どんな良いアイデアも自分の中で閉じてしまうと妄想に留まってしまいます。アイデアは自分の外に出して、いろいろな人と磨いていくと、実現可能性が高まっていくと思います。ただ事業化するまではアイデアに過ぎないので、アイデアの共感者や支援者がいないとメンバーだけでは進められません。DigiComやBI Challengeに応募することで、日常業務では得がたいが、事業化に必要不可欠なアイデアの共感者や支援者を得られたことが良かったです。

田中:私がDigiComやBI Challengeに参加する理由の一つとして、社会貢献の実績が企業の在り方として重要になる中で、自分たちのアイデアは社会貢献につながると思っているからです。
実際に参加してみて良かったことは3つあります。

1つ目は、メンタリングを通じてネットワーキング的なつながりはもちろんのこと、事業化に必要なステップ、どのように素材を準備して見せていけば良いのかがあぶり出されたこと。参加前から認知機能を声で判定するという素材は持っていましたが、「これはいいね。で、それで?」となることが多かった。「それで?」の先にアピールできるようになったと思います。2つ目は、自分たちのアイデアが、役員・幹部まで直接アピールできる点が良かった。

そして最後にマインドの変化。長くサラリーマンをやっていると、「こうなったらもう無理だ」と自分の中で勝手に限界を決めてしまうところがありました。DigiComでは、これは難しいかな? と思うことも無邪気に相談してみようという雰囲気があって、相談してみると意外に良い方向に動いてアイデアが出てきたり、戦略的なコネクションができたりするんだという気づきがありました。

田上:旧三営本の公共分野で医療系の実証事業を担当したこともあり、社会課題の解決につながる仕組みを検討したいという思いを持っていました。身近に認知症の人はいなかったのですが、NTTコムソルのビジネスコンテスト内でアイデア検討をする中で認知症と認知症に起因する社会課題を知るようになりました。NTTだからこそできることがあるのはないか? と、メンバーと考える中で、今回のアイデアにたどり着きました。その後もDigiComのように失敗を恐れずにチャレンジできる仕組みに合流して、継続検討ができており、本当に良かったなと思います。

今は武藤さん、田中さんとは所属組織も違うのですが今回一緒にやらせていただいて、自分だけでは見えていなかった金融業界の課題や解決方法などに気付くことができました。改めてDigiComという組織横断の取り組みに参加して良かったなと思います。今回の取り組みを何とか形にするためにも、今後もチャレンジしていきたいと思います。

(聞き手:DigiCom事務局/斉藤久美子)

社員メッセンジャー

NTTコミュニケーションズイノベーションセンター プロデュース部門

斉藤 久美子

NTTドコモグループ新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」、オープンイノベーションプログラム「ExTorch(エクストーチ)」などの事業創出をミッションとした施策の事務局を担当しています。社員のチャレンジを社内外に発信します!

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