2020年10月02日

感染者を出さない! 広げない! 仲間を守る! 事業を継続する!
運用保守の拠点を分散配置。東京オペレーションセンターの対コロナBCP【後編】

NTT Comの法人向けサービスの運用保守を担当するNTTコムエンジニアリング 東京オペレーションセンター(以下、TOC)では、コロナ禍に際し、3月初旬から機能の一部を仙台・大阪(中之島)・広島に移管するBCPを実施していました(6月末に東京・唐ヶ崎に集約)。前編では体制づくりなど詳しい取り組みを紹介しましたが、後編では、分散拠点へ緊急出張して「つなぎ続ける」ことに徹した、現場スタッフの声をお届けします。

※「運用保守の拠点を分散配置。東京オペレーションセンターの対コロナBCP【前編】」も併せてご覧ください。

いつまでか? 終わりが見えない中、厳戒態勢でスタート

もともとBCPは激甚災害に備えて整えられていましたが、今回は目に見えないウイルスであったため勝手が違いました。感染拡大に配慮し、当初BCPとして準備していた場所ではなく、別のオフィスを探し、新たに環境を整えることからスタートしました。

分散拠点へ出張したスタッフは、出張自体を前の週に告げられ、出張がいつ終わるのか決まらないまま、現地へ赴きました。コロナ禍では、人の移動(特に都内から地方への移動)に厳しい目が向けられています。もしも出張者が現地で感染すれば、感染ルートがどうであれ「東京からウイルスを持ち込んでバラまいた」とのそしりを受けかねない状況でした。生活はほぼ滞在先ホテルとBCPセンターの往復のみで、地元住民以上の厳戒態勢。出張期間中の帰宅は認められず、家族にも会えない。趣味の活動なども控えるしかありませんでした。それでも使命感を持って仕事をまっとうした(今もしている)縁の下のヒーローを代表して、TOCの6人に話を聞きました。

使命感を胸に長期出張を戦ったメンバーが体験を語る

前島吉孝さん(基盤担当・3月2日から4月28日まで中之島で業務)

――ご担当業務、今回のBCPでの体験をお聞かせください。

前島吉孝さん

私は、国内伝送基盤やアクセス回線の保守を担当するチームで、技術支援の仕事をしています。私たちにBCPの話が下りてきた時点ですでに派遣まで1カ月を切っていました。各サービスの装置ごとにアクセスできる端末が異なるので、基盤チームだけで端末は40台から50台ほど必要になります。首都直下地震に備えて、以前から大阪にも機材を用意していましたが、それでも足りない分は現地で借りました。そのほか輪番のためにベッドを用意したり、滞在先のホテルを手配したり、仕事と生活の両面を整えて3月上旬からスタートできました。

実際に派遣が決まったのは前の週の水曜日でした。「来週月曜から中之島」と告げられて・・・。ひるむ気持ちがなかったといえば嘘ですが、誰かがやらなくてはいけないことだと覚悟を決めました。私たちのチームで中之島へ行ったのは2割ほどのメンバーです。東京に何かあった場合に中之島だけで業務を100パーセントこなすことは難しいので、中之島の人たちとは担当者レベルで「東京に何かあったら一緒にやりましょう」と話をしていました。

――派遣を終えた今、どんなお気持ちですか?

現在は中之島の拠点を閉じ、唐ヶ崎ビルでBCP体制を継続しています。7月に起きた熊本、岐阜の豪雨によるケーブル故障では、中之島での辛い時期を乗り越えたメンバーが活躍してくれました。分散体制下ですが、以前より短い時間で対応できたほどです。個々のスキルやモチベーションが上がって、メンバーが一回り大きくなったように思います。

浜野耕一さん(パケット担当・3月3日から6月30日まで中之島で業務)

――ご担当業務、今回のBCPでの体験をお聞かせください。

浜野耕一さん

私は、パケット通信系の保守チームで技術支援を担当しています。私たちのチームでは、2月上旬には、分散拠点の検討が始まっていました。チーム内の機能がお客さまフロントと設備監視に分かれているので、それぞれに適した拠点を選ぶ方針でした。お客さまフロントに関しては、首都直下地震への備えとして、2019年から分散拠点として運用を始めていた中之島に決まりました。環境構築が必要な設備監視はぎりぎりまで決まりませんでしたが、中之島のご厚意で受け入れていただけることになりました。

他のチーム同様、私たちも出張数日前にメンバーを選定しました。お客さまフロントが5人、設備監視が7人です。パケット系に関しては東京で何かあった場合に中之島でも大手町と同じ品質の業務ができることを目指していました。当初は2カ月程度の派遣だと想像しながら出張して、それが結局は4カ月になって・・・。ストレスは相当なものだったはずですが、みんな「業務を継続する」という一心で、粘り強く仕事に当たっていました。

――派遣を終えた今、どんなお気持ちですか?

確かに辛いこともありましたが、収穫もありました。これまでは直接交流することのなかった方々と、業務の面でも人としても交流できましたし、私たちのチームでいえば、フロントも設備監視も、この4カ月で一体になれました。一つのことをチーム一丸となってやるのが、われわれチームの強みであり仕事の面白さでもあるのだと気づきました。

浅井彩子さん(ボイス担当・3月9日から6月30日まで広島で業務)

――ご担当業務、今回のBCPでの体験をお聞かせください。

浅井彩子さん

私は音声系サービスの保守チームの支援スタッフです。もともと、ボイス系の監視・保守は約10年前まで広島で行われていました。首都直下地震の際には広島で業務継続という想定があったので、今回も現地の皆さんに当たり前のように受け入れていただけました。また、なぜかボイス系には広島に縁のある方が多いので、すぐに馴染めるメンバーが多かったですね。

今回はシステム装置の監視・保守とお客さまフロントが一緒に行きました。派遣されてから最初の1週間ぐらいは、環境面の整備が必要なところを整え、できることとできないことを切り分けた上で、広島での業務を開始しました。広島の皆さんには、その環境整備や物品面で、随分、助けていただきましたし、東京から派遣された私たちにもフレンドリーに接していただき、大変お世話になりました。また、もともと遠隔でやり取りのあった方たちと直接会い、この機会に業務改善や業務巻き取りについて話し合うこともできました。

――派遣を終えた今、どんなお気持ちですか?

大手町に残ったメンバーとも、これまで以上に絆が強くなった気がします。「これは広島でやっておくよ」「今、大手町は手が空いているよ」などと互いに申し出て仕事を分担できました。業務以外のことでも「マスクは足りてる?」「消毒液を送ろうか?」など、優しい言葉に励まされましたし、自分も相手に対してそうするよう努めました。離れてみると、離れたなりの目線で思いやりを持ち合うことができるんだと感じました。

小澤夕貴さん(ネットワーク担当・3月4日から4月23日まで仙台で業務)

――ご担当業務、今回のBCPでの体験をお聞かせください。

小澤夕貴さん

私は、ネットワーク設備の保守を行うオペレーションチームでオペレータをしています。私も、派遣の話を聞いたのは前週でした。私は1カ月ほどと想像していて、実際には2カ月弱で派遣が終わったのですが、それほど苦にはなりませんでした。ホテルと会社は歩いて20分ぐらい。公共交通機関を使わなくて済みましたし、部屋もきれいでした。仙台の方のご厚意で、職場に冷蔵庫や電子レンジ、ミニ売店も用意いただいてありがたかったです。

業務で変わったことといえば、交代者への引き継ぎです。これまでは同じ画面を複数人で見ながら口頭で伝達していたのを、Teams会議などに置き換えたため、ニュアンスが以前より伝わりにくくなったのは否めないところでした。それを改善するために、一つの案件について情報をExcelファイルにまとめて、同じファイルを2拠点で更新しながら情報共有する仕組みを新たに取り入れるなど、工夫しました。

――派遣を終えた今、どんなお気持ちですか?

一番大きく変わったことは心構えができたことです。今回はコロナ禍ですが、震災やその他の自然災害など、いざ何かあれば、私たちは業務を継続するため、今日にも場所を移してオペレーションをする可能性があります。そのことが身に染みて分かったのは良い経験でした。臨機応変さやフットワークの軽さみたいなものも身についたように思います。

高田康太さん(グローバル担当・3月16日から5月29日まで仙台で業務)

――ご担当業務、今回のBCPでの体験をお聞かせください。

高田康太さん

私はオープンネットワークフロントといって、国内/グローバルのネットワーク系サービスの保守を担当するチームで、オペレータの仕事をしています。派遣前は通常業務をこなしながら、自分たちが仙台で使うツールを準備しなければならず、それが思いのほか大変でした。

仙台では、ホットプレートで簡単な料理をしたりして、外に出る機会を減らしていました。いつ東京に戻れるかも分からなかったので、息苦しさはありましたね。また、出勤にはマスクが必須ですが、当時調達には苦労しました。一方で、派遣期間の後半には、仙台でOCNの保守を担当されている方々に仙台フロントを見学させていただいたり、フロント同士で一緒にやれることがないか話し合ったり、こんなことでもなければ生まれない交流がありました。

――派遣を終えた今、どんなお気持ちですか?

今回のことで、忍耐力の大切さと、通信会社で働くことの責任の重さを痛感しました。また、お客さま対応フロントとして、皆さまの大切な通信を守るためにも、お客さまとのコミュニケーションは重要ですし、チーム内でも拠点が分散されたからこそ、これまで以上に密なコミュニケーションが必要だと思っています。われわれはコミュニケーションから離れられないんだと、認識を新たにしました。

千葉智也さん(スーパーフロント・3月16日から5月29日まで仙台で業務)

――ご担当業務、今回のBCPでの体験をお聞かせください。

千葉智也さん

私は、スーパーフロントで支援を行っています。スーパーフロントというのは、国内ネットワーク系サービスの保守(企業向け)をするチームです。仙台へは、設備系のメンバーが先に行って環境を整えてくれていたので、われわれは行けば仕事ができる状態でした。派遣が正式に決まる前から「来るぞ」という“ざわつき”があって、みんな覚悟があったのか、いいメンバーが集まったと思います。

私たちが行ったのは、東京オリンピックの聖火が仙台に到着して見物客が殺到した頃でした。派遣期間が長くなってくると仙台センターの方が「マスクはどうしていますか」と聞いてくれて、備蓄の中から私たちに分けてくれました。仙台センターは東日本大震災の経験を生かして、備蓄を充実させていたのだと思います。

――派遣を終えた今、どんなお気持ちですか?

2カ月半を振り返ると、ロケーションが離れていても、チーム同士、センター同士で連携を密にしてやってこられたと思いますし、逆にそうでなければ成り立たない仕事だということがあらためてよく分かりました。離れていても志や気持ちのベクトルさえしっかり合っていれば、どこでもできるものですね。リモート環境の有用さを、身を持って知りました。

「今こそ自信を持って乗り越えよう」 TOCメンバーのメッセージ

最後に6人は、以下のように意気込みとエールを語ってくれました。

「コロナ禍によってリモートワークやオンライン帰省など、離れた場所にいる人と人とを“つなぐ”ニーズが増え、通信の重要性がますます増しているのを感じます。責任はこれまで以上に重くのし掛かりますが、協力し合い、自信と自負を持って、みんなでこの困難を乗り越えてまいります!」

TOCでは6月末から、大手町、唐ヶ崎、リモートワーク(在宅)に分散してのBCP体制を取っています。人材育成の担当でもある千葉さんは「これまでは大手町1カ所で出来たとか、以前はこうだったとかいうことが今は通用しません。旧来の常識に捉われず、どうするのがいいのか一つずつ新たに考えることが大切だと感じています。若手社員にはそれを伝えていきたいですね」と力強く語っていました。

お話いただいた皆さん

お話いただいた皆さん(前列左から高田さん、千葉さん、前島さん、後列左から小澤さん、浅井さん、リモート参加の浜野さん、小林センター長)

※集合写真撮影時以外は、原則マスクを着用し、フィジカルディスタンスを保った上でインタビューを行っています。

社員メッセンジャー

NTTコム エンジニアリング東京オペレーションセンター

花村 賢一

法人のお客さま向けの保守運用オペレーションに関する、DX推進やプロセス改革を担当しています。 NTTコム エンジニアリング 東京オペレーションセンターにおける、DXを活用したBCPの取り組みをお届けします!

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