昨季リーグ王者に33名でチャレンジ。
プレシーズン初黒星も収穫アリ!
リーグワン開幕までに組まれた練習試合の数は「10」。昨季から倍増した。
その意味について、ロブ・ペニー新監督は10月のインタビューでこう語っていた。
「ここ数年は(コロナ禍などで)若手選手が試合に出場する機会が少なかった事実を踏まえ、たくさんの練習試合を組んでいます。5、6試合くらいは主に若手選手にチャンスを与えたいと思っています。」
機会を待っていたメンバーにとっては貴重な「5、6試合」だ。しかも今回の相手はチャンピオン・マインドを持つ強豪であり、腕試しには絶好の機会となった。
NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安が10月30日(土)、昨季のトップリーグ王者である埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下:埼玉ワイルドナイツ)と、今季2試合目のプレシーズンマッチを行った。
埼玉ワイルドナイツは18年続いたトップリーグで5度の優勝を誇る難敵。2022年1月開幕のリーグワンでは同じ「Aカンファレンス(仮称)」に入っており、避けては通れぬ相手だ。
アークスは、花園近鉄ライナーズに勝利したプレシーズン開幕戦に続き、埼玉ワイルドナイツ戦では総勢33名(先発15名+リザーブ18名)を登場させた。
先発メンバーは先週から15人中7人の変更。
フォワードは3人変更となり、PR(プロップ)上田竜太郎、LO(ロック)中島進護、LOジミー・トゥポウがスタメン入り。
FW(フォワード)第3列は先週から変わらず元選手会長のFL(フランカー)目崎啓志、常にハイパフォーマンスのFL金正奎、2年目のNo.8(ナンバーエイト)坂和樹となった。
先発バックスは4人を変更。
スクラムハーフが湯本睦となり、センターに新加入のトゥクフカトネ。両ウイングは、7人制代表としてセブンズ日本代表に参加した羽野一志と、古巣との初対決となった山田章仁が並んだ。
CTB(センター)本郷泰司とFB(フルバック)安田卓平が2戦連続の先発に。リザーブでは、7人制韓国代表のWTB(ウイング)張容興がプレシーズンマッチに初登場し、途中出場から快晴のピッチを駆けた。
現役選手でもある滑川剛人レフリー(トヨタヴェルブリッツ所属)の笛でキックオフされ、アークスは序盤からディフェンスに回った。スタートから攻勢をかけたかったが、ブレイクダウン(ボール争奪局面)での反則、自陣脱出などに苦しんだ。
「試合の入りでシャイニングアークスがギアを上げられたら、もっと良い試合ができたのかなと思います。」
そう語ったのは、埼玉ワイルドナイツから移籍して3年目のWTB山田だ。
守勢においても力は見せ、両ロックの中島、トゥポウ、新人HO(フッカー)藤村琉士らは活動的にタックルを放ち、スクラムではペナルティも奪取してみせた。
しかし前半9分に反則から自陣深くに後退し、ラインアウトモールから先制トライを許す。6分後にも相手得意の堅守速攻から自陣に戻り、連続トライを奪われ14点のビハインドを背負った。
14点を追いかける展開となったが、ここでフォワードが決定力を見せる。
相手の反則から敵陣右に進んだアークス。ラインアウトモールこそ止められたが、ボールをキープして1センチを争うようなラックサイドの攻防へ。
ここで前半20分に密集をかいくぐってFL金正奎がトライラインの先にグラウンディング!!ゴール失敗も5点を返した。
ところが前半27分、アークスは埼玉ワイルドナイツのモメンタム(勢い)を止められず、相手フォワードの突進によるトライを許す。
ふたたび14点を追う展開に戻されるが、タフネスを証明する選手も多かった。LO中島は2連続のタックルを決めた後にジャッカル(倒れた相手のボールを奪うプレー)を決め、防戦に回るチームを救った。
さらに前半終了前、アークスは相手のハイテンポの攻撃を止め続けると、埼玉ワイルドナイツが反則。その直後、自陣からWTB山田がクイックスタート。
「前が空いていてチャンスでした。前半の終わり際はチャンスタイムという感覚は昔からあります。集中力を切らさず、チャンスで仕掛けられたことは良かったです。」(WTB山田)
意表を突いてボールを運んだWTB山田が、フォローしていた2年目のCTB本郷の突破、SH(スクラムハーフ)湯本の独走トライを演出。SO(スタンドオフ)前田土芽のゴールも成功し、10点差(12-22)と迫って後半へ向かった。
後半を迎えたアークスは先発15人中13人を変更。
前半メンバーが見せた好守を引き継ぐように、後半頭から投入のメンバーも守備でアピールした。
LOサム・ジェフリーズ、FL栗原大介、No.8ブロディ・マカスケル、CTB石橋拓也らが強みのディフェンスで貢献。スコアは約15分間動かなかった。
しかし後半15分にビッグゲインを許し、一度は追いすがるSO松尾将太郎のタックルでトライを防ぐものの、波状攻撃を止められず失トライ。同22分にもトライを許してビハインドは22点(12-34)に広がった。
悪いムードを断ち切ったのは、開幕戦でも優位だったスクラムだ。
後半27分には相手フォワードを押しきる破壊的なスクラム。強制的にPKを奪った。
「自分たちが強みにしているスクラムでは、相手を完全にドミネートできたことは大きな収穫です。」(PR(プロップ)竹内柊平)
後半30分過ぎには豪州出身の21歳、LOカラム・マクドナルドがビッグタックル。ここから攻守交代から勝ち取り、敵陣に攻め入った。
「私の強みはディフェンスで、タックルやコンタクトの部分で、今日はその部分は見せることができたと思います。」(LOマクドナルド)
敵陣ゴール前に陣取ったアークスは、相手の度重なる反則でスクラムを2度選択。活路を見出したスクラムで勝負を懸け、激しいヒットから期待通りの力強いプッシュ。
相手フォワードをじりじりと後退させ、後半39分、No.8マカスケルがトライ!!開幕戦に続いて2戦連続のスクラムトライを奪って17-34とした。
ここから後半ロスタイムも使ってスコアを縮めたかったアークス。しかし逆にこの日多かったブレイクダウンでの反則から、ラインアウトモールで6トライ目を献上。
埼玉ワイルドナイツが39-19で勝利を収め、アークスはプレシーズンマッチ初黒星となった。
次戦は三重ホンダヒートが相手だ。11月6日(土)、「三重交通グループ スポーツの杜 鈴鹿サッカー・ラグビー場」(三重県)が会場となる。
個々のディフェンス、そしてスクラムでは手応えを掴んだ。チームとしてチャレンジを続け、敗戦も糧にしながら、来年1月のリーグワン開幕へ向けて着実に成長を続けたい。