3勝目ならず!「信念」貫いて後半スコアは「22-28」
あの敗戦から約1年後、後半のスコアは「22-28」になった。
「大量得点を許していましたが、諦めず戦い抜いたことについては、本当に選手たちのことを誇りに思っています」(ロブ・ペニー監督)
昨シーズン、サンゴリアスに94失点を許した試合(31-94/トップリーグ2021第7節)は防戦一方。後半のスコアは、「7-49」だった。
しかし約1年後、42点差だった後半のスコアは、6点差(22-28)になった。
粘り強さで成長を実感した選手は試合後、反省の後にポジティブな言葉を伝えた。
「最後まで諦めることなく戦った選手を誇りに思います」(金正奎クラブキャプテン)
NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安のNTTリーグワンは第10節を迎えた。
相手は8勝1敗。ディビジョン1で首位を走っている東京サントリーサンゴリアスだ。
トップリーグ時代には優勝5回、準優勝5回の戦績を残している強豪であり、コロナ禍による3つの不戦敗を含めて7敗しているアークスはチャレンジャーだ。
ビジターとして乗り込むアークスは、試合直前にメンバー変更があった。
LO(ロック)サム・ジェフリーズに代わり、デビュー戦となるカラム・マクドナルド。SH(スクラムハーフ)グレイグ・レイドローに代わって、湯本睦が入った。
「試合前の24時間で、先発に入っていたグレイグ・レイドローとサム・ジェフリーズがメンバー外になりました。直前にメンバーが替わったにもかかわらず、選手は対応してくれ、またフィールドでは諦めずに戦ってくれました。その姿勢に敬意を表したいと思います」(ペニー監督)
結果的に前節から先発15人中6人が変更となったアークス。
両PR(プロップ)はそろって替わり、明治大学卒のスクラムマン齊藤剣。そしてジャッカルも得意な中央大学卒の三宮累。
そして直前の変更で初先発を飾ることになった豪州出身のLOマクドナルド。FL(フランカー)には2試合ぶりの戦列復帰となるジェームス・ムーア。
バックスの変更ではSH湯本睦、そして頼れるキャプテンのCTB(センター)シェーン・ゲイツが帰ってきた。
リザーブではセコナイア・ポレが今季初のメンバー入り。トンプソンルークは引退試合が行われた聖地・秩父宮ラグビー場に約2年ぶりの帰還となり、後半30分から出場して拍手を浴びた。
まだ肌寒い3月中旬の午後2時30分、サンゴリアスボールでキックオフ。
序盤から猛攻したいアークスだったが、反則が続き、スクラムでのペナルティで3点(前半5分)、トライ&コンバージョンで7点(同12分)の10点を失う。
急きょ先発のSH湯本はジャッカルで、キャプテンのCTBゲイツは的確なタックルで対抗。
前半16分の自軍投入スクラムではこの日初めての強制ペナルティ奪取!!敵陣右に侵入するが、ラインアウトでボールを奪われてチャンス喪失。
敵陣での攻撃精度が課題となるなか、前半21分、アークスは目の覚めるようなアタックを披露した。
まずラインアウトから新加入のFB(フルバック)イズラエル・フォラウが相手を吹き飛ばしてゲイン。
CTBゲイツのショートキックなどを交えて敵陣ゴール前へ猛進すると、アドバンテージをもらったところでSO(スタンドオフ)オテレ・ブラックが、インゴールへショートパント。
世界的なハイボールキャッチの名手、FBフォラウが見事に確保してグラウンディング。開幕戦でも見せた必殺トライで、キックも成功して3点差(7-10)に迫った。
さらにアークスはこの日初出場、初先発のLOマクドナルドが躍動。
相手の好キックで自陣に下がったものの、ラインアウトモールに204センチの長身を活かして絡みつき、ターンオーバー成功!デビュー戦で存在感を示した。
しかし、直後からサンゴリアスが怒濤のトライラッシュ。
「サンゴリアスさんに良いフィニッシャーがいたので、前半の中盤からミスにつけこまれ、多くスコアされたことはすごくもったいなかったと思います」(FL松本健留)
敵陣でボールが手につかず、そこから切り替えされてサンゴリアスが連続トライ。
ノックオンを誘ったWTB石井魁の好タックル、イーブンボールへ飛び込んだFL松本、相手を最後まで追いかけたLOマクドナルド・・・。
随所に好プレーもあったが5トライを浴び、34点ビハインド(7-41)で後半へ向かった。
しかし後半のアークスは粘り強かった。
メンバーはハーフタイムで「信念」を確認しあった。諦めずに闘い、スタイルを貫く――それが後半の「22-28」に繋がった。
「ハーフタイムで『ディフェンスではペナルティを犯さず粘り強くプレーすること』『アタックでは粘り強くスペースにボールを運んでアークスのアタックをしよう』と話をして、後半に臨みました。スタイルを貫くことで、良いプレーがどんどん生まれ、スコアに繋がるシーン、守り切れたシーンもできたと思います」(FL松本)
さらにチームの勢いに火をつけたのは、後半12分に途中出場となったSH西橋勇人だ。
レイドローが先発を外れたことで、急きょリザーブに入った31歳は、得意の“急襲”で相手のリズムを崩した。
勢いをつけたディフェンスでNZ代表の相手SOダミアン・マッケンジー選手のパスミスを誘えば、アタックでは得意の速攻で攪乱。モチベーターとして声でもチームを盛り上げた。
さらに後半15分のスクラムではPR齊藤、HO(フッカー)藤村琉士、PRポレを最前列に据えたスクラムでこの日2度目のコラプシング獲得!!
エリアを前進した後半16分、ラインアウトから展開したアークスはCTBゲイツが鋭いカットパス。
左隅でWTBヘンリーブラッキンが突破。内返しでふたたびCTBゲイツ、最後はFBフォラウが仕留めて待望のチーム2トライ目。鮮やかな攻撃に聖地が湧いた。
防戦ムードを変えたアークスはさらに連続トライ。
ラインアウトのスローイングがオーバーとなったものの、これをCTB(センター)トゥクフカトネが機転を利かせて捕球し、さらにオフロードパス。
サポートしていたSOブラックがゴール下に飛び込み、連続トライを決めた。
象徴的なディフェンスは後半24分頃。
攻め込まれると高確率でトライを許していたが、PRポレなど途中出場組もエナジーを与え、堅守でしのぎ、相手を後退させた。
後半26分にトライは許したが、アークスは取られても取り返した。
体力的、精神的に厳しい終盤(後半32分)、SOブラックのロングキックに対してCTBゲイツがトップスピードで全力チェイス!!CTBゲイツをはじめ3人で相手を取り囲み、見事なターンオーバー。
FLムーアがオーバーハンドで手薄なスペースにパスをすると、途中出場の前田土芽がリーグワン初トライ!!
その後2トライを許すが闘志は衰えず、後半ロスタイムにも連続攻撃からSOブラックがチーム5トライ目。指揮官であるペニー監督は「選手に敬意を表したい」とハードワークを讃えた。
結果は40点差(29-69)の敗戦となったが、後半は「信念」のラグビーで6点差の接戦を演じたアークス。
「頭を下げることなく、次の(東京)ブラックラムズ戦に向けてもう一度準備をしていきたいと思います」(金正奎)
3勝7敗のリコーブラックラムズ東京との対決は3月27日(日)、ホストスタジアムの東京・江東区夢の島競技場が舞台だ。