後半完封の好ゲーム。
充実の選手層でプレシーズン2勝目!!
昨季の「5試合」から「10試合」に倍増した今季のプレシーズンマッチ。
戦力の底上げ、アピール機会増などを目的として10月下旬に始まった“プレシーズンマッチ十番勝負”は、11月6日(土)に3試合目を迎えた。
リーグワン1部所属のNTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安が、三重県鈴鹿市に遠征し、地元の三重ホンダヒートとの練習試合を行った。
三重県をホストエリアとする三重ホンダヒートはリーグワンで2部に所属。強みのバックスだけでなく、スクラムを武器とするフォワードも強力だ。
舞台は三重ホンダヒートの拠点であるHondaアクティブランド。至近に鈴鹿サーキットがあり、青空にF1カーの走行音が響いていた。
アークスは主力定着を狙うメンバーが先発に並び、先週から先発15人中11人が変わった。
特にFW陣は先週から先発8人全員を変更。ここ2戦でリザーブだったメンバーがスタメンを任された。
PR(プロップ)庵奥翔太、HO(フッカー)山口達也、PR竹内柊平。LO(ロック)コンビは金嶺志とサム・ジェフリーズ。FW第3列はFL(フランカー)栗原大介、斉田倫輝、No.8(ナンバーエイト)ブロディ・マカスケル。
先発バックスは3人変更で、SH(スクラムハーフ)光井勇人、そしてプレシーズンマッチ初登場のCTB(センター)ヘンリーブラッキンとFB(フルバック)シルヴィアン・マフーザだ。
先週に続いての先発するのは4名。SO(スタンドオフ)前田土芽、CTB本郷泰司、WTB(ウイング)羽野一志と山田章仁だ。また今季最大の20人が登録されたリザーブでは、WTB石井魁も練習試合で初登場となった。
※三重ホンダヒート戦のメンバーはこちら!!
三重ホンダヒートの先蹴で始まった試合で、まずアークスがスクラムで魅せた。
力量をはかるファースト・スクラムで、アークスはいきなりプレッシャーをかけて相手のペナルティを誘発。エリアを前進させる。
しかしこの日はラインアウトが乱れた。先発FL斉田が「ラインアウトのミスからの失点や、ボールをキープできない場面がありました」と振り返ったように、相手の好守もあり得点機を効率的に活かせない。
前半17分、スコアが動いた。
アークスは敵陣のラインアウトでしっかりボールを確保すると、FW8人が固いモールを組んで相手ゴールへ迫る。
ここでゲーム主将を任されたCTB本郷が、左から右に回り込む移動攻撃。右隅でオフロードパスを受けたWTB羽野が飛び込んで、先制トライ。
安定したラインアウトから強いモールが生まれ、最後はバックスが移動攻撃で仕留めた。
5点を先取したアークス。勢いにのった次の動きはさらに3分後だった。
HO山口やPR竹内をボールキャリアーとして複数人で押し込んでいくアークスは、さらに外に大きく展開――と見せかけ、守備網の切れ目を見つけたSO前田がラインブレイク。
追いすがるディフェンダーも振り切り、今春に日本代表候補に選出されたSO前田が独走トライ。みずからゴールキックも決めて12-0。長年センターとして磨いてきた前田のランスキルが光った。
本拠地では負けられない三重ホンダヒートも反撃に転じる。
三重ホンダヒートは外側から閉じ込めるようなラインディフェンスでアークスの展開力を封じにかかった。アークスは相手の好守備、自陣に押し込まれた後の反則もあって主導権を掌握できない。
「相手が前に出るディフェンスをしてくることは分かっていました。前半は、プレーのチョイスは良かったのですが、ペナルティやボールロストがあって上手く波に乗れなかった印象です」(松尾将太郎)
反転攻勢を受けるアークスだが、先発PR庵奥、PR竹内、LO金、FL栗原らに加えてSH光井らバックスも積極的に体を当てた。
しかし三重ホンダヒートは前半28分に連続攻撃から、そして同41分には自陣ゴール前のラックで奪われたボールを持ち込んで連続トライ。前半のアークスは2点ビハインド(12-14)で折り返すことになった。
後半は最初から12人リザーブ選手を投入。FL栗原、WTB山田、途中出場していたHOアナル・ランギ以外が入れ替えとなった。
すると後半メンバーがいきなり見せ場を作る。
まず「本格的には初めて」というフルバックに入った松尾将太郎が、相手ゴール前に迫る最高のタッチキック。
目の前に転がり込んだ得点チャンスで、アークスは堅固なラインアウトモールを組み上げる。生み出した推進力でFWが逆転トライ!!快調な出だしとなった。
3点リード(17-14)を奪ったアークスは快調に飛ばす。
途中出場のFL金正奎が鮮やかな突破を見せれば、モールは守備でも固かった。スクラムはメンバーが入れ替わっても前半同様に力を発揮した。
と、後半出場のSH湯本睦が波状攻撃から空白地帯に効果的なキック。ここでLOジミー・トゥポウ、FL金正奎のチェイスもあり相手を自陣に押し込めると、左隅に侵入したアークスはふたたびモールで圧力をかける。
モールでは仕留めきれなかったものの、こちらも途中出場のCTBトゥクフカトネが移動攻撃。今季加入の突貫センターがゴール前の接点勝負を制して左中間にトライ。22-12とリードを拡げた。
アークスは途中出場する選手が次々に好プレーを見せる。選手層に重厚感があった。
途中出場のWTB鶴田諒は、ビッグゲインをした相手を止めてトライを防いだ。PR上田竜太郎は自陣ゴール前のラックで相手をめくりあげ、仲間と共に見事なターンオーバーを演出。No.8坂和樹は活動的なファイターとして攻防両面で活躍した。
後半25分には後半3トライ目が生まれた。
タックル回数も多い途中出場のCTB石橋拓也が、敵陣右で鶴田のキックを再獲得。2人で巧みなパス交換をして、最後はCTB石橋が右中間にグラウンディング。スキル豊富な2人による華麗なトライだった。
充実のアークスは、相手の猛攻をゴール前で止め続け、最後は松尾が値千金のジャッカル(倒れた相手からボールを奪うプレー)。「目の前で良いタックルしてくれて、入るチャンスがありました」(松尾将太郎)。
自陣ゴール前で攻撃権を奪ったアークスがボールを蹴り出し、ノーサイド。後半だけのスコアを見れば15-0の完封だった。
次戦は11月13日(土)の清水建設江東ブルーシャークス戦だ。
ラインアウトなど課題は残しつつも、個々人が強みを発揮し、厚い選手層もあって勝ち切った。試合後にチームで組んだ大きな円陣には充実した表情が並んでいた。