「特別な想い」を込めた最終戦で黒星。
ゲイツ主将は宣誓「強くなって帰ってくる」
NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安として挑む、NTTリーグワン2022のレギュラーシーズン最終節。
それぞれが特別な想いを抱いて、5月8日(日)、チームはセカンダリーホストエリアである東北へ向かった。
共に過ごした濃密な時間。
共に味わった喜怒哀楽の集大成。
主たるセカンダリーホストエリアである宮城県仙台市は、アークスがトップリーグ時代から試合開催を行ってきた場所。今季の最高峰「ディビジョン1」では唯一の東北開催となった。
会場となった宮城・ユアテックスタジアム仙台では、アークス企画の「仙台ラグビーまつり」が開催されていた。
「レイドローねぶた」の展示に加え、縁日の定番である射的や輪投げができるブースも。「屋台村」と題して5台のキッチンカーも出て、正面入り口は活気に溢れていた。
必勝を期していた。
前節終了時点で、アークスは入替戦に回る可能性がある9位(勝ち点18)。
10位のリコーブラックラムズ東京との勝ち点差は「2」。つまり勝利すれば必然的にディビジョン1残留が決定する状況だ。
ここで迎える相手は6勝9敗のコベルコ神戸スティーラーズ。
アークスは開幕節で1点差の劇的勝利(24-23)を挙げている。ただ相手も尻上がりに成熟度を上げており、先週は横浜キヤノンイーグルスに42-33で勝利している。
4強によるプレーオフ進出や入替戦の可能性はないコベルコ神戸スティーラーズだが、こちらも今季ラストゲーム。難敵である上に勝利に飢えていた。
決戦に挑むアークスは先週から先発4人を変更した。
機動力ある現代型PR(プロップ)の庵奥翔太、1年目からトップレベルを証明してきたHO(フッカー)藤村琉士。
そしてケガを乗り越えて今季奮闘しているLO(ロック)金嶺志、元オーストラリア代表のFB(フルバック)イズラエル・フォラウが先発に復帰した。そしてリザーブにはプレシーズンから好調だった目崎啓志がメンバー入り。
想いの詰まった勝負の一戦は、曇天の午後2時30分、コベルコ神戸スティーラーズの先蹴で始まった。
序盤はコベルコ神戸スティーラーズが圧倒した。
3-3で迎えた前半11分から失4連続トライ。金正奎クラブ主将の高校同期(現常翔啓光学園高校)である山下楽平選手らにインゴールを奪われた。
前半30分手前までのスコアは、26点ビハインド(3-29)。
今シーズンから主将を任されたCTB(センター)シェーン・ゲイツは絶えずメッセージを発し、好タックルを続けた。WTB(ウイング)石井魁も攻守にめざましい動きを見せた。
「(前半は)あのような苦しい時間を過ごしたわけですが、起きたことは過去のことなので、次のタックル、次のラック――次のことにフォーカスしようと声掛けをしました」(CTBゲイツ主将)
今季はこんな時にいつもFBフォラウが状況を打破してきた。
まずは相手のキックを捕球したWTB羽野が、ノールックで背面の片手パス。パスを受けたFBフォラウの剛脚が閃き、大きなストライドで相手を次々に突破。
そしてLO金嶺志からのパスを受けて、No.8(ナンバーエイト)ジミー・トゥポウがインゴールへ!!両手でしっかりとグラウンディングを証明し、この日チーム初トライを記録した。
アークスは武器である強力スクラムでペナルティを奪えず、ラインアウトではミスが続き、セットプレーで苦しい展開が続いた。
さらに2トライを追加され、ハーフタイムをまたいで失4連続トライ。アークスのビハインドは後半5分過ぎの時点で43点(10-53)となってしまった。
アークスの逆襲が始まったのは、この43点差の状況からだった。
「前半は難しい結果になりましたが、点差が離されていた後半も選手たちは諦めずに勝利を追いかけていました。そのことを誇りに思います。あの状況で諦めずに戦い続けることは簡単ではありません」(ロブ・ペニー監督)
敗色濃厚だった。しかしアークスには想いがあった。
どんなに離されようと、チームとしてこの試合に懸けていた。
まず相手を吹き飛ばす豪快なキャリーを見せたのはプロップの庵奥だ。そこに同じプロップである竹内も続いた。
最後にフォワードのユニットが一体となってトライラインの先へ。グラウンディングしたのはフッカーの藤村。フロントローの3人がそれぞれの仕事を120%遂行し、8分に後半1トライ目を奪取。
その後またもトライを取られるが、また取り返した。
アークスの真骨頂となった「諦めない姿勢」がトライを奪った。
スクラムハーフに入ったグレイグ・レイドローの配球で、目の覚めるような波状攻撃。細かいパスを繋ぎ、フォワードはしぶとく身体を当て、最後はCTBヘンリーブラッキンが中央に押さえた。
さらに相手のシンビン(10分間の一時退出)で数的優位の15対14となったアークス。
プロップ竹内が猛烈なボールキャリーを足掛かりとして、アークスがダイナミックなボール展開。右サイドでフォラウが2対2の勝負を制した。これで後半3トライ目。
さらに後半32分には途中出場の前田土芽の正確なパスから、No.8トゥポウが接点へ。ここでオフロードパスを受けたのは途中出場の目崎!!
目崎はさらにオフロードパスを決め、後半4トライ目をアシスト。ビハインドを33点差(34-67)とした。
最終盤の後半36分になってもアークスは諦めなかった。
No.8トゥポウが相手をねじ上げてモール・アンプレイアブルを引き出す。さらに相手のラインアウトモールも耐えきり、終盤戦はアークスが主導権を握った。
最後は相手のCTBルカニョ・アム選手に技アリのインターセプトでトライを許し、最終スコアは34-72でノーサイドを迎えた。
しかし後半のスコアは9点差(24-33)。アークスの想いが滲み出た「9点差」だった。
アークスのNTTリーグワン2022初年度。レギュラーシーズンの成績は4勝12敗。入替戦の有無は今後決定する予定だ。
試合後にCTBゲイツキャプテンは殊勝に語った。
「今後も継続して頑張り続けることはお約束します。来シーズン、また強くなって帰ってきたいと思います」
シーズンはまたやってくる。メンバーの想いは引き継がれていく。アークスの新たな旅はやがて、また始まる。