これぞダービーマッチ!!
最高強度の肉弾戦と美しきノーサイド。
伝統の一戦「NTTダービー」
この一戦に懸ける思いは強かった。
「選手もスタッフも、この試合に懸ける想いは違いました」(WTB/ウイング 羽野一志)
「激しいフィジカル・バトルでした。NTTダービーということもあって、すごく緊張感がありました」(FL/フランカーマッケンジー アレキサンダー)
入部8年目のWTB羽野はもちろん、今季加入した日米ハーフのFLアレキサンダーにも伝統の重みは伝わっていた。
12月18日(土)、NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安と、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪の一戦、「NTTダービー」が今年も開催された。
アークスはプレシーズンマッチ5連勝と勢いに乗っており、2022年1月8日のチーム開幕戦(コベルコ神戸スティーラーズ戦)へ向けて、好敵手を迎えてさらに自信を深めたいところだった。
毎年のようにプレシーズンで対決してきた両軍だが、昨年はNTTドコモレッドハリケーンズ大阪が17-5で勝利。アークスにとっては昨年の雪辱戦となった。
アークスは先週の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦からスタメンを7人変更(フォワード5人、バックス2人)。
先発に入ったフォワードは、帝京大出身のPR(プロップ)平井将太郎、今季初先発となったHO(フッカー)三浦嶺、NZ出身のLO(ロック)ジミー・トゥポウ。
そして両FLは今季好調の目崎啓志、チームの精神的支柱である金正奎クラブキャプテンが先発となった。
バックスでは高速展開の名手であるSH(スクラムハーフ)湯本睦、昨季はチーム最多の9トライを記録したWTB石井魁がスタメンに入った。
寒波到来により陽向にいても肌寒い、しかし空はすっきりとした冬晴れのコンディションのなか、伝統のダービーマッチがキックオフを迎えた。
※NTTドコモレッドハリケーンズ大阪戦のメンバーはこちら!!
「前半は風下でやりにくい状況でした」と後半出場のWTB羽野が語った通り、前半のアークスは我慢の時間が続いた。
まずはNTTドコモレッドハリケーンズ大阪が先制の一撃。
アークスのノックオンからスクラムでPK(ペナルティキック)を奪うと、強力なラインアウトモールから前半4分に先制トライ。
しかし5点を追いかけるアークスもすぐに反撃。
ラックでFL金正奎クラブキャプテンが起点となってターンオーバー(攻守交代)。その直後、今季加入のCTB(センター)トゥクフカトネが、ラック脇から防御線を突破!!
来日12年目の元トンガ高校、U20代表が前半8分にトライを決め、NZ出身のSO(スタンドオフ)オテレ・ブラックのコンバージョンキックが成功。
攻守交代からの速攻でトライを取り切り、風下ながら貴重な7点を奪取。2点リード(7-5)の展開とした。
両軍のコリジョン(衝突)は激しかった。
一触即発の空気のなか、容赦ない激突が繰り返される。ラックでボールを奪うジャッカルが決まれば、チーム全員が雄叫びを上げた。
前半15分過ぎからはスクラム戦。ここでNTTドコモレッドハリケーンズ大阪がPKを奪取し、ふたたびラインアウトモールから2トライ目。
アークスはふたたび5点のビハインド(7-12)を背負ったが、CTBシェーン・ゲイツ新主将のジャッカルなどで失点を防いだ。
「前半に風下でしっかり耐えることができ、後半になってやりたかったラグビーができました。シナリオ通りに行ったと思います」(WTB羽野)
前半をロースコアで折り返せれば、風上の後半で巻き返せる――。逆襲を期し、アークスは7-12で後半へ向かった。
風上に立った後半で、まずアークスが高い技術から逆転トライを奪う。
アークスは安定感のあるスクラムから後半3分、LOジミー・トゥポウがロングゲイン。連続攻撃から、SOブラックの巧みなショートキックをCTBゲイツ主将が再獲得。頼れる新主将がインゴールへ駆け込み、同点トライ。ゴール成功で14-12と逆転に成功した。
しかしダービーマッチは簡単には終わらない。
後半5分にはNTTドコモレッドハリケーンズ大阪が、武器であるラインアウトモールから再逆転(14-17)。
逆転に次ぐ逆転――。手に汗握るクロスゲームが展開されていく。
「ハーフタイムで切り替えてピッチに出たあと、選手それぞれがスイッチを変えました。リザーブ選手も良い変化をもたらしてくれました」
試合後にそう語ったのは米国人の父、日本人の母を持つFLアレキサンダーだ。
アークスは後半20分、相手の武器であるラインアウトモールを防いで反則誘発。スクラムでも優位に立つなど、途中出場組がチームにエナジーを与えた。
FL栗原大介が好タックルを見せれば、LO金嶺志は相手に絡みついてターンオーバーを演出。PR上田竜太郎、三宮累が加わったスクラムでは強制PKを奪った。
アークスの3度目の逆転は後半27分だった。
スクラム戦で優位に立ったアークスは効率的に敵陣へ。波状攻撃からSOブラックを起点としたロングパスがWTB石井魁へ通り、21-17と再々逆転に成功。
そして後半38分には入部10年目、11年目のベテランが躍動。
相手のラインアウトが乱れて敵陣チャンスを得たアークスは、途中出場で11年目のSH鶴田諒が、無人スペースへ技アリのキック!!
これを追っていた慶大卒のタックラー、入部10年目のFL栗原がキックをインゴールで再獲得。歓声のなかでチーム4トライ目を決め、ライバルから11点リード(28-17)を奪った。
最終盤のピンチもこの日80分間出場したNo.8(ナンバーエイト)リアム・ギルが、十八番のジャッカル。猛攻をしのぎ切り、ボールを蹴り出して試合終了。28-17で激闘に終止符が打たれた。
試合後には激しいバトルを繰り広げていたNo.8ギルと、同ポジションの相手No.8(ナエアタルイ選手)が握手を交わし、お互いに健闘を称え合う姿が。
相手10番で先発した元アークスのSOエルトン・ヤンチースも和やかに談笑。あちこちで所属チームを越えて語らう、美しいノーサイドの光景が広がっていた。
これでアークスは「約1か月半負けなし」となる6連勝。残るプレシーズンマッチは、いよいよ年末の2試合のみだ。
次戦はクリスマス(12月25日)。同じディビジョン1に所属する静岡ブルーレヴスと、静岡エコパスタジアムで激突する。