

11月19日。秋晴れの気持ちのよい金曜日の午後に今回のワークショップは開催された。
クラブハウスのミーティングルームにはシャイニングアークスロゴの入った椅子がずらりと並び、前方の机には、日本航空株式会社(以下、JAL)の模型飛行機やなごみキャラクターのしろたんのぬいぐるみが置かれている。
そう、今日は、JAL社員の方と浦安の未来について熱く語る「スポーツ共創ワークショップ」が開催されるのだ。

JALとシャイニングアークス東京ベイ浦安は、2021年8月23日に「スポーツ共創パートナーシップ」を締結。双方のラグビー部の拠点である浦安市にスポーツの力で賑わいを作り、地域の魅力を発信し、地域社会の課題解決や地域の一体感醸成、またスポーツ振興を推進することを目的に掲げている。
ワークショップ開始10分ぐらい前から、続々と笑顔がまぶしいJALのキャビンアテンダント(以下、CA)の方たちがミーティングルームへ入っていく。手にはアークスのマフラータオル。
このワークショップをファシリテートするのは、喜連航平選手。企画サポートは、ビジネスデザイン担当の磯田金吾氏。
まず、磯田氏の「一体感を感じましょう!」の声掛けで、全員がマフラータオルを首にかけ、同じ格好となった。
さぁ、準備は整った。

最初に、喜連選手から今回のワークショップの目的や進め方、ゴールイメージなどの説明が始まる。
喜連選手は、過去の未来PJへの参加率も高く、意識も高い。試合の解説やファン感謝祭などのイベントでも、彼の関西弁での「しゃべり」はファンにいつも大好評。
「今、緊張している顔している人が多いと思いますが、最後にはドッカンドッカン笑った顔にしてみせます!」
会社では人事採用担当として若手社員の育成が彼の業務。ラグビーを通じての学びを業務に活かし、明海大学での講演もしている。

ワークショップの最初は、もちろん「シャイニングアークス東京ベイ浦安の紹介」。
ここは、磯田氏が声を張り、2つのV(Victory&Value)を具体的に紹介する。
チームの成績、新入団選手の紹介もあるが、やはりなんといっても、アークスが力を入れているSDGsの活動を細かに説明。未来PJが発端となった活動もたくさんある。
参加選手は、懐かしい写真に顔をほころばせ、参加CAのみなさんは、ラグビー選手がこんなに地域に貢献していることを目の当たりにし、少々驚きつつも熱心に聞き入っている。
一通り説明が終わり、5人ずつのグループを作る。おずおずと椅子を引き寄せ、丸く座り、ボールを使った自己紹介が始まった。
ラグビーボールには不思議な力があり、触ってパスをする行為がお互いの距離を少しずつ縮めていく。
緊張していた参加者の、文字通りアイスブレイクとなる瞬間。
自己紹介も終わり、次は「強み・リソースを共有する」時間へ。
各グループがそれぞれ、自分たちが持っている強みとリソースを話合い、全体共有する。
付箋紙で1人1人が思いつくものを書き出し、どんどんホワイトボードに貼り付けていく。
自分達のことを自分の言葉で発していく。どんどん熱が入っていき、笑顔もこぼれる時もあり、、、タイムアップ。
全体共有の発表を聞いてみると、意外にもラグビー選手とCAには共通の強みがあることがわかる。コミュニケーション能力や強靭なメンタル。チームであること、人と接することが常であることが生み出すものなのか。
ただ、1点だけ違うことがある。ラグビー選手の中には、「気が付いたらラグビーやっていた」人も少なくない。CAは、「なりたくてなりたくて仕方がなくて(CAに)なった」人がほとんどだ。ラグビー選手も、もちろん、好きだから得意だからこそ、やりたいからこそ、今、ここにいるのには変わりがないが。
そこにいい意味での違いを発見しつつも、お互いが前向きな姿勢でこの場に臨んでいることに共感をしている空気感が漂う。
いい雰囲気が出てきたところで、休憩がてら、クラブハウスを案内。
いくつかのグループは、広いグラウンドに降り、手入れの行き届いた天然芝を紹介。
頬に気持ちの良い秋風を感じながら、ほっとするひとときを満喫した。

そろそろ本題のワークへ。「未来のアイディアを創る」へ突入!
未来PJでもよくやってきた手法、まずは、個人ワークとして、アイディアを発散させる。
「お互いの強み・リソースを掛け合わせた浦安をハッピーにするアイディアは?」をテーマとし、1人1つずつ実現したいアイディアを用紙に書き、それを元にグループ内で自由に発想を広げていく。
事前に喜連選手より説明した浦安の地域課題課から検討の柱となる「教育・生涯学習」「家族・子育て」「健康・高齢者」「障がい者・福祉」「海・水辺環境」。
この5つがそれぞれのグループのテーマとなった。
配られた「浦安市総合計画:未来の浦安の暮らし」の資料を何度も何度も読み返しながら真剣な表情で考え、自分の想いとして紙に書きつける。
書き終わったら、グループで各自のアイディアを共有。どんどんアイディアをブラッシュアップし、ゴールへ向かう。

ゴールのテーマは「『3年後の浦安』~お互いがハッピーな未来を考える~」とした、「未来寸劇」だ。
「寸劇?!」という驚きと戸惑いの声があがりつつも、どんどん内容が詰まっていく。それぞれの役割が決まっていく。それぞれのセリフを吟味していく。
いつもの未来PJでもそうだが、このゴールに向かってのアウトプットに向けた時間が一番熱を帯びる。
マスク越しの声が大きくなり、目が真剣になる。その傍らで笑いも多くなる。グループのメンバーとして打ち解けている証拠。自分の意見を率直にぶつけ合い、高めていこうという空気感が広がっていく。
気が付けば、ミーティングルームにいるのは2グループだけ。残りの3グループはどうやらクラブハウスのそこここで、寸劇の秘密練習にいそしんでいるようだ。
閉めたドアや扉の向こうで劇団さながらにリハーサルをしている声が漏れてくる。
発表が、楽しみだ。

発表の時間が近づいてきた。
気が付けば、ミーティングルームの席が全て埋まり、最後の意識合わせなのか、ひそひそと話す声も聞こえる。
ファシリテーター喜連選手の「『3年後の浦安の未来』をみなさんに発表してもらいます!」の声とともに発表会の幕が上がった。
まずは、「教育・生涯学習」がテーマのグループから。
夢の持つことの大切さを教えたい小学校の先生。でも、将来の夢がないという小学生(石井勇輝選手)。どうしたら、もっと夢をもってくれるのか?困った先生役がアークスの選手(喜連航平選手)に相談する。
ラグビー選手・CAという「夢をかなえた」自分達だからこそ、子供たちに夢を持ってもらうために協力したい。実際に小学生と対話をすることにした。
自分の好きなことややりたいことは何か。それを子供本人から聞き出していく。更には、それが職業になる可能性を伝えることで、夢を具体的に持つことが出来た。

「健康・高齢者」テーマのグループの発表は、CA役を石井魁選手、ラグビー選手役をCAの方が演じ、笑いを誘いながらも、高齢者が生きがいと健康を手に入れるためのサポートをそれぞれの強みを活かして実施するストーリーを披露。
その他のグループも目崎啓志選手や中島進護選手など、役者さながらの体当たりの演技を披露し、拍手喝采と大爆笑の中で、寸劇発表は幕を閉じた。
最後は、「感想パス」で締めくくられる。

参加者全員が大きな輪になり、一言ずつ感想を述べて隣の人にラグビーボールをパス。
「CAとラガーマンに共通の強みがあることがすごく興味深かった」
「寸劇と聞いて、『絶対嫌だ』と思ったが、やっていたら夢中になっている自分がいた」
「すごく、刺激的な一日だった。ぜひ一緒に地域のために取り組みたい」
みんないい笑顔。
ドッカンドッカン笑った。やり切った。自分たちの可能性も広がった。
今日のワークショップが始まった時とは全く違う、「仲間」の雰囲気がそこに漂っていた。

JAL×シャイニングアークス、今日のフライトは無事にランディング。
アテンションプリーズ。
こちらを持ちまして、本日の搭乗案内を終わらせていただきます。