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無視すると罰則もある働き方改革。
違反を防ぐ5つのポイントを紹介

無視すると罰則もある働き方改革。違反を防ぐ5つのポイントを紹介

2019年4月より、国の主導ではじまった働き方改革。労働基準関係法令の改正で、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の時季指定など罰則付きの新たなルールが複数設定されました。「うちは従業員が少ないし」「いままで問題なくやってきた」と、無関係を装うのは禁物です。企業規模を問わず、違法な働き方をさせる企業は厳しい社会の目が向けられます。働き方改革で厳しくなったルールや具体的な罰則の内容、違反することによって企業にどのような不利益が生じるのかについて紹介します。さらに、企業が進めるべき労務管理と就業環境の改善について解説していきます。

目次

働き方改革に違反するとどのような罰則がある?

「一億総活躍社会」を掲げた働き方改革は、長時間労働の改善や非正規・正社員の格差是正が話題なりました。実務の部分では、すでに「1ヵ月45時間・年360時間の時間外労働の上限規制」や、「月60時間を越える時間外労働の法定割増賃金率の引き上げ」が、大企業に対し適用されています。

このような労働時間を考える上で、まず意識しなければならないのは「36協定」です。これは労働基準法36条に基づく労使協定のことになります。労働基準法では、労働時間は原則として1日8時間、1週間で40時間以内と定められており、これを越える時間外労働をさせる場合には、36協定を締結した上で所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。

改正された労働基準法では、この36協定で定める時間外労働時間に罰則付きの上限が設けられています。具体的には月45時間、年360時間が上限として定められ、臨時的な特別の事情がなければこれを越えることはできないとしています。

この時間外労働の上限超過で、36協定で定めた時間数に関わらず「時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間以上となった場合」や「時間外労働と休日労働の合計時間について、2~6ヵ月の平均のいずれかが80時間を越えた場合」には、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

さらに改正労働基準法では、年次有給休暇が10日以上付与される労働者を対象として、年5日の年休を労働者に取得させることが使用者の義務となりました。これに違反した場合、30万円以下の罰金が科されます。

加えて、定時を気にせず深夜まで働くスタイルや、「サービス残業」のような残業代の未払いも罰則の対象となっており、各都道府県の労働局は悪質な違反について企業名を公開する措置を講じています。

法律改正でとくに気を付けたい、押さえておきたいの5つのポイント

とりわけ、「時間外労働が多い企業」「有給休暇が取得できていない企業」「フレックスタイム制を導入している企業」は、これまでの働き方を改めた方がいいかもしれません。なぜなら、これらは働き方改革のなかでも罰則付きの規制に関わる話題であり、正確に理解し、改める必要があるためです。

以下では、働き方改革関連法に伴って改正された労働基準法および労働安全衛生法で注意すべきポイントを解説します。

36協定の労働基準監督署への届け出と時間外労働の上限の規制

まずは時間外労働の問題です。従業員を長い時間働かせることに慣れてしまった事業主や管理者は、法律で決まった時間外労働の上限から目を背けてはなりません。

改正された労働基準法では、前述した36協定を結んだ後でも、年720時間、複数月平均80時間、月の時間外労働100時間未満と、越えてはいけないラインが設定されています。これは、1日当たり4時間程度の残業が限度ということです。違反した企業には、6ヵ月以下の懲役刑または30万円以下の罰金刑が科されます。

なお大企業に対しては2019年4月から、中小企業においても2020年4月から導入されています。

割増賃金の支払い義務

改正前の労働基準法では、1日8時間、1週間で40時間を越える労働時間である時間外労働について、大企業は60時間以下では25%、60時間超は50%の割増賃金を支払うことが規定されています。

一方、中小企業は従来、60時間超であっても割増賃金率は25%とされていました。しかし、2023年4月より労働基準法が改正されたことで、月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金引上げの猶予措置が終了し、中小企業の割増賃金率も25%から50%に引き上げられています。時間外労働の上限規制には建設事業、自動車運転の事業、医師など適用が猶予・除外される事業・業務がありますが、いずれも2024年4月以降には適用されるため注意が必要です。

適用猶予・除外の事業・業務
出典:厚生労働省「働き方改革関連法に関するハンドブック」(2022年2月)

とはいえ、上記の事業・業務を除くすべての事業者は36協定届を所轄労働基準監督署に届け出ていない場合、時間外労働や休日労働は違法となります。まず自社の状況を把握し、届け出ていなければ即座に協定を結んで提出しましょう。

有給休暇取得の義務化

「忙しいから有給休暇消化は後回し」と考えている事業主は、すぐさま有給休暇の時季指定取得義務について学びましょう。有給休暇が年10日以上ある労働者に対して、年5日以上の取得が義務化されました。これには、パートやアルバイトの従業員も対象に含まれます。

企業は年次有給休暇が発生した日から1年以内に、5日間の有給休暇を、時季を指定して与えなければいけません。違反した場合は企業が30万円以下の罰金を支払うことに。労働者1人につき1罪として取り扱われるため、従業員が多い企業は管理を徹底する必要があります。

注意したいのは、パートやアルバイト従業員も対象である点です。たとえば週所定労働日数が4日、年間所定労働日数が169~216日の場合、3年6ヵ月の継続勤務で10日間の年次有給休暇が付与されることになり、年5日の年次有給休暇の確実な取得の対象になります。そのため、パートやアルバイト従業員であっても労働日数や継続勤務年数を把握し、適切に対処しなければなりません。

フレックスタイム制の労働時間の調整が1ヵ月から3ヵ月に延長

フレックスタイム制は、始業時間・就業時間を自分で自由に決められる働き方のことです。働き方改革では、フレックスタイム制の労働時間の調整を行える期間が、1ヵ月から3ヵ月に延長されました。この変更により、企業はより柔軟な従業員の働き方を叶えることができます。例えば繁忙期を含む3ヵ月の期間で、1ヵ月半は多く働き、残りの1ヵ月半は勤務時間を減らす、といった調整が可能です。

ただし、清算期間全体の労働時間が週平均40時間、もしくは1ヵ月の労働時間が週平均50時間のどちらかを越えた場合は、たとえフレックスタイム制であっても時間外労働と見なされ、割増賃金の支払いが発生します。勘違いしやすいポイントであるため、注意して対応しましょう。

清算期間を延長する場合は、労使協定の届出が必要です。違反した企業には、30万円以下の罰則が科せられます。

一部労働者の医師の面接指導の義務化

長時間労働やメンタルヘルス不調などによって健康リスクが高い状況にある労働者を見逃さないために、産業医による面接指導や健康診断などの確実な実施も求められています。具体的には、産業医および産業保健機能の強化が求められているほか、長時間労働者に対する面接指導も必要になります。

注目したいのは、面接指導の対象となる労働者の要件が拡大されている点です。従来は「時間外・休日労働時間が1月あたり100時間を越え、かつ疲労の蓄積が認められる者」を要件としていましたが、この時間外・休日労働時間の要件が1月あたり80時間となり、対象者が拡大することになります。

さらに研究開発業務従事者で時間外・休日労働時間が1ヵ月あたり100時間を越える場合、あるいは高度プロフェッショナル制度対象労働者で健康管理時間が1ヵ月あたり100時間を越える場合は、労働者からの申し出なしに医師による面接指導を行わなければならないとしています。

なお研究開発業務従事者で、時間外・休日労働時間が100時間を越えない場合でも、労働者からの申し出があり、なおかつ疲労の蓄積が認められた場合には面接指導の対象になります。

罰則がないものの知っておきたいルール

働き方改革関連法では、高度プロフェッショナル制度や同一労働同一賃金についても定めています。高度プロフェッショナル制度は必ずしも導入しなければならないものではなく、同一労働同一賃金に罰則規定はありませんが、基本的な概要については理解しておきましょう。

高度プロフェッショナル制度

高度な専門的な知識などを持ち、職務の範囲が明確であり、一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労働基準法に定められた労働時間や急速、休日などに関する規定を適用しない制度です。

この制度の対象となる労働者の範囲は、職務が明確に定められており、使用者と労働者が合意していること、年間の賃金額が少なくとも1,075万円以上であること、対象業務に常態として従事していることなどと定められています。

対象業務の範囲についても、金融工学などの知識を用いて行う金融商品の開発業務など、細かく定められています。制度の導入に際しては、設置した労使委員会で決議を行い、その内容を労働基準監督署長に提出、さらに対象労働者の同意を書面で得ることなどとされています。

同一労働同一賃金

同一企業における正社員と非正規雇用労働者の待遇差の解消を目的として制度化されました。具体的には、パートタイム労働者と有期雇用労働者、派遣労働者について、不合理な待遇差の禁止、労働者に対する待遇に関しての説明義務の強化、そして裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の整備があります。

注目したいのは不合理な待遇差の禁止で、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などといったあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されました。

さらに労働者に対する待遇に関しての説明義務の強化では、雇い入れ時に賃金や教育訓練、福利厚生施設の利用、正社員転換の措置などといった雇用管理上の措置について説明することが求められるほか、パートタイム労働者などから正社員との待遇差の内容や理由、待遇決定に際しての考慮事項について事業主に説明することが求められています。

裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の規定が整備されたことも見逃せません。パートタイム労働者と有期雇用労働者、そして派遣労働者のいずれであっても、行政による助言や指導などが受けられるほか、行政ADRによる調停も利用できます。

働き方改革に適用することが、企業の信用につながる

現在、働き方改革関連法の整備はほぼ完了しています。施行内容は以下の通りです。

働き方改革関連法の主な内容
出典:厚生労働省京都労働局「働き方改革関連法の主な内容と施行時期」

労務管理の徹底は、罰則から企業を守るだけでなく、時間外労働で圧迫される人件費を最適化するヒントにもなります。従業員の就業時間を記録、正確な残業時間が把握できれば、残業時間が突出して多い部署や個人が特定でき、業務量の見直しなどの効率化・省人化を進められるでしょう。

就業時間の管理にあたっては、ICカードの記録やタイムカードの打刻時間、PCの利用時間など客観的な数字で管理する方法があります。近年、導入が進んできたリモートワークでは、従業員の自己申告をベースに、メールの送信時間といった客観的な勤務状況と照らし合わせ、不自然な場合は労働環境を調査することも大切です。

勤務時間の入力だけで労務管理がスムーズに行える勤怠システムの導入を検討してみてもいいでしょう。時間外・休日・深夜と、勤務時間帯によって異なる割増賃金に正確な対応、有給取得日数を厳密な管理ができるようになります。

企業の信用に傷をつけず、健全な労働環境を実現するためには、会社全体で長時間労働をなくす取り組みが求められます。そもそも働き方改革の根本は、違法な企業を罰することではなく、誰もが働きやすい環境をつくることにあります。残業をせずとも業務が回る仕組みを構築する、削減した残業代を賞与に上乗せする工夫をするなど、環境や制度を変えることが求められているのです。

一つひとつの取り組みが、職場のワーク・ライフ・バランスを促進させます。従業員が働きやすいと満足できる環境が、ひいては離職率を下げ、企業の生産性を向上させ、社会的な信用を形成するでしょう。

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