インタビュー / INTERVIEWS

大久保直弥 Naoya Okubo

FWコーチ

選手としては2度のワールドカップ出場を経験し、コーチ・監督としてもチャンピオンチームを率いてきました。その「勝者のメンタリティー」のようなものをいかにチームに浸透させてくれるのか、大きな期待を受けて、シャイニングアークスにFWコーチとして加入しました。春合宿中に行ったインタビューをお届けします。

大久保直弥FWコーチ写真

ラグビーはタフで無ければ戦えない。

――入団の経緯を?

サントリーで5年コーチ・監督とやってきましたので、一区切りつけたいという思いがありました。またその5年間で若い選手の成長を身近で見てきて、コーチという仕事に対してやりがいを感じていました。ですから、またトップリーグのチームでコーチを務めることが出来るならば自分にとって一番いい選択だと思っていました。そこにNTTコムからコーチ就任のお話しをいただき、本当にうれしかったです。

――シャイニングアークスコーチ就任の決め手は何かありましたか?

2月末まで日本選手権を戦っていましたので、それからコーチとして必要と考えてくれて実際に動いてくれるチームはなかなか無いわけで、その情熱を誇りに感じましたし応えたいという気持ちでした。

――監督からFWコーチに肩書きが変わりましたが。

そこにこだわりは全くありませんでした。もともとFWでしたし、FWの雰囲気が水にあっていると思いますので。

――今度は、ロブ・ペニーHCの元で働くことになりました。

世界的な経験のあるヘッドコーチと一緒に仕事ができるということは、ラッキーだと思っています。僕にとってもそれは財産になると思いますし、少しでも学べるところは自分の今後に生かしていきたいと思っています。

――ロブ・ペニーHCも現役時代はバックローでしたね。

そうですね。いかにタフに戦うか、ラグビーはタフでなければ勝てないという感覚は、似たようなものを持っていると思います。

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――4月からチームに合流してみた感触は?

全員揃うのは5月後半からですけど、今一緒にやっている若い選手を見ていると、勝つ意欲もあるし、才能のある選手も多いので非常に楽しみです。ただ才能だけでどうにかなる世界では無いので、苦しい時にタフな判断をできる選手を何人育てられるかが僕の責任だと思います。

――大久保コーチにとっての、この合宿の課題は?

この合宿では、フィジカルの向上が主な課題となっています。フィジカルが他のトップリーグチームの選手に比べて圧倒的に劣るので、ウェイトトレーニングをやって筋肉量を増やすこと、そしてその筋肉をどう活かすか、――例えばスクラムでいえば、一人ひとりの体の使い方を丁寧にやっているところです。

――あとこだわるのはタックルですか?

ラグビーはタックルが出来なければ試合になりませんから。ただ気持ちだけでできるものではありませんので、正しいテクニックを繰り返し練習していくことでしか身に付きません。技術を習得する近道は無いですね。

――コーチとしての役割分担は?

そこは、ロブが考えているでしょう。今はFWコーチという立場ですので、ボスであるロブの言うことを最大限リスペクトして、自分がそれに対して何ができるか。それと日本という国のチームで、自分が日本人であるからこそのサポートや意見はできると思います。自分自身で監督も経験して、監督が孤独な仕事だということは十分承知していますので、なんとかロブの助けになれればなと思っています。

――少し話を変えて、大久保コーチの個人的な経歴をお聞きします。高校時代まではバレーボール選手でしたね。

それ以上やれるほどバレーのセンスが無かったということですね。(苦笑)

――ラグビーというコンタクトのある競技への恐怖は無かったですか?

不思議と恐怖は無かったですね。ただそこまでラグビーを知らなかったからでもありますけど。

――現役時代は「恐れを知らないタックラー」として名を馳せました。

タックルに行く怖さよりも、抜かれた時にチームに対して責任を果せなかった怖さの方が大きかったです。そういう意味で責任感はあったのでしょうね。

――ニュージーランドへ渡ってプレーもしましたが。

ワールドカップを2回経験してプロとして自立していましたので、自分の将来を考えた時に一度海外で挑戦したいという気持ちがありました。まあなかなかタフな経験でした。

――それからサントリーに戻って選手を引退されてからコーチになるまで一年間のブランクがありましたが。

何かしらラグビーに貢献できればとは思っていましたが、エディさん(エディ・ジョーンズ氏。現日本代表ヘッドコーチ)がサントリーの監督になって、チームが生まれ変わらなければならない時期にたまたま呼んでもらえて、決して強くないチームがチャンピオンに上り詰めるまで体験できたことはコーチとして大きな財産だと思います。

選手の成長がコーチとしての一番の喜び。

大久保直弥FWコーチ写真

――昨シーズンは、サントリーから見てこのチームにどんな印象を持っていましたか?

ボールを積極的に動かそうという意図はもちろん感じましたが、ただスクラムでもラインアウトでもブレイクダウンでも、ボールをどこで獲るかという部分まで整備が進んでいなかったのかなということは感じました。ですから、ボールを動かすという意図の元に、ボールをどこで獲るかという部分を成長させれば、チームが進化できると思います。今の世界的な流れで言えば、スクラムとラインアウトで勝つことがゲームに勝つことにつながるぐらい、セットピースが重要になっていますので、そこを強化しないチームは勝てないわけです。日本のトップリーグもディフェンス、セットピース主体のチームが幅を利かせていますので、そこで勝って行くためには、いかにボールを獲るかという分部が一番大事な勝つ要素だと思います。

――セットプレーはどう見えましたか?

今積極的に筋肉量を増やすことに取り組んでいますが、スクラムやラインアウトは8人で戦うものですので、8人が同じ絵を見ているということが大事なわけです。昨シーズンは、外から見ているとそこまで8人がひとつになれていなかったという印象です。

――このチームには、スクラム専門コーチはいませんが。

フロントローの経験者でなければわからない専門性はあるとは思いますが、ラグビーは複雑にしようと思えばなんでも複雑に出来るので、コーチの仕事はいかに簡単にするかだと思っています。スクラムには何が大事か、何をしなければいけないのか、ということに関しては僕自身の中で明確なものがありますので、それをほんとにきつい時にどうやったらできるか、を伝えていきたいと思います。

――スクラムで言えば、斉藤展士選手が一番こだわりを持っていると思いますが、彼と話しましたか?

面接した時に、去年に関しては一歩引いて若い選手に遠慮した部分があったと話していましたので、それでは困ると伝えました。やっぱりスクラムバカ、ラインアウトバカがFWには大事な要素なので、そのこだわりを若い選手にもっと伝えていって欲しいと伝えました。

――そして、勝つためには何が必要だとお考えですか。

チャンピオンになったことの無いチームがどうやって勝つかを考えれば、少なくともタフなトレーニングを積み上げていかないとそこにはたどり着けないと思います。楽して獲れるものではありませんから。口で日本一になりたいと言うのは簡単ですけど、日本一になるためには、日本一の努力をしない限りそこにたどり着けないということは、伝えていけると思っています。チームに入ってまだ3週間ですが、激しさとか情熱が足りない印象はありますね。うまいへたよりもそういったものを出せる選手が、今このチームには必要だと感じています。仲間からの信頼もそういったところから生まれるのではないかと思っています。才能だけでは戦えません。

――リーグ後半戦に更にチーム力を上げていくためには?

開幕にはどこのチームもピークを合わせて来るものですけど、ラグビーは15人では勝てないという部分があります。ゲームメンバーとノンメンバーが常に近いところで切磋琢磨していないと、誰かが怪我した時に極端にチーム力が下がってしまいます。それは避けなければいけません。ノンメンバーがゲームメンバーに常にプレッシャーをかけているチームが勝ち切れるチームだと思います。ラグビーには常に怪我のリスクがありますから、それは同時に若手にとってのチャンスだと思いますし、次のシーズンにも財産になっていきますので。

――どのようなチームに育てていきたいですか?

勝つか負けるかの世界ですので常に勝ちを求められますし大事なのですが、チームの理念を失って勝っても意味が無いと思っています。勇気を持って自分たちのスタイルを貫き通すことです。自分たちのスタイルにこだわりを持った強いチーム文化を作っていきたいと思っています。

大久保直弥FWコーチ写真

――コーチという仕事の、喜びとやりがいについて教えてください。

それはやっぱり、選手が成長したなと感じた時が一番うれしいです。そして僕の仕事は、今いる選手が1%でも2%でも成長していくことを手助けすることです。それを実感できた時は、勝った時と同じぐらいうれしいです。ゲームが終わって次のゲーム開始までがコーチとして一番忙しくなる時間ですが、シーズンが始まれば毎週毎週試合ですので、短い時間の中で何を選手たちに伝えられるかを考え抜かなければなりません。考えに考えてシンプルに落とし込まなければなりません。それがコーチにとって一番大事なことだと思います。ストレスの高い仕事ではありますが、それ以上の喜びがあります。また終わりがありませんので常に勉強し続けなければならないことは、逆にありがたい仕事だと思っています。