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上限規制から1年経過──
「30分超の荷待ちゼロ」を実現した
物流現場が行った業務改革とは?

上限規制から1年経過──「30分超の荷待ちゼロ」を実現した物流現場が行った業務改革とは?

2024年4月に、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制の対象外だった物流ドライバーにも同法による上限が適用されました。以降、1年強が経過して多くの運送事業者が対応に追われる中、「荷物が運べない」「利益が出ない」「ドライバーが辞める」といった深刻な声が現場から聞こえてきているのも事実です。しかし、こうした状況の中でも、「荷待ち時間の削減」や「スムーズな運行管理」によって現場負担を軽減しながら、業績を維持・向上させている企業も確実に存在します。成功企業と苦戦企業の違いは一体何なのでしょうか。今回は、実際に荷待ち30分超の案件をゼロにまで削減した企業の取り組みを通じて、上限規制という制約の中でも成果を上げるアプローチ方法をご紹介します。

目次

90分以上の荷待ちが常態化

関東圏で日用品の配送を手がけるA社(従業員約50名)は、上限規制の施行前、深刻な課題を抱えていました。最も大きな問題は荷待ち時間の長さです。平均90分以上の荷待ちが常態化し、月間100件を超える長時間待機が発生することも珍しくありませんでした。

この状況は連鎖的に多くの問題を引き起こしていました。輸送スケジュールが頻繁に乱れ、ドライバーの残業時間や待機手当が増加。結果として人件費が圧迫され、収益性が悪化していたのです。さらに深刻だったのは、配送遅延による荷主からの評価低下でした。「いつ届くか分からない」という不安から、顧客からの取引継続に対する懸念の声も上がり始めていました。

デジタルツールを活用した業務改革に着手

こうした課題解決に向けてA社は業務改革に乗り出しました。そのポイントは、これまで紙や電話を中心に行っていた配車・運行管理業務からの脱却です。それに向けて具体的には以下のようなデジタルツールと業務ルールの刷新を実施しました。

1.到着予定の事前共有と調整業務の標準化

従来は「だいたいの時間」でしか伝えられなかった到着予定を、GPS情報を活用してリアルタイムでおおよその時間を算出し、荷主や配送拠点と事前共有する仕組みを構築しました。これにより、属人化していた配車計画作成などの調整業務を他の人でも対応できるよう標準化することができました。

2.動態情報のリアルタイム可視化と通知

車両の現在地や運行状況を管理者がリアルタイムで把握できるシステムを導入。配車変更が必要な場合も、正確な情報に基づいて迅速な判断が可能になりました。

3.ドライバーアプリでの日報作成や報告を効率化

日報はもちろん、車両点検結果や走行データをアプリにすぐに登録できるため、日々の報告業務が効率化されました。また運転後すぐに運転診断結果から振り返りができるため、ドライバーの安全意識の向上にもつながっています。

4.拠点側での積み降ろし準備タイミングの最適化

到着予定時刻の共有により、配送拠点側でも積み降ろし作業の準備を前倒しで行えるようになり、ドライバーの待機時間を大幅に短縮しました。

荷待ち30分超の案件がゼロに。
ドライバーの拘束時間を削減

これらの取り組みの結果、A社では劇的な改善が実現しました。

最も象徴的な成果は、荷待ち30分超の案件が月間0件になったことです。また、ドライバー1人あたりの平均拘束時間も月20時間削減され、労働時間の上限規制にも余裕をもって対応できるようになりました。

さらに注目すべきは、荷主満足度の向上です。配送の予測精度が高まったことで信頼関係が強化され、取引量が120%に増加しました。管理者・配車係の業務効率も改善し、残業削減・離職防止にも大きく貢献しています。

このA社の取り組みにおける業務改善における重要なポイントは以下の3点です。

「見えない無駄」の削減

A社が業務改善に成功したポイントとしては、「見えないムダ時間」を徹底的に排除したことが挙げられます。従来は「今どこにいるか分からない」「いつ着くか分からない」という不確実性があったため、最適な業務の組み立てができずに、すべての関係者に無駄な待機時間を強いていました。

到着予定や実車状況を関係者全員でリアルタイムに可視化して共有することで配車変更にも柔軟に対応しやすくなるなど現場の判断が格段に迅速化されました。

「前倒しの作業」による業務効率化

到着予測が可視化されたことで、積み降ろし作業の準備を前倒しで行うことが可能になりました。これまで「車両が到着してから準備を始める」と後手の対応になりがちだったのものが、「到着前に準備を完了させる」という前もって作業を行う体制へと変化しました。これが長時間の荷待ちゼロ化実現の決定打となりました。

「ドライバー起点」の業務改善

従来の紙や口頭ベースでの教育や引継ぎが不要になり、新人ドライバーの学習負担が大幅に軽減されたこともこの事例のポイントです。アプリの使用により属人性が排除され、業務が標準化。経験の浅いドライバーでもすぐに報告書などが作成できるようになりました。また、業務がアプリに記録されるため、スムーズな引き継ぎも可能になり、効率化にも大きく貢献しています。

運輸業を支援する「運輸業向け運行管理パック」

A社のような取り組みは、決して属人的なノウハウに依存するものではなく、適切な仕組みとツールがあれば実現可能です。その一例として、NTTドコモビジネスの「運輸業向け運行管理パック」でも運輸業の業務改革に役立つさまざまな機能を提供しています。

  • 運行状況や荷待ちの"見える化"ができていない
  • 拠点・荷主との情報連携がアナログで非効率
  • ドライバーとの連絡が電話中心で対応が属人的

これらの課題を抱える企業にとって、デジタル化による業務改善は、もはや選択肢ではなく必須の取り組みと言えるでしょう。

「物流の現場力」は、デジタルと連携で変えられる

ドライバーの時間外労働上限規制は、確かに物流業界にとって大きな制約となりました。しかし、A社の事例が示すように、この「制約」は限られた業務時間でこれまでと同様の生産性を実現するにはどうすればよいかと業務を見直す絶好の機会です。その一貫として役立つのがデジタルツールです。導入にあたっては、「リアルタイム共有」「情報の一元管理」「現場の使いやすさ」という3つの要素に着目しながら業務改革に取り組んでいくとよいでしょう。

労働時間の上限規制という現状の中で、持続可能な物流サービスを提供し続けるためには、従来のやり方を見直し、デジタルの力を活用した効率的な運営体制を構築することが不可欠です。A社の成功事例を参考に、ぜひ自社の現場改革に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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