山本監督インタビュー「新シーズンへ向けて、その手応え」
NTTコミュニケーションズ・ラグビー部が発足して2ヶ月近く。9月9日からの公式戦参戦を迎えるにあたって、万全の体制を整えるためにチームは8月15~22日の期間で北海道合宿を行った。新チームの目標は、言うまでもなくトップリーグへの昇格である。「新チームになったことで選手たちの目の色が変わってきた」と語る山本和林監督に、現在のチームの課題、公式戦での見所などについて話をうかがった。
飛躍に向けて、今まさに機は熟した。
──7月1日にNTTコミュニケーションズ ラグビー部が発足して、2ヶ月近く経過しました。チームの雰囲気はどうですか?
山本監督:とてもいい雰囲気で、選手全員が向上心を持って練習に取り組めていると思います。昨シーズンまでは、今思えばサークルチームという甘えがあったかもしれませんが、NTTコミュニケーションズ ラグビー部はシンボルチームとして活動するわけですので、会社を背負うことになります。その意味でも、選手たちがこれまで以上の責任感と、そしていい意味でのプレッシャーを感じることができる環境になっていると実感しています。
──新チームの基本スローガンが「PADS(パドス)」、そして今年度の年間スローガンが「All Out」というものですが、監督はこの言葉をどのように解釈されていますか?
山本監督:「PADS」は、「『P』はPurpose(目的・決意)、『A』はAchievement(達成)・Aggressive(積極性)、『D』はDefense(防御)、『S』はSupport(支援)・Spirit(精神・魂)を意味している」とうたっています。そこに、僕なりの解釈を加えれば、選手力、あるいはチーム力アップのために、欠かせない要素そのものであると思っています。選手ひとりひとりが自分の責任をしっかり果たすことでチームに良い影響を与え、同時にその良い影響が個々人の選手に跳ね返ってくる――、というのがラグビーチームとして望ましいあり方です。そのためには、これらがどれひとつとも欠かせないと思います。
また、「All Out」ですが、日本語では「全てを出し尽くす」という意味で、まさしくそれにつきると思います。「力は出し尽くさないとダメだ、限界に挑戦しなければいけない」、そんな覚悟を表してくれているスローガンだと思っています。
──これらのスローガンは選手にも浸透しているようですね。
山本監督:そうですね。選手たちは仕事を終えてから、練習に参加しますので、他のトップイースト11のチームと比べても練習時間は短いと思います。限られた時間の中で100%の力を出し切れるように、早くグラウンドに来られる選手は事前に来てウォーミングアップするようになりました。また、時々コンタクトプレーから掴み合いのケンカ寸前ということもあったりしますが、監督としてはこういうテンションの高さは歓迎しているところです。チーム全体の「エネルギー値」は確実に高まっていると思います。
──現在のチーム全体の課題は?
山本監督:他チームと比較しても体躯に恵まれているFW(フォワード)が突破し、勝負するのがこのチームの得点パターンです。しかし、それでもFWで接点を支配できる間はうまくゲームになっていたものの、反対にフォワード周辺を押さえられてしまうと、トライを取る手段がほとんどなかった。これは昨シーズンからの課題でした。
そこで、今年はSH(スクラムハーフ)とSO(スタンドオフ)がボールを持ってスペースを作り出し、FW以外のところで突破していくという攻撃パターンも加えていこうと思っています。その意味では、ハーフ団(SHとSO)がどれだけ成長するかが、チームの浮沈の鍵を握っているといえるでしょう。彼らへの要求は、他のポジションに対するそれよりも厳しいものになっています。
また反則もプレーの中断だけでなく失点につながるケースが多いので、故意の反則は絶対にしないように指導しています。
──それでは、ポジション別の課題をお願いします。
山本監督:FW陣は機動力、特に横と後ろの動きに物足りなさを感じていました。そこで春シーズン以降は、練習でも意識が遠のくぐらい限界まで走りまくってもらっています。
反対にBK(バックス)陣は走力には優れているが、アタック時のパススキルがもうひとつであったこと、またディフェンス時にロングパスなどを仕掛けられたときの横への反応の遅さが目立っていました。
夏合宿では、これら各ポジションごとの課題を徹底的に修正してきました。
ヤマ場となる、強豪4チームとの対戦!
──9月9日、清水建設戦を皮切りに、10チームと対戦します。どのチームも油断できないと思いますが、プレーオフ進出、そしてトップリーグ昇格にあたって、絶対に勝ちは譲れないと思っているチームを教えてください。
山本監督:マークしているチームはずばり4つ。サントリーフーズさん、横河電機さん、東京ガスさん、それに昨年までトップリーグに在籍していたセコムさんです。そのなかでも、東京ガスさんには4年続けて勝っていません。チーム順位はこちらが上という年度でも、直接対決では負けてしまっているのです。やはりトップリーグ昇格を目指す上では、東京ガスさんには是が非でも勝ちたいと思っています。
──それでは最後に、開幕戦に向けてのメッセージを。
山本監督:ホームになるNTT青梅橋グランドでは、実はここ4年間公式戦負け知らずです。この不敗神話を追い風にして、スタートダッシュを図りたいと考えております。また、タッチラインから観客席まで5m程しかなく、選手の声やスパイクの音が間近に聞こえる我がホームグラウンドで、パワーとスピードで相手を圧倒する姿をぜひ皆さんにお見せしたい。普段から練習しているグランドですから、どこにパスを出せばどう届くのか感覚的に理解している地の利もあります。その環境で、声援をいただけると本当にありがたく感じますので、ぜひひとりでも多くの方に試合会場に足を運んでいただきたいと願います」