ホストで悔しい敗戦!
武器のスクラムでは強制シンビンも
「28%」はリーグ最高峰のディビジョン1でトップだ。NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安は最後まで諦めない。その証拠となるデータの一つが、「後半の被トライの割合」だ。
NTTリーグワン2022は折り返しの第9節を迎えたが、アークスは3つの不戦敗をのぞく実戦5試合で、後半の被トライの割合が28%(18本中5本)。ディビジョン1で最も低いのだ。
また後半開始からの20分間の失トライ数はわずか「1」で、こちらもディビジョン1で最小。
諦めない。戦い抜く――。その姿勢は第9節静岡ブルーレヴズ戦の終盤、敗色濃厚となった状況においても貫かれていた。
アークスは3月13日(日)、同じく2勝6敗の静岡ブルーレヴズと激突した。
舞台は2週間前の逆転勝利(東芝ブレイブルーパス東京戦/22-21)が記憶に新しいホストスタジアム、東京・夢の島陸上競技場だ。
相手となった静岡ブルーレヴズの前身は、4強常連としてならしたヤマハ発動機ジュビロ。セットプレーが伝統の武器だが、NTTリーグワンでは攻撃がより多彩になっている。
3勝目を狙うアークスは、前節のトヨタヴェルブリッツ戦から先発15人中6人(FW3人、BK3人)を変更した。
入団2年目を迎える同期コンビ、HO(フッカー)藤村琉士とFL(フランカー)松本健留は揃って先発出場。また米国の大卒ルーキーであるFLマッケンジーアレキサンダーも記念すべき公式戦初スタメンとなった。
そして元スコットランド代表キャプテンのSH(スクラムハーフ)グレイグ・レイドローが今季初先発。両翼もそろって変更となり、WTB(ウイング)安田卓平、石井魁がスタメンに。
リザーブには後半から加入後2試合目の出場を果たした新加入のトンプソンルーク。そしてプレシーズンマッチから好調だった技巧派SH西橋勇人が初のメンバー入りを果たし、後半リーグワンにデビューを果たした。
またこの日はPR(プロップ)庵奥翔太が記念すべきリーグ50試合出場を飾った。
「シャイニングアークスで50キャップを取ったことは、自分の人生においての誇りです」(PR庵奥)
ゲームキャプテンは今季初めてNo.8(ナンバーエイト)ジミー・トゥポウが担当し、穏やかな午後2時30分、ホストスタジアムの空に鉄笛が響いた。
前節トヨタヴェルブリッツ戦では立ち上がりが課題となったが、この日も前半7分にサインプレーから突破を許し、先制トライを許してしまう。
また前半はペナルティ数が11回と多く(後半は5回)、前半11分にはペナルティを得た相手がショット成功。
「最初にペナルティを多く取られたことは反省です。先制点を相手に取られたことを含め、後手に回ってしまいました」(PR庵奥)
10点(0-10)を追いかける展開となったアークスは、ここで今季初先発の元帝京大キャプテン、FL松本健留がムードを変えた。
大学時代のケガから見事に復帰したタックラーは、失トライ直後、自陣脱出を狙った相手10番のキックをチャージ。敵陣ラインアウトのチャンスを呼び込み、前半最後のピンチではチームを救うジャッカルを披露した。
また注目だったスクラム対決では、自慢のフロントロー(FW第1列)がパワーを見せつけた。
アークスは前半26分にも守備で反則(オフサイド)があり、またも相手のペナルティゴール成功で3点を失うが、前半27分には相手を貫くビッグスクラム!!
日大出身のPR庵奥、その後輩であるHO藤村、そしてPR竹内柊平を最前列に据えたスクラムで、この日2度目の強制ペナルティを奪取。
攻勢を強めたアークスは前半32分にPGを決め、ビハインドを10点(3-13)に縮めて後半へ向かった。
後半に風上となったアークスは、いきなり自慢の攻撃力でトライを奪う。
キックオフからボールを確保すると迫力のある波状攻撃。さらに大阪産業大学出身で来日13年目になるCTB(センター)トゥクフカトネが、ハンドオフを交えて敵陣奥へ。
SO(スタンドオフ)オテレ・ブラックの突破&オフロードパスでLO(ロック)中島進護が突進すると、順目への展開からFB(フルバック)イズラエル・フォラウが相手を弾き飛ばしてインゴールへ!!
パワーと技術が散りばめられた「スペースにボールを運ぶラグビー」で5点奪取。コンバージョン成功で2点を加え、3点差(10-13)に迫った。
後半11分にはクラブキャプテンのFL金正奎、キャプテンのシェーン・ゲイツが右のウイングに入って攻勢を強めた。勝負所ではLO中島進護がジャッカルで攻撃権を奪うなど、キャプテン経験者が見せ場を作るが静岡ブルーレヴズのLO大戸裕矢キャプテンが試合後「ディフェンスの出来はポジティブに捉えている」と語ったように、ブルーレヴズは堅陣を敷いてトライを許さなかった。
しかしアークスにはスクラムがある。
後半13分から1番に入ったPR齊藤剣を交えたスクラムで、相手3番が3回連続でペナルティ!!ここで反則の繰り返しにより相手3番がシンビンに。
ここで一度は7点が入るペナルティトライが宣告されたが、スクラムのボール投入前だったとして、「その反則がなければトライ」という場合に適用されるペナルティトライは無効に。
その後の得点チャンスで反則があり、自陣に後退。アークスは得点機を逃してしまった。
後半27分にはPR竹内が強烈なキャリーで前進し、敵陣22mに侵入するが、課題であるラインアウトでミスが起こって再び後退。同30分にはCTB鹿尾貫太選手にトライを許し、ビハインドは10点(10-20)に。
アークスは残り3分の状況で、CTBトゥクフカトネが不当なプレーでシンビンとなる窮地に。
しかしアークスは諦めない。後半37分投入のチームマン、SH西橋が得意の速攻!!ここはノックオンでチャンスを逸するが、果敢な攻防で勝負をかける。
ここから逆襲を受けたアークス。相手SOサム・グリーン選手の突破からオフロードパスを次々に繋がれ、ダメ押しのトライを許す。
しかしWTBヘンリー・ブラッキン、FBフォラウが最後の最後まで相手を追いかけた。後半40分にトライを許し、フルタイム。最終スコアは10-27だった。
試合終了後、アークスは自陣で堅い円陣を組んだ。
「(円陣では)一試合を通してペナルティが多かったことなどを話しました」(PR庵奥)
次戦は3月20日(日)に対戦するリーグ首位の東京サントリーサンゴリアス。昨シーズン、東京・駒沢で94失点を浴びた相手だ。SH湯本睦が第5節の試合後にこう語っていた。
「昨シーズンに東京サンゴリアスさんに94点取られたことが心に残っていて(トップリーグ2021第7節/31-94)、チーム一丸になって、点数関係なく80分ゲームを戦い抜くことを課題にしてきました」
今季の特徴である粘り強さは、あの94失点によって培われてきた。諦めない。戦い抜く――。その進化と真価を見せる刻がやってきた。