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2020.09.04

NTT Comが描くローカル5Gの世界
4.7GHz帯の電波特性や、データ伝送時の柔軟な経路選択手法を検証

左から森藤さん、中村主査、松山さん

5G通信技術をプライベートネットワークで用いる「ローカル5G」。主要技術である「高速大容量」「低遅延」「多端末接続」という特徴に加え、Wi-Fiでは実現が難しかったモビリティや高信頼性、QoSなどを用いたカスタマイズ、外部のネットワークと切り離して構築できる点など、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を求めるお客さまからの期待は高まる一方です。NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)では、2019年からローカル5Gに関する知見やノウハウを積極的に蓄積。2020年6月には、2020年末に控える4.7GHz帯の割り当てと制度化も見据え、自社施設で本格的な実証実験を開始しました。先端技術の研究開発に取り組むNTT Com イノベーションセンターの3人に、どのようなローカル5G通信を実現しようとしているのか話を聞きました。

Wi-Fiや有線LANに替わる高信頼の無線通信技術「ローカル5G」

――お客さまにとって、ローカル5Gのどういった特徴が魅力なのでしょうか。

松山:ローカル5Gには3つの特徴(高速大容量、低遅延、多端末接続)がありますが、特に低遅延での通信は、工場などを持たれているお客さまにとって魅力的だと思います。工場の生産ラインのネットワークは、遅延に対して非常にシビアで、さらに高い信頼性も求めます。IPパケットの到達順まで指定するケースもあるほどです。

こうした条件をWi-Fiで満たすことは難しいため、有線LANが用いられていますが、有線の場合は生産ラインを柔軟に変更できないため、無線化したいとお考えのお客さまは多くいらっしゃいます。そんな中、配線を無線化し、IoTセンサーなどで取得したデータをリアルタイムに収集・活用できるローカル5Gは、Wi-Fiや有線LANの代替になるのではと考えています。

――パブリック5Gに対し、ローカル5Gにはどういったメリットがあるのでしょうか。

イノベーションセンター テクノロジー部門 松山 幸中さん

松山:ローカル5Gのメリットは、お客さまの用途に合わせて柔軟にプライベートネットワークをカスタマイズできる点です。例えば、お客さまが低遅延の無線通信を求めているなら、その要件に合わせてローカル5G環境を構築します。大容量データ収集に利用するのであれば、上り優先に通信の帯域を制御します。時間帯やサービスごとにデータの行先をコントロールするといった仕組みも、ネットワークと連携させながら実現できます。プライベート環境であれば、その時々の最新機能を取り入れることも可能です。

中村:もう1つ、自社で通信が完結できる点も大きなメリットです。各種機器のコントロールにおいてスピード面やセキュリティ対策として、外部のネットワークを経由させずに通信を行いたいというニーズは、工場などで多くあります。

用途により変わる周波数帯の選択とエリア設計

――日本では、ローカル5Gに対して28GHz帯と4.7GHz帯の2つの周波数帯が割り当てられます(4.7GHz帯は2020年末を予定)。この違いについて教えてください。

実験試験局免許申請の際に実施した、28GHz帯無線機の登録点検の様子(電波の混信が生じないよう、電波暗室で測定)

松山:無線通信では帯域幅と通信スピードは比例するため、周波数が高いほど帯域幅を確保しやすく、通信スピードは上がります。つまり、同じローカル5Gでも28GHz帯は、通信速度を重視するような用途でメリットを出しやすい。ただ、遮蔽物に対する透過や回析は期待できず、到達距離も短いといった特性があるため、基地局のアンテナと受信端末の間にさえぎるものがない理想的な無線環境に近いLOS(Line Of Sight:見通し)内でのスポット的な使用に向いています。

一方の4.7GHz帯は、28GHz帯よりも遠くまで電波を飛ばすことが可能です。また遮蔽物に対してもある程度の透過や回析をするため、28GHz帯での置局設計よりは工場の敷地内など一定のエリアをできるだけ少ない基地局でカバーすることができます。

――6月に行った電波伝搬試験ではどのようなことを確認したのでしょうか。

松山:NTT Comは2020年6月に実験試験局免許を取得しました。そこで、自社のラグビーチームShiningArcsのホームグラウンド「アークス浦安パーク」の敷地内で4.7GHz帯の電波を発射し、特性を確認しました。電波が届く距離や、基地局のアンテナと受信端末の間に遮蔽物(人や鉄板など)がある場合の電波強度の減衰や指向性といった特性に加え、受信強度によるスループット(機器が単位時間あたりに処理できるデータ量)や遅延、PER(パケットエラー率)の変化をデータで取得、通信品質の特性についても試験しています。

概ね事前に想定していた通りの結果を得ることができた一方で、過去に検証実績のあるプライベートLTE技術で得た以上の新たな気づきやノウハウを蓄積することができました。実際にローカル5Gを導入する際には、それらの特性を理解した上でエリア設計を綿密に行う必要があるということです。


屋内での電波伝搬試験の様子

建物内で4.7GHz帯の電波を発射し、壁や扉などによる透過損失や回析具合を確認

人間が電波を遮ると、受信強度がどれだけ落ちるのかを確認した実験

また、アークス浦安パークでの実証実験の後、株式会社ブリヂストン(以下、ブリヂストン)様の工場でも4.7GHz帯の電波を用いた共同実験を行い、機械が乱立している屋内工場環境下での電波伝搬も確認しています。今後はその結果を基に、センサー類のワイヤレス化や高精細カメラによる高スキル者の技能分析など、ブリヂストン様が想定されているアプリケーションの検証も一緒に確認を行っていきます。

実用化に向け検証が進む「多段エッジコンピューティング」と「スライシング」

――NTT Comは、ローカル5Gにおいてどのようなベネフィットをお客さまに提供しようと考えているのでしょうか。

イノベーションセンター テクノロジー部門 中村 大輔主査

中村:企業ネットワーク全体からみれば、ローカル5Gでの通信は一部分に過ぎません。つまり、エンド・ツー・エンドで低遅延を目指すのであれば、ローカル5Gの先のネットワークをどのような構成にするのか、リアルタイムの解析に適した「エッジコンピューター」と複数拠点データの蓄積・詳細分析に適した「クラウド」とをどのように利用していくのかなど、トータルで考える必要があります。

NTT Comには、国内外に広がるネットワークや各種クラウドといったさまざまなサービスがあります。それらを活用し、ローカル5Gを含めたネットワーク全体で最適な構成を実現し、VxF基盤技術を用いて柔軟にコントロールできるようにする。このように、ICT環境全体を最適化するサービス・ソリューションを提供することがNTT Comの目指すところです。

――どのような技術でローカル5Gとネットワークを連携させるのですか?

森藤:まず、5G通信で収集したデータを、クラウドよりも手前にあるネットワーク上で処理を行うエッジコンピューティング技術「MEC(Multi-Access Edge Computing)*」があります。低遅延やより高いセキュリティを求めるお客さまに対しては、MECをオンプレミスに配置します。用途に応じてMECをネットワークエッジに構築し、多段利用していただくことも可能です。さらに次世代インターコネクトサービス「Flexible InterConnect」を活用すれば、エッジだけではなく、各種クラウドサービス(Enterprise Cloud、Amazon Web Services、Google Cloud Platform、Microsoft Azureなど)とセキュアに接続することも可能です。

MECを上手く活用すれば、低遅延を実現しながらクラウドへ送信するデータ量を削減できるほか、災害などによってクラウドやインターネットにトラブルが発生しても処理を継続できる可能性を高めることができます。

※MEC(Multi-Access Edge Computing):クラウドよりも手前に配置したサーバーでデータを処理し、遅延を低減させるエッジコンピューティング技術

さらに、5Gにはソフトウエアを用いて仮想ネットワークを構築する「スライシング」と呼ばれる技術もあります。高速大容量、低遅延、多端末接続の3種類のスライスだけでなく、アプリケーションごと、あるいは端末ごとなど要件に合わせて細かくスライシングすることができます。私たちは、ローカル5Gの先につながるネットワークも含めてスライスを作成し、一体的に制御することを目指しています。

ローカル5G環境を構築した2拠点間でQoSの値による経路制御を確認

イノベーションセンター テクノロジー部門 森藤 福真さん

――6月の実証実験では、アークス浦安パークとNTT Comの田町オフィスのそれぞれにローカル5G環境を構築し、ネットワークでつないで映像伝送試験をしたそうですね。

森藤:はい。今回の実証実験は、昨年10月に発表した多段エッジコンピューティングを組み合わせたローカル5G検証の一部として実施しました。ローカル5GとMECとの連携では、アプリケーションの要求に応じて柔軟にネットワークを制御することがポイントとなります。そこで、その手法の1つとしてQoS(Quality of Service)*の値による経路選択がスムーズに行えるかどうかを検証しました。

まず、ネットワークに2つの経路を用意します。そして、伝送するデータにQoSの値を付与し、その指示通りに経路をたどるかを確認したところ、事前の想定通りに制御ができました。今回はかなりシンプルな構成でしたが、ネットワークが複雑になった場合にはまた違った手法が必要になるため、複雑なネットワーク構成での検証も今後進めていきたいと考えています。

※ QoS:Quality of Serviceの略。事前に設定した優先度に基づいてデータの転送順、あるいは帯域幅を制御する技術

映像データを配信したときに経路を切り替えた際のトラフィック量の変化グラフ(緑と赤の2本の線は、それぞれの経路のトラフィック量を表示)。経路を切り替えたことで、トラフィック量が緑から赤に逆転していることが確認できました(赤矢印部分)

――映像を伝送することも、検証項目の1つだそうですね。

中村:映像伝送は、5Gの3つの特徴(高速大容量、低遅延、多端末接続)のうち、高速大容量通信が必要なアプリケーションとして挙げられます。ローカル5Gのユースケースとして期待が高い領域です。

NTT Comは、放送事業者向けなどプロフェッショナル分野で映像を収集するネットワークサービスに強みを持っています。そういった現場では、端末側からセンターに向けた上り(Uplink)方向を中心に、パケットロスが少なく安定的に帯域が確保できる高品質な通信が求められます。しかし、これを無線通信で実現するにはまだいくつかの課題があります。

例えば、一般的な携帯キャリアの無線サービスでは、多数の端末でコンテンツを視聴することが多いため、下り(Downlink)方向でのダウンロードを高速にすることを優先させています。またUD比率(UplinkとDownlinkの時間的な割合)設定と、基地局側および端末局側での電波強度の違いといった条件もあり、パブリック5Gで上り方向での高品質な通信を実現するのはまだ難しい面があります。加えて、5G通信関連機器についても、今後の開発が待たれる部分です。

こうした状況の中で、一定の帯域を常に利用する映像ストリームを流して映像再生までできるかを検証し、ローカル5Gの無線区間と基盤ネットワークをどう連携させ通信を安定化させるかを把握できれば、NTT Comのローカル5Gソリューションの強みにつながります。

QoS連携検証および映像伝送検証における実験構成図

映像伝送実験の中身としては、ビットレートを5~50Mbpsで変えてその影響を調べたり、無線区間におけるパケットロスやそれを補うエラー訂正、再送制御機能の検証も行いました。ローカル5Gの無線区間には、パケットがロストすると再送する仕組みがあります。これとは別に、映像を圧縮するエンコーダーと伸張を行うデコーダー間で備えるバッファリング量やエラー訂正、再送機能をどのように使うべきか、今後さまざまなネットワークとの比較をしながら、引き続き確認していきます。

今回の映像伝送実験は、アークス浦安パークに置いたローカル5G無線設備(基地局、端末局)を上り方向で使い、さらに(前述した)QoS制御と連携させながら、田町オフィスに置いたサーバー上の5Gエミュレーターまで、まさにエンド・ツー・エンドで映像ストリーム(HEVC形式)をネットワーク伝送し、実際にきれいな画像で再生されるまでを確認しました。(実験構成は上記図参照)

区間ごとに伝送できる設定を模索しながら積み重ねていきましたが、肝になったのは、「5G無線」「ネットワーク連携」「映像伝送」と3つの領域の担当者が協力してそれぞれの技術を結集できたこと。だからこそ実験で成果が得られたのだと思います。

今後さらに、ローカル5Gの特徴を使ったアプリケーションの実験として、具体的なユースケースを想定した機能の開発・検証も行っていく予定です。具体的には、MECを用いることで、映像やセンサーデータをいち早く解析し、あるいは映像に別の情報をリアルタイムに埋め込んで表示させるなどです。この他にも、さまざまなネットワークを組み合わせた時に、複数の経路で分割してデータを送信するなどのユースケースも考えられます。例えば、スタジアムでの撮影において、音声をローカル5Gで送りつつ映像は有線ネットワークで送るといったときに、音声と映像をどのように同期させるかといった課題にも取り組んでいきたいと考えています。

NTT Com独自のローカル5Gソリューションの提供に向けて

――最後に、ローカル5Gの商用化および技術向上に向けた意気込みをお聞かせください。

森藤:ローカル5Gにはすでに大きな期待が寄せられており、今後はお客さまからもさまざまなニーズが出てくるだろうと思います。そうした要求事項に応えられるよう、ローカル5Gとネットワークサービスをシームレスに制御できるシステムを開発し、お客さまのビジネスを支援していきたいと思います。

中村:私自身はプロフェッショナルユースの映像伝送技術の開発とともに、ローカル5Gのメリットを実感できるユースケースの構築や、その実現のために必要となる知見の獲得にも取り組んでいます。お客さまにもローカル5Gの現状や動向とともにユースケースをお伝えしながら、各ユースケースにおけるアプリケーションや状況に応じて、使い方や必要な設定、あるいは制限事項などのノウハウを蓄積し、社内で共有していきたいと考えています。

松山:ローカル5Gについてはすでに多くの情報が発信されていますが、自分たちで実際に手足を動かして検証を行い、ローカル5Gという無線技術の特性を理解することが非常に大切だと考えています。こうして得られた知見を基に、ユースケースの想定、つまりどういう業種のお客さまにはどういった用途が向いているのか、を常に念頭に置いてこれからも検証を続けていき、お客さまへのご提案につながるよう、社内への情報発信を行っていきます。

また、「Flexible Inter Connect」や「Smart Data Platform」といったNTT Comが提供するサービスとの連携、さらには上位のアプリケーションでの利用まで踏み込んだ検証を行い、知見を蓄積していきたいと考えています。

※「ローカル5Gの構築だけではもったいない! ビジネスの可能性を拓くSmart Data Platformとの連携」も合わせてご覧ください。

社員メッセンジャー

NTTコミュニケーションズイノベーションセンター

中村 大輔

ローカル5Gの検証を進めながら、次の技術動向を収集し、未来のあるべき姿をアプリケーション面から検討しています。ローカル5Gを含むトータルソリューションに必要となるネットワーク連携技術も合わせて、お客さまや関係者と協力して検証・検討していきます。

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