「2023年度版 ものづくり白書」に見る
製造業の人材問題

「2023年度版 ものづくり白書」に見る製造業の人材問題

社会情勢の変化による物価の乱高下や、サプライチェーンの寸断リスク、足元に目を落とせば、慢性的な人手不足や高齢化など、製造業を取り巻く環境は厳しさを増しています。こうした状況を打破する方法の一つがデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進です。そして、DXを進める上で欠かせないのがデジタル人材であり、その育成は急務とされています。そこで今回は、経済産業省が発表している「ものづくり白書」を元に、製造業における人材育成の課題と解決策について見ていきたいと思います。

目次

製造業を取り巻く人手不足と高齢化

製造業にとって、人手不足や人材の高齢化は、慢性的な問題です。経済産業省がまとめた「2023年版 ものづくり白書」によると、製造業の就業者数はコロナ禍による影響を受けたものの、2021年は1,045万人、2022年は1,044万人と横ばいに推移しました。34歳以下の若年就業者数も2012年以降ほぼ横ばいとなっています。

問題は、65歳以上の高齢就業者数がこの20年間で32万人も増加した点です。製造業の高齢就業者数は2002年が58万人で全体の4.7%だったのに対し、2022年は90万人で8.6%を占めるまでになりました。

図1 就業者数の推移(全産業/製造業)

こうした人材に関する課題や、社会環境の変化を受け、増えているのがデジタル技術を活用する企業です。「2023年版 ものづくり白書」に掲載されている、「ものづくり産業のデジタル技術活用と人材確保・育成に関する調査」によれば、デジタル技術活用企業は未活用企業に比べ、採用や人材育成の強化に取り組む割合が多いのはもちろん、賃金といった処遇改善の割合が高いことが示されています。

一方で、依然としてデジタル技術を活用しない企業も少なくありません。こうした企業の多くは、「デジタル技術の導入・活用のノウハウ不足」「デジタル技術を導入・活用できる人材の不足」といった、人材の不足に起因する理由を挙げています。

どうすればデジタル人材を確保できるのか

では、デジタル技術を活用し、成果を出している企業は、どのようにデジタル人材の確保を行っているのでしょうか。もちろん、デジタル技術に精通した人材を新たに採用するケースもありますが、より一般的なのが、社内の人材を研修・教育訓練などで育成するという方法です。

今後、DXを進めていくのであれば、一定の従業員だけでなく、経営陣はもちろん組織内のさまざまな担当者がデジタルリテラシーを習得することが理想です。そして、製造業などのユーザー企業で、DXを推進する立場の人材であれば、さらに専門的なデジタル知識や能力が必要になります。こうした人材を育成するための仕組みの一つとして、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が用意しているのが、デジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」です。

(※)独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「マナビDX」

マナビDXは、デジタルスキルを身につけるためのさまざまな講座を紹介しているポータルサイトです。経済産業省の審査基準を満たした講座を掲載しており、これまでデジタルスキルを学ぶ機会がなかった人にも、新たな学習を始めるきっかけが得られるよう、誰でも、デジタルスキルを学ぶことのできる学習コンテンツが掲載されています。

コンテンツには「DXとは」や「ITリテラシー入門」といった初心者向けの講座もちろん、より実践的なプログラムも提供されています。たとえば、データ付きのケーススタディ教材を用いて、受講生が2カ月程度、架空の企業へのデジタル技術導入を一気通貫で疑似体験するオンライン学習プログラムや、DX推進に課題を有する、実際の中小企業と協働した研修プログラムなども用意されています。

もし、デジタル人材を育成したいが、方法がわからないという場合は、こうしたプログラムへの参加を通して、従業員のデジタルリテラシーの向上や、ITスキルの習得を目指すのも良いかもしれません。

自社のDXにデジタル人材の育成は不可欠

慢性的な人手不足を抱える製造業において、デジタル人材の育成・確保は重要な経営課題の一つです。社内でデジタル人材を育成するためにはさまざまな方法がありますが、国が提供するデジタル人材育成プラットフォームを利用したり、自治体が開催するDX関連講座やセミナーに参加したりするなど、外部の支援を適切に利用しながら、経営陣や従業員のデジタル意識の醸成につなげていくのがいいでしょう。

とはいえ、デジタル人材の育成は一朝一夕ではなし得ません。企業の成長にデジタル技術を用いた仕組みづくりが不可欠になりつつある現在、もし、その潮流の速さに対応できないときは、ITベンダーなどの外部の専門家を利用し、喫緊の問題を解決するとともに、協業によるノウハウを蓄積する方法もあります。いずれの方法にせよ、従業員の経験は社内のデジタルリテラシーの強化につながり、自社のDX基盤の強化に大きく貢献するはずです。

※本記事は2024年2月の情報をもとに制作されています。

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