聖地を彩ったアークスブルー。
ホスト初試合はロースコア熱戦も初黒星。
選手は再戦に意欲
ついに開幕した「NTTリーグワン2022」。
最高峰ディビジョン1に所属し、開幕戦を劇的勝利で飾ったNTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安。
連勝の懸かった第2節は、記念すべき初のホスト試合。アークスは1月15日(土)、秩父宮ラグビー場に、クボタスピアーズ船橋・東京ベイを迎えた。
初のホスト開催を記念し、入場ゲートでは来場者全員にチーム特製「青はっぴ」をプレゼント。さっそく羽織る観客も多く、聖地のスタンドにはチームカラーの「青」が目立った。
もちろん観客席には「千葉ダービー」の好敵手、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのチームカラーである「オレンジ」も。
大型の強力FWが大きな武器のひとつであるクボタスピアーズ船橋・東京ベイは、開幕戦がコロナ禍で中止となり、この日が実質的な初戦。互いに負けられないダービーマッチに臨んだ。
試合開始直前、ピッチにはアークスのビッグ・フラッグ。そして大型ビジョンを使ったメンバー発表は、和太鼓の生演奏が付いた演出だ。
高揚感を高める演出と共に、まず開幕戦から3人の変更があったスタメン15人が発表された。
1人目は中島進護に代わり帝京大卒のLO(ロック)金嶺志。2人目は金曜日に急遽スタメン入りが発表され、公式戦初出場・初先発となったルーキーのHO(フッカー)藤村琉士。3人目は、同じく急遽リザーブから繰り上がった公式戦初出場・初先発のCTB(センター)本郷泰司だ。
リザーブには今季初登録の3人。三宮累と、昨年30日の練習試合で負傷交代していた目崎啓志、そしてビックヒッターである小泉将が出番を待つ。
先制点の起点は、ルーキーHO藤村を2番に据えたスクラム。
互いの力量をはかる重要な「ファースト・スクラム」で強制ペナルティ。SO(スタンドオフ)オテレ・ブラックがペナルティゴールを決めて3点を先制した。
HO藤村は序盤から大型FWを一発で止める好タックルを連発。ルーキーらしからぬ存在感を発揮し、指揮官も「素晴らしいパフォーマンス」(ロブ・ペニー監督)と評価した。
アークスFWは相手の強力ラインアウトモールも防ぐなど一歩も引かず。序盤はキックゲームでも優勢で、No.8(ナンバーエイト)リアム・ギルは定評通りのジャッカルを披露。ダービーマッチにふさわしい好勝負を繰り広げる。
先制トライはクボタスピアーズ船橋・東京ベイ。
3-3で迎えた前半18分、ドライビングモールからの縦突進でスコア。ゴール成功で7点ビハインド(3-10)となった。
アークスは敵陣チャンスでのミスに泣くが、前半20分には無人エリアに蹴り返されたキックに、CTBシェーン・ゲイツ主将、初出場のCTB本郷が猛スピードで帰って失点を防ぐ。
前半36分にはFB(フルバック)イズラエル・フォラウが右隅で突破して敵陣へ。No.8ギルのパスからPR(プロップ)平井将太郎が突破。ここで相手が反則を犯してPG成功。接戦模様のまま、相手リードの6-10で後半へ向かった。
後半もスタートから一進一退。
SOブラックのPG成功(4分)で幸先良く3点追加。1点差(9-10)に迫るが、クボタスピアーズ船橋・東京ベイもPG加点で、ふたたびリードを4点(9-13)に。
あと一本のパスがつながれば、あと少し攻撃回数を重ねれば――。この日はそんな惜しいシーンがあった。
「アタックではフェーズを重ねれば確実にゲインラインを切れていたので、自分たちの展開ラグビーが通用していたところは良かったです。しかし、継続できず、ノックオンなどによるミスで終わることが多かったので、そこが課題です」(CTB本郷)
後半10分にはラインアウトのサインプレーからNo.8ギルが突破。しかし得点は生まれず、その後はラインアウトの反則にも苦しみ、チャンスを得点に変えられなかった。
トライラインまであと一歩、というHO藤村の突進もあった。敵陣22mに入り、WTB(ウィング)羽野の突破もあった。しかしハンドリングエラーなどで思うように得点を上積みできなかった。
一方のクボタスピアーズ船橋・東京ベイは、アークスが反則を犯すと無理をしてトライを狙わず、着実に加点。勝利に徹した戦略で後半10、28分、そして終了間際の38分に各3点を追加した。
しかしアークスは随所で粘り強い防御、華麗なアタックを披露した。多くのパスをしたアークスだがハンドリングエラーは4回(相手は5回)という引き締まった内容。ペニー監督も悔しさを滲ませつつ「イーブンな拮抗した試合でした」と語った。
後半29分、相手SO岸岡智樹選手の独走に全速力で追いつき、ジャッカルまで決めた闘将、CTBゲイツ主将が、試合後に語った。
「アークスのスタイルを見せられる場面もありました。チャンスで決めきれない場面もありましたが、チームとしては良い方向へ成長していると思うので、そこについては満足しています」
最終スコアは9-19。両軍合わせて1トライのロースコアの熱戦だった。
試合後に整列したアークスの姿は、敗戦はしたが美しき敗者だった。
「気をつけ、礼!」
かけ声でお辞儀をした選手たちに、温かい拍手が降り注いだ。同じカンファレンスAに所属するクボタスピアーズ船橋・東京ベイとの「千葉ダービー(東京ベイダービー)」は今季、もう一度やってくる。
「もう一度クボタスピアーズ船橋・東京ベイさんと対戦する機会があるので、前を向いてチーム一丸となって頑張っていきたいと思います」(SH湯本睦)
再戦は5月1日(第15節)。選手たちは早くも闘志を燃やしている。